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ラッシュ30

使い勝手が大幅アップ!!パーゴワークスの「ラッシュ」シリーズが“完成形”に進化した!

トレイルランニングやファストパッキング向けに開発されたパーゴワークスのバックパックシリーズ「RUSH(ラッシュ)」。その多くが2023年春にリニューアルされました。

そこで、ハイキングにも向いている「ラッシュ30」にテント泊装備を収納して、フィールドテストへ。バージョンアップしたギミックの機能性を吟味しました!

目次

アイキャッチ画像:ポンチョ

軽快に山を旅することができる「ラッシュ」シリーズ

パーゴワークスのラッシュ

撮影:ポンチョ

2014年にファーストモデルが登場したパーゴワークスの「ラッシュ」シリーズ。トレイルランニングやファストパッキング向けに開発されたバックパック群で、登山用とは異なる“肩甲骨にのせて背負う高重心”が特徴です。

その「ラッシュ」シリーズが、2023年春にリニューアルしました。最小容量の3Lは継続。続く7L、10L、11L、20L、30Lのラインナップが新作です。

パーゴワークス ラッシュシリーズ

提供:PAAGO WORKS(上段左から3L、7L、10L、下段左から11L、20L、30L)

各容量の用途は、ざっくり分けるとこんな感じです。

[3L]ロードランニング
[7L・10L]トレイルランニングのレース
[11L・20L]ランニング、デイハイク
[30L]デイハイクからUL装備での夏のテント泊

今回は、YAMA HACKの読者であるハイカーのみなさんにぜひ使ってみてほしい、新作ラッシュ30をテストしてみました!

運動性・快適性・軽量性を高次元で融合させた「ラッシュ30」

ラッシュ30のイメージ

撮影:ポンチョ

筆者は、旧ラッシュ30を2019年から愛用しています。今回テストした新ラッシュ30も、基本構造に大きな変更はありません。

「動きやすいランニングパックと、重い荷物を背負うハイキング用バックパックを融合させ、ULパック的に仕上げた」と感じられるモデルです。

ラッシュ30

撮影:ポンチョ(新ラッシュ)

例えば、ハイキング用バックパックのように、太く厚いウエストベルトで腰まわりを固定しません。代わりに太めのショルダーストラップと本体とで、上半身を挟みこむようにしてフィッティング。これはランニングパック的です。

トップスタビライザーとショルダーストラップ下部のV字に配されたベルト

提供:PAAGO WORKS(左)トップスタピライザー、(右)ショルダーストラップ下部のV字ベルト

ショルダーストラップの上部に装備された独自仕様のトップスタビライザー(写真左)と、ショルダーストラップ下部のV字に配されたベルト(写真右)は、本体を背中側にグッと引き寄せます。これはハイキング用バックパック的です。

ラッシュ30ギミック

撮影:ポンチョ

そして背面にはクッションになるウレタンマットを、その上部には樹脂製フレームを横に配して、軽量性と一定の剛性を生んでいます。これは、ULパックに見られるアプローチといえます。

こうしたギミックによって、「腰部がフリーで足上げがよく、走っても本体の揺れが少ない安定性と軽い背負い心地」を実現。つまり、登山中のどんな動きにもストレスを感じず動きやすい、唯一無二のバックパックに仕上げています。

しかしこの特長は、前述の通り旧ラッシュと同様です。では新ラッシュは、なにが改良されたのでしょうか?

バージョンアップ①:ショルダーハーネスのポケットの使い勝手が向上!

パーゴワークス ラッシュ30ショルダーハーネスポケット

撮影:ポンチョ

ラッシュシリーズの特長のひとつが、行動時に使う小物の収納に長けた、大きなベスト型の「ショルダーハーネス・ポケット」です。500mlボトル、行動食、スマホ、モバイルバッテリー、紙地図等々を身体の前側に収納できます。

パーゴワークスは、ショルダーストラップから吊り下げて行動中の小物類を整理、収納するチェストバッグの元祖のブランドでもあります。そのチェストバッグの利便性を感じさせるショルダーハーネス・ポケットなのですが、旧ラッシュでは難点が……。

ラッシュ30のポケット

撮影:ポンチョ(旧モデルと新モデルのショルダーハーネス・ポケット)

ポケット開口部のストレッチ素材が、数年使うと伸びて、ゆるくなりがちだったんです。収納したモノによっては、岩場等で前傾になったり、下りで激しく走ったりした時に、飛び出してしまうことがありました。

その課題解決に、新ラッシュでは、ポケット開口部にストレッチコードが採用されています。

ラッシュ30ポケット

撮影:ポンチョ(左)旧ラッシュ、(右)新ラッシュ

写真左が旧ラッシュ、右が新ラッシュのポケット部。旧ラッシュは黄色のライン部がストレッチ素材ですが、新ラッシュはストレッチコードでフィット感を調節できる仕様に変更されています。

写真ではストレッチコードが配された下段ポケットにボトルを収納していますが、その上のポケットにボトルを収納しても、ストレッチコードが機能し、脱落を防いでくれるようになっています。

行動中に必要なものを、サコッシュよりも安全に携行できる

下の写真は、私が行動中に使うものをショルダーハーネス・ポケットに収納した様子。収納したモノがわかるように、ポケットからはみ出させていますが、実際にはすべてをきっちりと収納できます。

パーゴワークスのラッシュ新作

撮影:ポンチョ(新ラッシュのショルダーハーネス・ポケット)

こうしたショルダーハーネス・ポケットは、他ブランドのトレラン用バックパックでも採用されていますが、ラッシュのポケットは一味違います。サイズが大きく収納力が高い上に、ポケット自体がストレッチ素材なので走っても揺れにくいのです。

そして、旧ラッシュでは上下2つの大型ポケットのみだったのが、その上部にジェル等を収納する小さなポケットが追加されています。下段のポケットは、ストレッチコードに加えて広めのマチが備わったことで、さらに収納力がアップ。

近年、行動時に使用する小物の収納にサコッシュを使用するハイカーが多いですが、このショルダーハーネス・ポケットでは、必要なモノをたっぷり収納できる上に、サコッシュのように揺れず、重さで肩も凝りません。岩場等でブラブラして邪魔になることもないので、登山の安全にも機能してくれます!

バージョンアップ②:サイドポケットはアクセスしやすく、落ちにくい仕様に

パーゴワークス ラッシュ30 サイドポケット撮影:ポンチョ

行動時に水分補給するためのボトルは、ラッシュではショルダーハーネス・ポケットに収納しますが、その容量は最大500ml程度。残りの水を入れたボトルは、サイドポケットに収納することになります。

ラッシュ30フォルム

撮影:ポンチョ(左)旧ラッシュ、(右)新ラッシュ

ラッシュ30は、バックパックを背負ったままボトルの取り出しができるようにと、サイドポケットの開口部は前方に向かって斜めに配されています。

しかし、旧ラッシュではかなり前方を向いていたのが、新ラッシュではやや垂直方向に。

ラッシュ30サイドポケット

撮影:ポンチョ(左)旧ラッシュ、(右)新ラッシュ ※バックパックの向きが前の写真とは逆になっています

旧ラッシュでは取り出しやすさを優先させた斜めの開口部が、新ラッシュでは取り出しやすさとホールド力のバランスを考慮した開口部に変更されているのがわかるでしょう。

新ラッシュでは、開口部に脱落防止の“カエシ”も装備

ラッシュ30サイドポケットポケット

撮影:ポンチョ(左)旧ラッシュ、(右)新ラッシュ

旧ラッシュでは開口部のフィット性を上げるストレッチ素材が配されていただけでしたが、新ラッシュでは開口部をポケット内側に折り込む仕様に変更。“カエシ”の役割を持たせることでホールド力を上げ、収納物の脱落を防ぐようにしています。

トレッキングポールや三脚など、長尺物のホールド力もアップ

ラッシュ30サイドポケット

撮影:ポンチョ(左)旧ラッシュ、(右)新ラッシュ

写真のように、旧ラッシュは本体に配されたドローコードをポール上部に回して、脱落を防いでいました。

対して新ラッシュでは、本体上部に太めのベルト状のホルダーが装備され、より固定しやすく揺れにくい仕様に。ポールの下部はサイドポケットに収納したり、ドローコードで抑えたりしてセットします。

ラッシュ30ホルダー

撮影:ポンチョ(新ラッシュのストックホルダー)

上部ホルダーのホールド力は、ドローコードの比較にならないほど強力。安定感が格段に向上し、ハイク、そしてランニング時、上下運動が激しい下りの際に、収納した長尺物が脱落する心配がほぼ解消されています。

バージョンアップ③:美しいパッキングができる、安全性をプラス

パーゴワークス ラッシュ30 トップポケット

撮影:ポンチョ

トップポケット部分も使いやすく進化しています。

旧ラッシュは、サイドポケット部と同じストレッチメッシュ素材。伸びがよく、ポケットの大きさ以上にかなり多くの小物類を収納できるのはよかったのですが、入れ過ぎてしまうとポケットが膨らみ、下部に落ちてパッキングスタイルが不格好に……。しかも中身が透けて見えがち……。

そこで、エマージェンシーシートで壁を作ったり、スタッフバッグに小物を収納したりしてから、トップポケットに入れていました。

トップポケット

撮影:ポンチョ(左)旧ラッシュのトップポケット部分、(右)新ラッシュのトップポケット部分

それが新ラッシュでは、若干のストレッチ性を備えたナイロンパネル素材に変更されたことで、パックのカタチが崩れず、中身も透けなくなくなりました!

さらに、パック本体のフォルムも、下部をシャープに絞ったブレの少ない形状にブラッシュアップされているようにも感じました。

パーゴワークス ラッシュ30 フォルム

撮影:ポンチョ(新ラッシュ)

登山において一定の経験を積むと、パッキングした際のバックパックのフォルムの美しさにこだわるようになります。その美しさは、バックパック内にバランスよく装備を収納することで実現するもの。だから美しいパッキングスタイルを可能にするバックパックは、装備を安定して背負える安全なバックパックともいえます。

ラッシュ30は、背負いやすさ、動きやすさだけでなく、さらに安全性をプラスした、“完成形”へと進化したといえるでしょう。

うれしい&惜しい!ほかにも細かな仕様変更あり

ラッシュ28(旧ラッシュ30の前モデル)の時代から試行錯誤しているのが、チェストストラップです。

当初はスライドして高さ調節できるタイプだったのですが、背負っているうちに高さが変わってしまうことも……。そこでトグルで高さを選択するタイプに変更したり、その強度に問題があればトグルのメス側の強度を上げたものに変更。そして……

新ラッシュでは、固定式のチェストストラップを選択

チェストストラップ ラッシュ30

撮影:ポンチョ(上)旧ラッシュ、(下)新ラッシュ

そもそもラッシュシリーズのバックパックは、ショルダーハーネスの付け根部分が面テープになっていて、長さやフィット感を調整できる仕様になっています。そのため、「チェストストラップが固定式でも高いフィット感を得られる」という結論に達した模様です。

背負う人の体型や激しい動きに対応する、ブレの少ないバックパックを実現するため、いろいろなアイデアを採用。その結果、フィット感を維持しながらも、強度や耐久性を重視したシンプルな仕様に着地。シンプルだからこそ、山で壊れたり不具合が出たりしにくいという点で、アウトドア道具としての信頼性もアップしました。

パック下部のポケット&レインカバーは省略

さて、旧ラッシュでは、パック本体下部に、ジッパー付きのポケットが備わり、そこにレインカバーも標準装備されていました。

レインカバー

撮影:ポンチョ

しかし新ラッシュを見ると、軽量化のためなのか、価格高騰を抑えるためなのか、トレイルランナーやファストハイカーは使わない方が大多数なのか、ポケットもレインカバーもなくなっていました。これは、ちょっと残念……。

とはいえ振り返ってみると、筆者自身もこの4年間でレインカバーを一度も使っていません。ラッシュ30を背負う時はファストパッキングをして、トレイルを走ることが大半。安全最優先で天気のよい日を選んで出掛けていたということもあります。

ラッシュ30

撮影:筆者

また写真のように、トップスタビライザーと本体トップ部分にクローズドセルタイプのスリーピングマットをセットすると、標準装備のレインカバーではかなり窮屈になってしまうのです。そこで手持ちの50L対応のレインカバーを装備していくこともありました。

だから、ラッシュ30を背負うハイカーは、そのスタイルに応じて自分でセレクトした方がいいよね?という、考えなのかもしれません。

「ラッシュ30」は唯一無二!理想的なファストパッキングモデル

テスト時にパック本体に収納した装備は下の写真の通りです。

スリーピングマットはフルサイズを、クッカーや食料も少し大きめを収納し、まだ装備をコンパクトにできる余地を残してテストをしました。

ラッシュ30収納物

撮影:ポンチョ

ショルダーハーネス・ポケットやトップポケットの容量も大きいので、実際には30L以上の収納力。ストイックなULスタイルでなくても、夏前後の気温の高い季節のテント泊であれば、ラッシュ30で十分に対応できます。

しかも、ただ装備が収納できるだけでなく、通常のハイキング用バックパック以上に、快適で身軽なハイクができます。

ただし、パック本体とで身体を挟む幅広のショルダーハーネスは、男女ともに標準体型ならよくフィットしますが、太っている人や胸が大きな女性は、窮屈さを感じる場合も。購入の際は、試着して確認することをおすすめします。

ラッシュ30

撮影:ポンチョ

超軽量なULパックの中には、容量30L前後で500g以下のモデルがあります。対して、ラッシュ30は720g。

軽さではULパックに劣りますが、歩く、走る、登る動きを妨げない、ストレスを感じさせない運動性の高さ。そして美しくパッキングできるフォルムは、30Lモデルのなかで随一。

ラッシュ30は、今回の進化によって、ストレスなく身軽なテント泊、山小屋泊等の縦走に対応するバックパックとして、完成したといえます。ぜひ、この背負い心地を体験してみてください!

それでは皆さん、よい山旅を!

パーゴワークス/ラッシュ30の詳細はこちら

パーゴワークス ラッシュ30

サイズ600×240×270mm
重量720g
容量31リットル(ポケット含む)