強くたくましい植物界の”弁慶”!絶壁の岩場でも花を咲かせる「イワベンケイ」の特徴と見分け方

2022/01/12 更新

歴史上の人物として有名な「武蔵坊弁慶」。その弁慶が由来となった高山植物があることをご存知ですか?弁慶のように厳しい環境でもタフに生き抜き、夏になればかわいらしい花を咲かせて秋には実をつける。そんないろいろな姿を見せてくれる植物「イワベンケイ」をご紹介します。

制作者

TAKESHI

登山歴12年。家族の影響で登山の魅力を知り、100名山を中心に登ってきました。学生時代には剱岳の剣山荘にて住み込みの勤務も経験。今年から雪山登山を始めるべく、神奈川県山岳連盟主催の冬山教室を受講中です。上高地徳沢周辺の雰囲気が大好きで、オールシーズン制覇を目指してます!

TAKESHIのプロフィール

...続きを読む


アイキャッチ画像出典:PIXTA(八ヶ岳に咲くイワベンケイ)

黄色く可愛らしいイワベンケイ。なんと由来はあの「武蔵坊弁慶」

イワベンケイ
出典:PIXTA(岩溝に咲くイワベンケイ)
北海道や本州の一部高山帯に自生し、毎年7〜8月頃に花を咲かせる「イワベンケイ」。世界に1300種生息すると言われるベンケイソウ科のイワベンケイ属に分類される高山植物です。
高さは5~35cmほどで、一つの株から多数の茎を広げて自生します。

イワベンケイ
出典:PIXTA(岸壁に咲くイワベンケイ)
そんなイワベンケイの一番の特徴は、過酷な環境でも生き抜く「タフさ」

弁慶といえば、矢を受けながらも倒れず「立ち往生」した伝説が有名ですが、イワベンケイもその丈夫さから「弁慶」になぞらえて名付けられたと言われています。

その名にふさわしく、高山の岩場や砂礫地でも育つことができ、さらには切っても枯れない丈夫さを兼ね備えています。他には植物がないエリアでも生えているため、登山中でも目に止まりやすい存在です。

高山に耐え抜く秘密は「葉」にあり

なぜイワベンケイは高山の厳しい環境でも育つことができるのか?
その秘密はイワベンケイが「多肉植物」であることにあります。

イワベンケイ
出典:PIXTA(岩溝に生えるイワベンケイ)
「多肉植物」とは、サボテンやアロエからイメージするような、葉や根に水分を蓄える性質を持った植物のこと。
イワベンケイは黄緑色のぷっくりとした葉を持っており、その中にたっぷりと水分を蓄えています。そのおかげで水が少なく、乾燥した環境でも育つことができるんです。

力強いだけじゃない!かわいらしい花を咲かせるイワベンケイ

イワベンケイ
出典:PIXTA(黄色の花を咲かせるイワベンケイ)
イワベンケイは開花時期は7~8月。複数の小花が密集して、一つの黄色い花を咲かせます。
イワベンケイ
出典:PIXTA(円形に花をつけるイワベンケイ)
一つの株からたくさんの茎に花がつくため、ひとつの花束のように見えることも。
「弁慶」の名前からはイメージがつかないほど可愛らしく、明るい黄色で高山を彩ってくれます。

秋には、鮮やかな紅色に様変わり。
イワベンケイ
出典:PIXTA(紅色の実をつけるイワベンケイ)
紅色の部分は花にも見えますが、花ではなく「実」
一つの花に対してたくさんの実をつけるため、遠目から見るとまるで花のようにも見えます。

「緑」→「黄色」→「紅色」と季節によって異なる姿を見せてくれるのもイワベンケイの魅力の一つです。

「ホソバイワベンケイ」と見極めよう!



よく似た植物としてあげられるのが「ホソバイワベンケイ(細葉イワベンケイ)」。イワベンケイと同じく、高山で見られる植物ですが、その違いは「葉の形」です。

ホソベンケイとイワベンケイ
出典:PIXTA(左:イワベンケイ、右:ホソバイワベンケイ)
イワベンケイの葉は丸い形をしている一方、ホソバイワベンケイは細長く、ギザギザしているのが特徴です。似てはいますが葉の形は大きく異なるため、山の上で見つけたらその違いをぜひ見極めてみてください。

植物界では4%しかいない雌雄異株(しゆういしゅ)

イワベンケイは、一株の花が「すべて雄花」か「すべて雌花」の種子植物を指す「雌雄異株(しゆういしゅ)」と呼ばれる種類で、実は種子植物界では珍しい存在。

出典:PIXTA(左:イワベンケイの雄株 右:イワベンケイの雌株
左の写真が「雄株」でより鮮やかな黄色の花を咲かせ、右写真の「雌株」のみが紅色の実をつけます。

一つの株にメシベとオシベの両方を持つ「雌雄同花(しゆうどうか)」の種子植物が80%と大部分を占めている中で、イワベンケイを含む「雌雄異株」はわずか4%しか存在していません。(※)

イワベンケイを見つけたら、雄株なのか雌株なのか、その違いを見比べるのも面白いかもしれませんね。

イワベンケイを見つけるならここ!

イワベンケイの生息域は高山に限られるものの、比較的アクセスしやすい山々で見つけることが可能です。その中でも多く見られる場所をご紹介します。

仙丈ヶ岳

仙丈ヶ岳_イワベンケイ
出典:PIXTA(仙丈ヶ岳とイワベンケイ)
「南アルプスの女王」とも呼ばれる仙丈ヶ岳でイワベンケイをみることができます。「高山植物の宝庫」とも称されているため、他の高山植物を一緒に探しながら楽しめそうです。
見頃:7月
主なコース:大滝ノ頭〜小仙丈ケ岳〜仙丈ケ岳〜馬ノ背

木曽駒ヶ岳

木曽駒ヶ岳
出典:PIXTA(千畳敷カールの風景)
3000m級の山でありながら、ロープウェイでアクセスが容易な木曽駒ヶ岳。その周辺でもイワベンケイを見つけることができます。ハイキング気分で気軽に探しに行けそうですね。
見頃:7〜8月
主なコース:千畳敷駅〜木曽駒ヶ岳

北岳

北岳_イワベンケイ
出典:PIXTA(北岳とイワベンケイ)
北岳をはじめとした、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山で見ることができます。標高の高い山々で見るイワベンケイはより力強く見えそうですね。
見頃:7〜8月
主なコース:広河原〜白根御池小屋〜北岳

植物界のベンケイを探しに行こう!

出典:PIXTA
そのタフさから高山でポツンと生えていることもあるイワベンケイ。もしかするとすでに見たことのある植物かもしれませんね。
イワベンケイの性質を抑えた上で、ぜひ意識して見つけてみてください。

この記事を読んでいる人にはこちらもおすすめ


関連する記事

関連する山行記録 byヤマレコ

イワベンケイ
この記事が気に入ったら
「いいね!」をしよう
登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」