数年に一度しか咲かないコバイケイソウ
初夏の湿地に広がるコバイケイソウ。
本州中部以北から北海道まで広く分布し、山地から亜高山の草地や湿地などの湿気の多いところに生えるユリ科シュロソウ属の多年草です。
6月から7月に山を彩る代表的な高山植物のひとつですが、残念なことに花は毎年は咲きません。
時季になってもほとんど咲かない年があり、花の咲く風景は毎年見られるわけではありません。
花が多い年は「当たり年」と呼ばれ、その周期は予測不能の不定期。
咲く時季にならないとその年が当たり年かどうかも分からないという、なんともミステリアスな植物です。
白くて小さく可愛らしいコバイケイソウの花
コバイケイソウは1メートル程の高さに成長する、高山の中では背が高い植物。
茎先から枝分かれした穂先に、8ミリ程の乳白色の花を円錐状に咲かせます。
群落を形成するため、当たり年は一体が白く染まり、穂先が風に揺れる様子は遠くから見るとトウモロコシ畑のようにも。
鮮やかな緑が目を引くコバイケイソウの葉
葉は幅の広い、先の尖った楕円形。茎を包むように交互に生える大きめの葉は力強く、花が咲いていなくてもコバイケイソウだとすぐに分かります。
そして新芽は大きなフキノトウのように地面からニョキニョキと生え、こちらも特徴的で目を引く存在感。
ミステリアスなコバイケイソウの豆知識
名前が似ているバイケイソウとは違う花……?名前の由来は?コバイケイソウについてもう少し深掘りしてみましょう。
コバイケイソウ?バイケイソウとの違いは…?
コバイケイソウによく似た名前の植物、バイケイソウ。それぞれ漢字で書くと、小梅蕙草と梅蕙草と書きます。
小さい梅蕙草と書く通り、バイケイソウよりも小さいので、コ(小)バイケイソウ。1メートル程のコバイケイソウと比べ、バイケイソウは高さは2メートル程に育つこともある、より大型の植物です。
また、大きさだけではなく花にも違いがあります。
乳白色のコバイケイソウに対して、バイケイソウの花はやや緑がかった白。花の付き方を見ても、異なる種類ということが分かります。
バイケイソウはコバイケイソウよりも低い、標高700メートル程の場所にも生息しているので、丹沢や箱根でも見ることが出来ます。
漢字で書くと「小梅蕙草」。その名前の由来は?
字の通り、花が梅に、葉が蕙蘭(ケイラン)に似ていることからこの名前が付きました。
花びらの枚数は違いますが、形は確かに梅の花と似ています。
そして蕙蘭とは、台湾と中国が原産地の蘭。洋ラン、シンビジウムの仲間です。
様々な種類がある蘭の中で、蕙蘭は葉を楽しむ蘭のひとつ。「葉芸」と呼ばれる、葉に出る柄が観賞の対象になる品種です。
コバイケイソウの葉の、光沢のあるツルっとした表面や濃い緑色、はっきりと出る葉脈が蘭の葉と似ていますね。
実は毒を持っている危険な植物
白く小さく可愛らしい花を持つコバイケイソウですが、可憐な見た目とは裏腹に全草に毒成分を有する危険植物。
特に根や茎は強毒で、食用の山菜と間違える誤食事故も発生し、最悪は死に至ることも。
登山中に山草を食べることはあまり無いので心配する必要はないかもしれませんが、”毒を持っている草”ということは頭に入れておきましょう。
控えめな花言葉「遠くから見守っています」
なんとも奥ゆかしい花言葉を持つコバイケイソウ。登山の安全を遠くから見守ってくれているようです。
毒を持っていますが、眺めるだけはもちろん無害。私たちも見守るように楽しみましょう。
名所はどこ?コバイケイソウを見に行こう!
花が見られない時もあるのは残念ですが、見つけやすい見た目に加えて生息地も行きやすい場所が多く、ハイキングコースからでも観賞できる高山植物。
安全にお花畑を堪能出来る、コバイケイソウの名所を紹介します。