必要十分な山岳保険選び 6つのポイント

【専門家監修】いざという時の備えのために、必要十分な山岳保険選びを!入会前に確認しておきたい6つのポイント

安全登山への備えとして加入しておきたい山岳保険。登山用品店には様々な種類の保険パンフレットが並んでいますね。けれども、それぞれの山岳保険のどこがどう違う?そもそも普通の保険との違いって?と迷うことも多いのでは。今回は山岳保険を選ぶ際におさえておきたいポイントを「やまきふ共済会」の井関純二さんの解説と共に検証します。

目次

アイキャッチ画像作成:washio daisuke/イラストの出典:PIXTA

山岳保険って何を基準に選べばいいの?

保険 お金

出典:PIXTA

安全登山のための備えを入念に行っても、不測の事故が起きてしまう可能性があります。そこで、欠かせないのが山岳保険への加入。

たくさんの種類がある中で、何を選べばいいかわからず、「何でもいいからとりあえず入会しておけばOK」になっていませんか?
しっかりと補償内容を理解し、確認しておかないと、もしもの時に補償されない保険かもしれません。

え!?どういうこと?と疑問に思った方に向けて、まずは山岳保険とは何かをご紹介します。

そもそも「山岳保険」ってどんなもの?

日本一の山岳県である長野県が2015年に施行した「長野県安全登山条例」の第22条には、山岳保険の加入について以下の記載があります。

山岳を登山しようとする者は、山岳保険(山岳遭難者の捜索又は救助について負担する費用に対して保険金、共済金その他これらに類するものが支払われるものをいう。)に加入するよう努めるものとする。

つまり、山岳遭難事故発生時に必要な捜索・救助費用が補償内容に含まれているものが、一般的に「山岳保険」と呼ばれているのです。

山岳保険に入会する前に、確認すべき6つのポイント

遭難時の補償内容が最も重要視すべきポイント

出典:PIXTA(遭難時の補償内容が最も重要視すべきポイント)

山岳保険の役割としては、不測の事態が起きた時に「捜索・救助費用」がしっかりと補償されること。そのため、この項目がとても重要なんです。今回は、山岳保険制度「やまきふ共済会」の代表である井関純二さんに、

《1》捜索・救助費用の補償内容で確認すべき4つのポイント
《2》自分にあった契約タイプを選ぶための2つのポイント

をそれぞれ伺いました。

各項目、詳しく説明していきます!補償内容を理解して、自分にあった保険を選べるようになりますよ。

《1》捜索・救助費用の補償内容で確認すべき4つのポイント

山岳保険への加入が条例によって努力義務とされている長野県/写真は中央アルプス・宝剣岳

撮影:washio daisuke(山岳保険への加入が条例によって努力義務とされている長野県/写真は中央アルプス・宝剣岳)

先述した通り、登山の際の万が一の遭難事故の際の捜索・救助費用が支払われる保険に加入するのが大前提となります。

自己負担だとかなりの高額になる場合もあるこれらの費用。すなわち「捜索・救助費用」の補償内容が、山岳保険を選ぶ際に最も重視すべきポイントになります。とくに注意したいのが、以下の4項目です。

捜索・救助費用の比較ポイント
①「病気や疲労、道迷い」による遭難や事故であっても、補償対象になっているか
②二次捜索の費用が補償内容に含まれているか
③救援者費用が補償内容に含まれているか
④捜索、救助活動の費用をカバーできる補償金額があるか

それぞれ細かくみていきましょう!

①「病気や疲労、道迷い」による遭難や事故であっても、補償対象になっているか

態様別山岳遭難者

作成:YAMA HACK編集部(参考:令和2年夏期における山岳遭難の概況

山岳遭難の原因はさまざまですが、長年その第1位となっているのが「道迷い」。そのほか、図を見ると疲労や病気の割合も多いことが分かりますね。
ただ、多くの山岳保険の補償の前提となるのが「急激かつ外来の事故」であり、持病などによる体調不良や疲労による行動不能、道迷いなどによる遭難や事故は補償されないものが多いのです。

「捜索・救助費用」の項目の詳細を確認し、病気や道迷いによる遭難や事故が補償対象となる商品を選ぶことがオススメです。記載がない場合は、遭難概況別の補償有無を問い合わせるといいでしょう。

②二次捜索の費用が補償内容に含まれているもの

深い樹林帯での道迷いや険しい地形の山岳では捜索活動が長期化することも

撮影:washio daisuke(深い樹林帯での道迷いや険しい地形の山岳では捜索活動が長期化することも)

警察・消防など公的機関による捜索活動は、通常数日で打ち切られます。

遭難捜索の流れ

作成:YAMA HACK編輯部

もしその期間に発見されず捜索を継続するとなると、民間の組織・団体に依頼する「二次捜索」が主な手段となり、当然のことながら費用も発生。

この二次捜索も補償の対象になるか、チェックしておくと良いでしょう。

▼遭難捜索について詳しく知りたい人はこちらをチェック

③救援者費用が補償内容に含まれているもの

万が一の知らせを受けた時、家族は…?

出典:PIXTA(万が一の知らせを受けた時、家族は…?)

救援者費用とは、遭難の一報を受けた家族が現地の捜索本部や病院に駆けつける際にかかる交通費や宿泊費のこと。

救助隊による捜索・救助費用以外にも山岳遭難時にはこんな費用も必要になります。補償内容や金額を、事前に確認しておくことがオススメです。

④捜索、救助活動の費用をカバーできる十分な補償金額があるもの

そもそもの補償金額は十分ですか?

イラストの出典:いらすとや(そもそもの補償金額は十分ですか?)

ここまでご紹介した通り、様々な費用が必要になる捜索・救助活動。山岳遭難に特化した保険でないと、そもそもの補償額が不十分な場合もあります。

各項目の補償金額を、しっかりチェックしておくことが必要です。

▼遭難した際に必要な費用を知りたい人はこちらをチェック

《2》自分にあった契約タイプを選ぶための2つのポイント

登山頻度や雪山登山・クライミングなどをするか否かで適した保険の種類は異なります

撮影:washio daisuke(登山頻度や雪山登山・クライミングなどをするか否かで適した保険の種類は異なります)

第一に「捜索・救助費用」を確認したら、自分に合った契約タイプ選びが必要です。

自分に合った保険タイプを選ぶポイント
①短期タイプか年間タイプか、契約期間を選ぶ
②登山スタイルに応じた保険を選ぶ

上記のように保険の種類によって、複数の契約タイプを設けているものもあります。それぞれのメリット・デメリットを知って、自分に合ったタイプを選びましょう。
それぞれ細かくみていきます。

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