【専門家監修】いざという時の備えのために、必要十分な山岳保険選びを!入会前に確認しておきたい6つのポイント

2021/11/11 更新

安全登山への備えとして加入しておきたい山岳保険。登山用品店には様々な種類の保険パンフレットが並んでいますね。けれども、それぞれの山岳保険のどこがどう違う?そもそも普通の保険との違いって?と迷うことも多いのでは。今回は山岳保険を選ぶ際におさえておきたいポイントを「やまきふ共済会」の井関純二さんの解説と共に検証します。


アイキャッチ画像作成:washio daisuke/イラストの出典:PIXTA

山岳保険って何を基準に選べばいいの?

出典:PIXTA
安全登山のための備えを入念に行っても、不測の事故が起きてしまう可能性があります。そこで、欠かせないのが山岳保険への加入。

たくさんの種類がある中で、何を選べばいいかわからず、「何でもいいからとりあえず入会しておけばOK」になっていませんか?
しっかりと補償内容を理解し、確認しておかないと、もしもの時に補償されない保険かもしれません。

え!?どういうこと?と疑問に思った方に向けて、まずは山岳保険とは何かをご紹介します。

そもそも「山岳保険」ってどんなもの?

日本一の山岳県である長野県が2015年に施行した「長野県安全登山条例」の第22条には、山岳保険の加入について以下の記載があります。

山岳を登山しようとする者は、山岳保険(山岳遭難者の捜索又は救助について負担する費用に対して保険金、共済金その他これらに類するものが支払われるものをいう。)に加入するよう努めるものとする。

つまり、山岳遭難事故発生時に必要な捜索・救助費用が補償内容に含まれているものが、一般的に「山岳保険」と呼ばれているのです。

山岳保険に入会する前に、確認すべき6つのポイント

遭難時の補償内容が最も重要視すべきポイント
出典:PIXTA(遭難時の補償内容が最も重要視すべきポイント)
山岳保険の役割としては、不測の事態が起きた時に「捜索・救助費用」がしっかりと補償されること。そのため、この項目がとても重要なんです。今回は、山岳保険制度「やまきふ共済会」の代表である井関純二さんに、

《1》捜索・救助費用の補償内容で確認すべき4つのポイント
《2》自分にあった契約タイプを選ぶための2つのポイント

をそれぞれ伺いました。

各項目、詳しく説明していきます!補償内容を理解して、自分にあった保険を選べるようになりますよ。

《1》捜索・救助費用の補償内容で確認すべき4つのポイント

山岳保険への加入が条例によって努力義務とされている長野県/写真は中央アルプス・宝剣岳
撮影:washio daisuke(山岳保険への加入が条例によって努力義務とされている長野県/写真は中央アルプス・宝剣岳)
先述した通り、登山の際の万が一の遭難事故の際の捜索・救助費用が支払われる保険に加入するのが大前提となります。

自己負担だとかなりの高額になる場合もあるこれらの費用。すなわち「捜索・救助費用」の補償内容が、山岳保険を選ぶ際に最も重視すべきポイントになります。とくに注意したいのが、以下の4項目です。
捜索・救助費用の比較ポイント
①「病気や疲労、道迷い」による遭難や事故であっても、補償対象になっているか
②二次捜索の費用が補償内容に含まれているか
③救援者費用が補償内容に含まれているか
④捜索、救助活動の費用をカバーできる補償金額があるか
それぞれ細かくみていきましょう!

①「病気や疲労、道迷い」による遭難や事故であっても、補償対象になっているか

態様別山岳遭難者
作成:YAMA HACK編集部(参考:令和2年夏期における山岳遭難の概況
山岳遭難の原因はさまざまですが、長年その第1位となっているのが「道迷い」。そのほか、図を見ると疲労や病気の割合も多いことが分かりますね。
ただ、多くの山岳保険の補償の前提となるのが「急激かつ外来の事故」であり、持病などによる体調不良や疲労による行動不能、道迷いなどによる遭難や事故は補償されないものが多いのです。

「捜索・救助費用」の項目の詳細を確認し、病気や道迷いによる遭難や事故が補償対象となる商品を選ぶことがオススメです。記載がない場合は、遭難概況別の補償有無を問い合わせるといいでしょう。

②二次捜索の費用が補償内容に含まれているもの

深い樹林帯での道迷いや険しい地形の山岳では捜索活動が長期化することも
撮影:washio daisuke(深い樹林帯での道迷いや険しい地形の山岳では捜索活動が長期化することも)
警察・消防など公的機関による捜索活動は、通常数日で打ち切られます。

遭難捜索の流れ
作成:YAMA HACK編輯部
もしその期間に発見されず捜索を継続するとなると、民間の組織・団体に依頼する「二次捜索」が主な手段となり、当然のことながら費用も発生。

この二次捜索も補償の対象になるか、チェックしておくと良いでしょう。

▼遭難捜索について詳しく知りたい人はこちらをチェック

③救援者費用が補償内容に含まれているもの

万が一の知らせを受けた時、家族は…?
出典:PIXTA(万が一の知らせを受けた時、家族は…?)
救援者費用とは、遭難の一報を受けた家族が現地の捜索本部や病院に駆けつける際にかかる交通費や宿泊費のこと。

救助隊による捜索・救助費用以外にも山岳遭難時にはこんな費用も必要になります。補償内容や金額を、事前に確認しておくことがオススメです。

④捜索、救助活動の費用をカバーできる十分な補償金額があるもの

そもそもの補償金額は十分ですか?
イラストの出典:いらすとや(そもそもの補償金額は十分ですか?)
ここまでご紹介した通り、様々な費用が必要になる捜索・救助活動。山岳遭難に特化した保険でないと、そもそもの補償額が不十分な場合もあります。

各項目の補償金額を、しっかりチェックしておくことが必要です。

▼遭難した際に必要な費用を知りたい人はこちらをチェック

《2》自分にあった契約タイプを選ぶための2つのポイント

登山頻度や雪山登山・クライミングなどをするか否かで適した保険の種類は異なります
撮影:washio daisuke(登山頻度や雪山登山・クライミングなどをするか否かで適した保険の種類は異なります)
第一に「捜索・救助費用」を確認したら、自分に合った契約タイプ選びが必要です。
自分に合った保険タイプを選ぶポイント
①短期タイプか年間タイプか、契約期間を選ぶ
②登山スタイルに応じた保険を選ぶ
上記のように保険の種類によって、複数の契約タイプを設けているものもあります。それぞれのメリット・デメリットを知って、自分に合ったタイプを選びましょう。
それぞれ細かくみていきます。

短期タイプか年間タイプか、契約期間を選ぶ

短期タイプと年間タイプ
作成・撮影:washio daisuke(短期タイプと年間タイプ)
山岳保険には、大きく分けて契約タイプが2つあります。

短期タイプ:登山に行くたびに、その登山期間のみをカバーする保険に加入する

年間タイプ:1年間継続して、その期間中の全ての登山をカバーする保険に加入する

それぞれのメリット・デメリットは、下記の通り。

保険の契約期間

作成:washio daisuke(短期タイプと年間タイプのメリット・デメリット)
自身の登山頻度や今後の登山予定と照らし合わせて、検討してみてくださいね。

登山スタイルに応じた保険を選ぶ

アイスクライミングなどリスクの高い登山をする人は注意が必要
撮影:washio daisuke(アイスクライミングなどリスクの高い登山をする人は注意が必要)
雪山登山やロッククライミング・アイスクライミング・沢登りなどにチャレンジしたい人は、さらに注意が必要。こうした登山は「リスクが高い」と見なされ、補償されない保険も多いのです。

運動危険割増などの特約を付加したり、こうした登山も補償対象となる山岳保険への加入が必要になるので、自分の登山スタイルに合った保険商品をチェックしましょう。

何がどんな時に支払われるの?そのほかの補償内容もチェック

より安心できるための補償内容とは
出典:PIXTA(より安心できるための補償内容とは)
遭難時の補償以外にも、山岳保険にはさまざま項目がありますよね。ただ用語が難しくて、どんな時に必要なのかいまいちわからない……という人も多いのではないでしょうか。

いざという時に備えられるように、保険の補償内容をしっかりと把握しておくことはとても大切です。今回は山岳保険に付帯していることが多い、代表的なものをご紹介していきます。

生命保険など他に加入している保険の補償項目とも比較しながら、チェックしてみてください。

賠償責任保険金

あなたが加害者になる可能性も
出典:PIXTA(あなたが加害者になる可能性も)
賠償責任保険金とは、他人の物を壊してしまったり、他人に怪我を負わせてしまったりなど、法律上で損害賠償責任を負担された時にその損害を補償してくれる保険のこと。

記念写真を撮ってあげようと預かったカメラやスマホを落として破損させてしまった場合などは賠償額も少額で済みます。ただ、あなたが誤って起こした落石によって他の登山者が怪我を負ったり死亡してしまったりなど、多額の損害賠償金が発生する可能性もあるのです。

賠償金額はもちろんですが被害者との示談を代行してくれるサービスがついているものもあります。精神的な負担を考えるとチェックしておきたいですね。

入院・手術・通院保険金

出典:PIXTA(長期間のリハビリが必要になる可能性もある登山での怪我)
転倒・滑落などで怪我を負ってしまった場合、入院・手術はもちろん、長期間のリハビリが必要なケースも。登山にカムバックするまでの医療費を補償してくれるかも、チェックしておきたいポイントです。

▼実際に山で怪我をした人の実録を知りたい人はこちらをチェック

死亡・後遺傷害保険金

出典:PIXTA(死亡保険金が支払われないケースも)
死亡保険金は生命保険でカバーされることが多いため、多くの山岳保険では金額が低く設定されています。自身が加入している生命保険の補償内容を、よく確認しておきましょう。

また行方不明のまま遺体が見つからない場合、そもそも失踪者扱いとなり生命保険も支払われません。そのため、早期に発見されるための対策として、山岳遭難捜索サービスである「ココヘリ」などの携帯もオススメです。

▼ココヘリについて詳しく知りたい人はこちらをチェック

携行品損害保険金

大切なカメラが破損…泣
出典:PIXTA
カメラやトレッキングポールなど大切なアイテムが破損してしまった際の修理代を補償してくれるのがこの項目。ただし、多くの場合「免責(自己負担)金額」が設定されているため、注意が必要です。

大切な人を守るためにも、必要十分な山岳保険選びを!

安心して登山を思い切り楽しむために
撮影:washio daisuke(安心して登山を思い切り楽しむために)
もしも山岳遭難の当事者になってしまったら……そう想像することは決して楽しいことではないかも知れません。しかし自然の中では、いつ何が起こるか予測ができません。起こらないように対策することももちろん大切ですが、起きてしまった時の対策もしっかりと備えておきましょう。

今回の記事を参考にして、もしもの時にしっかりとした補償を受けられる、自分にあった山岳保険を選んでくださいね。

今回教えてくれた人

井関 純二さん
井関純二さん
提供:井関純二さん

2014年に、一般社団法人山岳寄付基金「やまきふ共済会」を設立。代表理事を務め、山岳地域における遭難対策費用等に対する保険制度の運営および寄付を通じて、安全登山の啓発を行い、登山・アウトドア業界の発展に貢献している。また、山岳ガイドや登山者向けの保険を扱った株式会社インスクエアコンサルティングの代表取締役も務め、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーの資格を持つ。

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washio daisuke

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。 登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。 得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。 山と人をつなぐ架け橋をめざしています。

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