日本で最も人を殺している!?登山中に特に注意すべき「2種類の有毒生物」とは

2020/10/23 更新

登山時に注意すべき生物はクマだけではありません。刺されたり咬まれたりすると命にも関わる有毒生物2種、それは身近な場所にも生息しているハチと毒ヘビです。いきなり遭遇して間違った対処をすることで、危険度はグンと増してしまいます。自分の身を守り楽しい登山で終われるために、ぜひ一緒に学びましょう。


アイキャッチ画像出典:PIXTA

登山中に出会う最も危険な有毒生物とは?

注意書き
出典:PIXTA
山に登る時、遭遇したくないといえば大抵の人がクマを思い浮かべるでしょう。しかしクマ以外にもぜひ注意して欲しい生物がいます。
それは山中で出会う「有毒生物」たち。
登山中、いきなりハチが目の前に現れ、ひやっとした経験はありませんか?そのハチこそ山で出会う最も危険な有毒生物の1種。そしてもう1種は見た目も怖い毒ヘビです。
今回はこの2種類の生物について、専門家の方に詳しく教えていただきます。

今回教えていただくのはこの方

ウミ先生
提供:西海太介
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
神奈川県横浜市生まれ。 『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。 現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。 監修書籍に『すごく危険な毒せいぶつ図鑑』(世界文化社)。 著書に、『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)など。

<死亡件数NO.1>山に生息するハチについて学ぼう!

オオスズメバチ
出典:PIXTA
都市や野山など様々な場所で見かけるハチですが、実は日本の有毒生物の中で最も死者数が多いのがハチ。毎年20人ほどの死者を出しています。
ただ、全てのハチが危険な訳でありません。人を刺す可能性が高いのは、家族で暮らす性質「真社会性」を持ったハチ。「スズメバチ」や「アシナガバチ」がそれにあたり、巣を刺激した時などは集団で襲ってくることもあります。

人を刺すハチの種類

毒針
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人を刺すのは「産卵管」を固く変化させ針にしたメスのみ。さらに日本では4500種のハチがいますが、刺す可能性があるのは50種ほど。
特に山中で注意が必要な種類がスズメバチとアシナガバチです。山登りの際、特に気をつけたい代表的なハチの種類と特徴を紹介します。

山で注意すべきハチ


①②/提供:西海太介、③④/出典:PIXTA
ハチの種類分 布大きさ特 徴
オオスズメバチ北海道から九州約26mm〜44mm日本のハチの中でも最大の種で、スズメバチの仲間としては世界最大の大きさ。
攻撃性が高く毒の量も多いので、最も危険なハチ。里山や山間部におり、木の根元などの土中や樹洞などの隠れた場所に巣を作る傾向。
クロスズメバチ北海道から九州約10mm〜15mm体長が小さくハエと同じくらいの大きさのため、ハチと認識されずに被害がでることもあります。
見た目は黒い体に白い縞模様で、攻撃性や毒性もそれほど強くはありませんが、集団で襲われると危険。
オオスズメバチと同様に土中や樹洞などに巣を作ります。
キイロスズメバチ北海道から九州約20mm〜26mm都市や住宅地のほか野山にも生息しており、その名前のように産毛で覆われた濃い黄色が特徴的。
体は小さめですが、攻撃性が高く神経質なハチ。
巣の近くを通っただけでも集団で攻撃を開始することがあります。
アシナガバチ日本全国約11mm〜26mm足を垂らして飛ぶ姿が特徴的なハチ。
アシナガバチといっても様々な種類がいますが、どれも比較的おとなしい性格のため、近づいただけで攻撃してくることは少なめです。
しかし、巣を刺激した場合などには攻撃もしてきます。

刺されないために知っておくべきこと

なぜハチは人を刺すのか?

なぜ?
出典:PIXTA
そもそもなぜハチは人を刺すのでしょうか。それは、巣や仲間を人間から守るためです。
実はハチが集団で人を襲うのは、巣が危険にさらされていると判断した時のみ。巣を刺激したり、知らず知らずでも木を触った振動などで巣を揺らしたりすると、ハチは攻撃を開始します。

また、スズメバチは攻撃前に大アゴを噛み合わせ「カチカチ」と音を立てて威嚇することもあります。立ち去れと警告する習性からも、本当はハチも攻撃したいわけではないようですね。

山中でハチに出会いやすい場所とは?

樹洞
出典:PIXTA
登山中に出会わないためにも、ハチがどこを利用するのかを知ることが大切。
オオスズメバチは、木の根元などの土中や木の洞などに巣を作ります。キイロスズメバチは、トイレやあずまやなどの軒下に巣を作るケースも。分かりにくい場所に巣を作ることも多く、土中にあるクロスズメバチの巣を刺激してしまう事故も多く発生しています。
木の枝や葉に巣を作るアシナガバチもいるので、出来るだけ茂みの奥には入らず、登山道や林道から外れないように歩くことも事故予防に繋がります。ハチの巣を見つけてしまったら、絶対に近寄らないようにし、ゆっくりと後ずさりするように離れましょう。

ハチに出会わないための対策

キイロスズメバチ
出典:PIXTA
まずは、ハチに出会わない対策をすることが大切。刺されないための予防策としてぜひ実践してください。

◆ ハチが攻撃モードになると黒を狙うため、黒っぽい色のウエアや帽子は出来るだけ避ける
◆ 黄色などの薄い色のウエアは、ハチの攻撃を受けづらい傾向があるので取り入れるのも対策
◆ ハチはとても匂いに敏感なので、匂いの強い整髪料や香水、お弁当などにも気をつける
◆ 登山道から外れないようにし、藪こぎなどを避ける

運悪くハチに遭遇したときの対応

命を守る
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不運にもハチに出会ってしまったら、オーバーアクションを避け、冷静に判断して刺されないための行動を取りましょう。私達の行動次第で、刺されないようにすることもできます。

◆ お弁当や汗の匂いにつられてハチが寄ってきたら、じっとして飛び去るのを待つか、ゆっくりとその場を離れる
◆ 巣を見つけた場合は絶対に刺激せず、巣の周りをウロウロしない
◆ ハチに遭遇しても絶対に刺激しないこと、驚いても急激な動きをしない
◆ 警戒飛行してきたら、姿勢を低くしてゆっくり後ずさりして離れる
◆ 万が一巣を刺激してしまった場合(毒液を浴びせられマーキングされた場合)は、全速力でその場から走って逃げる

刺された時の対処方法

ハチに刺された手
出典:PIXTA
最悪ハチに刺されてしまったら、すぐにその場から離れましょう。じっとしていると、更に集団で攻撃してくることもあります。
「毒のカクテル」と称されるほどの様々な有毒な成分で作られた毒は、私達の体に大きなダメージを与えます。

【応急処置の手順】
① 患部を流水でつまみながら、しぼり洗いをする
② 虫刺され薬(抗ヒスタミン軟膏)を塗る
③ 冷えた缶や水などで冷却する
④経過観察し、刺されたところ以外に影響(息苦しい、じんましんなど)が出るようであれば、すぐに病院へ
※「ポイズンリムーバー」を持っている場合は利用するのも手ですが、刺された直後でないと効果は薄くなります。1分、2分でも経過してしまった場合は、水洗いから入りましょう。

 

【アナフィラキシーショック】
アレルギー性の重篤な全身症状です。誰にでも起こることではありませんが、以前ハチに刺されたことがある人は出やすい傾向があります。めまいや呼吸困難、意識障害などの症状が起こり最悪命にも関わります。刺されたところ以外に症状が出る場合は、すぐに病院に行く必要があります。

<実は意外とナイーブ>毒をもつヘビについて学ぼう!

毒蛇
提供:西海太介
一般的なヘビは、山裾の谷間の明るい里山に住むことが多く、日光浴をするために出てくることがあります。見た目に反してヘビはかなり臆病な性格で、意外にもストレスに弱い生き物です。人を見かけると驚いて逃げていくことがほとんど。ヘビの毒には神経系に作用する「神経毒」と、タンパク質を溶かす「出血毒」があり、神経毒は相手を仕留め、出血毒は消化液のような働きをします。

ヘビが毒を使うとき

ヤマカガシの捕食
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ヘビにとって捕食以外で毒を使うのは、本望ではありません。毒は、狩りや食事に使うための大切なものであり、人間に対する防御のために毒を使うのは二次的なもの。基本的な性質はおとなしいものが多く、ヘビが自ら襲ってくることはほとんどありません。
身の危険を感じたときのみ攻撃を開始します。

毒のあるヘビの種類

ハブ
出典:PIXTA
日本に生息するヘビの仲間は約40種ほど。その中で北海道から九州に生息するのは8種のみで、その中の2種「マムシ」と「ヤマカガシ」が毒を持っています。奄美や沖縄には、有名な「ハブ」が生息。毒のないヘビに咬まれても毒の心配はありませんが、毒ヘビとなると話は違います。
では、日本の代表的な毒ヘビ3種の特徴をご紹介します。

日本三大毒ヘビ


出典:PIXTA
ヘビの種類分 布大きさ特 徴
マムシ北海道から 九州約 40cm〜65cm日本の毒ヘビの中で、死亡件数が最も多く、咬まれたら基本的には入院が必要。
夜行性で、エサはカエルを好み「銭形模様」が特徴的です。
一般的なヘビと違い、卵ではなく仔ヘビを産み落とし、暗闇でも体温を可視化して相手を捉えることが可能。
ヤマカガシ本州、四国、九州約 70cm〜120cmおとなしい性格で咬まれることは少ないですが、毒はマムシやハブに比べてかなり強烈。
毒牙以外に首の後ろの頸線にも防御用の毒を持っています。
東日本では赤と黒のマス目模様ですが、西日本では緑褐色、地域によって色や模様の変化があるので注意が必要。
ハブ南西諸島約100cm〜200cm大きいものでは2メートル以上にもなる大型のヘビ。
攻撃性が高く、毒性はマムシよりも弱いですが、1.5cmの長い毒牙で深く刺さり、毒量も多いので症状は重くなります。
基本的には夜行性で、昼間は草地や穴の中で休んでいます。
黄色地に黒のかすり模様が多いですが、白色地のものも生息。
マムシと同じように温度を可視化しています。

咬まれないために知っておくべきこと

山中でヘビに出会いやすい場所とは?

マムシに注意
出典:PIXTA
ヘビたちは里山の水辺近くをはじめ、草地や森林、湿地帯や川辺の岩間などを好みます。登山中に遭遇する可能性が高いのは、草むらや藪の中、雑木林の落ち葉の上など。
出来るだけ登山道から外れないように努め「マムシに注意」などの看板があるところでは、特に注意して歩きましょう。

毒ヘビに攻撃されないための対策

登山靴
出典:PIXTA
ヘビに近づくまで、いることに気がつかないケースがほとんどなので、草むらや茂みなどでは足元を良く見ながら進みなしょう。

◆ 急に咬まれた時のために、山に入る時はしっかりとした靴とゆったりした長ズボンを着用する
◆ 咬まれた時のために、スパッツなども有効
◆ 不用意に登山道以外の藪の中や草むらに踏み込まない
◆ 茂みなどのヘビがいそうな場所を通過する時は、心配であれば棒などで前を払いながら進むのも有効

毒ヘビに遭遇したときの対応

マムシ
出典:PIXTA
万が一ヘビに出会ってしまったら「近づかない」「ちょっかいを出さない」をモットーに、ゆっくり離れましょう。

◆ ヘビを見つけても、こちらからは近づかないようにする
◆ ちょっかいを出して咬まれるケースが多いので手を出さない
◆ ヘビの攻撃範囲は全長の半分〜2/3 程度なので、最低でもそれ以上の距離を確保
(北海道〜九州であれば、目安は1.5m)

咬まれた時の対処方法

救急
出典:PIXTA
毒ヘビに咬まれた時には、命の危険にさらされる場合もあります。応急処置も大切ですが、すみやかに病院に行って治療を受けることが大切です。早く治療を開始できた方が、症状が軽くてすむことが報告されています。

【応急処置の手順】
① 咬まれたら再度襲われないようヘビから離れる
② マムシかヤマカガシかなど、ヘビの種類を判断
③ 流水で患部をしぼり洗い(マムシなどでは大きく腫れるので指輪や腕時計を外す)
④ 一刻も早く、走ってでも良いので病院へ向う

安全で楽しい登山のために

トレッキング
出典:PIXTA
山には私たちが足を踏み入れる前から、様々な住人たちが生息しています。有毒生物たちもその一部。お互いに出会わないことが1番ですが、遭遇してケガを負う可能性はゼロではありません。万が一の時はどうすれば良いのか、まずそれを学ぶことが第一の備えです。
安心な登山のためにも出来るだけ知識を得て、いざと言うときには冷静に対処したいですね。

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emi

山や自然が大好きで、今までにたくさんの楽しみや感動をもらってます。山で見る満天の星空と朝焼は格別!大自然のパワーを多くの人に感じて欲しいです。読んだ人が、山に行きたくなるような記事を執筆できるよう頑張ります。

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