登山道整備の「6つの基本」を紹介!
ところで、これまで「登山道整備」と一言で言ってきましたが、具体的にどんなことをしているのでしょうか。
新しく道を作ることもありますが(「◯◯新道」と名付けられているのはこのケースです)、多くの場合はすでにある道の維持管理をしたり、転倒や滑落のリスクを減らしたり歩きやすくしたりするための改良をします。
具体的な作業内容には、定期的に登山道を見回って点検するようなちょっとしたことから、先の甲斐駒ヶ岳の写真のような大工事に至るまで、いろんな作業が含まれます。それらを見ていきましょう。
①障害となる岩や木をよける、ゴミを拾う
些細なことですが、登山道上に散らばっている木の枝や石を避けたりごみを拾ったりするのも立派な登山道整備です。山にそれほど慣れていない方にとっては(あるいは慣れている方でも重い荷物を担いでいたり疲れていたりすれば)ちょっとした障害物でもケガの元になります。
また、道に被さっている草や笹を刈ったり、登山道に倒れかかっている木やそのままだと倒れてきそうな木を取り除くのも大事な仕事です。
②道を平らにする、水を切る
土の登山道の場合、雨水が流れたり、獣に荒らされたり、落ち葉や土砂が積もったりして、道が狭くなったり傾いてしまうことがあります。これはどうしようもないことなので、定期的に道を平らに直して歩きやすくします。
また、雨水が登山道上をずっと流れてしまうと道がえぐられてしまうので、道を横切るように溝を切って雨水の逃げ道を作ります。ぬかるみになりやすい場所も、可能なら同様に水を逃がしてあげます。
③道標を設置する、マーキングをつける
どちらも登山者が道迷いしないようにするために重要な作業です。
マーキングは岩場では写真のように◯✗で表示されることが多いですが、その他、樹林帯では蛍光テープを木に巻いたり、雪渓上ではベンガラをまいてわかりやすくします。
視界の善し悪しや雪のあるなし、樹林帯の場合には木々の葉の茂り具合など、さまざまな条件によって目印などの見え方は変わりますので、どんな状況でも見えやすいように、いろんな状況を想像しながら目印をつけていきます。
④木道を設置する
湿原やぬかるみなどでは、植生の保護や歩きやすさの向上のため、木道を設置します。ちょっとしたぬかるみの場合には輪切りにした丸太を並べたり、縦に半分に割った丸太を置いたりすることもあります。
⑤階段やかけ橋を設置する
滑りやすい場所や急な場所など、足場があると歩きやすくなる場所には木や岩で階段を作ります。足場に乏しいトラバース部分には木や足場板を渡してかけ橋を作り歩きやすくします。
⑥鎖やロープ、ハシゴを設置する
もっと急な場所や岩場などでは、手がかりになる鎖やロープやハシゴを設置したり、岩をハンマーとたがねで彫って足場も作ります。こうしたものがあるおかげで、本来であれば岩登りの技術が必要な領域が一般の登山者にも開かれています。