アイキャッチ・記事中画像提供:チキンハート
“できない”を“できる”に変える、ランニングチーム「チキンハート」
ランニングチーム「チキンハート」を立ち上げた中尾さん(中央)と藤川さん(右)|アカタマ砂漠レース[チリ、2018年]
今回お話を伺ったのは、渋谷区を拠点にするランニングチーム「チキンハート」代表の藤川英樹さん。
ランニングを始めたきっかけは、誰にでも思い当たる「ダイエット目的」。共同でチームを立ち上げた中尾真也さんと英樹さんは「10kmも走れなかった」状態からスタートしたのだそう。そんな彼らが目指したのはいきなりの100マイル(約160km)!
英樹さん
ランニングを続けるうちに「100マイル走りたいね」ってなって。代々木公園のクロスカントリーコース(1周:約3km)を50周以上走れば100マイルになるなって(笑)。
代々木公園で100マイルを走り切り、ついには砂漠のレース出場まで果たすように。「ダイエットから始めたなにもできないヤツらでも、大きいレースを走ることができる」と実感。その想いを込めて、チーム名は「チキンハート(=臆病、弱虫)」になったそうです。
完走できなくてもOK!?ゆるさとアツさがある「本気」のチーム

英樹さん
真面目にやりたいから「クラブ」じゃなくて「チーム」にしました。
チームのコンセプトは「強く、かっこよく」。ランで求めるものは速さだけではなくそれぞれ違うので、「速い」という言葉は使っていないんです。
チームに入るには「テスト」があるものの、完走できなかったとしても、しっかりと力を出し切っていれば入部できるのだそう。月に何度かグループランをオープン開催してメンバーを増やしてきました。
現在は約35名ほどが在籍。100マイルレース完走を目標としてはいますが、それぞれの意思を尊重して活動しています。
走る場を“自分たちでつくった”H3という挑戦

撮影:Taukmi Ishiyama
そんなチキンハートが主催するのが、セルフチャレンジイベント「H3」。
英樹さん
2020年のコロナ禍でULTRA-TRAIL Mt.FUJI(ウルトラトレイル・マウントフジ。富士山周辺を100マイル走る大会)が中止になったんですよね。
「せっかく準備してきたんだから、何かしたいな」って。走る場を自分たちで作ろう、と始まりました。
ウルトラトレイル・マウントフジと同じ日に、自分たちの手で、自分たちのコースで挑戦する──。それがH3の原点になりました。
箱根外輪3周=100マイル!過酷すぎるレースは現在も進化中
撮影:Taukmi Ishiyama
H3の舞台に選ばれたのは、よく練習していたというアップダウンの激しい箱根外輪山。
英樹さん
1周約50kmを3周、累積標高は10,000mに達するハードなコースなんです。
これを完走するのはみんなにとってすごく大きな自信になるなって。みんなでサポートしてクリアする、というのをやりたくて。
コンビニや自販機を頼りに、コインロッカーの鍵を持ったまま走るという、完全に手作りのスタート。そこから少しずつ、地元とのつながりが生まれはじめます。金時山にある金太郎茶屋さんが夜通しで営業してくれるなど、応援やサポートを通じて地域との信頼関係が深まっていきました。
チャレンジすると人生が変わる。「やってよかった」と思える瞬間
撮影:Taukmi Ishiyama
そして何より、H3を主催すること自体が英樹さんの大きなモチベーションになっているといいます。
英樹さん
参加者がチャレンジしてる姿、悔しがってる顔、輝いてる瞬間を見ると、本当にやってよかったって思うんです。
ランニングは1つの趣味ではあるものの、単に走力や体力を鍛えるだけのものではありません。
レースに挑戦することで得られる自信や達成感は、家庭や仕事、そして人生そのものにもポジティブな影響を与えてくれる──。そんな“目に見えない変化”を、H3は参加者にもたらしているのです。