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里山歩きの足元には「食べられる野草」がこんなにも!

歩きながら摘んでくれば、下山して家に帰ってからのお楽しみも倍増、万が一のビバークの時にも役に立つこと間違いなし。この機会に覚えてみませんか。
野草が見つかるのはこんな場所です

たとえば同じシダの仲間でも、日当たりのいい原っぱにはワラビ、ちょっと湿った山の中ならばゼンマイ、沢筋ならばコゴミ、といった感じです。
野草って勝手に採ってもいいの?
草が生えている場所は国や自治体や会社や団体か個人かは不明ですが、いずれにしても「誰かの土地」です。ワラビやタラノキ、ウドなどは栽培している場合もありますし、その土地の所有者が商売として山菜を採っているところもあり、それを知らずに採ると怒られます。近くに誰かいれば、声をかけて、とってもいいか聞いてみるのが無難です。
採っていいと言われた場合も、株を丸ごと鎌で刈り取ってしまうと絶えてしまうようなものもありますので、節度を守って採りましょう。
また、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園では、植物は特別に保護されていますので、その中での採取は特に御法度です。このような「原則」はありますが、国立公園等以外での場所で、一般的に「雑草」と思われている野草はたいがい問題ありません。
野草は栽培された野菜とは異なり、管理がされていません。農薬や除草剤がかかっていそうなところでの採取は避けた方が良いでしょう。また基準値以上の放射能が山菜から検出されている地域もあるので、そういったことも頭に入れておきましょう。

野草を食べるのって大変? 下処理と料理について

下処理の方法
1)ごみを取る下処理の際に土や枯れ葉などを丁寧に取り除きます。細かなごみは洗って取るのも手間がかかるので、採取する場所で除いておくのがベターです。
2)皮を剥く
茎を食べたいけど皮が固いという植物の場合には、ゆでたりあく抜きした後で皮を剥いてから料理します。

そのまま生で食べられるものもありますが、山菜には基本的に「あく」があります。あくを抜かないと、えぐみのためにおいしく食べられないですし、ものによっては身体によくないこともあります。
あく抜きの方法にはあくの強さによって、水にさらす、茹でる、炒める、揚げるなどを使い分けます。たとえば、コゴミ(クサソテツ)は茹でるだけで食べられますが、ワラビはあくが強いので灰や重曹とともに茹でるか、熱湯につけてあくを抜きます。
手間がかかるあく抜きですが、揚げてしまえば簡単に抜けます。よく山菜を天ぷらにするのはそのためです。

【見つけやすさレベル別】「食べられる」野草図鑑

おなじみの「ほぼ雑草」:初級★☆☆☆
都市部でも簡単に見つかる発見難易度の高い野草。ほぼ雑草と読んでもいい部類ですが、意外と食べられます。タンポポ(蒲公英)

【時期】春、セイヨウタンポポは通年
【採れる場所】日当たりのよい場所
【あく抜き】若葉や花を塩茹でして水にさらす。
【調理方法】おひたし、きんぴら、酢の物、天ぷら、炒め物 など
【その他の利用方法】煎じて胃腸薬や解熱剤とする、葉や根を煎ってお茶にする。
アサツキ(浅葱)、ノビル(野蒜)
【時期】春
【採れる場所】湿り気のある場所、日当たりのよい場所
【あく抜き】生食可
【調理方法】薬味、炒め物、汁の実など何でも。ネギと同じように。ノビルの鱗茎は味噌をつけてかじる。
【その他の利用方法】鱗茎を潰して汁をかゆみ止めに。
【見分けるポイント】ワケギと同じで、茎は中空ですっと生えています。特に間違えそうな植物はありませんが、これも匂いをかげば間違えません。
ヨモギ(蓬)
【時期】春~夏
【採れる場所】日当たりの良い場所
【あく抜き】新芽を茹でる
【調理方法】天ぷら、汁の実、炒め物、混ぜご飯、草餅 など
【その他の利用方法】干してお風呂、ヨモギ蒸しに。煎じて腹痛や解熱に。生の葉の汁を傷薬や虫刺されに。葉の羽毛をお灸に。葉を水中眼鏡にこすりつけてくもり止めに。
【見分けるポイント】揉むと独特の香りがします。
ツクシ(土筆)、スギナ(杉菜)

【時期】春
【採れる場所】日当たりの良い場所
【あく抜き】ツクシ→袴を取ればそのまま使える、スギナ→塩茹でして水にさらす。
【調理方法】ツクシ→混ぜご飯、卵とじ、佃煮、天ぷら、きんぴら など/スギナ→お好み焼きなどの具に
【その他の利用方法】スギナは天日干しして煎じ、利尿剤として。
フキ(蕗)
【時期】春~夏
【採れる場所】湿り気のある場所
【あく抜き】茹でて水にさらす。
【調理方法】茎→きゃらぶき、煮物、漬け物 など/葉→天ぷら、炒め物 など
里山&郊外なら見つかる:中級★★☆☆
都市部というよりは、郊外の空き地や畦道、里山あたりで見つかる野草です。ハイキングついでにぜひ。ワラビ(蕨)

【時期】春~初夏
【採れる場所】日当たりのいい場所
【あく抜き】木灰か重曹をまぶして熱湯をかけ一晩おく、または木灰か重曹と一緒に茹でる。あるいは揚げる。
【調理方法】おひたし、天ぷら
【その他の利用方法】根を掘り出してデンプンを精製してワラビ粉に。
ゼンマイ(薇)
【時期】春~初夏
【採れる場所】湿った場所
【あく抜き】葉を取り除いてから木灰か重曹をまぶして熱湯をかけ一晩おく、または木灰か重曹と一緒に茹でる。
【調理方法】あく抜きしたものを揉みながら干して乾燥させたものを水で戻して煮物、漬け物、炒め物などにする。
【見分けるポイント】手でたやすく取れる羽毛状の毛が生えている。
ミツバ(三葉)
【時期】春~初夏
【採れる場所】日陰の湿っぽい場所
【あく抜き】軽く湯通し
【調理方法】市販のミツバと同様
【見分けるポイント】キツネノボタンと間違えることがあります。両脇の葉2枚が茎に密着していること、茎を揉むと特有の香りがすることを一本一本確認してください。
サンショウ(山椒)
【時期】春~秋
【採れる場所】湿った場所
【あく抜き】生食も可
【調理方法】葉→薬味、佃煮、和え物 など/実→薬味
【その他の利用方法】葉っぱを醤油に漬け、山椒風味の醤油として調味料に。
山間部に生育する「ほぼ山菜」:上級★★★★
気候などもあり、採れるエリアは山間部が多いカテゴリーです。都会では「ほぼ山菜」扱いされるものもありますが、山間部の里では普通に採れる「やや雑草」に属するものも。フキノトウ(蕗の薹)

【時期】春
【採れる場所】湿り気のある場所
【あく抜き】火を通せばよい。
【調理方法】ふき味噌、炒め物、汁の実、天ぷら、佃煮 など
【その他の利用方法】天日干しして煎じて咳止めや胃薬に。
コゴミ(クサソテツ)(草蘇鉄)
【時期】春
【採れる場所】沢沿いや湿地など
【あく抜き】軽くゆがく。
【調理方法】おひたし、ごま和え、汁の実、炒め物、天ぷら など。
【見分けるポイント】シダの仲間は茎に毛や鱗片がついているものがほとんどですが、コゴミにはほとんどついていません。
ウド(独活)
【時期】春~初夏
【採れる場所】湿っぽい場所
【あく抜き】新芽→軽く火を通す/茎→塩や酢で茹でる/花・実→揚げる
【調理方法】おひたし、ごま和え、汁の実、炒め物、天ぷら など。
アザミ(薊)
【時期】春~初夏
【採れる場所】種類による
【あく抜き】若芽→塩茹でして水にさらす。あくの強い種類は長くさらす。棘は湯がくと気にならない。/茎→塩茹でして皮を剥く。/根→よく洗う。
【調理方法】若芽→天ぷら、おひたし、和え物 など/茎→おひたし、漬け物、和え物、佃煮 など/根→きんぴら、漬け物
ユキノシタ(雪の下)
【時期】通年
【採れる場所】湿った場所
【あく抜き】塩茹で
【調理方法】天ぷら、汁の実 など。
【見分けるポイント】葉っぱの模様が特徴的です。葉っぱや茎に毛が生えていますが、熱を通すと気にならなくなります。
カタクリ(片栗)
【時期】春
【採れる場所】林の中
【あく抜き】花や葉を軽く湯通しする
【調理方法】おひたし、汁の実、天ぷら など
イラクサ(深山刺草)
【時期】春~初夏
【採れる場所】湿った場所
【あく抜き】塩茹で
【調理方法】茎を塩茹でして皮を剥き、おひたし、一夜漬け、煮物などに。
ウワバミソウ(蟒蛇草)
【時期】春~夏
【採れる場所】湿った場所
【あく抜き】塩茹で
【調理方法】茎を茹でて皮を剥き、おひたし、一夜漬け、煮物などに。
【その他の利用方法】茎をつぶした汁を傷や虫刺されに。
毒草かしれないので要注意!:★★★★
それほど発見難易度が高いものではありませんが、毒草との誤食で中毒患者が出やすい野草です。自信がないときは食用しないでおきましょう。カンゾウ(萱草)

【時期】若葉→春、つぼみ→夏
【採れる場所】日当たりのよい場所
【あく抜き】軽く茹でる
【調理方法】おひたし、汁の実、和え物、酢の物 など
【その他の利用方法】根を天日干しして煎じ利尿、止血、消炎薬とする。つぼみを茹でてから乾燥させ利尿、消化薬にする。
【見分けるポイント】球根の仲間と間違えないように。カンゾウは葉に艶はなく、丸く折れ曲がっています。球根の植物のように高くは伸びません。
ニラ(韮)
【時期】春~夏
【採れる場所】日当たりのよいところ
【あく抜き】軽く茹でる、炒める。
【調理方法】市販のものと同様に。レバニラ、ニラ玉、かき玉汁 など
【見分けるポイント】市販のものをイメージして探すと水仙など球根の植物と間違えがちです。慣れないうちは必ず匂いをかいでください。ニラであれば特有の匂いがするので間違いません。
セリ(芹)
【時期】春~初夏
【採れる場所】水辺や湿地
【あく抜き】生食可
【調理方法】おひたし、汁の実、混ぜご飯 など
【見分けるポイント】同じような場所にドクゼリも生えるのでよく誤食されますが、これも匂いで区別できます。セリには特有の香りがありますが、ドクゼリにはありません。また、セリの根っこはひげ根ですが、ドクゼリには筍状の地下茎があります。慣れないうちは一本一本確認しながら摘むのが無難です。
ニリンソウ(二輪草)
【時期】春
【採れる場所】湿っぽい場所
【あく抜き】塩茹で
【調理方法】汁の実、おひたし、天ぷら、卵とじ など
【見分けるポイント】生え始めは猛毒のトリカブトとよく似ていて、葉だけでは慣れないと見分けるのは難しいですが、トリカブトは春には花はつけないので、花や蕾が出ている株を採るようにすれば間違わずに食べることができます。ちなみに、トリカブトの花はその名の通り鶏の頭の形をした青色の花で、夏の終わりころに咲きます。
ギボウシ(擬宝珠)(ウルイ)
【時期】春~初夏
【採れる場所】水辺や湿地
【あく抜き】軽くゆがく
【調理方法】おひたし、天ぷら、汁の実 など。
【見分けるポイント】新芽を毒のあるバイケイソウやコバイケイソウと間違えやすいですが、地面から芽が出たばかりのものは避け、茎が伸び始めてからのものを採るようにすれば間違えません。バイケイソウやコバイケイソウは一本の茎が立ち上がって伸びていきますが、ギボウシの仲間は根元から茎が束になって生えます。
普段通りの調理でOK!野草料理いろいろ
いちばん簡単なのは揚げ物で、強いあくもこれで抜けます。晴れた日に天ぷらをつまみにビールを飲むのは最高です。オーソドックスな方法としてはこのほかに、おひたし、和え物、酢の物、汁物、煮物、一夜漬け、混ぜご飯(菜飯)などがあります。揚げるのと同様に、炒めることであくも抜けますので、中華もいいですね。ペペロンチーノ風にしたりジェノベーゼ風にしたり、洋風の料理も合います。







似た植物にはくれぐれも気をつけて!

たとえば、上はニラ(食用可)、下はスイセン(毒草)。器の大きさの都合で根元は切り取っています。 葉っぱの見た目だけで区別しようとすると、主脈の有無や色の違いなどで見分けるしかなく、見慣れないと難しいです。慣れないうちは絶対に匂いをかいで区別してください。水仙などと良く誤食されて毎年中毒者が出ますが、匂いをかげば一発で分かります。
ギボウシ(ウルイ)はコバイケイソウやバイケイソウとよく間違われますが、葉の生え方が違うので見分けられます。ニリンソウはトリカブトと良く誤食されますが、花がついていれば絶対に間違えません。
最初はよく知っている人に案内してもらうのがいちばんですが、身近にいない場合は、図鑑とよく見比べて特徴を五感でよく確認しましょう。
図鑑はこのように、絶対に間違えない見分けるポイントが書かれているものを選びましょう。それでも確信が持てないときには絶対に食べないでください。
あの野草もこの薬草も全部おいしく食べられる! 食べられる野草で作るおいしいレシピをご紹介します。【主な予定内容】●野草や薬草を使ったナチュラルレシピを公開●たんぽぽのピザやヒルガオの甘いタルトまでご紹介●和食に限らず、洋食やデザートも満載! ●安全に食べるためのコツと解説付き
四季を感じ、生きる喜びを感じる野草食

ぜひ普段の山歩きの視点を変えて、身近な自然で食べる楽しさを満喫してみてはいかがでしょうか。
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