霞沢岳(かすみさわだけ)ってどんな山?

標高 | 山頂所在地 | 山系 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
---|---|---|---|---|
2,646m | 長野県松本市 | 飛騨山脈(北アルプス) | 15℃ | 5.4℃ |
穂高連峰を望む北アルプスの穴場!
歴史的偉人も越えた古の街道「徳本峠」
松本市、野麦街道沿いの集落・島々(しましま)から、徳本峠(とくごうとうげ)を経由し上高地を結ぶルートは「徳本峠越え」といわれるクラシックルート。昭和8年に窯トンネルが竣工するまで上高地への主要アクセスであり、近代登山を日本に伝承したウォルター・ウェストンや芥川龍之介など、数々の偉人も越えた峠です。
霞沢岳への登山は、そんな徳本峠を通るコース。昔から変わらない穂高の姿を見ながら、歴史に思いを馳せることができるでしょう。
高山植物の宝庫

玄人が好む静かな山歩き

上高地周辺には多くの登山者が憧れる槍・穂高岳や焼岳、蝶ヶ岳など人気の山が集中。そのため、霞沢岳は魅力的にも関わらずあまり目立たず、知る人ぞ知る山なのです。登山者も多くないので、水と緑に恵まれた美しい自然の風景の中、上高地や飛騨山脈の雄大な景色を楽しみつつ、玄人好みの静かな山行を楽しめますよ。
霞沢岳は日帰り可能? 難易度とおすすめ時期
上高地もしくは島々から徳本峠を経由して山頂を目指す霞沢岳は、基本的に中~上級者向けの山です。その難易度やコースタイム、おすすめの登山時期について詳しくみていきましょう。
霞沢岳は日帰りで登れる?
上高地⇔霞沢岳は標準コースタイムで13時間35分、距離22.2㎞と長いため、通常は1泊2日の計画となります。上高地からのピストンで日帰り山行をしている登山者もいますが、まだ薄暗い早朝に上高地を出発し、標準コースタイムよりもかなり速く歩く必要があります。前述の通りタフなコースなので、体力・技術共に備えた上級者以外の日帰りはおすすめできませんが、自信のある人は日照時間の長い時期を狙うのがよいでしょう。
滑落事故も発生しているので油断大敵!
事故が起きたルートには、徳本峠小屋の方が迂回路を設定してくださっていますので、迂回路を通りましょう。また、霞沢岳には崖のようになっている箇所もありますのでご注意ください。
霞沢岳の登山適期
新緑が美しい6月から始まり、色とりどり高山植物が咲き乱れる7月~9月中旬、9月中旬~10月中旬の紅葉の時期までが登山適期。
5月はまだ残雪があるので、出かける前には徳本峠小屋HPや登山の記録を共有できるコミュニティサイト「ヤマレコ」などで直近の山行記録を確認して、凍結や積雪状況をしっかりと把握しておきましょう。
徳本峠からのアプローチは雪崩の危険性が高いので、冬期は西尾根または南尾根からの登山になりますが、いずれも難易度の高いバリエーションルートです。
ハードな山行の先にある達成感!上高地からのピストンコース
メインルートとなる上高地からのピストンコースをご紹介。距離が長く、アップダウンの多いハードな山行ですが、その分達成感もひとしおです。
最高点の標高: 2619 m
最低点の標高: 1511 m
累積標高(上り): 2109 m
累積標高(下り): -1006 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:13時間35分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
【1日目】上高地~徳本峠(3時間20分)
上高地バスターミナル(60分)→明神分岐(140分)→徳本峠
河童橋のある上高地から梓川沿いの遊歩道を進みます。標識のある明神登山口(白沢出合・徳本峠入口)まで来たら、分岐を徳本峠方面に行きましょう。
徳本峠入口からしばらくは林道歩き。心地よい木陰で、前半は歩きやすい平坦な道です。
林道をしばらく進むと途中から山道に。次第に傾斜も出てきますが、徳本峠まではまだまだ歩きやすい道が続きます。
山道が始まると、途中で橋を渡るところが2か所、小さな沢を渡るところが2か所あります。
黒沢のガレ地を過ぎると傾斜がきつくなります。つづら折りの登山道を登っていくと最終水場があり、徳本峠までは残り1kmほどです。
最終水場から山腹を巻くように登っていくと徳本峠に到着。1日目は徳本峠小屋(テント場あり)に宿泊しましょう。
【2日目】徳本峠~霞沢岳~上高地(10時間15分)
徳本峠(65分)→ジャンクションピーク(150分)→K1ピーク(35分)→霞沢岳(30分)→K1ピーク(140分)→ジャンクションピーク(45分)→徳本峠(90分)→明神分岐(60分)→上高地バスターミナル
2日目は、徳本峠から勾配のきつい樹林帯の中をジャンクションピークへ向けて登って行きます。ちょうど中間くらいに”スタジオジャンクション”と書かれた朽ちた道標があります。
ジャンクションピークに出ると、南側の展望が開けます。運が良ければ、美しい雲海が望めることも。
ジャンクションピークから一旦下り、樹林帯を通ってK1を目指します。途中開けたポイントで乗鞍岳や御嶽山を眺めることができます。
小さなアップダウンを繰り返して、いくつかのピークとガレた斜面を越えてK1へ向かいます。K1手前はロープや階段で整備されていますが、急登や岩場のトラバースもあるので慎重に。
笠ヶ岳や上から見下ろす上高地の景色を楽しみながらK1で一息。ここから、視界の開けた稜線を下って登り返すかたちでK2を目指します。
K2までくれば稜線の先に霞沢岳山頂、振り返れば雄大な穂高連峰が。小さなアップダウンを繰り返して山頂へ向かいます。
山頂に近づくと間近にそびえる焼岳とそれに連なる飛騨山脈の稜線が見渡すことができます。
360°開けた大眺望を楽しめる山頂に到着。乗鞍岳などの飛騨山脈の山々と目前に迫り来るような雄大な穂高連峰を堪能しましょう。
下山は往路を戻ります。K1から霞沢岳にかけて一部片側が切れ落ちているところがあるので、上り下り共に注意しながら進みましょう。
憧れのクラシックルートを歩く! 島々谷コース
歴史的偉人も通ったクラシックルートと霞沢岳を堪能できるコースをご紹介します。
最高点の標高: 2619 m
最低点の標高: 723 m
累積標高(上り): 5015 m
累積標高(下り): -4223 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 1泊2日
- コースタイム:18時間5分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
【1日目】島々~徳本峠小屋(7時間50分)
島々(110分)→二俣(180分)→岩魚留小屋(180分)→徳本峠
島々の登山口から徳本峠を経て、上高地の明神までおよそ20kmの道のりです。徳本峠まで標高差1,400m程をゆるやかに登っていきます。
二俣までは平坦な林道歩き。心地よい渓流のせせらぎを聞きながら、のんびりと歩きましょう。
二俣にトイレとベンチあるので、ここで一旦休憩。トイレは汲み取り式で電気はありません。二俣からは山道になります。
二俣から岩魚留小屋までは渓流沿いの道を進みます。歩きやすい道ですが、何回か渡渉するところがあるので滑らないように注意。
途中で、木道・木橋が何回か出てきます。濡れているところや、苔むしている箇所は滑りやすいので足元に気を付けて進みましょう。
しばらく進むと、二俣と徳本峠の中間くらいの位置に岩魚留小屋があります。休業中で、もう何年も営業しておらずトイレ含め利用できませんが、テントは5張ほど設営可能です。
岩魚留小屋から徳本峠へは、次第に傾斜がきつくなります。何回か橋を渡りますが、渡渉する箇所もあるので増水時は特に気をつけて。途中にハシゴもあります。
”ちから水”と標識のある水場までくれば、徳本峠まであと一息。最後の水場なので必要あれば補給しておきましょう。
徳本峠まで、つづら折りの急登を登ります。疲労が溜まっていると少々キツく感じるかもしれません。
徳本峠に到着。1日目はここにある徳本峠小屋(テント場あり)に宿泊します。
【2日目】徳本峠~霞沢岳~上高地(10時間15分)
徳本峠(65分)→ジャンクションピーク(150分)→K1ピーク(35分)→霞沢岳(30分)→K1ピーク(140分)→ジャンクションピーク(45分)→徳本峠(90分)→明神分岐(60分)→上高地バスターミナル
2日目は徳本峠から霞沢岳へアタックし、再び徳本峠を経由して上高地へと向かいます。ルートの詳細は「上高地からのピストンコース」の2日目を参照してください。
【山小屋情報】近代登山の歴史が薫る徳本峠小屋
徳本峠小屋は、国の登録有形文化財。近代登山発展や山小屋建築の歴史を伝えるものとして貴重な場所です。大正時代からある本館は大切に保存され、現在でも休憩所・歴史資料館として利用されています。
住所:長野県松本市安曇4468
電話番号:090-2767-2545
営業期間:4月下旬~10月下旬
料金:9,500円(一泊二食)、6,500円(素泊まり)800円(テント場)
収容人数:24名
テント設営数:10張
木のぬくもりを感じる内観
2010年に新築された新館は、木の匂いのする温もりのある空間です。1階はきれいな食堂、2階が宿泊施設になっています。
テント場や展望台もあり!
テント場は10張ほどですが、地面も平坦で十分なスペースがあります。近くにある展望台から眺める景色もたまりません。どんな風景かお楽しみに。
おみやげもチェック!
徳本峠を訪れた記念に、徳本峠小屋オリジナルの「峠の小屋Tシャツ」や「峠の小屋手ぬぐい」をゲット。
登山のお土産といえば外せないのが記念バッジ。霞沢岳のバッジは徳本峠小屋でしか手に入らない限定品です。
登山口へのアクセス・駐車場情報
メインルートとなる『上高地』とクラシックルートの登山口となる『島々』、それぞれのアクセス情報をご紹介します。
【上高地】登山口へのアクセス
登山口である上高地は自然保護のため、マイカーでの乗り入れが規制されています。直通バスまたは、沢渡駐車場、平湯駐車場でシャトルバスに乗り換えて上高地までアクセスしましょう。上高地までのアクセスは、以下の記事を参照ください。
【島々】登山口へのアクセス
■車の場合
<松本市役所安曇支所の駐車場>
※土日祝日のみ登山者に開放されている
松本ICから約22km、約35分
<島々登山口の駐車場>
安曇支所前の信号を西に入り、安曇駐在所の先を徳本峠入口方面へ。防獣ゲートを過ぎて2つ目のゲート(一般車通行止めゲート)の手前に10台ほどの駐車場あり。
■電車・バスの場合
アルピコ交通上高地線の新島々駅から上高地行きのバスで約5分。安曇支所バス停下車。
[JR松本駅⇒アルピコ交通新島々駅]
(電車) アルピコ交通(松本電鉄)で約30分
(バス) 松本バスターミナルから、アルピコ交通上高地線または濃飛バス特急松本線で約30分
アルピコ交通(松本~新島々~上高地)時刻表
濃飛バス(特急松本線)時刻表
霞沢岳の天気を調べよう!
霞沢岳に行く前に現地の天気をこちらでCHECK!
霞沢岳の登山地図もチェック!
近代登山発展が始まった地で”登山の初心”に立ち返る
霞沢岳は玄人好みの魅力に溢れた山ですが、国内外から多くの人が訪れる上高地、北アルプスにおいては目立たない存在かもしれません。しかし、近代登山発展の歴史を感じる徳本峠への道と、登り応えのあるタフなコースは、山頂の絶景とともに登山の素晴らしさを改めて教えてくれることでしょう。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。
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