【独占取材】謎多き“山の鉄人”!? 歩荷(ぼっか)さんのヒミツに迫る

皆さんは「歩荷(ぼっか)さん」って知ってますか? 登山しているときに、段ボール箱など山積みの荷物を担いで歩いている人に出会ったことがありませんか? そう、その人が「歩荷さん」です。実は、「歩荷さん」は山小屋の運営、ひいては私たち登山者にとってなくてはならない仕事なんです。そこで今回は、尾瀬で活躍する若手の「歩荷さん」に密着取材を敢行。普段、なかなか知ることのできない仕事やプライベートについて、根掘り葉掘り聞いちゃいました。


アイキャッチ画像撮影:栗栖 潤

歩荷さん、って知っていますか?

尾瀬の木道を歩く歩荷さん 山で、写真のような“歩荷(ぼっか)さん“を見かけたことはありますか? 「あの人が背負ってる荷物はなんだろ?」「何してるんだろ?」と不思議に思った方もいるかと思います。今回は、そんな謎多き「不思議」なお仕事のことをインタビューも交えて、ばっちり解明しちゃいます!

山の鉄人! 驚くべき歩荷の仕事

歩荷さん
出典:PIXTA
歩荷さんの仕事を簡単にまとめると、食料や燃料など山小屋で必要となる物資を、麓にある問屋さんなどから山小屋まで背負って運ぶこと、です。山小屋では、物資をヘリコプターか歩荷さんに荷上げしてもらうのですが、ヘリは天候によって飛べないことも多々あります。そんなときでも頼りになるのが歩荷さんなんです。

木道に座る歩荷さん まさに、山小屋や山小屋を利用する登山者にとって、歩荷さんはなくてはならない「命綱」のような存在なんですが、それだけではなく、その「運ぶ」量もすごいんです。

例えば尾瀬の歩荷さんの場合、1度に運ぶ荷物が、少ないときで40~50kg、多いときでは120kgほどにもなるんです。それを背中に担いで山道を歩いて運ぶなんて、まさに「山の鉄人」ですよね。しかも、1日に2往復することもあるとは、本当に驚きです。

実際に歩荷さんに話を聞いてみた!

天田さん
撮影:栗栖 潤
今回取材させていただいたのは、尾瀬で歩荷を始めて4年目になる天田雄也さんです。天田さんの1日のお仕事に密着させていただき、身長168cm、体重63kgと、どちらかと言うと小柄なのにとんでもないパワーを発揮する、その秘密を探りました。

―――こんにちは。今日はよろしくお願いします! 私はもちろんですが、読んでいる皆さんも歩荷さんの仕事に興味津々だと思いますので、本当に楽しみです。

できる限り協力しますので、こちらこそよろしくお願いします(笑)

―――いきなりなんですが、普段はどんなことをしているんですか?

もちろん、歩荷ですよ!(笑) ただ、歩荷の仕事は山小屋が営業している春から秋(4月中旬~11月上旬)までで、冬は尾瀬の近くにある片品のスキー場で降雪などの仕事をしています。自宅も片品に移住したので、両方の職場ともいわゆる「地元」ですね。

歩荷中の天田さん ―――なんで歩荷さんになろうと思ったんですか?

実は、大学在学中に普通に就活もしていて、卒業前に一般企業から内定もいただいてたんですよ。でも、尾瀬の歩荷さんに空きが出た、と聞いて、内定を蹴ってこっちに来ちゃいました(笑)

―――なかなか思い切った決断ですね!(笑) やっぱりもともと山が好きだったんですか?

そうですね。最初は兄に連れられて、群馬の100名山を中心に登り始めました。それからは、お金を貯めて日本アルプスに遠征したりとか…、もちろん尾瀬にも来てましたよ。その頃から「自然と関われる仕事がしたいな~」とは思ってましたね。

あなたもなれる!? 歩荷さん

歩荷中の天田さん
撮影:栗栖 潤(この日背負っていた荷物は、なんと72kg!)
―――どうやったら歩荷さんになれるんですか?

よその歩荷さんのことは分かりませんが、尾瀬の場合、定員に空きがあって、他の歩荷さんに「こいつならやれそう」と認めてもらえればOKです。僕の場合は、兄が尾瀬の山荘で働いてたことがある関係で、たまたま空きが出たことを教えてもらいました。

―――認められなければなれない…いくつかの条件が重ならないとなれないんですね。 あと、歩荷さんになるのに必要なものって、何ですかね?

必要なものですか~? う~ん、ある程度の体力くらいですかね~(笑) もちろん、山や自然が好きじゃないと、続かないと思いますけど。

カレーを食べる天田さん ―――普段鍛えていることや、気を付けていることはありますか?

特にハードなトレーニングとかはしてませんし、僕たちはいきなり重い荷を背負うわけでもないんです。シーズンの始め(残雪期)は20kgくらいの重さからスタートし、徐々に重さを増やして身体を慣らしていくんです。いきなり100kgとかを背負うと、身体を壊しちゃいますから。もちろん、それぞれの体力やその日の体調に合わせて、重さを調整したりもしますよ。

小屋につく前の天田さん また、毎日の仕事なので、何kgを背負っても同じペースでしっかり歩けるように、無理せず身体をつくっていくように心がけています。もちろん、休みの日にはマッサージに行ったりとか、多少は身体のケアもしてますけどね。

背負子はオーダーメイド!?

背負子 ―――荷物を背負うときに使っている、木製の背負子(しょいこ)みたいなのは何ですか? お店では売ってないですよね(笑)?

背負い梯子(しょいばいこ)と言って、できるだけ軽くてしなやかな木を選んでから、体格に合わせて地元の大工さんに作ってもらってます。肩当てなんかは運んでるときにできるだけ疲れないよう、それぞれの好みに合わせて自分たちで手作りするんですよ。

私たち登山者にとってかけがえのない存在、歩荷さん

小屋前の天田さん
撮影:栗栖 潤
―――この仕事をやってて良かったと思うことはなんですか?

一番は、日々変わってゆく尾瀬の自然を体感できることですね。やっぱり癒されるし、楽しいですよ。あとは、仕事中、小屋に着いて「ありがとう!」って感謝されると、それまでの疲れが吹っ飛んじゃいます。それと、僕たちの仕事はだいたい朝6時半くらいから午後3時くらいまでなので、その後にまだ小さい子供と遊んだり、家庭菜園したり自分の時間がとれるのも気に入っています。

インタビューをうける天田さん
撮影:栗栖 潤
―――逆に、つらいな~、と思うことはありますか?

風の強い日とか雨が降って滑りやすい日に、コケたときですね(笑)

―――えっ、あの荷物を背負ったままコケるんですか?!

はい、たま~にコケます(笑) 今までケガはしたことないですが、当然荷物はバラバラになりますよね。その荷物を元通りに梱包しなおすときは、本当につらいです。そんなときに写真を撮られると余計につらいので、皆さん止めて下さいね(笑)

小屋前の天田さん
撮影:栗栖 潤(この荷物がバラバラに…想像するとたしかに辛い)
―――歩荷さんの立場から、登山者へ伝えたいことは?

最近、日帰りの方が増えていますが、特に尾瀬は朝と夕方の景色が良いので、余裕を持って泊りがけでゆっくり楽しんでほしいですね。あと、やっぱり僕たちの仕事は珍しいのか、先ほども言ったようにスマホとかで仕事中の写真を撮られることも多いんです。ただ、撮るときはできればひと声かけてほしいですね(笑) 特に休憩してるときとか。

尾瀬の歩荷さん ―――最後にひとことメッセージをお願いします!

昔の尾瀬は、捨てられたゴミがすごく多かったらしいです。でも、全国に先駆けて「ゴミの持ち帰り」とかを始めたこともあって、最近では捨てられるゴミも少なく、皆さんのマナーもすごくいいですよね。僕たちは皆さんが山で快適に過ごせるように、飲み物や食料を頑張って運びますので、皆さんは飲んだり食べたりしたゴミを捨てずに、持ち帰るか山小屋に引き取ってもらって下さいね。せっかくの美しい自然を一緒に守っていきましょう!

―――今日は1日本当にありがとうございました!

歩荷さんへの感謝を忘れずに

木道の登山者と歩荷さん
出典:PIXTA
今まで、歩荷さんを見かけると、「あの荷物は何kgくらいなんだろ?」とか「どうやったらあんな荷物を運べるんだろ?」なんて不思議なことだらけだったのが、今回の取材でかなりすっきりしました。想像はしていましたが、やっぱり自然を愛する優しい山の鉄人さんでした。皆さんも山で歩荷さんに出会ったら、「お疲れさまです!」と挨拶してみて下さいね。

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尾瀬の歩荷さん
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sato(Nomad Marketing Lab.)
sato(Nomad Marketing Lab.)

興味のあるエリアに長期滞在し、そのエリアのエンタメ・ビジネス等、様々な情報を発信する登山とスキューバダイビング、カヤックが趣味の放浪ライター&マーケター(笑) 今年の春~秋にかけては、尾瀬を中心に北関東のアウトドア情報の取材・ライティングをメインに活動中。

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