歩荷さん、って知っていますか?

山の鉄人! 驚くべき歩荷の仕事


例えば尾瀬の歩荷さんの場合、1度に運ぶ荷物が、少ないときで40~50kg、多いときでは120kgほどにもなるんです。それを背中に担いで山道を歩いて運ぶなんて、まさに「山の鉄人」ですよね。しかも、1日に2往復することもあるとは、本当に驚きです。
実際に歩荷さんに話を聞いてみた!

―――こんにちは。今日はよろしくお願いします! 私はもちろんですが、読んでいる皆さんも歩荷さんの仕事に興味津々だと思いますので、本当に楽しみです。
できる限り協力しますので、こちらこそよろしくお願いします(笑)
―――いきなりなんですが、普段はどんなことをしているんですか?
もちろん、歩荷ですよ!(笑) ただ、歩荷の仕事は山小屋が営業している春から秋(4月中旬~11月上旬)までで、冬は尾瀬の近くにある片品のスキー場で降雪などの仕事をしています。自宅も片品に移住したので、両方の職場ともいわゆる「地元」ですね。

実は、大学在学中に普通に就活もしていて、卒業前に一般企業から内定もいただいてたんですよ。でも、尾瀬の歩荷さんに空きが出た、と聞いて、内定を蹴ってこっちに来ちゃいました(笑)
―――なかなか思い切った決断ですね!(笑) やっぱりもともと山が好きだったんですか?
そうですね。最初は兄に連れられて、群馬の100名山を中心に登り始めました。それからは、お金を貯めて日本アルプスに遠征したりとか…、もちろん尾瀬にも来てましたよ。その頃から「自然と関われる仕事がしたいな~」とは思ってましたね。
あなたもなれる!? 歩荷さん

よその歩荷さんのことは分かりませんが、尾瀬の場合、定員に空きがあって、他の歩荷さんに「こいつならやれそう」と認めてもらえればOKです。僕の場合は、兄が尾瀬の山荘で働いてたことがある関係で、たまたま空きが出たことを教えてもらいました。
―――認められなければなれない…いくつかの条件が重ならないとなれないんですね。 あと、歩荷さんになるのに必要なものって、何ですかね?
必要なものですか~? う~ん、ある程度の体力くらいですかね~(笑) もちろん、山や自然が好きじゃないと、続かないと思いますけど。

特にハードなトレーニングとかはしてませんし、僕たちはいきなり重い荷を背負うわけでもないんです。シーズンの始め(残雪期)は20kgくらいの重さからスタートし、徐々に重さを増やして身体を慣らしていくんです。いきなり100kgとかを背負うと、身体を壊しちゃいますから。もちろん、それぞれの体力やその日の体調に合わせて、重さを調整したりもしますよ。

背負子はオーダーメイド!?

背負い梯子(しょいばいこ)と言って、できるだけ軽くてしなやかな木を選んでから、体格に合わせて地元の大工さんに作ってもらってます。肩当てなんかは運んでるときにできるだけ疲れないよう、それぞれの好みに合わせて自分たちで手作りするんですよ。
私たち登山者にとってかけがえのない存在、歩荷さん

一番は、日々変わってゆく尾瀬の自然を体感できることですね。やっぱり癒されるし、楽しいですよ。あとは、仕事中、小屋に着いて「ありがとう!」って感謝されると、それまでの疲れが吹っ飛んじゃいます。それと、僕たちの仕事はだいたい朝6時半くらいから午後3時くらいまでなので、その後にまだ小さい子供と遊んだり、家庭菜園したり自分の時間がとれるのも気に入っています。

風の強い日とか雨が降って滑りやすい日に、コケたときですね(笑)
―――えっ、あの荷物を背負ったままコケるんですか?!
はい、たま~にコケます(笑) 今までケガはしたことないですが、当然荷物はバラバラになりますよね。その荷物を元通りに梱包しなおすときは、本当につらいです。そんなときに写真を撮られると余計につらいので、皆さん止めて下さいね(笑)

最近、日帰りの方が増えていますが、特に尾瀬は朝と夕方の景色が良いので、余裕を持って泊りがけでゆっくり楽しんでほしいですね。あと、やっぱり僕たちの仕事は珍しいのか、先ほども言ったようにスマホとかで仕事中の写真を撮られることも多いんです。ただ、撮るときはできればひと声かけてほしいですね(笑) 特に休憩してるときとか。

昔の尾瀬は、捨てられたゴミがすごく多かったらしいです。でも、全国に先駆けて「ゴミの持ち帰り」とかを始めたこともあって、最近では捨てられるゴミも少なく、皆さんのマナーもすごくいいですよね。僕たちは皆さんが山で快適に過ごせるように、飲み物や食料を頑張って運びますので、皆さんは飲んだり食べたりしたゴミを捨てずに、持ち帰るか山小屋に引き取ってもらって下さいね。せっかくの美しい自然を一緒に守っていきましょう!
―――今日は1日本当にありがとうございました!
歩荷さんへの感謝を忘れずに

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