知られざる名峰の宝庫!山形県
国内でも有数の登山エリアとして人気が高い山形県。日本百名山は6座あり、県内の最高峰でもある「鳥海山」や、山岳信仰で名高い「月山」などが有名です。その他にも様々な山が存在し、登山初級者から中級者以上まで幅広く楽しむことができる点も人気が高い理由の一つ。登山客は紅葉シーズンにピークを迎え、多くのハイカーが赤や黄色に染まる山々に魅了されています。
やまがた百名山のグレーディングを参考にしよう!
グレーディングとは、県内の登山ルートを体力面と技術・能力面で評価したレベル表のこと。登山者が自らの力量に合った登山ルートを選ぶことで、事故や怪我などを未然に防ぐ目的で作成されました。この記事では、体力度1〜7、難易度A〜Cの山と登山ルートを紹介しています。山行計画の参考にしてください。
体力度の目安(数字が大きくなるほど体力が必要)
1~3:日帰りが可能
4~5:1泊以上が適当
6~7:1~2泊以上が適当
技術度
A:登山の装備が必要
B:登山経験が必要・地図読み能力があることが望ましい
C:地図読み能力、ハシゴ・くさり場などを通過できる身体能力が必要
やまがた百名山のグレーディングを見る
紹介する山
1.月山
2.蔵王山※
3.西吾妻山※
4.鳥海山※
5.大朝日岳
6.飯豊山
7.神室山
8.以東岳
9.摩耶山
隣接する県との県境に位置する山がほとんどですが、今回は山形県側からの登山コースをご紹介します。
※印のついている山は噴火予報が発令されています。登る前に現在の状況を必ず確認しましょう。
気象庁のHPを見る
ロープウェイ・リフトで登れる日本百名山(月山、蔵王山、西吾妻山)
次に紹介する3座はロープウェイ・リフトで山頂付近までアプローチできるため、登山初心者でも手軽に楽しむことができます。山頂までの登山ルートの歩行時間も短いものが多く、日帰り登山におすすめです。
月山(がっさん)
山形県の中央に位置する「月山」は、湯殿山、羽黒山と共に出羽三山に数えられ、古くから修験道の山として崇められてきました。山頂付近には月山神社があり、今なお信仰をあつめています。標高は1984m。天気が良い日には山頂から、鳥海山や朝日連峰など抜群の眺望を楽しむことができます。
【おすすめ登山コース】
紹介するのは月山リフトを利用してダイレクトに山頂を目指すコース。登山道はしっかり整備されており、初級者でも安全に登ることができます。牛首下分岐から先が上り坂になり、山頂までの標高差は約400m。岩が多くなるため、足元に注意しながら歩きましょう。夏は高山植物、秋は紅葉が出迎えてくれます。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
4.3km | 約3時間10分 | 3 | A |
リフト上駅→牛首下分岐→月山山頂
【登山口】
姥沢口
【アクセス】
車の場合:山形自動車道 月山IC-国道112号-県道114号-姥沢
姥沢駐車場
約500台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JR山形駅-山交バス 山形駅前①乗り場から乗車-西川バス停で西川町営バスに乗り換え-姥沢バス停にて下車
バスの時刻表はこちら
【リンク】
月山朝日観光協会 ぶらり西川ガイドを見る
蔵王山(ざおうさん)
蔵王山は山形県と宮城県の県境に位置する「地蔵岳」「熊野岳」の総称で、実は「蔵王山」という山は存在しません。最高峰は1841mの熊野岳。山頂には熊野神社が建立されています。蔵王を代表する景色が御釜と呼ばれる火山の火口湖。エメラルドグリーンの神秘的な湖をひと目見ようと、毎年多くの登山客が訪れます。
【おすすめ登山コース】
蔵王ロープウェイ山頂線を利用して、熊野岳を目指します。熊野岳の山頂からは御釜を眺めることができ、まさに蔵王の魅力を味わうことができるおすすめの登山コースです。標高差はわずか174m。ゆるい登山道をのんびり歩きながら、コマクサなどの高山植物を観賞できるのも魅力の一つです。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
1.7km | 約1時間 | 2 | B |
地蔵山口→地蔵山→蔵王山(熊野岳)山頂
【登山口】
地蔵山口
【アクセス】
車の場合:山形自動車道 山形蔵王IC-国道286号-県道167号-県道53号-県道21号-県道14号-県道53号-蔵王ロープウェイ駐車場
蔵王ロープウェイ駐車場
約150台駐車可能・無料(夏期)
電車・バスの場合:JR山形駅-山交バス 蔵王温泉・苅田山頂行き乗車-蔵王ロープウェイ前にて下車
バスの時刻表はこちら
【リンク】
蔵王ロープウェイ HPを見る
西吾妻山(にしあづまさん)
山形県の南部に位置し、福島県との県境にある西吾妻山。標高は2035mで、吾妻連峰の最高峰です。山頂付近には高層湿原が数多く点在し、夏になるとキンコウカやワタスゲなどの湿性植物を楽しむことができます。山麓には白布温泉や新高湯温泉があり、下山後に湯船に浸かり汗を流すのもおすすめです。
【おすすめ登山コース】
天元台ロープウェイを出発し、天元台高原駅で下車。天元台高原スキー場のリフトに乗り継ぎ、3つのリフトを利用すると吾妻連峰の一つ、中大巓の麓にある北望台までいっきに高度を稼ぐことができます。高層湿原を巡りながら傾斜のゆるい登山道を進むと見えてくるのが西吾妻山。帰りは北西の尾根に伸びる登山道を利用して下山します。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
8.2km | 約5時間 | 2 | B |
リフト頂上→西吾妻山→若女平口
【登山口】
天元台口
【アクセス】
車の場合:東北中央自動車道 米沢八幡原IC-国道13号-天元台高原
天元台高原駐車場
約800台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JR山形駅-山交バス 白布天元台行き乗車-湯本駅前にて下車
バスの時刻表はこちら
【リンク】
天元台高原 HPを見る
しっかり歩きたい人におすすめの日本百名山(鳥海山、大朝日岳、飯豊山)
登山口から山頂をめざしてしっかり歩きたい健脚者におすすめするのが、鳥海山、大朝日岳、飯豊山。いずれの山頂も山深く、その頂に立てば雄大な自然を全身で感じることができます。
鳥海山(ちょうかいさん)
標高2236mの鳥海山は、山形県の最高峰。県の北部に位置し、秋田県との県境に鎮座しています。富士山に似た美しい山容が特徴で、「出羽富士」や「秋田富士」の名称がつくほど。鳥海山は高山植物の宝庫としても知られており、200種類を越える貴重な植物が多くの登山客を出迎えます。
【おすすめ登山コース】
数ある登頂ルートの中でも人気が高いのが湯ノ台口からの登山コース。山頂までの短い距離の間では、多種類の高山植物を観賞することができ、万年雪の残雪が描く「心」の文字が美しい「心字雪渓」などを楽しみながら山頂を目指すことができます。夏でも雪面をトラバースする箇所があるため、軽アイゼンは必須。最後は外輪山を巡り山頂を目指します。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
10.6km | 約4時間40分 | 3 | C |
湯ノ台口→薊坂→鳥海山
【登山口】
湯ノ台口
【アクセス】
車の場合:東北自動車道 酒田みなとIC-県道59号-県道366号-県道368号-湯ノ台口
湯ノ台口駐車場
約45台駐車可能・無料
(鳥海高原ライン車道終点からおよそ500mほど手前の車道のそばにも約75台分の駐車場あり)
電車・バスの場合:JR酒田駅-庄内交通バス酒田観音寺線に乗車-八幡総合支所前にて酒田市福祉乗合バスに乗り換え-家族旅行村鳥海山荘にて下車
バスの時刻表はこちらから
【リンク】
国定公園 日本百名山 鳥海山登山ガイド HPを見る
大朝日岳(おおあさひだけ)
山形県と新潟県の県境に位置するのが日本百名山の一つでもある大朝日岳。朝日連峰の主峰として人気がある山ですが、その道のりは険しく、途中に営業している山小屋がないため、全ての食料と宿泊装備を背負って歩く体力が求められます。しかし、その山深さから手付かずの自然が残されており、登山者を待ち受ける雄大な景色が最大の魅力なのです。
【おすすめ登山コース】
朝日鉱泉を出発して大日朝日岳を目指すルートの中で、鳥原山と小朝日岳を経由して山頂を目指すのが今回紹介するコース。鳥原小屋か大朝日小屋で一泊する必要があるロングルートです。いずれも管理人がいない避難小屋なので、2日分の食料と宿泊装備を用意すること。十分経験を積んで、体力に自信がついてから挑戦しましょう。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
18.5km | 約13時間 | 5 | B |
朝日鉱泉→鳥原山→少朝日岳→大朝日岳→中ツル尾根→朝日鉱泉
【登山口】
朝日鉱泉
【アクセス】
車の場合:山形自動車道 月山IC-県道27号-県道289号-朝日鉱泉ナチュラリストの家
朝日鉱泉登山口駐車場
約10台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JR左沢駅にてバスまたはタクシーに乗車
※夏季登山バス(期間中毎日運行)・秋季連休登山バス(完全予約制)の運行があります。
登山バスについてはこちらをご確認ください
【リンク】
朝日鉱泉ナチュラリストの家 HPを見る
飯豊山(いいでさん)
日本百名山の一つでもある飯豊山は、山形県、福島県、新潟県の県境に位置します。標高は2105m。飯豊連峰の最高峰は大日岳(2128m)ですが、その風格から飯豊連峰の盟主として知られています。その歴史は古く、開山されたのは江戸時代。山頂まで道のりは長く険しいことでも有名ですが、高山植物のお花畑や残雪の風景を求めて、毎年多くの登山者が憧れの頂を目指します。
【おすすめ登山コース】
大日杉登山小屋からまずは地蔵岳を目指します。地蔵岳の山頂では飯豊山を眺めることができるでしょう。ここから種蒔山方面へ進むと現れるのが切合小屋。この小屋を過ぎるとお目当ての高山植物に出会えます。残雪の景色も楽しみながら草鞋塚や姥権現を越えると飯豊山神社に到着。山頂はすぐそこです。登山コースの距離が長いため、1泊か2泊で計画を立てるのがいいでしょう。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
21.3km | 約16時間40分 | 7 | C |
大日杉口→地蔵岳→飯豊山
【登山口】
大日杉口
【アクセス】
車の場合:東北中央自動車道 米沢北IC-県道239号-県道4号-県道8号-県道378号-大日杉小屋
大日杉小屋駐車場
約20台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JR羽前椿駅よりタクシーに乗車
【リンク】
飯豊町観光協会 HPを見る
二百名山・三百名山にも素晴らしい山がたくさん(神室山、以東岳、摩耶山)
日本百名山の他にも山形県には魅力的な山が数多く存在します。今回紹介する二百名山の神室山、以東岳、三百名山の摩耶山は、歴史や伝説、豊かな自然環境などが残された隠れた名峰。人知れず静かな登山を楽しむことができるでしょう。
神室山(かむろさん)
日本二百名山の一つで、山形県の北部、秋田県との境に位置しているのが神室連峰の主峰、神室山です。標高は1365m。山頂から南へ続く約25kmの尾根が特徴的で、その山容から「みちのくのアルプス」とも呼ばれています。イヌワシやクマタカなどの猛禽類が生息する豊かな自然が魅力の一つで、静かな登山を楽しむことができるでしょう。
【おすすめ登山コース】
登山道の出発点、有屋口から歩き始め、しばらくは沢沿いを進みます。複数回の渡渉ポイントを越えると沢が左右に分かれる二股のポイントに到着。ここまでは森の中を歩くコースで、静かなハイキングを楽しむことができるでしょう。二股を過ぎると徐々に視界が開きはじめ、見えてくるのが神室山。主稜線に出てからやせ尾根をしばらく進むと山頂に到着です。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
11.2km | 約6時間 | 4 | B |
有屋口→二股→神室山
【登山口】
有屋口
【アクセス】
車の場合:東北中央自動車道 東根IC-国道13号-県道73号-有屋口
有屋口駐車場
約20台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JR新庄駅よりタクシーに乗車
【リンク】
最上エコポリス オフィシャルサイト HPを見る
以東岳(いとうだけ)
山形県と新潟県の境にある以東岳は、朝日連峰の北(西)端に位置する山でもあり、朝日連峰縦走の起点・終点にもなっています。登山客に人気なのがタキタロウ伝説で有名な大鳥池や、高山植物のお花畑。その他にも、のんびり登山を楽しむことができるなだらかな地形や、月山や鳥海山などの眺望がある点も以東岳の魅力です。登山可能期間は6月〜10月中旬になります。
【おすすめ登山コース】
泡滝ダムを出発し赤川沿いに進みます。しばらく歩くと現れる坂道を登りきると、そこが有名な大鳥池。風がない日には水面が鏡のようになり、山脈が写り込んだ素晴らしい景色に出会うことができるでしょう。大鳥池をあとにして急坂を登りきると樹林帯が終わり、主稜線をたどると山頂に到着します。帰りはオツボ峰、三角峰を経由して下山。1〜2泊で計画を立てるのがおすすめです。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
21.7km | 約11時間30分 | 6 | B |
泡滝口→大鳥小屋→直登コース→以東岳→オツボ峰→泡滝口
【アクセス】
車の場合:山形自動車道 庄内あさひIC-県道349号-泡滝ダム
泡滝ダム駐車場
約20台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JR鶴岡駅-庄内交通バス 大鳥方面行きに乗車-登山口バス停にてタクシーに乗車/JR鶴岡駅よりタクシーに乗車
バスの時刻表はこちら
【リンク】
山形県鶴岡市観光連盟 HPを見る
摩耶山(まやさん)
新潟県との県境近くにあり、日本海側に位置する摩耶山。1019mと標高は高くないものの、峻険な山として知られています。かつては金峰修験の霊場として、摩耶権現として多くの参拝客で賑わった時代もあるそうですが、現在は当時の姿を潜め、山頂から西面にはブナの原生林が広がり、静かな登山を楽しむことができます。
【おすすめ登山コース】
沢沿いの登山道を出発し、出てくるのが弁天の滝。清流が流れ落ちる見事な景観に見とれながら、滝の左手にかけられた梯子を慎重に登ります。ここから先は急登になりますが、稜線に出ると視界が開け、天気が良ければ月山や朝日連峰の眺望が疲れを忘れさせてくれるでしょう。下山路も急坂でロープがついている箇所もあります。十分注意しましょう。
距離(往復) | コースタイム(往復) | 体力度 | 難易度 |
---|---|---|---|
5.4km | 約4時間30分 | 2 | C |
越沢登山口→中尾根コース→摩耶山→追分→越沢登山口
【登山口】
越沢登山口
【アクセス】
車の場合:山形自動車道 鶴岡IC-県道338号-国道345号-越沢登山口
越沢登山口駐車場
約20台駐車可能・無料
電車・バスの場合:JRあつみ温泉駅-庄内交通バス 関川方面行き乗車-越沢バス停にて下車
【リンク】
あつみ観光協会 HPを見る
山形県は自然と歴史がつまった名峰の宝箱!
山形県には今回紹介した以外にも数多くの山が存在しています。そのいずれにも豊かな自然が広がり、かけがえのない美しさで登山客を魅了し続けているのです。また山岳信仰に由来する歴史が色濃く残っているのも山形県にある山々の魅力。古より刻まれた人々との繋がりを感じながら、長大な時の流れと雄大な自然の中で登山を楽しみましょう。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。