そのまましまってない? 冬用登山ギアの「ケアと保管」まるわかり辞典

「冬山もそろそろ終わりかな…」春が過ぎ、夏へ向かう山々において、冬の間頑張ってくれた登山ギアの役目はおしまい。来年に向けて保管をしようとしている方、そのお手入れと保管方法、ホントに合ってますか? 来シーズンも冬山を楽しむために、冬用ギアのケア方法を、山道具のスペシャリストに伺ってきました!

アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

ちょっと待って! 冬の登山道具をしまう前に

権現岳山頂の登山者
出典:PIXTA
GWあたりを境に、山はどんどん新緑から夏の山へ姿を変えていきます。1年中山を楽しむ人は、そろそろ冬山ギアをしまう準備に入るのでは? でも、実はわかっているようでよくわかっていない、ギアのメンテ…。長期保管になるわけですから、しっかりとお手入れして来シーズンを迎えたいですよね。

そこで今回は山道具のスペシャリスト、石井山専 新宿東口ビックロ店のスタッフに冬用ギアのケアについてお話を伺ってきました。

アイゼンとピッケルのケアと保管、教えて!

ICI石井山専ビックロの植田さん
撮影:YAMA HACK編集部(教えてくれたのはスタッフ植田さん)
編集部(以下:編):今日はよろしくお願いします。早速なんですが、アイゼンって夏も標高の高い山では必要な場面がありますが、冬だけ使用してしまっちゃう方もいると思うんです。しまう前に、どんなケアをしてあげればいいんですか?

植田さん:長期保管でも、シーズン中でも基本的にお手入れは変わりません。汚れを落として、しっかり乾かす!これに尽きます。

編:汚れを落とすのって、バシャバシャ水で洗っていいんですか?

植田さん:いいですよ。ただし、その後の乾燥が大事。売り場のアイゼンを見てもらうと分かるかと思いますが、新品の状態だと塗装してあるので色がついています。

アイゼンの先端
撮影:YAMA HACK編集部(新品アイゼンの爪は塗装で写真のように黒い)
植田さん:この黒い先端部分です。使っていくうちにこれが剥がれてくるんですけど、そうすると目に見えない細かな傷がついてくるんです。凸凹がある状態になるというか。

編:は~。思い切り岩や氷に突き刺すわけだから、そりゃあ傷もつきますよね…。

植田さん:はい。この傷に水が溜まって、サビに繋がるんです。理想は1回使って帰ってきたら、その日のうちに水でザッと洗って汚れを落とし、拭いて、とにかくしっかり乾かす。これが超基本です!

裏ワザ!サビ止めを駆使せよ

アイゼン
撮影:YAMA HACK編集部(写真のように、こうしている間にもきっと細かい傷に水が…)
編:とにかくしっかり乾燥させろ!ということですね。

植田さん:そう。拭かないと、水が残ることによって赤茶けてサビてしまうんです。そこで裏ワザなんですが、サビ止めを塗ってあげるのがおすすめです。

サビどめ
撮影:YAMA HACK編集部(スキー・スノーボードのエッジに塗るサビ止めでOK)
編:え、アイゼンってサビ止め塗ってもいいんですか? というか、アイゼンにサビ止めを塗るという発想がなかった…! やったことないです。

植田さん:これ、結構大事ですよ。意外と知らない方も多いと思いますが、ホームセンターで売っているCRCというサビ止めとか、スキーのエッジに塗るサビ止めを塗ってあげるといいです。ただし鉄の部分にだけ!汚れを落として、しっかり乾燥させてから仕上げに塗ってあげてください。

爪は丸まる!来シーズンに備えて研ぐべし

アイゼンをつけるところ
撮影:YAMA HACK編集部
植田さん:あと、長期保管をする前なら研いでおくのもアリですね。

編:研ぐ…? と言いますと?

植田さん:やっぱり石の上歩いちゃうと、目に見えるくらい爪が丸まっちゃうんですよ。そんな時は、「研ぐ」というケアも頭の片隅に入れておいてください。慣れないと時間がかかるけど、長期保管の前にそういうメンテナンスをやっちゃうのがいいと思います。

エッジのやすり
撮影:YAMA HACK編集部(スキーのエッジシャープナー)
植田さん:たとえば、これはスキーのエッジを研ぐものなんですが、こういったものでOKです。研ぎ方としては、面の狭いところだけを研ぐようにしてください。面の広いところを研いじゃうと、単純に爪が薄くなっちゃいますので…。

編:これ、どれくらいの頻度で研ぐのがいいんでしょうか? もちろん行く居場所や頻度にもよるんでしょうけど…。1年に1度冬山で使う、というくらいなら頻繁に研がなくてもいい?

植田さん:そうですね。あとは靴のソールと同じで歩き方や脚力にもよるんですよ。たしかに研げば研ぐほど減るんですが、ちょっとくらい丸まってきても、踏ん張れる脚力のある人は大丈夫かもしれない。逆に「研がないと効かなくて危ない、不安だ」という方はこまめに刃の様子を確認したほうがいいですね。

ピッケル
撮影:YAMA HACK編集部
植田さん:ピッケルも、基本的なお手入れはアイゼンと同じです。スノーシューなども同じですね。ピッケルは石突のほうを良く使うと思うんですが、ただ、アイゼンに比べて丸まるってことが少ないかと思います。

編:ピッケルにもサビ止めって使っていいんですか?

植田さん:はい、大丈夫ですよ。保管をする場合は、紫外線は道具を傷める原因になるので、家の中の風通しの良いところで保管してください。乾かす時も陰干しをおすすめします!

ポイント!
①アイゼンはジャバジャバ水で洗って汚れを落とす
②拭いて、その後直射日光の当たらない場所でしっかり乾かす
③仕上げに鉄の部分にのみサビ止めを
④必要であれば、丸まっている箇所は研いで風通しの良い場所に保管!
※ピッケルやスノーシューも基本的に同じお手入れです。


冬用の登山靴もしまっちゃいたい!

ICI石井山専ビックロの荒井さん
撮影:YAMA HACK編集部(教えてくれたのはスタッフ荒井さん)
編:靴のケアって、冬用のものだと何か特別なケアはあったりするんですか?

荒井さん:そうですね…汚れがついている状況が靴にとってはよくないので、まずはしっかり汚れを落としてあげることが大事です。その点で言うと、こういったケアは冬に限らず通年行ってあげるべきお手入れと言えますね。

ただ、冬の特徴といえばアイゼンをつけて雪の上を歩くシーンが多いかと思うので、夏ほど泥だらけになったり、そこまで汚くなるようなことは少ないかもしれません。

靴のケアはブラシ→水→洗剤の3段階

靴のすきま
撮影:YAMA HACK編集部(こういうすき間にも汚れやほこりが!)
荒井さん:じゃあ実際に帰ってきて行うお手入れなんですが、まずできたら紐を全部抜いて頂いて、…これ、ちょっと面倒くさいんですけど。

編:確かに…。帰ってきたら、すぐ寝たいですよね…。

荒井さん:はい。(笑)ただ、このタンの部分やすき間にも汚れが蓄積しているので、まずは紐を抜いて濡れた部分、泥が付いた部分を乾かしてあげてください。

豚毛ブラシ
撮影:YAMA HACK編集部
荒井さん:乾いたら、こういった靴用ブラシで磨いてあげてください。毛が柔らかすぎるものだとあんまり汚れが落ちないので、豚毛のものがおすすめです。

先ほども言ったように、冬靴ってそこまで汚れないので、軽くブラシでこするだけでもだいぶ汚れは落ちてくれます。ただ、これが春先などのぐちゃぐちゃな登山道を歩いてくると…

編:そう! 泥って本当に取れないですよね。取ったと思っても、また白~く浮いてきて…

荒井さん:はい。どうしても革素材とかは染み込んじゃうんですよね。ブラシで落としきれない汚れは、少し水を付けてブラシでこすってあげてください。それでも乾かして残ってる場合は、例えばグランジャーズなんかを使いましょう。

グランジャーズのギアクリーナー
撮影:YAMA HACK編集部(グランジャーズのギアクリーナー)
荒井さん:これ、ウェアや靴など全部に使える洗剤なんですが、汚れてる箇所にかけて、いらない歯ブラシとか毛先の柔らかいもので磨いてあげてください。少し時間が経つと、汚れが浮き上がってきます。それを拭いてから、サーッと水で洗い流してください。染み込んだ汚れ以外は大体落ちますよ。

▼グランジャーズって?詳しく見る

ソールは金属ブラシでOK!

金属ブラシ
出典:PIXTA
荒井さん:アッパーの部分は傷つけないように豚毛ブラシをおすすめしますが、逆にソールの隙間に詰まった泥なんかは金属ブラシでダーッと落としちゃって大丈夫です。

編:え! 金属ブラシ、使っていいんですね!

荒井さん:はい。ソールはゴムなので丈夫ですし、固めの金属ブラシで一気に汚れを落としちゃうと楽ちんです。

靴は箱に入れない

ソールを立てて靴を保管
撮影:YAMA HACK編集部
編:保管はどういう形で行えばいいでしょうか?

荒井さん:靴の中って汗をかくので、そのままだとにおいがしてきちゃうんですよね。やはり乾かすことと、除菌スプレーのようなものをかけてあげて、保管時はソールを外して立てて保管するのがいいですよ。あ、その前に、靴の表面に撥水スプレーをするのを忘れずに! この撥水スプレーは、長期保管前のみではなくできれば毎回やってあげるのが理想です。

編:その靴って、家の玄関とか下駄箱がいいんですか? 綺麗にしたら買った時に入っていた靴の箱に入れて、クローゼットにしまっちゃいたいんですが…。

荒井さん:靴の箱に入れるのはNGです! 箱って、湿度が高くて靴にはよくないんですよ。できれば風通しのいい場所や、下駄箱なんかで保管してあげてください。

ポイント!
①靴紐は全部抜く
②豚毛のブラシで汚れを落とす、頑固な汚れには水をつけてこする
③それでもダメなら洗剤を使う。乾いたら撥水スプレーを
④ソールは立てて、靴箱に入れずに下駄箱や玄関で補完!

しっかりケアして、また来年の冬に会おうね!

冬山のザックとピッケル
出典:PIXTA
ギアのメンテナンス、さらには保管の仕方って、わかっているようでよくわかっていないことが意外と多いですよね。冬用のギアは、もしかしたら1年のうちで出番が少ない方が多いのではないでしょうか? それでも、冬の厳しい山で命を守ってくれるギアであることには間違いありません。しっかりケアをして正しく保管すれば、来シーズンもきっと素晴らしい山行の相棒になってくれます。その時のためにも、今回ご紹介した方法をぜひ参考にしてみてくださいね!

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冬用ギア
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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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