これから始めるあなたは必見!バックカントリーの”リスクと対処”を知ろう

バックカントリーを行う上で、避けて通れない「リスク」。雪山という大自然を相手にするアクティビティだからこそ、おいそれと始めるわけにはいきません。だからこそ、これからバックカントリーを始めてみたい!という方必見。押さえておきたいポイントを白馬周辺で活動しているガイド・竹尾雄宇氏にお伺いしました。


アイキャッチ画像出典:PIXTA

バックカントリーをする際の注意点

バックカントリーでツリーランをする人
提供:番亭
バックカントリーとは、手つかずの大自然、つまりゲレンデ外を滑ること。その魅力や必要な技量・できる場所について、白馬を中心に活動されている番亭の竹尾ガイドにお話しを伺いました。

しかし、バックカントリーを楽しんでいた人が事故に遭ったという痛ましいニュースを度々耳にします。1つの大きなリスクとして「雪崩が発生する」という点は想像できるのですが、具体的にどんなリスクを伴うのでしょうか。今回は、バックカントリーをする際に必ず知っておくべき「リスク」について、引き続き竹尾ガイドに詳しくお話を伺っていきます。

バックカントリーにおいて、主なリスクとはいったいなんでしょうか?

スキー板を履いた人
出典:PIXTA

雪崩・遭難・怪我
大きく分類してこの3つが大きなリスクです。

それらはどういったことが原因で発生するのでしょうか?

冬山トレース
提供:番亭

【雪崩】
雪崩事故のほとんどが人為的判断ミスで発生しています。雪が不安定な時に安易に斜面に進入、下部に人がいる時に滑走、ハイクアップの時に雪崩地形に入るなどが主な原因になります。

 

【遭難】
安易に山奥に入ったり、他の人のトレース(足跡や滑走した跡)をなんとなく追ってしまい途中で天候が悪化して現在地をロストしてしまいます。

 

【怪我】
バックカントリーでは滑走中の雪質の変化は珍しくありません。 雪質の変化に対応出来なくて木や雪のブロックに衝突なんて事もあります。雪崩に巻き込まれると岩や木に衝突して怪我をする可能性もあります。また、登りでも滑走中にアイスバーンで滑落して怪我をする事も考えられます。バックカントリーでは気温の急激な変化やハイクアップの時に発汗してその後風などの影響で低体温症になる方も多いです。

未然に上記のリスクを防ぐために、するべきことを具体的に教えてください。

雪崩
出典:PIXTA

【雪崩について】
雪崩を未然に防ぐために雪が降り積もった構造や雪の種類を勉強する事も重要なんですが、はっきり言って難しいです。 毎日山に入っているガイドでも雪崩れる、雪崩ないの100%の判断は難しい。まずは雪崩が発生しそうな場所、雪崩が発生しても雪崩が到達しない場所を覚えて下さい。『地形を把握する』というのは専門の知識がなくても理解しやすいです。雪崩は水の流れと同じように下流へ流れて行きます。 雪崩には発生する場所(発生区)流れ落ちる場所(走路)雪崩が止まる場所(堆積区)の3つが存在しますが、これらを避けての行動が原則です。 基本的に少しでも高い所が安全です。

バックカントリーで滑る人
提供:番亭

滑走中は雪崩地形を滑る事が多いですが、必ず1人ずつ滑走する、止まる時はもし雪崩が起きても雪崩が到達しない場所で止まるようにして下さい。 また、滑っていない人は滑走者を常に見ている事。もし雪崩に巻き込まれてもある程度の埋没地点が特定しやすくなります。 ハイクアップ中で危険な場所を通過する時も1人ずつ通過が原則です。 雪崩に巻き込まれても、最大でも1人が巻き込まれるような状況を常に作る事が大切です。ほとんどの斜面で安全な場所は意外と沢山点在しています。

GPS時計を付けた腕
出典:pixabay

【遭難について】
地図とコンパスを使いこなせるようにする事が大前提ですが、天候の悪化の兆候があれば細かく現在地を把握しておく事が大切です。
またGPS(携帯のアプリでもあります)をバックアップで持つ事も有効です。


ハイクアップ中
提供:番亭

【怪我について】
バックカントリーでの滑走は常に余力を残して滑る事を心がけて下さい。 急な雪質の変化や地形の変化の対応が瞬時にできるようすると怪我も少なくなります。
低体温症を防ぐには、暑い時でも汗をかかないようにハイクアップのペースをコントロールする事、汗は身体を急激に冷やします。寒い時には早めに防寒着を着用する事が重要です。 早めに対処しないと体温が低下していくと判断能力も落ちてしまいます。

もしトラブルが発生したら

ニセコでスキーをかついで山を登る男性
出典:PIXTA

それでも、自然条件とは意のままにならないもの。上記のようなトラブルが発生した場合の対処法を教えてください。

雪崩の対処法

滑走中雪崩が発生してしまったら、まずは転倒しないように集中して雪崩の走路、堆積区から外れる事を最優先して下さい。 雪崩の規模にもよりますが転倒してしまうと埋没する可能性が高くなります。 

 

転倒してしまったら?

雪崩に流されながら体の一部でも雪面の上に出せるように努力します。体を動かせるのは流されている時まで。ここで全身埋没になるか部分埋没になるかで、救助までの時間は大きく変わると思います。

雪崩の跡
出典:PIXTA

また、雪崩に流されている途中雪は口や鼻にも入ってきます。最後に口と鼻を手で覆えたら覆って下さい。少しでも空気の層が作れたら呼吸ができる時間が伸びます。雪崩の動きが止まったと同時に体は動かせなくなるので仲間を信じ、パニックにならないように心を落ち着かせて待ちましょう。ハイクアップ中や休暇中に雪崩に遭遇した場合は逃げる事が難しいですが、基本に忠実な行動をしていれば雪崩に遭遇する事はないと思います。

道迷いの対処法

ホワイトアウト
出典:PIXTA

道迷いになった場合、特に視界が無い場合は来た道を引き返す。 これが確実です。むやみに行動しても更に深みにハマります。引き返す方向にも自信がなければ体力が残ってるうちにビバークの準備をします。しっかり穴を掘って風雪を防げば一晩ぐらいは凌げます。

怪我の対処法

スキーをかついで山を登る人
出典:Unsplash

最低限の応急処置が出来る道具と方法を知っておきましょう。応急処置ができれば自力下山の可能性も高まりますが、自力下山が難しければ救助を呼びます。また天候が悪く救助が来れない場合はビバークします。
また、怪我の処置と同時に保温もして下さい。低体温症については寒さで震えがあるうちに防寒着を着用、温かい飲み物を飲む事も有効ですが、低体温症が重度になると専門的な対応が必要になるので早めの対処が必要です。
どんなトラブルが発生しても最後まで諦めずに絶対に生きて帰るという強い意識を持つ事も大事です。

実際にあった事故

バックカントリー人口は増加しているようですが?

微増していると感じてます。

 

白馬周辺で、過去にあった事故について教えてください。

残念ながら毎年のように事故は起こってしまいます。昨年(この記事を作成したのは2017年)も外国人の方が八方尾根エリアのバックカントリーで雪崩に巻き込まれて亡くなっています。この方はバックカントリー装備を持っていなかったため、発見されたのは春でした。

 

事故を減らすような取り組みが何かあれば教えてください。

私が主宰しているツアーではバックカントリー未経験者には1時間程バックカントリーについての講習を必ず行います。最低限の知識はガイドツアーでも覚えてもらうとバックカントリー中の行動や、事故があった時に何をするべきかわかります。

バックカントリーに必要な”3種の神器”って?

バックカントリーを楽しんでいる人
提供:番亭
上記のように、バックカントリーは大きなリスクを伴います。最高のパウダースノーを楽しめる一方、一歩間違えれば命の危険にさらされます。それもそのはず、相手は雪山です。ここでは、バックカントリーをするうえで必要な装備についてお伺いしていきます。

バックカントリーに必要な装備を教えてください。

バックカントリー3種の神器
出典:Amazon

・ビーコン
ビーコンは世界規格化された電波を送受信できるトランシーバーです。体に身に着け、埋没者を探すために使用します。
・プローブ
2m50cmから3mの一本の棒です。収納時には小さく折りたためるようになってます。
・ショベル
バックカントリーでは雪を掘る事に使用します。こちらも収納時は小さくなります。

どのようなシーンで使うのですか?

BCAビーコン
提供:番亭

・ビーコン
雪崩に人が巻き込まれた時に使用します。入山する前に全員電波を送信モードにしているので、捜索の際、埋没者以外は受信モードに切り替えて捜索します。電波の出方が特殊なので、何度か練習が必要になります。

プローブを使う男性

・プローブ
ビーコンでは、雪崩埋没者の完全な位置特定ができない事があります。ビーコンである程度埋没地点を特定して、そこからはプローブを雪面へ突き刺して埋没者の位置を特定させます。

MSRのショベル

・ショベル
プローブで場所を特定させたらショベルで雪を掘ります。なるべく早く掘り起こす必要があるので、効率の良い掘り方の練習が必要です。主にこれらは雪崩が発生した時に使用するものですが、素早く効率良く行動しなければ埋没者を助け出す事は難しいです。一般的に15分から18分が窒息死までのタイムリミットと言われています。その場にいるメンバーで協力しながらのレスキューになるので、リーダーの統率力も重要です。

冬山を楽しむ上で必要なこと

バックカントリーをする人
提供:番亭
以上、竹尾ガイドにバックカントリーにおけるリスクについて伺ってきました。具体的な対処法はとても参考になる内容でした!冬もフィールドに出掛けたい人にとって、必ず知っておくべき「雪山」の恐ろしさ。例え、記事中に出てきた装備を身に着けていたとしても、事故に遭わない可能性は100%ではありません。しかし、様々なコンディションの中で自然と向き合っていくためには、必ず万全の準備を怠らないようにしましょう。

 最後に、ガイドという立場からこれからバックカントリーを始める人へひとことお願いします。

バックカントリーに挑戦する時はガイドツアーが一番だと思っています。
私達ガイドは毎日雪のコンディションを見極めてリスクを最大限減らす努力をしています。今回の記事のようなリスクがある事をしっかりと認識して、最低限の知識を覚えてから挑戦する事がバックカントリーを楽しむための近道です。また自然の中には色々と危険を知らせる兆候があります。そのような兆候を察知して、自然に合わせて謙虚にいきましょう!

教えてくれたのはこの人!

竹尾ガイド提供:takahiro nakanishi
白馬村バックカントリーガイドクラブ「番亭~Bamboo tail~」
代表 チーフガイド 竹尾 雄宇氏

【プロフィール】
日本山岳ガイド協会認定 スキー・スノーボードガイド・ステージⅡ
日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド・ステージⅡ
信州登山案内人
JAN アバランチ レベル1
WFA ウィルダネスファーストエイド
日本赤十字社救急法救急員
白馬マイスター
元JSBAプロスノーボーダー

番亭 ~bamboo tail~

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バックカントリーのスキーヤー
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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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