「お客様を無事に帰す」山岳ガイドが本気で挑んだ、八ヶ岳トレーニングとは(3ページ目)

冬山登山の基本の5つの注意点

気象情報の事前チェック

天気図

夏山でも気象情報のチェックは必要ですが、冬山ではより大切なことです。気象情報から天気・気温・風速・寒気の入り方・低気圧や前線の位置などをチェックすることが必要です。予報サイトで検索する時には、検索地点の情報が、山麓のものなのか、山頂のものなのかをあらかじめ調べておく必要があります。

地形図に慣れ親しむ

地形図出典:国土地理院
冬山では、夏に見えている標識が雪で埋まっていることが多々あります。標識頼みで進むべき道を選ぼうとすると、間違いなく道に迷います。また夏道と冬道が違うことがよくあります。なので地形図は、読図講習会に参加して、慣れ親しんでおくようにしましょう。

アイゼン歩行に慣れる

アイゼンを装着して歩くと、なかなか疲れるものです。アイゼンを履くと、片足の爪で、もう片方のパンツの裾を引っ掛けてしまうことがあります。それが原因で転倒することもよくあります。まずは平原や安全な所で、アイゼン歩行をたくさん練習する必要があります。うまく歩くコツは、肩幅より気持ち狭いぐらいに足を広げて歩くことです。疲労がたまってくると、歩行がおざなりになりなるので、下山時には、より神経を足元に集中するようにしましょう。

凍傷への対策

凍傷に注意する登山者
提供:山田祐士

もっとも簡単に凍傷になるパターンは、手袋が濡れて、寒風が吹くことです。雪を触って濡れた手袋に寒風が当たると、手指の温度をあっという間に奪います。手袋は濡らさないように注意するとともに、手袋の予備は多く持ちましょう。また八ヶ岳の稜線上など、気温が低くて風が強い所では、鼻や頬、耳が凍傷になりやすいです。首から上の防寒暴風対策をお忘れなく。

体温調整

レイヤリングをする登山者撮影:山田祐士

冬山で汗をかくと、それが蒸発する時に体温が奪われます。それを防ぐには、まず歩き始めの30分ほどは厚着で体温を温めます。その後暑くなるので、何枚か着ている物を脱ぎます。そして稜線にでたら風が強く吹くことが多いので、稜線直下でジャケットなどを着て、防風対策をします。そして休憩の時はみるみるうちに寒くなっていくので、一番外側にダウンジャケットを羽織ります。
このように、冬山では細かな服装調整が重要です。決して面倒臭がって怠ってはいけません。

雪に親しんで、年中山を楽しみましょう

雪山を楽しむ登山者出典:カモシカスポーツ
今回のお客様は、冬富士からエベレストを目指す、いわば超硬派な方ですが、北八ヶ岳の易しい雪山コースや、霧ヶ峰などでのスノーシューハイクなど、初心者が安心して十分に楽しめるフィールドはたくさんあります。まずは道具をレンタルして、ガイドイベントや講習会などで、雪山を実体験してみると、世界が広がるでしょう。ただし誰かに連れて行ってもらう場合でも、事前の情報収集や天気予報のチェックなどをしておき、リーダーに頼りっきりにならぬようにすることが、ステップアップの重要な要素です。

Winter mountain will show you a new world !
雪山は新しい世界を覗かせてくれる!

山田ガイドが取締役を務める、山岳企画会社

 

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