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SOTO TrekMaster

玄人好みの液出し式バーナー。 SOTOの新作「トレックマスター」を大解剖

国内アウトドアギアブランド<SOTO>から新しいバーナー「TrekMaster(トレックマスター)」が発売されました。それは“CB缶専用液出し式分離型バーナー”。玄人向けといえる新製品は、仕組みを理解して正しく扱わないと非常に危険。気になっている方は一読必至の特徴と注意点をまとめました。

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目次

撮影:筆者(アイキャッチ画像を含む)

SOTOからリリースされた“液出し式バーナー”って?

SOTO TrekMaster

アウトドア用のバーナーやクッカーで一定のシェアを誇る国内ブランド<SOTO>から、2025年5月16日、新しい登山向けバーナーがリリースされました。それが、CB缶専用液出し式分離型バーナーの「TrekMaster(トレックマスター)」です。

どこか呪文のようにも聞こえる“CB缶専用液出し式分離型バーナー”とは、一体どんな特徴をもつバーナーなのでしょう。

低コストで燃料が手に入る“CB缶専用”

SOTO TrekMaster CB缶

まず“CB缶専用”とは、家庭用のカセットコンロなどでおなじみのカセットボンベを使うバーナーであるということ(使用できるボンベはSOTO製品専用容器に限られます)。一般的な登山用向けバーナーで使われるOD缶より、燃料を低価格で入手できる点が特徴です。

一定の火力が持続する“液出し式”

SOTO TrekMaster 液出し式
ボンベの切り込みに差し込む黒いパーツが真下を向いているのが液出し式の証。バルブを開けるとボンベ内の下部に溜まる液状のガスがホースに流れ出る。一方、一般的なCB缶専用バーナーは黒いパーツが上を向き、ボンベ内の上部に溜まる気体のガスが噴出する

続いて“液出し式”とは、文字通り液が直接出るタイプであることを示しています。通常、バーナーはボンベ内で気化したガスに火をつけますが、この手のタイプは長時間の燃焼でボンベが気化熱によって冷えてしまい、火力が低下する弱点がありました。

それを克服したのが液出し式で、液状のガスを直接バーナーに送る仕組みで気化熱の発生を防ぎ、長時間の燃焼でもボンベが冷えないため、火力が一定に保たれます。さらに、ボンベ内でガスが気化する必要がないので、低温化で安定した火力を得られる点も特徴といわれています。

大鍋や本格的な調理にぴったりな“分離型”

SOTO TrekMaster 分離型

最後に”分離型”は、バーナーとボンベがホースを介して離れていることを意味します。分離型のバーナーの特徴は、ゴトクに置いた調理器具の重心が低くなること。大鍋やフライパンなどを使った本格的な調理に適しています。

【超重要!】 トレックマスターは扱いに理解が必要な玄人向け

SOTO TrekMaster 燃焼の様子

SOTOの新作「トレックマスター」は興味深い商品ではあるものの、だれにでもおすすできるバーナーではありません。

それは、正しく使わないと非常に危険だから。使用上のリスクはどのバーナーにもいえることですが、誤った使い方をする可能性が高いという点で、潜在的な危険性はかなり高いと感じています。

正しく使わないと火傷や火事のリスク大

SOTO TrekMaster 扱い方

“誤った使い方をする可能性が高い”とは一体どういうことなのか詳しく説明します。

CB缶専用のバーナーは上の写真のように、ボンベを倒して使うのが一般的です。SOTOがラインナップするCB缶専用バーナーも、すべてボンベを倒した状態で使います。

しかし、トレックマスターは、これこそが誤りなのです。この状態でバルブを開けて火をつけると、たちまち火柱が上がり、周囲に引火する危険があります。実際にその様子を展示会で見せてもらったときは、爆発と思うほど大きな火だるまが現れて、かなり恐怖を感じました。

理由は、ボンベを倒した状態でバルブを開けると液状のガスがバーナーに送られて、そこに火をつけると生火が出るから。生火とは気化していないガスが燃焼した赤く大きな炎のこと。熱し続けた天ぷら油に引火したときに出る巨大な炎と同じイメージです。

覚えなくてはいけない安全な使い方

SOTO TrekMaster 扱い方

トレックマスターを点火するときは、上の写真のようにボンベを立てた状態が正しいやり方。事前に知っていなければ、CB缶専用バーナーでこの手順を踏める人はかなり少ないはず。そのため、誤った使い方をする可能性が高いといえるのです。

ボンベを垂直にした状態でバルブを開けると気化したガスがバーナーに送られ、火をつけるといつも通りの青い炎が現れます。この状態で約30秒待ったあと、ボンベをゆっくり横に倒して液出し状態に移行します。

この時点で生火が出る危険性はかなり少なくなっています。それは、バーナーの上に飛び出ている管が十分に熱せられたことで、液状のガスが気化する状況が整ったから。

そして最後、火を消すときは再びボンベを立てて、30秒ほど待ってからバルブを閉じます。ホース内の液状のガスを燃焼させてから消化させるためです。それでもバルブを閉じてから火はすぐには消えません。それは、ホース内の気体のガスが燃えきるまでに少し時間がかかるからです。

どうでしょう。仕組みがよく分からないと思った方は、トレックマスターの扱いを控えたほうがいいように思います。トレックマスターは、液出し式バーナーの仕組みと危険性を十分に理解した上で扱う必要がある玄人向けのバーナーです。

トレックマスターは雪山登山などに特におすすめ

SOTO TrekMaster 収納ケース
本体にタイベック製の収納袋が付属。ちなみに、バーナーには点火装置が付かないので、火をつけるにはフリント式ライターなどを使う必要がある

トレックマスターの魅力は液出し式バーナー特有の、長時間の使用や低温下でも安定した火力を得られる点にあります。マイクロレギュレーター機構を搭載するバーナーも同様の特徴を備えていますが、物理的に気化熱や外気温の影響を受けない液出し式のトレックマスターのほうが、性能の質はひとつ上といえるでしょう。

そんなトレックマスターの長所が発揮されるのは、たとえば雪山で行なう水作りなど。かなり限定したシチュエーションからも、トレックマスターが玄人向けのバーナーであることが分かると思います。

一方で、特徴を理解したうえで活用シーンが思い浮かぶ人にとっては、トレックマスターはコストパフォーマンスに優れる使い勝手のいいバーナーに映ることでしょう。正しく使えば、強力に山行をサポートしてくれる頼れる道具になるはずです。

    SOTO TrekMaster(トレックマスター)

    サイズ使用時(ホース含む):幅500×奥行140×高さ105mm
    収納時(ホース含む):幅90×奥行70×高さ105mm
    重量約195g
    材質バーナー・器具栓つまみ・ゴトク:ステンレス
    ボンベホルダー:樹脂
    収納ポーチ:タイベック
    発熱量3.0kW(2,600kcal/h) (ST-711・ST-712使用時)
    2.8kW(2,400kcal/h) (ST-760使用時)
    2.3kW(2,000kcal/h) (ST-700使用時)

    ※1 気温25℃無風状態で点火後から5分間の燃焼データより算出
    使用時間約0.5時間(ST-711を1本使用時)
    約1.0時間(ST-712を1本使用時)
    約1.2時間(ST-760を1本使用時)
    約1.5時間(ST-700を1本使用時)

    ※2 気温25℃無風状態で点火後から30分間の燃焼データより算出
    使用燃料SOTO製品専用容器(ST-711、ST-712、ST-760、ST-700)
    点火方式マッチやフリント式(ヤスリ式)ライターなど、別の点火器具を使用して着火してください。
    ※圧電装置はついていません。
    付属品収納ポーチ
    耐荷重2kg

    製品特徴

    • ジェネレーターを有する液出し燃焼構造で、ドロップダウンによる火力低下を抑制
    • 燃焼器具の部品でもっとも破損しやすいイグナイターを排除し、故障の原因を最小限に抑制
    • ステンレスゴトクを採用し、熱伝導によるゴトクの加熱を抑制
    • 分離型なので低重心で不整地でも安定使用
    • コストパフォーマンスに優れたCB缶仕様
    • 重量も収納もコンパクト

    注意点

    点火時にCB缶を立てた状態で30秒間ほど燃焼させるプレヒート(予熱)が必要。プレヒートを行なわないと、赤く大きな炎が燃え上がり大変危険です。