老舗テントメーカーから“メチャ軽テント”が登場!

アライテントは、1965年に創業した日本を代表する登山用テントメーカー。フレームをスリーブに通して交差させるクロスフレーム構造のテントを得意とし、「エアライズ」や「トレックライズ」といった人気モデルが知られています。
そんなアライテントから2023年、なんと2人用で1kgを下回る軽量テントが出るということで、業界内がザワつきました。「あのアライテントが、ついに軽量テントをリリースするのか……」と。
というのも、アライテントといえば、軽さよりも強度を大切にするモノづくりが特徴的なメーカー。“軽さ”がトレンドになっている昨今でも、既存商品に一切手を加えず、“強さ”や“安心感”を重視した商品を作り続け、それが支持されている背景があるのです。
一見、これまで大事にしてきたコンセプトに反するような軽量テントとは、一体どんな商品なのでしょう?
形はほかのモデルと変わらない……
さっそく業界を騒がせた話題の軽量テントを見ていきましょう。商品名は、ずばり「SLドーム」。 いかにも軽そうなネーミングですよね。まずは商品の内容からチェックしていきます。
SLドームはグランドシートを標準装備

左からフレーム、本体(フライシートとペグを含む)と続き、SLドームには専用アンダーシートが付属します。これは、グランドシートに使われている生地が、従来の40dナイロンタフタから30dリップストップナイロンに変わったことで懸念されるダメージ対策。SLドームはグランドシートの併用を推奨しています。
フレームは若干細いDAC社製

フレームは、さまざまなテントメーカーが採用する信頼のDAC社製。「エアライズ」や「トレックライズ」の2人用に使われているフレームがNFL9フェザーライトなのに対し、SLドームは軽さを求めて、NFL8.7フェザーライトという少し細いフレームを使用しています。
片手で簡単に持てるほど軽くてコンパクト

本体は片手で持てるほど軽量で、収納サイズは小さな夏用シュラフほど。SLドームの重量は、本体とフレーム、フライシートを含めて、たったの980gしかありません(ペグ、ガイライン、グランドシートは含まず)。1kgを下回る重量も気になりますが、この小さな収納サイズで2人用とは、にわかに信じられません……。
見た目はトレックライズにそっくり

SLドームを設営してみると、形は長辺側から出入りする仕様で、2本のフレームをスリーブに通してクロスさせる定番の構造に、フライを被せるダブルウォール。見た目は従来からあるトレックライズとほとんど変わりませんでした。
SLドームの特徴を知るには、さらに詳しく見ていく必要がありそうです。
外側で確認できるディテールからチェック!
まずは外からSLドームの細部を見ていきましょう。
フライシートはバックルで固定

フライシートは四隅をバックルで固定します。大きめなバックルは作業しやすく、グローブを着けていても扱いに手間取ることはなさそうです。
スリーブの末端は袋とじ

こちらは、先ほどの画像の反対側を写したもの。フライシートをバックルで固定する仕様は変わりませんが、フレームを通しているスリーブの末端が閉じられているのがわかると思います。フレームのエンドチップをグロメットにはめる手間が少ない、簡単な設営の仕組みもSLドームの特徴です。
入り口の反対側にベンチレーションホール

内側の結露を軽減するために、換気を促すベンチレーションホールが入り口の反対側に備わっています。インナーテント側のベンチレーションホールにはメッシュの生地が使われているので、口をひもで閉じて虫の侵入を防ぐことも可能です。
入り口はあえて右側にずらして設計
SLドームのフライシートは、正面から見て右側が開く仕様。それに合わせて、入り口もやや右側にずらして配置されています。スムーズな出入りを可能にする作り手の配慮を感じられるデザインです。
入り口の下部にもベンチーレーション

入り口の下部に見える白い箇所は、ファスナーで開くベンチレーションウィンドウです。入り口の反対側にあるベンチレーションホールと併用することで、室内の換気をより一層促すことできます。
前室は荷物を置くのに十分な広さ

入り口の前に生まれる前室の最大長は、38cm。泥がついた靴やザック、就寝時は邪魔になる食器などを置いておくのに十分なスペースがあります。
中に入って内側の細部も確認!
今度はSLドームの中に入って、先ほどと同じくディテールを見ていきましょう。
小物の収納ポケットは1箇所

スマートフォンやヘッドランプなど、細かい荷物の収納に便利なポケットはひとつだけ。SLドームの最大使用人数は2人なので、これはもうひとつあっても良かったかもしれません。
天井はひもを通せるループ付き

写真は天井を見上げた様子。縫い目とフレームが交差する点の真下に確認できるのが、細引きなどを通すためのループです。2〜3mmのナイロンロープを通して物干しを作ってもいいし、ランタンなどを吊るしておくこともできます。
十分な天井高で窮屈に感じない

床から天井までの高さは、95cm。身長182cmの筆者が中に入っても、圧迫感を感じることはありませんでした。ひとりであれば内部空間は十分広いと言えるでしょう。
実物に触れて、2つの点が気になった……
ディテールを確かめてみても、アライテントがラインナップする従来のテントと変わらず、使い勝手も居住性も優れていると評価できそうなSLドーム。形が似ていて収容人数が同じトレックライズ2と比べると、単純に重量が軽くなっただけで欠点が見当たらない上位モデル、と思われるかもしれません。
ただ、よく見てみると細かな違いがあり、最後に使用上で懸念される2つのポイントに触れておきましょう。
生地が薄いので扱いには注意が必要

グランドシートが薄くなったのは冒頭で説明したとおり。ほかにも、本体は従来の28dから12dリップストップナイロンに、フライは30dから15dリップストップナイロンへと変わり、全体的に生地が薄くなっています。
生地が薄くなったということは、それだけ強度は従来よりも低くなっているということ。SLドームを選ぶ場合、穴が空きやすい、破れやすいといった諸問題を同時に受け入れる必要があるでしょう。
短辺が短いので2人で使うと余裕がないかも
SLドームは、同じ2人用のエアライズ2、トレックライズ2と比べると、短辺が最も短い仕様です。いちばん長いのはトレックライズ2の150cm。次いでエアライズ2が130cm。SLドームは120cmしかありません。筆者は普段エアライズ2を使っており、SLドームの中に入った瞬間、スペックを見る前に幅が狭いと感じました。
ひとりの場合は十分なゆとりがありますが、マットを2枚敷くと約20cmしか余裕がなくなる計算で、2人で使うと窮屈に感じるかも。積極的に2人での使用を想定している場合は、実際のフロア面積を事前に確かめたほうが良さそうです。
メリット・デメリットを見極めれば一生の相棒に!

アライテントが満を持してリリースしたSLドーム。本体、フレーム、フラシートの合計が980gという軽さが最大の特徴で、コンパクトな収納サイズにも目を見張るものがあります。
ただ、薄い生地を使うことで従来よりも強度が低くなり、フロアの幅は短くなっているなど、享受すべき弱点もいくつかはらんでいます。
SLドームを選ぶうえで大事なことは、デメリットをしっかりと理解すること。そして、乱暴に扱わない、2人で使ったときの狭さを受け入れるなどの点に注意すれば、最良の軽量テントになるはずです!
アライテント SLドーム
サイズ | 設営時:210×W120×H95(前室張出38cm) 収納時:本体27×21×9cm、フレーム38cm |
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重量 | 乾燥時平均重量:980g(本体+フレーム+フライシート) 専用アンダーシート:200g(210×120cm) 付属品:約200g(ペグや張り綱など) |
カラー | フライシート:ライトグレー |
最大使用人数 | 2名 |