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雪山デビューの装備「冬用登山靴」

雪山入門|雪山デビューしたい! 「冬用の登山靴」って絶対に必要?

多くの山で初冠雪を迎え、いよいよ冬山シーズンの到来! 今年は雪山に挑戦したいと考えている人もいるのではないでしょうか。雪山デビューにあたり揃えなければならない必要装備。「冬用登山靴」や「雪山用手袋」「アイゼン」「ピッケル」などがありますが、どれも選び方が難しいアイテムです。そこで、雪山ギアに関する基本をプロが解説! 今回は「冬用登山靴」にまつわるみんなの疑問にお答えいただきました。

目次

アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

山道具のプロに聞く! 雪山装備の“失敗しない”選び方

冬の入笠山の山頂

出典:PIXTA(冬の入笠山山頂からの眺め)

標高の高い山では紅葉も終わり、いよいよ冬山シーズンに突入。「今年は雪山デビューをしたい!」 そんな風に考えている人もいるのではないでしょうか。

デビューにあたり、しっかりと整えなければならないのが雪山用の装備。しかし、「何をどう選んだらよいのか分からない……」という人が多いようです。

Mt.石井スポーツ登山本店

撮影:YAMA HACK編集部

そこで、雪山に必要な装備の中から「冬用登山靴」「雪山用手袋」「アイゼン」「ピッケル」をピックアップ。知っておきたいギア選びの基本を、山道具のスペシャリストであり登山ガイドの資格を持つ、Mt.石井スポーツ登山本店の金井さんに教えてもらいました。

今回は「冬用登山靴」にまつわる3つの疑問を解決。この冬、雪山に挑戦したい人は必見です!

【疑問➀】雪山って“いつもの”登山靴じゃダメなの?

雪山用の装備を一気に揃えるとなると、大きな出費が悩みのタネ。できるだけ夏山シーズンに使っているものを活用できないかと考えてしまうものです。持っていないギアは用意するとしても、登山靴はいつも使っている3シーズンのものじゃダメなのでしょうか?

ICI金井さん

撮影:YAMA HACK編集部(教えてくれるのは、Mt.石井スポーツ登山本店・金井さん)

夏と兼用できるのは●●だけ!

雪山を想定した時に、山のレベルにもよりますが、夏と同じものが使えるのはヘッドランプのみ! ギリギリあとはザックくらいです。安全のために妥協できない部分を考えると、それ以外は全部別物だと考えてもらうとよいですね。雪山では冬用の登山靴が必要です。

3シーズン用と冬用登山靴の違いは?

では、3シーズン用と冬用は何が違うかというと、大きく3つあります。

ゴアテックスのインシュレーション

撮影:YAMA HACK編集部

【1】保温材(綿)が入っているかどうか
保温材(ゴアテックス一体型のインシュレーション)こそが冬用登山靴の暖かさのもと。軽さ、暖かさが求められる中で、保温性も持たせるようにメーカーも最大限の努力をして、我々登山者に安全を提供してくれています。それを理解すれば、「冬靴を使う」ということは自然な流れではないでしょうか。

アイゼン

出典:PIXTA

【2】ソールや足首の硬さ
雪山ではアイゼンを締めたり、アイゼンを踏み込むということをします。アイゼンは金属ですから、雪面や氷に刺そうと思っても登山靴が軽かったり柔らかいと刺さらないんです。釘を手でたたいても入らないですよね? 靴もしっかりとソールが硬いもので、なおかつ足首も硬くないと、歯に負けちゃって足首がグネっとなってしまいます。

なので、冬用登山靴を選んだ方がいいんです。冬でもガイドさんやクライミング嗜好の方が軽くて柔らかい靴を使ったりしていますが、それを一般の登山者が真似してしまうのは危険です。

【3】アイゼンの装着に“ふさわしい”か否か
アイゼンの装着に関わるところでは、「甲部分の素材」「ソールの形状」「コバの有無」も3シーズン用と冬用は異なります。

3シーズン用と冬用登山靴の違い

提供:金井さん(編集:YAMA HACK編集部)

■甲の素材
3シーズン用はナイロンを使用しているのがほとんど。フィット感をよくするためにはナイロンを使いたいところなんですが、蹴った雪が乗っかることを考えると、雪山を想定した靴は甲に革を使うものが多いですね。雪が乗ることでの冷えを防ぐのと、アイゼンのバンドを締めたときに甲をしっかりと押さえるため。

体に紐をぎゅーって巻くと痛いけど、段ボールの上からだと痛くないですよね? 登山靴も同じで硬いもので守ってからでないと、アイゼンのバンドの締め付けが強くなってしまうんです。平坦なところを歩いている分には大丈夫だと思いますが、色んな方向に動いたときや体がグッと前に行くときに、靴に対して押し付ける力が働くとバンドの締め付けの不快感や痛みが伝わってくるんです。

3シーズン用と冬用登山靴ソールの形状の違い

撮影:YAMA HACK編集部

■ソールの形状
3シーズン用は歩くことをメインに考え、硬くても歩きやすいようにつま先がそっています。一方、冬用はアイゼンをつけるためにフラットになっているんです。

日本は樹林帯の中をもくもくと歩いていくことが多く、アイゼンはいらない……という場面があります。そのためキックステップ(蹴り込んで歩く)を多用する国。そんなときにもフラットなソールはメリットになります。

3シーズン用と冬用登山靴のコバの違い

撮影:YAMA HACK編集部

■コバの有無
冬用登山靴には、ワンタッチアイゼンやセミワンタッチアイゼンを装着するためのコバがあります。「持っている3シーズン用にもコバがあるからこれでもOKでしょ?」と聞かれることもあるんですが、3シーズン用のコバはセミワンタッチアイゼンがつかないこともないですが、でっぱりが少ないんです。あまりに出ていると夏山を歩くときにガツガツあたってしまうから。「コバがある=冬の靴」ではないので注意です。

Mt.石井スポーツ金井さん

撮影:YAMA HACK編集部

極端な話ですが、アイゼンはスニーカーにだってつくし、ベルトをすれば素足にだってつく。アイゼンが装着できるかどうかで選ぶのではなく、アイゼンを装着するのにふさわしい靴かどうかの判断が大切です。

【疑問➁】雪がそんなになくても、冬用登山靴は必要?

安全で快適に雪山登山を楽しむためにも、「暖かさ」「硬さ」「アイゼン装着に適しているのか」を考慮して、3シーズン用と冬用をしっかりと使い分けるのがベストだと分かりました。しかし、ひとくちに雪山といっても標高や雪の量は様々ですよね。その使い分けはどのようにしたらよいのでしょうか?

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