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雪山入門|雪山デビューしたい! 「冬用の登山靴」って絶対に必要?(2ページ目)

冬季の足元は、大きく3つのタイプがある!

冬季の足まわりの目安

(ICIの資料を基にYAMA HACK編集部作成)

冬山シーズンの足元を考えたときに、あくまで目安ですが行く山の標高によって「皮革(中綿なし/3シーズン用)」「皮革+中綿(GORE-TEX® Insulated)」「二重登山靴」の大きく3タイプに分けることができます。

ナイロン製の登山靴は冬季の靴にはそもそも入ってきません。なぜかというと、ナイロンには“水を吸う→水を含んで重くなる→雪を蹴って雪が乗っかると溶けてびちょびちょになる→中から湿気が抜けたくても抜けない”という特性があるからです。

冬用登山靴は「雪」と「寒さ」から足を守るためのもの!

雪山

足まわりの選び方のポイントは、“どこの山・どんな山”に行くのかということ。冬山には「雪」と「寒さ」の2つの条件があるので、この2つが重なる場所は冬用登山靴が必要です。

白馬の大雪渓

出典:PIXTA(白馬の大雪渓)

例えば、夏山の雪渓は「雪」だけで寒くはないので冬靴は必要ない。冬の奥多摩で全く雪が降らなかったとしたら「寒さ」だけなので冬靴は必要ない。ただし、奥多摩もカチカチに凍っていたりしてアイゼンを使うシチュエーションが出てくることもあるので、あまりにも柔らかすぎる3シーズンの靴は向きません。ソールとボディの硬さも考慮する必要がありますよね。そして雪が降れば冬用登山靴が必要になってくる。

冬の場合は「雪」だけってことはまずないと思いますが、「雪」と「寒さ」の2つが合わさったときに冬用登山靴の出番だとイメージしてもらえるとよいと思います。

「もしも」に対応できるか否かを判断基準に

冬季の靴は本当に難しいんです。極端な話、凍傷にさえならなければ靴は何でもいいんですよ。重さや値段の葛藤はあると思いますが……。冷えの感覚は個人差があるので、「この靴で行けました!」みたいな情報を鵜呑みにしてしまうのは危険です。

ビバーク

出典:PIXTA

夏は寒さがないので、靴の問題ってソール剥がれとか故障くらいしかない。冬山シーズンの靴は「もし」「万が一」が出てくるので、危険のリスクを考えて選ぶべきです。個人で行く場合は、道迷いなどビバークする可能性が出てくるので、「もしビバークになったら、この靴で一晩越せるのか?」を考える必要があります。

体は上着を重ねたりとか誰かと抱き合うとかできますが、足に関しては着こむことができないし、何もできないんです。低体温症になると血が末端に届かなくなるので、凍傷になりやすい。そういうのを踏まえた上で選んだ方がいいですね。

【疑問➂】冬用登山靴がほしい! 選ぶときのポイントは?

冬用登山靴

撮影:YAMA HACK編集部

「寒さや雪を考慮して、自分には冬用登山靴が必要だ!」となったときに、いざ購入しようと思っても種類が多くて悩んでしまいますよね。各メーカーから様々なモデルが出ていますが、どのように選んだらよいでしょうか?

冬用登山靴を選ぶときのポイント3つ

冬用登山靴を選ぶときには、以下の3つのポイントをチェックしてみましょう。

自分の足に合った登山靴

撮影:YAMA HACK編集部

【1】自分の足の形に合うかどうか
これは3シーズンも冬用も同じです。

AKU冬用登山靴

撮影:YAMA HACK編集部(AKU/Montagnard GTX)

【2】各社のアピールポイント
各社「こんなことやってます!」というアピールポイントがあるので、それを参考にすることです。

例えば<AKU(アク)>は中綿を使い分けています。冬用のインシュレーションを甲の部分にも入れてしまうと、厚みが出て履きずらくなってしまいます。そのため、甲の部分はインシュレーションではなく、プリマリロフトという化繊の綿を入れているんです。

海外の雪は割とさらっとしているけれど、日本の場合は雪が湿気ぽかったり、その割に寒かったりします。雪が付着するとつま先が冷たくなりやすいんです。つま先が冷えるのを抑えるようにしたいという要望を日本からイタリアに出したのが、<AKU>ではインターナショナルに採用されています。全体をインシュレーテッドにするともこもこになっちゃうので、必要なところだけプリマリフトを入れているということです。

このように各社が力を入れているポイントがあるので、ぜひお店で聞いてみてください。

ゲイタ―付き登山靴

撮影:YAMA HACK編集部(LA SPORTIVA/G5)

【3】自分の「冷え」の感じ方
何を履いても寒い時は寒いですよね? そこで大きく分かれてくるのが、シングルブーツとダブルブーツ。暖かさでシングルブーツ(内側のライニングに綿を入れる)の上に君臨するのが、ダブルブーツ(二重登山靴)なんです。スポルティバのG2などインナーブーツが外せるタイプ。空気層やインナーブーツで暖かさをプラスすることができます。

ゲイタ―付き登山靴

撮影:YAMA HACK編集部

ゲイターが付いたタイプは中綿をたくさん入れるのではなく、ゲイターをかぶせることよって暖かくなります。軽くてゲイターをしなくてもよいし、ジップをさっと閉めるだけで歩きだせるから楽で便利。

メリットはすごくあるんですけど、二重靴って“海外の山”というイメージがあるから「ヒマラヤに行くみたいで気恥ずかしい……」みたいなのがあって、みんな履かないですよね。もちろん海外の山を想定しているのもありますけど、当然人によって冷え方は違いますので、あまりそれに捕らわれずにワンランク上の暖かさを選んだ方がよいと思います。

冬用の靴下とインソールも忘れずに!

靴選びはもちろんですが、冬季は靴下も重要です。厚手の靴下を用意することと、汗をいっぱいかく人はインナーソックスもあった方がいいですね。

ゴアテックスの靴で透湿性があるとはいっても湿気は抜けにくいんです。外気が冷たいので抜けようとしてもその直前で結露してしまったり。そうすると足が濡れて冷えてしまうので、靴下+インナーソックスが◎。ファイントラックのドライレイヤーソックスのように、レイヤリングを靴下でもやること。

冬用登山靴とインソール

あとはインソールも大事。冬靴は大きめを選びますが、足が中で動き過ぎるとアイゼンが上手く操作できません。自分の意志がそのまま靴や歯に伝わらないんですね。インソールがそのロスを減らして、アイゼンをきかせるためのコントロールをしやすくなります。また、商品によっては下からの断熱もできますよ。

お店で試着するときには、履こうと思っている靴下を持ってきて、合わせて履いてみてください。厚手の靴下を履いてゆとりのあるサイズを選ぶのが◎。雪山デビューをしてすぐにアイゼンの歯の細かい操作が必要なアイスバーンとか岩登りをするわけではないと思うので、むしろ冷えの方が辛いですよね。

そう考えると、サイズはちょっと大きめの方が空気の層ができて暖かいんです。夏靴以上に迷ったら大きいサイズを選んだ方がいいですね。上級だろうが初級だろうがビバークというリスクは当然誰にでもあるので、冷える靴は危険です!

Mt.石井スポーツ金井さん

撮影:YAMA HACK編集部

冬山シーズンの登山において靴は一番重要ですが、指針がないアイテム。3シーズン用が使えないことはないとはいえ、雪山登山は「リスキーな遊び」という認識ではなく、「適切にやって安全に帰ってくる」という風にしないといけませんよね。

雪山デビューにおいて「冷え」は大敵!

冬の北八ヶ岳

出典:PIXTA(冬の北八ヶ岳)
雪山デビューにあたっての登山靴にまつわるみんなの疑問の中から、代表的な3つにお答えいただきました。要点は以下の通り。

 

【疑問➀】雪山って“いつもの”登山靴じゃダメなの?
雪山では冬用登山靴が必要! 3シーズン用と冬用登山靴は「暖かさ」「硬さ」「アイゼン装着に適しているか否か」が異なるので、きちんと使い分けるのがベスト。

 

【疑問➁】雪がそんなになくても、冬用登山靴は必要?
冬季の足まわりはどんな山に行くかで変わる。「雪」と「寒さ」の条件が重なる山では、冬用登山靴が必要!

 

【疑問➂】冬用登山靴がほしい! 選ぶときのポイントは?
冬用登山靴を選ぶときは「足に合うか」「メーカーの推しポイント」「自分の冷えの感じ方」をチェック!
(迷ったら大きめサイズ、冬用の靴下とインソールもセットで揃えるのが◎)

 

どんな足元にするのか、行く予定の山を含めて店員の方に相談してみるのが一番です。金井さんのお話も参考に、自分にぴったりの冬用登山靴をみつけてくださいね!

 

石井スポーツ登山学校で学ぼう

 

▼おすすめの冬山用登山靴は?

 

▼雪山デビューの装備を選ぼう!

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