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プロが解説! 雪山デビューのピッケルはどう選ぶ?


初めての雪山登山、どんな山でもピッケルは必要?
雪山デビューするにあたって、ピッケルは必ず用意したほうがよいのでしょうか?
ピッケルの3つの役割
そもそもどうしてピッケルを使うのかというと、「バランス保持」「滑落時のブレーキ」「ロープで確保する際の支点」の大きく3つの役割があります。雪山デビューをしていきなり確保の支点としてピッケルを使用するようなロープを使った登山はしないでしょうから、主に「バランス保持」と「滑落時のブレーキ」ですね。
逆にガチガチに凍ってしまっている場合、ストックは「滑落時のブレーキ」としてはなんの役にも立ちません。ストックでもOKの山も、渓谷沿いなどストックだと滑ってしまって怖いところが出てくることもあるんです。実際に、雪がなくても凍っている場所で滑落事故が起こってしまったケースもあります。

雪山登山のピッケル『あれ』と『これ』の違いって?
山のレベルによって、必要なピッケルが異なることが分かりました。では、目安チャートに記載のある中~上級向けのピッケル(T)と初~中級向けのピッケル(B)は何が違うのでしょうか?また、ピッケルにはシャフトがカーブしているモデルとストレートのモデルがありますが、どんな違いがあるのでしょうか?
『T』と『B』 の違いって?

ピッケルにはCEN(欧州標準化委員会)やUIAA(国際山岳連盟)が定めた耐久性の規格があり、「テクニカル(T)」と「ベーシック(B)」の2種類あります。
■テクニカル(T)
・ベーシックの1.5倍程度の強度がある
・ロープでの確保の支点としても使える
・ベーシックよりも重い
■ベーシック(B)
・一般的な縦走登山やロープを使わない登山をするのに十分な強度がある
・テクニカルよりも軽い

また、同じメーカーの同じ「B」規格でも、重さに違いがあることも。いわゆるスキーツアーで使うようなものはそこまで強度は必要ないので軽いんです。規格上の強度は同じでも、重い方が実際の強度は高くなります。ただし、重量が負担となることもありますので、登山スタイルに適した強度かつ扱いやすい重さを選ぶことが大切です。
『カーブ』と『ストレート』 の違いって?

シャフトがカーブしたピッケルは氷壁に打ち込んで使うようなイメージがありますが、アイスクライミング用は別にあります。雪山登山用でシャフトがカーブしているモデルは、急な斜面に向いています。ヘッドが下を向き、持ったときに手首の返しが少なくてすむので前に刺しやすいんです。ブレーキを掛けるときに引きやすいという人もいます。シャフトのカーブがきつくなるほどバリエーションルートなどテクニカルなルート向きといえますね。
■ストレートは緩やかな斜面や歩行向き
逆に、どちらかというと傾斜が緩い山や歩行がメインの登山ではストレートのピッケルが向いています。シャフトがまっすぐの方が杖として使いやすいんです。あとは、バランス保持のひとつで“耐風姿勢”といって、強風のときにピッケルを垂直に雪に刺して風で体が持っていかれないようにする姿勢をとるんですが、そのときにストレートのシャフトの方が安定する感覚はありますね。
ピッケルの“長さ”はどうやって決めたらいい?
同じモデルのピッケルでも長さが何種類かありますが、自分に合う長さをどうやって選んだらよいのでしょうか?

緩やかな山がメインなら「長め」、急な山がメインなら「短め」
奥秩父とか傾斜の緩い山や歩行主体であれば、手首を返してピッケルを刺すようなことはしないので長めでよいでしょう。逆に八ヶ岳の赤岳のようなところばかり行くのであれば、傾斜が結構きついですから、ある程度のところまではストックで行って、そこからは短めのピッケルでいいと思います。
滑落時のブレーキとして使うので、大柄な人は短いと引けない、逆に小柄な人は長いと体にぶつかって取り回しがしづらいわけです。取り回しのしやすさについては、脇の下を通る長さが扱いやすいというのはありますね。
身長165~170cmくらいの人を基準で考えたら、だいたい55~60cmがピッケルのベーシックな長さ。小柄な方や将来的に登攀的な要素が強いところで使いたいというのがあれば、短めの52~53cmを選ぶのがよいでしょうし、身長が高い方やそんなに傾斜が強いところには行かないということであれば、65cmとか長めでいいと思います。
ピッケル選びで“意外と大事”な3つのこと
自分の登山スタイルに合ったピッケルを選ぶ上で、シャフトの形状や長さの他にチェックしておいた方がよいポイントはありますか?【1】握りやすさをチェック!

【2】リーシュコードもセットで!
ピッケルと体をつなぐリーシュコードも大切。たまにリーシュなしで持っている人を見かけるんですが、落としたら危ないですし、ピッケルの本質を理解していないのかなというのがありますね。必ずリーシュコードをつけましょう。

【3】カバーも用意!
持ち運ぶときにヘッドががむき出しだと危ないですので、カバーがついていない場合は別途用意しましょう。レザーのカバーやフルカバーなど様々なデザインがあります。また、たまにピッケルホルダーがないザックもありますので、使うザックもチェックしてみてください。雪山登山のピッケルは、登山スタイルで選ぼう!

■自分の登りたい雪山のレベルに必要な装備をチェック!・はじめての1本であれば、「(B)ベーシック」でも十分な強度■自分の登山スタイルに適したシャフトの形状や長さをチェック!・「ストレート」「長め」のシャフトは緩やかな斜面向き・「カーブ」「短め」のシャフトは急な斜面向き・ほしいモデルの真ん中のサイズを基準に、大柄・小柄な人は前後サイズ■握りやすさをチェック!・手袋をして実際に持ってみること■リーシュコードとカバーもセットで!・リーシュコードは肩掛け式が使いやすくオススメ
どんな山で使うのかを踏まえ、自分の登山スタイルに最も相応しい『耐久性』『重量』『シャフトのデザイン』『シャフトの長さ』を選ぶことが重要です。
また、ピッケルは持っているだけではダメ。いざという時に使えないと意味がありません。できるだけ講習を受けて使い方を学ぶのが◎です!
【まとめ】雪山装備の選び方

雪山デビューにおける「冬用登山靴」「アイゼン」「ピッケル」選び。あくまで目安ではありますが、まとめるとチャートのように、登る山のレベル、登山道の雪や寒さの状況によって必要装備が変わってきます。どんな雪山登山をしたいのかを踏まえて、まずは店員さんに相談してみましょう。あなたの雪山デビューが素敵な山行になりますように!
石井スポーツ登山学校で学ぼう
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