雪山入門|初めての雪山でパンツは何をはけばいい? 基本のレイヤリングをプロが解説!

2021/01/13 更新

とにかく寒い雪山でボトムスは何をはけばいい? 夏山で使っているパンツやレインパンツではダメなの? アウターパンツは絶対必要? 話を聞くと、どうやらそうでもないらしい…。北八ヶ岳・北横岳でのデビューを想定して、雪山ではくボトムスの選び方を山道具のプロに教えてもらいました。


アイキャッチ画像撮影:筆者

雪山ではくボトムスを基本から学ぼう!

雪山
出典:PIXTA
白い世界が広がる雪山は、厳しさの中に美しさがある神秘的な世界。雪山に登るには夏山とは違う装備が必要であり、ジャケットやパンツひとつをとっても、相応のモデルを選ばなければなりません。

そうは言っても、経験したこともない極寒の山。「一体どんなウェアを選んだらいいの?」と悩んでしまう人が多いはず。

道具選びのプロに聞いてみよう!

石井スポーツ登山本店
撮影:筆者(石井スポーツ登山本店店長、金井賢介さん)
悩んだときは専門店の店員に教えてもらうのがいちばん。今回は、雪山装備の中でも選び方やレイヤリングが難しいボトムスについて、「石井スポーツ登山本店」の店長、金井さんに話を聞いてきました!

レイヤリングはどうすればいい? 基本スタイルをチェック!

北横岳
出典:PIXTA(冬の北横岳)
ライター
吉澤
今回は、初心者でも計画しやすい北八ヶ岳にある北横岳に行く想定で話を聞かせてください。


金井さん
北横岳はロープウェイでアクセスできる雪山初心者に人気の山ですね。


ライター
吉澤
まず、基本のレイヤリングを知りたいのですが、雪山登山のボトムスって何をはいたらいいんですか?


雪山 ボトムス レイヤリング
撮影:筆者(左からタイツ、トレッキングパンツ、アウターパンツ)
金井さん
北横岳の想定で話をすると、もし3シーズン用のトレッキングパンツで行くなら、それだけだと寒いので保温のためにタイツを合わせて、雪でパンツが濡れるのを防ぐアウターパンツを重ねます。

雪山のボトムスは行動中に脱ぎはきができないので、寒くならないようにしっかり準備しておくことが大切です。


ライター
吉澤
なるほど。ただし、3シーズン用のトレッキングパンツには生地が薄いモデルもありますよね。どれを選んでもいいのでしょうか。詳しく教えてください!

トレッキングパンツの基本は“裏がパイル状になった中厚手以上”

トレッキングパンツ
撮影:筆者
ライター
吉澤
早速トレッキングパンツ売り場にやって来ましたが、商品がずら~っと並んでいて、どれが雪山に適しているのか見当がつきません…。


金井さん
明確に線引きできるものではないですが、裏地を見るとある程度判断できます。「表生地と同じ風合い」「パイル状になっている」「起毛している」。これらの中でどれに該当するかチェックしましょう。

▼表生地と同じ風合い
トレッキングパンツ(シングルフェイス)
撮影:筆者
シングルフェイスとも呼ばれるタイプです。薄いものが多く、これは夏山用で雪山には適しません。

 
▼パイル状になっている
トレッキングパンツ(ダブルフェイス)

撮影:筆者
ダブルウィーブとも呼ばれるタイプです。汗をよく吸ってくれて、肌触りがいいといった特長があります。

 
▼起毛している
トレッキングパンツ(裏起毛)

撮影:筆者
文字通り裏地が起毛したタイプです。これは完全に雪山用。タイツが苦手な人にはこれがおすすめで、アウターパンツを重ねれば単体でも雪山に対応できます。

ライター
吉澤
裏地が表生地と同じ風合いのモデルは夏山用、起毛しているモデルは雪山用というのは分かったのですが、パイル状になっているモデルはどっちに区分されますか?


金井さん
裏地がパイル状になっているモデルの中でも、生地に厚みがある中厚手以上のモデルなら、タイツと組み合わせれば雪山でも使えます。“中厚手以上”というのは言葉で説明しづらいので、これについてはお店の人に聞いて教えてもらうのがいいですね。


ライター
吉澤
「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ+タイツ」と「裏地が起毛しているパンツ単体」なら、どっちがおすすめでしょうか?


金井さん
生地が肌に密着している方が温かいので、どちらかと言うと雪山での基本のスタイルは「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ+タイツ」の組み合わせになります。

タイツは中厚手をチョイス!

タイツ
撮影:筆者
ライター
吉澤
タイツはどんなモデルを選べばいいでしょう?




金井さん
まずは中厚手のモデルを選びましょう。「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ」に「中厚手のタイツ」の組み合わせで雪山に行ってみて、寒いのか暑いのかちょうどいいのか、体験してみるのがいいと思います。

ただし、自分がすごく寒がりというのが最初から分かっていれば、厚手のタイツを選んでも大丈夫です。


ライター
吉澤
タイツの素材には、化繊繊維とウールの2種類がありますね。


金井さん
化学繊維は速乾性に優れていて耐久性が高く、ウールと比べると安価です。

ウールは発熱量が高いといわれていて、実際に使っていて化学繊維よりも温かいと感じます。その反面、高価で耐久性がやや低いのがウィークポイント。

個人的にはウールがおすすめですが、雪山をはじめる方はほかにも買うものが多いので、まずは化学繊維になるのかなと思います。

ハードシェルパンツは絶対に必要? レインパンツで代用できる?

アウターパンツ
撮影:筆者
ライター
吉澤
最後にアウターパンツについて教えてください。

アウターパンツには雪山用のハードシェルパンツと、主に3シーズンで使うレインパンツがあります。ハードシェルパンツには雪面で滑りにくい生地を使ったモデルもあるようですが、レインパンツとの違いはほかにもありますか?


金井さん
レインパンツは雨が降ってきたときに一時的にはくものなので、持ち運ぶことも考慮して作られています。だから生地が薄くて軽量なモデルがあるんです。

逆にハードシェルパンツは常時はくことを前提としていて、岩肌に擦ったりアイゼンやピッケルなどを引っ掛けたりする可能性が高いので、厚みがある丈夫な生地で作られています。防水生地が同じなら防水性と透湿性について大きな差はありません。


ライター
吉澤
ハードシェルパンツをはくと温かいのでしょうか?


金井さん
理屈のうえでは保温性も一緒です。ただし温かいと感じるのは、単純に生地に厚みがあるのと、張りがあるのでちょっとした風に吹かれても生地が肌に触れないので寒く感じないからです。


ライター
吉澤
ハードシェルパンツも北横岳に向けて必ず揃えた方がいいですか?


金井さん
タイツと雪山向きのトレッキングパンツと比べると優先順位は下がります。天気がいい日を狙ってレインパンツをはいて北横岳に行ってみて、一度雪山登山を体験してみるといいでしょう。それで、「雪山が楽しくて違う山にも登りたい!」となったら、今度はハードシェルパンツを買うのがいいと思います。


ライター
吉澤
レインパンツにしろハードシェルパンツにしろ、常にはいて歩くべきでしょうか?


金井さん
雪があってトレッキングパンツが濡れる可能性があるなら、最初からはいて行動した方がいいです。

レインパンツは靴を脱がないとはけないですし、ハードシェルパンツでも両サイドが完全に開くモデルでないと途中ではくのは面倒くさいです。だったら最初からはいて行動した方がいいですよね。

サイドフルファスナーとインナーゲイターはあったほうがいい?

サイドフルファスナー
撮影:筆者(サイドが完全に開くサイドフルファスナー)
ライター
吉澤
ハードシェルパンツの種類にはサイドフルファスナーのモデルと、インナーゲイターがあるものとないものがありますね。それぞれの特長を教えてください。


金井さん
両サイドが完全に開くサイドフルファスナーのモデルは、行動中にアイゼンを装着したままでも脱ぎはきすることができます。


インナーゲイター
撮影:筆者(インナーゲイターは裾の内側にある)
金井さん
インナーゲイターがあれば、積雪量がくるぶし以下のルートならゲイターをつけなくていいし、日帰りならゲイターを持っていかないことも可能なので、ないよりはあった方がいいと思います。


ライター
吉澤
いずれも、ないよりはあったほうがいいということですね。


金井さん
そうなんですが、サイドフルファスナーとインナーゲイターを両方備えるハードシェルパンツのモデル数が少ないので、実際には市場にあるモデルの中からサイズなどを考慮して選ぶことになります。迷ったら気兼ねなく店員に質問してください。


ライター
吉澤
いろいろ教えていただきありがとうございました。アドバイスを参考にして雪山用のボトムスを揃えてみようと思います!

まずは難易度の低い好天の雪山で体感してみて!

雪山 北八ヶ岳
出典:PIXTA
【まとめ】雪山のボトムスの基本
■基本のレイヤリング
「タイツ」+「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ」+「アウターパンツ」
もしくは「裏起毛のトレッキングパンツ」+「アウターパンツ」
※アウターパンツで濡れや風を防ぎ、そのほかのアイテムで保温性を確保する。これが基本的な雪山のボトムスの考え方
 
▼トレッキングパンツ
・タイツを合わせるなら裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツがおすすめ
・タイツが苦手なら裏起毛のパンツを単体で使うのもあり
 
▼タイツ
・悩んだら中厚手を
・寒がりの人は厚手を選んでもいい
・化学繊維よりウール素材の方が温かい
 
▼アウターパンツ
・レインパンツとハードシェルパンツの大きな違いは耐久性。ハードシェルパンツの方が重量は重くなるが、岩肌と擦れたときやアイゼンやピッケルといった雪山ギアを引っ掛かけたときに、破けにくい丈夫さがある
・北八ヶ岳の北横岳など日帰りできるルートで、森林限界を大きく越えない山ではレインパンツで代用できる場合もあり
・サイドフルファスナーやインナーゲイター付きのモデルが便利
 
★まずは、「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ」「中厚手のタイツ」「手持ちのレインパンツ」で、難易度の低い山で雪山登山を経験してみて、感じたことをもとに装備をブラッシュアップするのがおすすめ
 
今回の話は、あくまでも天気がいい日の北横岳を舞台にした内容です。これよりも標高が高くて厳しい雪山に向かう場合は、レインパンツではなく耐久性の高いハードシェルパンツが必要になります。
 
最初から背伸びをせずに、まずはタイツを追加して、手持ちのレインパンツでも楽しめる簡単な雪山登山からはじめてみてはいかがでしょう。実際に体感してみると、雪山用ウェアの役割や必要性をより深く理解できるはず。そして、雪山には今まで見たこともない素敵な世界が待っていますよ。

雪山入門~装備選び~


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アウターパンツ
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吉澤英晃

群馬県出身。大学時代に所属した探検部で登山を開始。以降、沢登り、クライミング、雪山、アイスクライミング、山スキーなど、オールジャンルで山を楽しむ。登山用品の営業職を経て、現在はフリーの編集・ライターとして活動中。

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