金井さん
まずは中厚手のモデルを選びましょう。「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ」に「中厚手のタイツ」の組み合わせで雪山に行ってみて、寒いのか暑いのかちょうどいいのか、体験してみるのがいいと思います。
ただし、自分がすごく寒がりというのが最初から分かっていれば、厚手のタイツを選んでも大丈夫です。
ライター
吉澤
吉澤
タイツの素材には、化繊繊維とウールの2種類がありますね。
金井さん
化学繊維は速乾性に優れていて耐久性が高く、ウールと比べると安価です。
ウールは発熱量が高いといわれていて、実際に使っていて化学繊維よりも温かいと感じます。その反面、高価で耐久性がやや低いのがウィークポイント。
個人的にはウールがおすすめですが、雪山をはじめる方はほかにも買うものが多いので、まずは化学繊維になるのかなと思います。
ハードシェルパンツは絶対に必要? レインパンツで代用できる?
ライター
吉澤
吉澤
最後にアウターパンツについて教えてください。
アウターパンツには雪山用のハードシェルパンツと、主に3シーズンで使うレインパンツがあります。ハードシェルパンツには雪面で滑りにくい生地を使ったモデルもあるようですが、レインパンツとの違いはほかにもありますか?
金井さん
レインパンツは雨が降ってきたときに一時的にはくものなので、持ち運ぶことも考慮して作られています。だから生地が薄くて軽量なモデルがあるんです。
逆にハードシェルパンツは常時はくことを前提としていて、岩肌に擦ったりアイゼンやピッケルなどを引っ掛けたりする可能性が高いので、厚みがある丈夫な生地で作られています。防水生地が同じなら、防水性と透湿性について大きな差はありません。
ライター
吉澤
吉澤
ハードシェルパンツをはくと暖かいのでしょうか?
金井さん
理屈のうえでは保温性も一緒です。ただし暖かいと感じるのは、単純に生地に厚みがあるのと、張りがあるのでちょっとした風に吹かれても生地が肌に触れないので寒く感じないからです。
ライター
吉澤
吉澤
ハードシェルパンツも北横岳に向けて必ず揃えた方がいいですか?
金井さん
タイツと雪山向きのトレッキングパンツと比べると優先順位は下がります。天気がいい日を狙ってレインパンツをはいて北横岳に行ってみて、一度雪山登山を体験してみるといいでしょう。それで、「雪山が楽しくて違う山にも登りたい!」となったら、今度はハードシェルパンツを買うのがいいと思います。
ライター
吉澤
吉澤
レインパンツにしろハードシェルパンツにしろ、常にはいて歩くべきでしょうか?
金井さん
雪があってトレッキングパンツが濡れる可能性があるなら、最初からはいて行動した方がいいです。
レインパンツは靴を脱がないとはけないですし、ハードシェルパンツでも両サイドが完全に開くモデルでないと途中ではくのは面倒くさいです。だったら最初からはいて行動した方がいいですよね。
「サイドフルファスナー」と「インナーゲイター」はあったほうがいい?
ライター
吉澤
吉澤
ハードシェルパンツの種類にはサイドフルファスナーのモデルと、インナーゲイターがあるものとないものがありますね。それぞれの特長を教えてください。
金井さん
両サイドが完全に開くサイドフルファスナーのモデルは、行動中にアイゼンを装着したままでも脱ぎはきすることができます。
金井さん
インナーゲイターがあれば、積雪量がくるぶし以下のルートならゲイターをつけなくていいし、日帰りならゲイターを持っていかないことも可能なので、ないよりはあった方がいいと思います。
ライター
吉澤
吉澤
いずれも、ないよりはあったほうがいいということですね。
金井さん
そうなんですが、サイドフルファスナーとインナーゲイターを両方備えるハードシェルパンツのモデル数が少ないので、実際には市場にあるモデルの中からサイズなどを考慮して選ぶことになります。迷ったら気兼ねなく店員に質問してください。
ライター
吉澤
吉澤
いろいろ教えていただきありがとうございました。アドバイスを参考にして雪山用のボトムスを揃えてみようと思います!
まずは難易度の低い好天の雪山で体感してみて!
【まとめ】雪山のボトムスの基本
■基本のレイヤリング
「タイツ」+「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ」+「アウターパンツ」
もしくは「裏起毛のトレッキングパンツ」+「アウターパンツ」
※アウターパンツで濡れや風を防ぎ、そのほかのアイテムで保温性を確保する。これが基本的な雪山のボトムスの考え方
▼トレッキングパンツ
・タイツを合わせるなら裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツがおすすめ
・タイツが苦手なら裏起毛のパンツを単体で使うのもあり
▼タイツ
・悩んだら中厚手を
・寒がりの人は厚手を選んでもいい
・化学繊維よりウール素材の方が温かい
▼アウターパンツ
・レインパンツとハードシェルパンツの大きな違いは耐久性。ハードシェルパンツの方が重量は重くなるが、岩肌と擦れたときやアイゼンやピッケルといった雪山ギアを引っ掛かけたときに、破けにくい丈夫さがある
・北八ヶ岳の北横岳など日帰りできるルートで、森林限界を大きく越えない山ではレインパンツで代用できる場合もあり
・サイドフルファスナーやインナーゲイター付きのモデルが便利
★まずは、「裏地がパイル状になっている中厚手以上のパンツ」「中厚手のタイツ」「手持ちのレインパンツ」で、難易度の低い山で雪山登山を経験してみて、感じたことをもとに装備をブラッシュアップするのがおすすめ
今回の話は、あくまでも天気がいい日の北横岳を舞台にした内容です。これよりも標高が高くて厳しい雪山に向かう場合は、レインパンツではなく耐久性の高いハードシェルパンツが必要になります。
最初から背伸びをせずに、まずはタイツを追加して、手持ちのレインパンツでも楽しめる簡単な雪山登山からはじめてみてはいかがでしょう。実際に体感してみると、雪山用ウェアの役割や必要性をより深く理解できるはず。そして、雪山には今まで見たこともない素敵な世界が待っていますよ。