白くてふわふわ!丸い綿毛がかわいい「ワタスゲ」

2022/03/02 更新

高層の湿原に生育するワタスゲ。高山植物の多くは、美しい花で人々を魅了します。しかし、ワタスゲはふわふわの「綿毛」が魅力の高山植物。今回は、ワタスゲがどんな植物なのか解説するとともに、ワタスゲの名所をご紹介します。

制作者

ライター・フォトグラファー

なかさく

大学時代にタイの山を駆け回って熱帯林を研究し、その後理科(生物)の教員に。現在はライター・フォトグラファーとして活動中。生きものが好きで、ゆるいものからかたいものまで、書いたり撮ったりしています。アウトドアはまだまだ初心者。勉強中です。

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アイキャッチ画像出典:PIXTA

湿原に大きな群落をつくる「ワタスゲ」

福島県浄土平湿原のワタスゲの綿毛
出典:PIXTA(福島県浄土平湿原のワタスゲ)
ワタスゲ(綿菅)は、カヤツリグサ科ワタスゲ属に分類される植物。高さは30cm~50cmほどになる多年生の草本で、葉は線形でスゲ(菅)に似ており、密生して湿原に大きな群落をつくって生育しています。

高山植物の一種であるワタスゲは、日本では北海道から本州中部にかけての高山帯から亜高山帯に分布しています。特徴的なのは「高山帯、亜高山帯の湿原」を生息地とすることで、ワタスゲが分布するのは高層の湿原。
日本だけでなく北半球に広く生育する植物で、北アメリカやユーラシア大陸の北部、イギリスにも分布しています。

白くてふわふわの綿毛

ワタスゲの花
出典:PIXTA(ワタスゲの花)
地域によって違いはありますが、花を咲かせるのは5月~6月ごろ。花は小さくてうすい緑色をしており、あまり目立たない存在です。一見すると花が咲いているようには見えないかもしれません。

花期が終わると、ワタスゲは名前の由来ともなっている白い綿毛をつけます。ワタスゲの魅力はなんといってもこの綿毛。
ワタスゲは別名「スズメノケヤリ(雀の毛槍)」ともよばれます。毛槍とは、大名行列などで使われた、先端が鳥の羽で飾られた槍。ふわっと丸い綿毛が、小さな毛槍のように見えることから、このような名前でもよばれています。
ワタスゲの綿毛
出典:PIXTA(ワタスゲの綿毛)
綿毛はワタスゲの種子の集まり(正確には果穂)です。ひとつひとつの種子に細かい毛が伸びて、直径2cm~3cmほど綿毛をつくっています。綿毛の見ごろは6月~8月ごろ。大きくてふわふわした綿毛たちが風に揺れ、訪れた人たちを癒します。

ただ、ワタスゲにはいわゆる「あたり年」と「はずれ年」があり、「一面に広がるワタスゲの綿毛」は毎年決まって楽しめるわけではありません。しかし、そのようなあたりはずれもワタスゲの魅力。年によって違いがあるからこそ、あたり年のうれしさは格別です。

ワタスゲとサギスゲ どうやって区別する?

サギスゲ
出典:PIXTA(サギスゲの綿毛)
さて、ワタスゲとよく似た植物に「サギスゲ(鷺菅)」があります。サギスゲもワタスゲと同じカヤツリグサ科の植物で、ワタスゲのような白い綿毛をつくります。

実際湿原で目にしてみても、この植物はワタスゲなのかサギスゲなのかわからない…という方も多いのではないでしょうか。どっちの綿毛もきれいだけれど、どちらか知りたい、という方のために、ワタスゲとサギスゲを区別する方法をご紹介します。

ワタスゲとサゲスゲの違い
出典:PIXTA(左/サギスゲ、右/ワタスゲ)
ひとつめのポイントは、1本の茎にできる綿毛の数。ワタスゲの場合、1本の茎の1番上のところに丸い綿毛がひとつだけついています。これに対し、サギスゲの方は1本の茎の先端に数個の綿毛ができます。
もうひとつのポイントは、綿毛のかたちです。ワタスゲの綿毛が丸くて酒屋の杉玉のようになっているのに対し、サギスゲの綿毛はほうき状になっています。

ワタスゲの名所

高層湿原という限られた環境に生育するワタスゲですが、日本でもワタスゲを見られる場所はいくつかあります。続いて、ワタスゲの名所をご紹介します。ワタスゲを見てみたい、という方はぜひ参考にしてみてください。

尾瀬

尾瀬ヶ原のワタスゲ
出典:PIXTA(尾瀬ヶ原のワタスゲ)
尾瀬は、新潟県、福島県、栃木県、群馬県の4県にまたがる日本最大の山岳湿地で、国立公園に指定されています。2,000m級の山々に囲まれた盆地状になっており、その広さは372平方キロメートルと広大です。
尾瀬では、ミズバショウやニッコウキスゲ、キンコウカなどさまざまな湿原の植物を目にすることができます。ワタスゲも尾瀬を彩る代表的な植物のひとつ。

広い尾瀬はいくつかのエリアに分かれていますが、尾瀬ヶ原、尾瀬沼などが人気のワタスゲエリアです。どちらも木道が整備されていて、両側にワタスゲが広がります。尾瀬ヶ原には鳩待峠から歩いて1時間ほどで、尾瀬沼には沼山峠から歩いて1時間ほどでアクセスすることができます。

戦場ヶ原

朝焼けの戦場ヶ原とワタスゲ
出典:PIXTA(朝霧の戦場ヶ原とワタスゲ)
戦場ヶ原は、栃木県日光市、日光国立公園に広がる標高およそ1,400mの高層湿原です。戦場ヶ原では、ワタスゲをはじめホザキシモツケ、ノアザミ、レンゲツツジ、ズミなどいろいろな高山植物の姿を見ることができます。

戦場ヶ原へは、湿原の北側の「湯滝」または南側の「赤沼」からアクセスします。ルートは北側の湯滝から南の赤沼へ、またはその逆で赤沼から湯滝へ通り抜ける道のりが一般的。
木道も整備された5kmほどの道のりで、「ワタスゲデッキ」という名の展望台も。湯滝、赤沼のいずれも駐車場が整備されているほか、バスも通っています。

田ノ原湿原

田ノ原湿原のワタスゲ
出典:PIXTA(田ノ原湿原のワタスゲ)
田ノ原湿原は、長野県志賀高原にある標高1,600mの湿原。田ノ原湿原は遠い昔には湖の底だった場所で、水が失われ陸地化してできたと考えられています。田ノ原湿原でも、ワタスゲのほか、ニッコウキスゲやシャクナゲ、ミズバショウ、レンゲツツジなど数多くの植物を見ることができます。

田ノ原湿原は国道292号線沿いにあり、バスやマイカーでのアクセスも容易。バスでアクセスする場合、湿原北側の「田の原」下車で徒歩5分ほど、湿原南側の「木戸池」下車で徒歩10分ほどの距離です。湿原の北側と南側には駐車場もあります。湿原の遊歩道は木道もしっかりと整備されています。

ふわふわ綿毛のワタスゲは湿原の人気者

大江湿原のワタスゲ
出典:PIXTA(大江湿原のワタスゲ)
高層の湿原に生育するワタスゲは、白くて丸い綿毛がかわいい湿原の人気者。たくさんの綿毛が風にそよそよと揺れる姿はハイカーたちを魅了します。ふわふわの綿毛に癒されたい、そんなふうに感じた方は、ぜひ一度、ワタスゲ群落を訪ねてみてはいかがでしょうか。

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