湿原に大きな群落をつくる「ワタスゲ」

高山植物の一種であるワタスゲは、日本では北海道から本州中部にかけての高山帯から亜高山帯に分布しています。特徴的なのは「高山帯、亜高山帯の湿原」を生息地とすることで、ワタスゲが分布するのは高層の湿原。
日本だけでなく北半球に広く生育する植物で、北アメリカやユーラシア大陸の北部、イギリスにも分布しています。
白くてふわふわの綿毛

花期が終わると、ワタスゲは名前の由来ともなっている白い綿毛をつけます。ワタスゲの魅力はなんといってもこの綿毛。
ワタスゲは別名「スズメノケヤリ(雀の毛槍)」ともよばれます。毛槍とは、大名行列などで使われた、先端が鳥の羽で飾られた槍。ふわっと丸い綿毛が、小さな毛槍のように見えることから、このような名前でもよばれています。
綿毛はワタスゲの種子の集まり(正確には果穂)です。ひとつひとつの種子に細かい毛が伸びて、直径2cm~3cmほど綿毛をつくっています。綿毛の見ごろは6月~8月ごろ。大きくてふわふわした綿毛たちが風に揺れ、訪れた人たちを癒します。
ただ、ワタスゲにはいわゆる「あたり年」と「はずれ年」があり、「一面に広がるワタスゲの綿毛」は毎年決まって楽しめるわけではありません。しかし、そのようなあたりはずれもワタスゲの魅力。年によって違いがあるからこそ、あたり年のうれしさは格別です。
ワタスゲとサギスゲ どうやって区別する?

実際湿原で目にしてみても、この植物はワタスゲなのかサギスゲなのかわからない…という方も多いのではないでしょうか。どっちの綿毛もきれいだけれど、どちらか知りたい、という方のために、ワタスゲとサギスゲを区別する方法をご紹介します。

もうひとつのポイントは、綿毛のかたちです。ワタスゲの綿毛が丸くて酒屋の杉玉のようになっているのに対し、サギスゲの綿毛はほうき状になっています。
ワタスゲの名所
高層湿原という限られた環境に生育するワタスゲですが、日本でもワタスゲを見られる場所はいくつかあります。続いて、ワタスゲの名所をご紹介します。ワタスゲを見てみたい、という方はぜひ参考にしてみてください。尾瀬

尾瀬では、ミズバショウやニッコウキスゲ、キンコウカなどさまざまな湿原の植物を目にすることができます。ワタスゲも尾瀬を彩る代表的な植物のひとつ。
広い尾瀬はいくつかのエリアに分かれていますが、尾瀬ヶ原、尾瀬沼などが人気のワタスゲエリアです。どちらも木道が整備されていて、両側にワタスゲが広がります。尾瀬ヶ原には鳩待峠から歩いて1時間ほどで、尾瀬沼には沼山峠から歩いて1時間ほどでアクセスすることができます。
戦場ヶ原

戦場ヶ原へは、湿原の北側の「湯滝」または南側の「赤沼」からアクセスします。ルートは北側の湯滝から南の赤沼へ、またはその逆で赤沼から湯滝へ通り抜ける道のりが一般的。
木道も整備された5kmほどの道のりで、「ワタスゲデッキ」という名の展望台も。湯滝、赤沼のいずれも駐車場が整備されているほか、バスも通っています。
田ノ原湿原

田ノ原湿原は国道292号線沿いにあり、バスやマイカーでのアクセスも容易。バスでアクセスする場合、湿原北側の「田の原」下車で徒歩5分ほど、湿原南側の「木戸池」下車で徒歩10分ほどの距離です。湿原の北側と南側には駐車場もあります。湿原の遊歩道は木道もしっかりと整備されています。
ふわふわ綿毛のワタスゲは湿原の人気者
