生理痛とPMSも日々のコンディショニングで軽減できます
──自分の生理周期を知ることができたら、次はコンディションの管理ということですが……。私も生理前〜生理中の症状がなかなか重いので、しっかり聞きたいお話です。
奈良岡先生
生理不調はかなり多くの女性を悩ませている症状で、「生理痛」と「PMS」の二つに分類されます。
■生理痛とは

生理のある女性の約7割が感じている症状です。剥がれ落ちた内膜を押し出すために子宮が強く収縮することで発生する痛みのことを指します。
■PMS(月経前症候群)とは

主に生理前に起こる症候群で、腹痛や腰痛から眠気、肌荒れ、憂うつになるなど、体調面や精神面で幅広い症状が報告されています。PMSは女性の体をつかさどるホルモンがアンバランスになることで起こると考えられており、ホルモンバランスが崩れる原因もさまざまです。
生理痛を軽くしたいなら、湯船に毎晩浸かりましょう

奈良岡先生
生理痛を軽くしたいなら、毎晩お風呂に入ることが有効とされています。シャワーだけじゃなくて、お風呂にも浸かってくださいね。
──なぜ入浴が効果的だと考えられているんですか?
奈良岡先生
お風呂に入ると血の巡りが良くなりますよね。生理痛は血を押し出すために子宮が収縮し発生する痛みなので、普段から血の流れを良くしておくことで軽減すると考えられています。
──言われてみれば納得です。
奈良岡先生
あと、平均体温が高い人ほど生理痛が軽いような傾向があるようにも思えます。そのためには入浴をはじめ適度な運動や睡眠も大事なことなんですよ。
PMSを軽減するならマグネシウム・たんぱく質や日光浴が効果的

──実は今回の取材前に、奈良岡先生が監修された書籍『生理で知っておくべきこと』を読んできたんです。目から鱗の事実がたくさんあったのですが、特に驚いたのがマグネシウムやたんぱく質の大切さと、日光の重要性でした。
■マグネシウムとたんぱく質を摂ろう
マグネシウムは筋肉を収縮したり、食べたものをエネルギーに変える大切な栄養素。たんぱく質は筋肉や血液のみならず、ホルモンの材料にもなる重要な栄養素です。どちらもPMSの緩和に大きな関わりを持っており、日頃から意識的に摂取するのがポイントといいます。
おすすめは納豆や豆乳などの大豆製品や牛乳やチーズといった乳製品、そして魚類など。書籍『生理で知っておくべきこと』では、「スキあらば、卵、大豆類、納豆、チーズを追加する」や「スーパーに行ったら、サバ缶、シーフードミックス、鮭フレークを買っておく」など、シンプルで分かりやすいアドバイスがたくさん載っています。
■日光で憂うつな気分とさようなら
PMS症状のひとつ、イライラする・怒りっぽくなる・憂うつな気分になるといった気分の変化には、セロトニンというホルモンが大きく関係しています。セロトニンのもとになるのは、たんぱく質とビタミンBですが、同時に太陽の光に当たるのも大切と言われているのです。
本書では朝起きたらまずカーテンを開け、ベランダでの日光浴や軽いウォーキングが推奨されています。
毎月の生理は生活習慣の通信簿

──と、まだまだ実践すべき体のメンテナンスはたくさんありますが、詳しくは『生理で知っておくべきこと』にすべて書かれているので、気になる方は読んでいただくとして。やはりPMSや生理痛の軽減に大切なのは、適切な睡眠・3食しっかり食べる・適度な運動なんですね。
奈良岡先生
そうですね。正しい生活を送ることで生理不調の症状が緩和すると考えると、日々の生活習慣の結果が生理時に返ってくると捉えることもできます。
──ただ漫然と「規則正しい生活をしよう」と考えると億劫になりますが、生理が生活の通信簿、そして不調が緩和されると思うと……なんだか頑張れそうな気がします。
奈良岡先生
またPMSや生理痛で自分がどんな症状を感じるのか認識することも大切ですよ。
例えば生理前で怒りっぽくなってしまうことを知っていれば、登山する前に「今日わたし怒りっぽいかもしれない。でも気をつけるね!」と注意喚起することもできますし。
──一人ひとり違う症状だからこそ、自分のことは自分で把握しておくことが大切なんですね。
生理中の登山にはこの2つの方法で

そして3つ目のポイント「生理当日の対策」です。実は日本の女性アスリートたちの多くが今まで頭を悩ませてきた問題で、この数年で大きく進化をした分野とも言われています。
タンポンの活用
奈良岡先生
日本は諸外国と比較して、女性アスリートのタンポン使用率が著しく低いということが、2017~2018年に実施したアンケートによって明らかになりました。
長時間快適に過ごすのに有効な手段なのですが、学校の保健体育で使用方法を取り上げないこともあり、なかなか普及していないのが事実でした。
──確かに学校では習わなかった気がします。そうなると家庭や友人の影響など、かなり個人差が出てしまいそうですね。

奈良岡先生
そこで、⼥性スポーツ研究センターがメーカーに委託し、タンポンを使ってもらえるようにパッケージを⼯夫した商品をアスリートたちへ提供しました。
またナプキン派の⽅も、快適にスポーツが実施できるよう、⼥性スポーツ研究センターの研究データも活⽤し、スポーツ⽤ナプキンを開発。2020年4⽉から商品化され、ドラッグストアでも購⼊できるようになりました。
──ここ数年でスポーツをする女性の生理対策の手段が増えたんですね。となると、生理中の登山でもタンポンもしくはスポーツ用ナプキンを使用するのが良さそうですね。
奈良岡先生
現在、日本で発売されているタンポンは厳しい検査基準をクリアして製品化されたものなので、TSS(トキシックショック症候群)のリスクはかなり低くなっています。用法を守って使えば、生理中のアクティビティも安心しながら快適に楽しめると思いますよ。
※TSS(トキシックショック症候群)についてはこちら
月経調整という手段も
奈良岡先生
また事前に生理日と登山がかぶりそうなことが分かっているのなら、低用量ピルで月経周期を調整し、生理日をずらす「月経調整」も有効な手段です。
──そんな簡単に周期をずらすことができるんですか?

奈良岡先生
はい、今ではかなりメジャーな手段だと思います。産婦人科(レディースクリニック)で、月経調整をしたいと言えば多くの病院で低用量ピルを処方してもらえると思います。費用もお薬は1シート2,500〜3,000円程度と比較的リーズナブルです。
──“ピル”と聞くと、ポジティブなイメージだけでなく、ネガティブなイメージを持った方も多くいらっしゃるような気がします。実際のところはどうなのですか?
奈良岡先生
上の世代にとってのピルは「高容量ピル」が一般的かもしれません。高容量は低容量と比べて副作用が強く出てしまうことが多く、今のイメージとは違った印象を抱いている可能性がありますね。また、“ピル=避妊”のイメージを強く持たれていたり。
なお、低容量ピルも合う合わないは個人差があるので、まずはお医者さんに相談してみるのも良いでしょう。
──産婦人科と聞くとちょっと緊張しちゃうんです。病気じゃないのに申し訳ないというか、なんと言いますか。
奈良岡先生
いえいえ、気軽に行っていただいて大丈夫ですよ。受付で「月経調整をしたくて」と伝えればOK。気構えることなく、気軽に相談してみてくださいね。
ライトな登山ならタンポンがいいですよ

登山ならではの不安として「衛生面」が挙げられます。登山道には決して衛生的とは言えないトイレばかり。道によってはトイレさえないルートもたくさんあります。その中での生理中の登山となると、においが気になるという方も大勢いらっしゃるようです。
──例えばドラッグストアでも購入できるデリケートゾーン用のシートで拭く、というのも有効な手段なんでしょうか?
奈良岡先生
それもひとつの手ですが、拭きすぎには注意です。というのも陰部には常在菌という“いい菌”もたくさんいるため、拭き取りすぎることで菌のバランスが崩れてしまう可能性もあります。
──気になるからといって、神経質になりすぎると裏目に出てしまうんですね。
奈良岡先生
環境や経血の量によってどれほどにおいが発生するかは変わってきますが、においのもととなる菌の繁殖はナプキンよりもタンポンの方が抑えられると思います。
経血が外気に触れることで菌の繁殖が始まるため、体内にある限りにおうことはありません。その点、タンポンは体内に経血を留めておくことができることから、におい対策としても有効な手段と言えるかもしれませんね。
──タンポンはムレやモレ、ズレを防止するだけでなく、においの発生も抑えてくれるんですね。良いことを聞きました。
奈良岡先生
一方でタンポンは連続使用ができないなど、使用上の制限もありますので登山計画に合わせて確認してみてください。
──となると、きちんとトイレのある行程や、日帰りのトレッキングなど比較的ライトな登山に向いているのかもしれませんね。
テント泊なら「月経調整」を検討してみてくださいね

──テント泊を含む山行や数日がかりの登山となると、ナプキンやタンポンだけだと心許ない気もします。
奈良岡先生
そんな時にはやはり月経調整が一番安心できると思いますよ。
──そうですね。月経調整をするには産婦人科へ相談ということですが、その前に自分の生理周期を知り、日々コンディションを管理することも、快適な登山に繋がるんじゃないかと思いました。
奈良岡先生
アスリートにとっての本番は試合やレースですが、実は山登りが趣味の方も考え方は同じだと思うんです。登山日が本番とするならば、それに続く日々は練習やコンディショニングを欠かせません。
普段から登山本番を想定して生理周期を含めた体調管理をすることで、快適に安心して山へ出かけられるようになると思いますよ。
危険と隣り合わせの登山だからこそ

取材中に印象的だった言葉があります。それは「登山での体調不良は、重大な事故に繋がる」というものでした。
奈良岡先生
例えば生理でお腹が痛かったり、眠かったり、体調が万全でなかったりすると、登山への集中力が途切れてしまいますよね。それが重大な事故に繋がる可能性も大いに考えられます。登山をする女性こそ、改めて生理について考えてほしいと思うんです。
女性もアクティブに登山を楽しめるいまだからこそ知っておきたい生理と体の関係。あなたの感じる不調や違和感は、体からの大切なメッセージなのかもしれません。
次の山行の前に、自分の体のこと、生理のこと、少しだけ振り返ってみませんか?
【参考文献】
女性スポーツ研究センター(https://www.juntendo.ac.jp/athletes)
細川 モモ(2021)『生理で知っておくべきこと』 日経BP
| 発行所 | 大修館書店 |
|---|
女性アスリートダイアリー 2026[女性スポーツ研究センター]
| 著者 | 細川モモ(著) 佐藤雄一(監修) 奈良岡佑南(監修) |
|---|---|
| 出版社 | 日経BP |
| 発行年月 | 2021年05月 |
生理で知っておくべきこと 自分の体を守る正しいデータを持てなかった女性たちへ
| サイズ(約) | 長さ10.3×W3.9×D1.6cm |
|---|---|
| 重量(約) | 33g |
オムロン|婦人用電子体温計(MC-652LC-PK)
