アイキャッチ画像撮影:washio daisuke(鹿岳・二ノ岳から望む一ノ岳と四ッ又山)
岩稜の宝庫!群馬県の個性あふれる山図鑑

撮影:washio daisuke(榛名山から見た西上州の岩稜たち)
群馬県には、日本百名山のうち11座(平ヶ岳・巻機山・至仏山・谷川岳・日光白根山・皇海山・武尊山・赤城山・草津白根山・四阿山・浅間山※他県との県境に位置する山を含む)があります。登ったことがある!いつか登ってみたい!という人も多いのではないでしょうか。
ただ実は、群馬の名山は日本百名山だけにとどまりません。
知る人ぞ知る、登る人を飽きさせない魅力がたっぷり詰まった山やコースがたくさんあるのです。
たとえば
いきなりたくさんの石像にであったり…… 
撮影:YAMA HACK編集部(登山道に現れたたくさんの石像たち)
迫力の奇岩を望めたり、
出典:PIXTA(ここは日本?と疑うほどの迫力)
急な鎖場や岩場が盛りだくさんだったり、 
たくさんのゾクゾクハラハラする道や迫力のある景色、謎の石像たちとの出会いなど、

編集:YAMA HACK編集部
個性あふれる山がたくさん!さらに低山ながら鎖場や痩せ尾根があり、登りごたえが抜群なのです。
今回はそんなスリルや冒険心を味わいながら、岩稜歩きを楽しめる群馬の個性あふれる4山をピックアップ。
比較的コースタイムが短く、クルマでもアクセスしやすい周回コースをご紹介していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
コースタイム2時間程度でサクッと!登山者を飽きさせない充実の2コース

撮影:YAMA HACK編集部
まずはコースタイム2時間程度で登れる2コースをご紹介します。山麓から見上げる迫力ある岩峰は、古くから信仰の対象にも。コンパクトでありながら鎖場もある岩稜を行く、手応え抜群のルートですよ。
嵩山(789m)|岩場に鎖に観音様!?次々と現れるアトラクションにドキドキ

嵩山(たけやま)は古くから霊山として信仰の対象となり、山中には縄文時代の遺構も。かつては天狗の住む山とされ、山中ピークの岩場には小天狗・中天狗・大天狗の名が付けられています。33体の観音像があり、それぞれ番号がふられているので見つけながら進んでいくのも楽しいですよ!
山頂からの景色も抜群。西上州の山々を見渡せます。
- 【体力レベル】★☆☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:約1時間50分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、鎖場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
- *交通アクセス*
- 【公共交通機関の場合】
上野駅〜中之条駅:JR上野東京ライン特急で約2時間/中之条駅〜道の駅霊山たけやま:タクシーで約10分
【クルマの場合】
関越自動車道・渋川伊香保IC〜道の駅霊山たけやま:約35分
ルート概要
道の駅霊山たけやま(45分)→小天狗(5分)→不動岩(6分)→小天狗(25分)→大天狗・嵩山(29分)→道の駅霊山たけやま

道の駅霊山たけやまから表参道と呼ばれる登山道を進み、天狗の広場と呼ばれる鞍部からひと登りで、小天狗に到着。榛名山・草津白根山・浅間山などの眺望が広がります。

小天狗から片道5分の場所にある不動岩。鎖場を通過して往復してみましょう。天狗の広場まで戻り、中天狗・嵩山城址を経由して、嵩山の最高峰・大天狗への鞍部に到着。
大天狗へは長い鎖場が連続します。岩場の斜度は比較的ゆるやかなので、着実に進みましょう。大天狗からは鞍部まで往路下山し、道の駅霊山たけやまへ下山します。

撮影:YAMA HACK編集部(胎内くぐりの鎖場と岩のトンネル)
今回のルートには紹介していませんが、途中には胎内くぐりと呼ばれる周遊ルートを縦断する道も。急な鎖場や岩のトンネルなど、アスレチック欲を満たしてくれます。
コースタイムが短いため、次に紹介する岩櫃山とセットで登るのもオススメですよ。
岩櫃山(803m)|真田幸村の聖地!天然の要害と呼ばれた岩壁が迫力満点

戦国時代に真田氏の山城が置かれていた岩櫃山(いわびつやま)。高さ200メートルほどの岩壁は、天然の要害として、武田の三堅城の1つに数えられていました。

出典:PIXTA
沢通り・尾根通り・密岩通り・赤岩通りの4コースあり、どのコースも難易度が高いです。今回は比較的難易度の低い沢通りを登り、尾根通りを下山するルートを紹介します。
- 【体力レベル】★☆☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:約2時間5分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、鎖場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
- *交通アクセス*
- 【公共交通機関の場合】
上野駅〜渋川駅:JR上野東京ライン特急で約1時間40分/渋川駅〜群馬原町駅:JR吾妻線で約30分/群馬原町駅〜平沢登山口:タクシーで約10分
【クルマの場合】
関越自動車道・渋川伊香保IC〜平沢登山口:約50分
ルート概要
平沢登山口(55分)→天狗の蹴り上げ岩(18分)→岩櫃山(12分)→天狗の蹴り上げ岩(19分)→天狗岩(8分)→岩櫃城址(13分)→平沢登山口

平沢登山口から5分ほど歩いたところにあるのが、岩櫃山平沢登山口観光案内所。トイレなども設置されています。ここから沢沿いを登り尾根通りと合流すると、天狗の蹴り上げ岩への登り。ハシゴや鎖場が設置されています。

9合目をすぎるとさらに登山道の難易度が上がります。斜度のある岩場をハシゴや鎖場を頼りに慎重に登っていくと、鎖の柵で囲まれた展望の良い岩櫃山頂に到着。

下山は尾根通りを進みます。天狗岩をすぎると稜線上の台地にあるのが岩櫃城址本丸跡。武田の三堅城と呼ばれた要害の遺構から往時をしのびながら、平沢登山口に下山します。
もっとガッツリ歩きたい人向け!複数の山を踏破する2コース

撮影:washio daisuke(鹿岳)
続いて、コースタイム4〜5時間程度の縦走2コースをご紹介。岩稜だけでなく適度なアップダウンや西上州の山並の眺望を楽しみながら、1日たっぷりと登山を楽しみたい人にもオススメですよ。
鍬柄岳(598m)〜大桁山(836m)|スリル満点の鎖場とナイフリッジに大興奮

石尊山の別名をもつ鍬柄岳(くわがらだけ)。険しい岩場に設置された鎖場を経て登った山頂には祠があり、西上州の山並も展望できます。今回はお隣の大桁山へ縦走するルートを紹介します。
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:約4時間20分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、鎖場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
- *交通アクセス*
- 【公共交通機関の場合】
東京駅〜高崎駅:北陸新幹線で約50分/高崎駅〜千平駅:上信電鉄で約55分/千平駅〜鍬柄岳登山口:徒歩で約30分(下り約35分)
【クルマの場合】
関越自動車道・下仁田IC〜鍬柄岳登山口:約10分
ルート概要
鍬柄岳登山口(30分)→頂上取付点(25分)→鍬柄岳(20分)→頂上取付点(50分)→変形十字路(35分)→大桁山(30分)→変形十字路(20分)→川後石峠(50分)→鍬柄岳登山口

登山口から鍬柄岳護摩堂を経て稜線に出ると、鍬柄岳を往復する分岐点である頂上取付点へ。ここから先は切り立った断崖に設けられた、長い鎖場が連続します。三点確保(支持)の原則を守り、慎重に進みましょう。

石祠が設置されている鍬柄岳山頂からは大展望が広がります。これから向かう大桁山はもちろん、次に紹介する四ッ又山・鹿岳から荒船山まで西上州の山並を堪能しましょう。

頂上取付点へ戻り山腹に設けられた林道を越えて斜面を登ると、変形十字路へ。大桁山までは、階段状の登山道が続きます。下山は川後石峠経由で、登山口まで下りましょう。電車の人は、関東ふれあいの道を通って、千平駅まで向かいます。
四ツ又山(900m)〜鹿岳(1015m)|ラクダのこぶみたいな山容が特徴的

ラクダのこぶとも形容される、一ノ岳・二ノ岳の2つの岩峰からなる鹿岳(かなだけ)。今回は、下仁田富士の別名をもつ四ッ又山から鹿岳へ向かう周回ルートをご紹介します。
春のツツジや秋の紅葉が美しく、季節ごとに訪れるのもオススメです。
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:約5時間30分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、鎖場、雪渓、渡渉箇所のいずれかがある
・転んだ場合に転落・滑落事故につながる箇所がある
- *交通アクセス*
- 【公共交通機関の場合】
東京駅〜高崎駅:北陸新幹線で約50分/高崎駅〜下仁田駅:上信電鉄で約20分/下仁田駅〜小沢橋:なんもくバスで約15分/小沢橋〜鹿岳登山口:徒歩で約1時間
【クルマの場合】
関越自動車道・下仁田IC〜鹿岳登山口:約20分
ルート概要
鹿岳登山口(20分)→四ッ又山・鹿岳登山口(50分)→天狗峠(30分)→P1分岐(5分)→四ッ又山(5分)→P1分岐(70分)→マメガタ峠(60分)→鹿岳のコル(20分)→鹿岳(20分)→鹿岳のコル(50分)→鹿岳登山口

撮影:washio daisuke(四ッ又山から望む鹿岳)
鹿岳登山口手前の駐車場から車道を戻ると、四ッ又山・鹿岳登山口へ。沢沿いの林道を進み、マメガタ峠へ直登する分岐を右に登ると天狗峠へ到着。ここから稜線を歩きP1分岐からすぐに、四ッ又山最高峰であるP1山頂です。

撮影:washio daisuke(登山道に多数設置されたロープ)
四ッ又山はその名の通り、P1〜P4の四つのピークで構成。P1分岐まで戻り、P2〜P4までのアップダウンを経て、マメガタ峠まで一気に下ります。この区間は滑りやすい急斜面で多数のロープが。1歩ずつ慎重に進んでいきましょう。

撮影:washio daisuke(鹿岳・二ノ岳山頂直下のハシゴ)
マメガタ峠から登り返し、鹿岳・一ノ岳はロープを頼りに北側をトラバースします。鹿岳のコルから木製のハシゴと鎖場を経て、最高峰の鹿岳・二ノ岳へ。鹿岳のコルから滑りやすいジグザグの斜面を下り、針葉樹林帯を進むと鹿岳登山口に戻ります。
低山とはいえ岩稜歩き……万全の準備で登山を!

撮影:washio daisuke(鹿岳・二ノ岳山頂にて)
個性あふれる群馬の山々で、アグレッシブな登山を楽しんでみてはいかがでしょうか。今回紹介したのはほんの一部。群馬には「ぐんま百名山」が選定されているので、ぜひお気に入りの山を見つけてみてくださいね。
また今回ご紹介しのはすべて岩稜コースで、鎖・ハシゴやロープを頼りに登降する局面もしばしば。低山とはいえ、転倒・滑落や落石事故の恐れもある、あなどれない存在です。
三点確保(支持)をはじめとした岩場歩きの基本を身に付けた上でのチャレンジは必須。核心部ではヘルメットやクライミンググローブも着用し、必要に応じてセルフビレイ(鎖への自己確保)を行なったうえで、安心安全に楽しみましょう!
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