基本は「フラットフッティング」
装着しているアイゼンの爪。その全ての爪がしっかり雪面に刺さるように、靴底全体を雪面に設置させて歩くのが、基本の歩き方です。これを「フラットフッティング」といいます。
雪面の斜度が増してフラットフッティングしにくい場合は、爪先を時計の針のように開いて調整しましょう。
さらに斜度が増したら「フロントポイント(キックステップ)」で爪先のみを雪面に蹴り込んで登りますが、足(特にふくらはぎ)に負担がかかるので片足ずつフロントポイントで歩くのもコツ。
より慎重な行動が必要な下りでは、腰を落として重心を低くするのがポイントです。
*NG例その1〜両足の間隔が狭い〜
歩く時に両足(特に踵)の間隔が狭いと、片方の足のアイゼンの爪をもう片方の足に引っ掛けてしまい、転倒の原因になります。
段差のある斜面を登る時も同様で、片方の足のアイゼンの爪がもう片方の足の内側のウェアを傷付けてしまう場合があるため、両足の間隔には注意しましょう。
斜面をトラバースする時の歩き方
斜面をトラバース(平行に横切る)時は、山側の足の爪先は進行方向に、谷側の足の爪先は下に向けて歩くのがコツ。
斜面を斜めに横切る時も同様。この時、進行方向に応じてピッケルは常に山側の手に持ち替えることが大切です。
*NG例その2〜山側の足のアイゼン全体が接地していない〜
トラバースで注意しなければいけないのが山側の足の置き方。水平に足を置くとアイゼンの山側の爪しか雪面に刺さっていない状態になってしまい、滑落の原因になります。
谷側の爪も雪面に刺さるように、膝を内側に入れて雪面を踏み込むようにしましょう。
応用編その1:ダイアゴナル
傾斜がきつい斜面や段差を登降する時は直登すると辛いもの。そんな時に有効なのが、足を交差させながら斜めに斜面を歩く「ダイアゴナル」。アイゼンの爪を引っかけないような足さばきが重要です。
応用編その2:氷上でのアイゼン歩行
雪面以上に硬くアイゼンの爪が刺さりにくい氷の上。しかもいったん滑ってしまうと止まりません。原則は雪上でのアイゼン歩行と同じですが、更に慎重にアイゼンの爪を氷に刺しながら着実に登降しましょう。これまでのテクニックの集大成として、動画をご覧ください。
正しい知識で安全なアイゼン歩行を!
いかがでしたか?正しい歩き方を実践しないと転倒・滑落など大事故に関わるアイゼン歩行…。この記事をきっかけに、正しいアイゼン歩行をマスターして楽しく安全な雪山登山を満喫していただければ幸いです!
監修:天野和明ガイド
クライマー・国際アスピランガイド。2009年にインドヒマラヤ・カランカ北壁のアルパインスタイル初登攀により、 登山界のアカデミー賞と呼ばれる“ピオレドール賞”を日本人として初めて受賞。現在は石井スポ ーツ登山学校校長として、スタンダードな登山技術、知識の伝達や後進の育成に努めている。2019年12月に は、著書『ヤマケイ登山学校 雪山登山』(山と渓谷社)を刊行。