遭難後、自分の中で変わったことは?
真田:自分の中で道具を買う時の優先度が変わりました。遭難した後に専用のGPSを買ったんですよ。
登山用のGPSアプリがダメだからというわけではなく、雪山やクライミングをやるので役割をわけて、より安全性を高めるために必要だと思ったので。
もちろんウェアが欲しい気持ちもありますが、命を守るための道具を優先的に揃えようという考えです。
道具以外の部分で言うと、今までだと曖昧なまま分岐を進んでしまうこともあったんですが、今は必ず地図とGPSの両方で行き先を確認する習慣がついています。
あとは、撤退する数が増えましたね。多少天気が悪くても突っ込むこともあったんですが、「また来よう」と登山の目的を切り替えて楽しめるようになりました。
もちろん登山の目的を達成することも大切ですが、命あっての登山ということを意識して山頂に行くことだけに捕らわれないで欲しいですね。「撤退も当たり前」と判断の一つとして考えて、天候が悪い時などは無理せず安全第一に考えてほしいですね。山には頂上以外の楽しみもありますし。
安全に山を楽しむために大切だと思うことは?
真田:僕自身まだまだ勉強中で偉そうなことを言えないんですけど、強いて言うなら「今いるところで、何かヤバイことが起きたらどう対処するか想像してみること」ですかね。
僕がよく考えるのは、もし今いる場所で岩が落ちてきて足にぶつかって動けなくなった時にどういう行動したらいいかとか。いろんなパターンがあるんですけど、そういう時に取るべき行動がなにもできないと思ったらそれはやっちゃいけないことなんだと思います。撤退したり、救助が必要なら救助要請する合図だと思うんです。
遭難してからいろいろ見直した時に、技術的に不足していたことがあったと感じました。やっぱりできないことがある時はいっちゃダメなんだなって思ったので、今は新しい目標の山を登るために毎月講習会に参加したり、そこで学んだことを忘れないために自宅で毎日練習しています。
”前向きな気持”も、時には判断を狂わせるリスクがある
「あの山に登りたい」という前向きな気持ちは、どんな登山者でも持ち合わせています。でも、そんな気持ちが判断を狂わせてしまうことも知っておかなくてはいけません。
また、悪天候の時などは「今回は諦めて、また来よう!」と気持ちを切り替えることも大切です。
どんな登山者であっても優先すべきは命であり、無事に下山すること。それだけは忘れずに安全に登山を楽しみましょう。