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『山と道』デザイナー夏目 彰さんに聞く「都会的なルールから外れる」ための”三種の神器”ギア(2ページ目)

ミニマリストパッド

撮影:PONCHO

「テント泊が伴うハイキングで、一番ツラいのは眠れないこと。その原因は、冷えです。だから僕はエマージェンシーの目的も兼ねて山と道の『ミニマリストパッド』を持って行きます。1枚100×50×0.5㎝、重量53gで、寝袋に入れやすいように両端をカットして使っています。エアーマットや他の厚手のマットをメインに、このマットをサブマットで使うのもありです。また寝袋のなかに入れてもよいですし、上掛けにもできます。この薄さに対して保温力は大したものです。

またエマージェンシー的な使い方もできます。お腹に巻いて、上からレインウエアを着て保温着にすることも可能です。実際、秋の北アルプスの日の出前、風速20m、気温-8℃の状況下でインナーダウン代わりに『ミニマリストパッド』を腹巻きにして、どうにか行動し続けたこともあります」

雪山と夏目 彰さん

提供:山と道

冒頭で語ってくれたアメリカのトレイルで水没、そして北アルプスでの寒波、実は他にも屋久島で10年に一度の大雪等々、寒さにやられた経験を多く持つ夏目さん。それらのトラブルから道具立てを見直したり、製品づくりに役立てています。そのひとつがメリノウール素材のウエアだそうです。

メリノウール ウェア

撮影:PONCHO

ウールって、-60℃でも凍らないと言われている素材です。水を含むと発熱し繊維内部にその熱を溜めこみます。また夏涼しく、冬暖かい、天然のエアコンといわれる調温機能も持っています。濡れてもドライな着心地が続き、化繊と比べて低体温症になりにくいんです。最近ではメリノウールと化繊混紡のウエアも登場していますが、化繊の割合が多いほど、メリノウールならではの機能性が減少してしまうんです。

山と道では2019年から素材をメリノウール100%のまま、より生地強度を高めたオリジナル生地に変更しています。ハイキング用のウエアは、あらゆる天候下でハイカーに最適な機能を提供してくれるメリノウール100%だと考えています」

最後に…ハイキング道具選びの極意とは?

ウェアを持つ夏目 彰さん

撮影:PONCHO

「一度自分が背負う道具の重さをすべて測ってみることをおすすめします。慣れている山ならムダなものを持たず、装備をどこまで削れるか試してみることです。もしトラブルに遭遇しても、そのトラブルの解決法が新たな基準となり、勉強することも面白いと思います。高機能ばかりを追い求めずとも、自分が必要としている機能を考えて、少し安価なものでもよいので、シンプルな道具で山を遊んでみてはどうでしょう。僕はそうやって都会的なルールからいかに外れるかを、山では楽しんでいます」

笑顔の夏目 彰さん

撮影:PONCHO

山を知り、道具を知り、自分を知ること。少しずつ経験を積み重ね、一歩ずつその先を確かめ、時に自分を試してみること。そうして見えてくるのは、素晴らしい山の景色と、誰かの基準ではない自分なりの山との付き合い方なのでしょう。

それでは、皆さん、よい山旅を!

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