テクノロジーが登山を変える!?遭難捜索×ドローンの可能性から目が離せない!

2019/04/02 更新

スマホや登山用GPSアプリ、ココヘリなど、山でもさまざまなテクノロジーを見かけるようになってました。その中の1つであるドローン。ダイナミックな写真や映像が撮影できるので、山でも使用している人を見かけます。そんなドローンが山岳遭難捜索の現場で活用されているという噂を聞いた編集部員。ドローンの技術で捜索に協力している株式会社トラジェクトリーの小関さんに、今後のドローンの可能性について聞いてきました。


アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

ハイテクの流れが山にも押し寄せてきた!

ドローンで撮影した山
出典:PIXTA(山をドローンで撮影した写真)
最近はドローン(※1)を使って、山の写真や動画を撮影する人も増えてきました。人の視点からでは撮影できない映像は、臨場感がありとても魅力的。
※1)ドローンとは、人が機体に乗らずに操縦する航空機のこと。(厳密にいうともう少し細かくわかれますが、この記事ではコレくらいで十分です。)

ドローンが遭難捜索に使われている?

ドローン
出典:PIXTA
そんなハイテク機器のドローンが遭難捜索の現場で活用され、その可能性に注目を集めているという噂を聞いた編集部員。

実際にドローンの技術を使って山岳遭難捜索に協力している株式会社トラジェクトリーの小関さんと、遭難捜索の現場で活用した経験のある山岳遭難捜索チームLiSSの中村さんに、捜索現場におけるドローンの可能性について取材。その話の中には、これからの登山業界が目指すべき1つの考え方がありました。

ずばりドローンを遭難捜索に活用するメリットって?

撮影:YAMA HACK編集部
空を飛びながら撮影ができるドローン。山岳遭難捜索の現場では、どのように活用できるのでしょうか?
そのメリットは大きく2つあるそうです。

メリット①捜索活動の効率化

山
出典:PIXTA(情報がないと捜索範囲が広すぎる・・・)
小関さん
まずは、効率的な捜索を行うことができるようになること。もちろん木が生い茂る樹林帯の中などの苦手な場所もありますが、人が歩き回るよりも広い範囲をスピーディーに確認できます。

編集部 大迫
確かに空からだと、全体を俯瞰(ふかん)して確認できますね。

小関さん
人が見つからなかったとしても、それはそれで有益な情報なんです。

編集部 大迫
どうしてですか?

中村さん
例えば、想定していた場所に人がいなかったのであれば、捜索プランを変更することができます。こっちにいないのであれば、別の場所かもしれないと。これだけ広い山の中で人を見つけなければいけないので、正確な情報があることにこしたことはないですよね。

メリット②捜索する人のリスクを軽減できる

遭難捜索中の中村さん
提供:中村さん(実際に中村さんが捜索をしている時の様子)
小関さん
中村さんたちのような捜索隊員の人たちも、怪我などのリスクがあります。捜索範囲を絞って山にいる時間を短くすることで、捜索隊員が危険にさらされるリスクを低減することも可能です。

編集部 大迫
「捜索隊員」というとスペシャリストのように思われがちですが、同じ人間なのでもちろん怪我もしますもんね。

小関さん
知識も経験もある捜索隊員の人たちの命とドローンであれば、ドローンが犠牲になるほうがまだ良いと考えています。もちろん、ドローンを山に落としてはいけないということは前提ですが。

編集部 大迫
人命優先ということですね。

中村さん
それだけでなく、ドローンが現場の具体的な映像を撮影してくれることで、現場の具体的な状況がわかります。なので、装備の準備もしやすいんです。映像もかなりきれいなんですよ。

ドローン取材
撮影:YAMA HACK編集部(実際にドローンの4Kカメラで撮影した映像)
編集部 大迫
めちゃくちゃキレイですね。これだけ鮮明に映るのであれば、現場を具体的にイメージできますね。

小関さん
カメラの性能にもよりますが、40倍ズームが可能なものもあるので、かなり鮮明な映像が撮影できますよ。

これだけメリットがあるのになんで広がらないの?

ドローン取材
撮影:YAMA HACK編集部
捜索の効率も上がって、捜索隊員のリスクも軽減できるメリットだらけの山岳遭難でのドローンの活用。でも、なぜあまり広がっていないのでしょうか。
話を聞くと、どうやらまだ多くの人に普及できる状態ではないようです。

ドローン操作の難しさが普及を妨げている

ドローンのコントローラー
撮影:YAMA HACK編集部(ドローンのコントローラー。かっこいいけど、情報が多くてなんだか難しそう)
小関さん
1つは人材の問題。ドローンを上に飛ばすくらいならそんなに難しくないんですが・・・。直接ドローンが見えない状態で木などにぶつけないように操縦するのって、けっこう難しいんですよ。

※トラジェクトリーさんが撮影を行う時は、事前に国土交通省の許可を得てから行っています。
編集部 大迫
山では風の向きや強さが変わることもあると思うんですけど、見えていないのに操縦者はどうやって水平飛行を維持するんですか?

小関さん
機体によっては、ドローンに積んでいるコンピューターが傾きなどから計算して制御します。でも、もちろん風の影響などで進み具合も変わるので、そういったところは操縦する人の経験や技術ですね。

編集部 大迫
習得するだけでも大変ですね。

小関さん
それにドローンを撮影する現場近くまで、持っていかないといけないんです。私たちは山のプロではないので、捜索隊員の人のように山を登れるわけではないですし。

編集部 大迫
確かに。普段山に登らないのに数千mの山に登ってください!というのも、酷な話ですね。

中村さん
私たちが持っていっても、うまくドローンを飛ばせないんです。練習はしているものの、やはり難しい問題ですね。

簡単に使えないと、広がっていかない!

取材の様子
撮影:YAMA HACK編集部
小関さん
私は、ドローンが自動で飛んで撮影できる仕組みを作ることが大切だと思っています。

編集部 大迫
山が登れる人にドローンの操縦を教えるのでは、ダメなんですか?

小関さん
ダメではないです。ですがそれだと、その人じゃないとドローンを使うことができません。それに習得に時間がかかってしまうんです。そんな難しいことだと、普及しにくいんですよね。

編集部 大迫
おっしゃる通りです。

小関さん
なので私は、テクノロジーの力を使うほうが良いと考えているんです。つまり、我々のような登山をしない人が行ける所からでも飛行して撮影できるドローンの機能を作ることが、重要だと思います。

試行錯誤して、1つ1つ問題を解決していく

取材
撮影:YAMA HACK編集部
小関さん
中村さんに協力してもらって実際にドローンで捜索をする機会もいただいていますが、正直まだ私たちも試行錯誤している状態なんです。

編集部 大迫
ドローンが一般的に知られてきたのも5年前くらいですし、さらに山岳遭難の現場での活用となると実働は多くないですよね。

小関さん
撮影の後も「もう少し低く飛ばせばよかったな」とか「どうやったら映像データが取りやすいかな?」とか、毎回試行錯誤しながらやってます。最近ようやくコツが掴めてきました。

編集部 大迫
まだまだ、山でのドローン活用は始まったばかりということですね。

小関さん
実は長い時間飛行できるドローンはあるんです。でも、それはスペック上の話で。実際、山の中で使うとなると電波の問題など、まだまだ解決すべき問題があります。こればっかりは、実験して経験を蓄積していくしかないですね。

ドローンを使った捜索活動の可能性って?

ドローン取材
撮影:YAMA HACK編集部
まだまだ試行錯誤を重ねていかなくてはいけない、山岳ドローン。改善していくことで、どんな活用ができるのでしょうか?
小関さん
まずは誰でも使えるものにすること。そしてそれは、捜索隊員の人が山に持っていけるくらいの小型な機体であること。ボタンを押すだけで離陸して、自動で特定の範囲を撮影できるようなものを作ろうと思っているんです。

広範囲を撮影できれば操作範囲を絞り込めるし、危険なところに入るリスクも減るので捜索隊員の安全も確保しやすくなります。僕たちが、遠隔で操作しているくらいが理想ですね。

編集部 大迫
人だと数時間かかるところでも、空からであれば数分で行くこともできますもんね。

中村さん
地上班は持ち運びしやすいコンパクトなドローンを持って遭難者のトレースをたどり、道迷いや滑落しそうなポイントで必要に応じてドローンを使って捜索を行っています。

岩棚や枝沢の捜索には、地上班が現場でドローンを飛ばして捜索するほうが有効なんです。

編集部 大迫
地上と空で、捜索の視点が増えるということですね。

中村さん
また、ドローンで人を見つけるだけでなく、待っている家族の人たちにドローンで撮影した場所を見せて、遭難者がどういう場所にいたかというこも見せることもできるんです。

いろいろな可能性があるので、今までの捜索方法だけでなく、違った視点でアプローチできるようになると思いますよ。

登山×テクノロジーには、可能性しかない!

ドローン取材
撮影:YAMA HACK編集部
今回お話を聞いて感じたのは、テクノロジーを活用することで登山はもっと安全で楽しくできるということ。今回は遭難捜索に関わるドローンでしたが、よくよく考えてみると登山用GPSアプリスマートフォンココヘリなど、いろんなデジタル技術を使ったアイテムが広がっています。

そういったテクノロジーを上手に使うことで、より「山を登る」「景色を楽しむ」ことに集中しやすくなるのではないでしょうか?もちろんそれに頼り切ってしまうことは危険です。しかし、さまざまなレベルの人が登山を楽しむ現代において、便利なものを使って安全性を確保することは立派なリスク管理の1つだと思います。

ちなみに小関さんはこの取材の後も、ドローンの実験のために出張に行かれました。遭難捜索の現場の進化に期待しています!

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ドローン取材
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YAMA HACK編集部 大迫
YAMA HACK編集部 大迫

YAMA HACK運営&記事編集担当。六甲山で山歩きをはじめ、関西・中四国の山を歩き回る。 燕岳の山頂でビビるほど高所恐怖症が酷い。 高度感を感じずに、ただひたすら歩き回るのが好きです。安全に気をつけてながら山を楽しむための記事をお届けします。

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