登りごたえのある有明山の魅力と難易度
標高 | 山頂所在地 | 山系 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
---|---|---|---|---|
2268m | 長野県安曇野市・北安曇郡松川村 | 飛騨山脈 | 15.9~19.9℃ | 5.2~10.4℃ |
有明山は平らな峰からなる山容が富士山に似ていることから「有明富士」「信濃富士」「安曇富士」とも呼ばれています。森林限界がなく、シラビソやコメツガなどの針葉樹に覆われた霊山で、古くから山岳信仰の対象として親しまれてきました。
アスレチックな要素がたくさん!
有明山は急登が多く、コースが整備された登りやすい山とは言えません。ですが、岩場や鎖場、木のハシゴや沢の渡渉など変化に富んだ登山道なので、飽きのこない登山が楽しめます。
見どころは奇怪な「あがりこサワラ」
「あがりこ」とは、切り株に残った枝が主軸となって、独特な成長をとげた樹木を指します。芽がもえ出る力が弱いサワラのあがりこは特に珍しいです。
有明山の難易度は?
有明山は「信州 山のグレーディング」で「難易度3C・日帰り可能」に設定されています。
全体的にタフな登山道が続くので、有明山登山をする際には以下のような技術や能力が必要です。
【登山道】
ハシゴ・くさり場、また、場所により雪渓や渡渉箇所がある。
ミスをすると転落・滑落などの事故になる場所がある。
案内標識が不十分な箇所も含まれる。
【技術・能力】
地図読み能力、ハシゴ・くさり場などを通過できる身体能力が必要。
有明荘からの往復【裏参道コース】
最高点の標高: 2230 m
最低点の標高: 1382 m
累積標高(上り): 1134 m
累積標高(下り): -307 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 日帰り
- コースタイム:7時間40分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
【コース詳細】
有明荘(240分)→有明山北岳(20分)→有明山南岳(20分)→有明山北岳(180分)→有明荘
有明荘を往復するコースは、登山口近くまで公共機関で移動できるほか駐車場が3か所もあるので、利便性が良く一番登られているコース。第1・第2駐車場は燕岳に行く人で混雑するため、第3駐車場(有明荘の裏)を起点にすることがおすすめです。
登山口は、有明荘の裏にある第3駐車場から少し進んだ所にあります。ほんのり甘い香りのシラビソの森を歩くと、第2駐車場からの登山道と合流ポイントである三叉路の案内板に出るので、そこから「有明山裏参道」へ進みましょう。
案内板からは長い木のハシゴやトラロープ、木の根っこの登山道が続きます。
三叉路の案内板から約30分進むと、二手に分かれる分岐があります。左(上)に進む方向には進入禁止、右(下)を進むのが正解です。マーキングを見落とさないように注意しましょう!
先を進むと、斜面をトラバースする鎖場に。この辺りからはトラバースの多い登山道です。鎖場を渡りきると少し視界が開け、大天井岳が見えます。
シャクナゲが生い茂る急登を越えたあとは、崩落地を歩きます。木のハシゴや丸太の橋などで歩きやすく整備されていますが、慎重に歩きましょう。
しばらくすると登山道の斜面の鎖場が連続します。足元や手元に注意しながら進みましょう。
八合目の標柱を過ぎて間もなくすると稜線です。ゆるやかな登山道を歩いて山頂が近くなると、展望が開けてきます。
銀色の鳥居が見えたら有明山北岳に到着です。鹿島槍岳、白馬三山、餓鬼、燕岳など、急登続きの疲労が吹き飛ぶ素晴らしい展望が!
中岳へは有明山社の奥宮である祠の裏側を回り、岩場の上を進みます。
中岳は有明山3つの峰の中で1番展望が良い場所、燕岳から常念岳の表銀座の大パノラマが一望できます。中岳から南岳へはさらに藪こぎ。
南岳からの展望は浅間山方面が少し見える程度なので、中岳まで歩く登山者が多いです。北岳や中岳で展望を堪能した後は、来た道を戻って下山します。
黒川沢から有明荘へ抜ける【表参道コース】
最高点の標高: 2230 m
最低点の標高: 856 m
累積標高(上り): 2042 m
累積標高(下り): -1504 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 日帰り
- コースタイム:9時間50分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
【コース詳細】
表参道登山口(150分)→白河滝(100分)→落合(120分)→有明山北岳(20分)→有明山南岳(20分)→有明山北岳(180分)→有明温泉
表参道コースも急登が多く、鎖場やトラロープ、ハシゴや岩場が登場します。さらに、白河滝までは渡渉も多く、アスレチック要素の多いコースです。
中房線黒川橋から林道を500m程進むと登山道の入口です。丸太の橋を渡って黒川沢の右岸に渡りましょう。
平坦な林道から艶やかで心地良い樹林帯へ。徐々に岩や巨石が表れてきます。
岩がゴロゴロ転がる沢沿いは、水量が多い時期は特に注意しましょう。岩に記された赤ペンキや、木の幹に巻かれたピンクテープの目印を辿って進みます。
登山口から約2時間で「妙見の滝」に到着。見えているのは約30mほどですが、落差70mもある大迫力の滝です!黒川沢の右岸沿いを歩くのはここまで。
妙見の滝の下部を50mほど進むと、チョックストーンの大岩が沢をふさいでいます。岩の右側にある鎖とトラロープで岩の側面を越えましょう。
落差25mもある白河滝の下部に虹がかかります。滝の右側には水場があるので、水分を補充することも可能。
白河沢を過ぎて対岸にある草付きの急斜面を登ると、大きな岩のたもとに祠が二つ。その右側の石門をくぐり抜け、なだらかな尾根道を進みます。
落合は、松川村からの「裏参道・馬羅尾コース」と合流するポイントです。ここから有明山方面に進み、祠や石碑が点在する急斜面を登ります。
落合から程なくして横幅の長い岩場をトラバース。鎖場や長いハシゴなども続きます。
安曇野方面が見渡せるやせ尾根を進むと、銀色の鳥居がある有明山北岳に到着!
ここからは裏参道コースを下り、有明荘を目指します。
有明山登山の注意点
有明山の登山道は岩場や鎖場など、悪路続きですので、服装や装備を万全にしましょう!
・防水透湿性のある登山靴
・濡れや汚れを防ぐゲイターの装着
・長袖やタイツで肌の露出を抑える
登山届を忘れずに
長野県登山安全条例に基づき、有明山は遭難の可能性が高い山として指定山岳となっています。また【有明荘コース】と【表参道コース】の登山道は指定登山道に定められ、2016年7月1日から、指定登山道を歩く時は登山届の提出が必須となりました。
登山ポスト設置場所
【裏参道コース】有明荘北側入口の第3駐車場の奥
【表参道コース】登山ポストがないため、インターネット上での提出
熊出没に注意
クマ鈴・ラジオ・ホイッスルなどを携帯し、音を鳴らしながら行動しましょう。また、単独登山はなるべく避け、熊が活発に行動する早朝と夕方にも注意してください。
多湿・降雨後はコース全体に注意
日帰り可能の有明山はハシゴや鎖場などが多く、難易度高めの山です。季節により登山道が滑りやすく、よりシビアな登山道になります。雨や湿気の多い日は登山道が滑る可能性があるので、天気をチェックして日程を決めましょう。
不明瞭な場所もあるので地図は必携!
登山道が不明瞭な場所や藪こぎをする場所もあります。地図を必ず携帯し、GPSやコンパスで現地点を確認しながら行動しましょう。
登山口アクセス情報
紹介した登山コースの、登山口アクセス情報です。燕岳の駐車場と併用されているので、ハイシーズンは満車になることも。公共機関での移動をおすすめします。また通称「中房線」と呼ばれる「長野県道327号槍ヶ岳矢村線」は、冬期の通行止期間があります。道路状況も併せてチェックしてください。
有明荘コースの登山口
有明荘コースの登山口周辺は第1~3駐車場まであります。その駐車場は燕岳登山の駐車場でもあり、燕岳登山口に近い第1・2駐車場は混みやすく、第3駐車場は有明荘に一番近い駐車場です。
【車の場合】
<安曇野市営登山者専用第3駐車場>
住所:長野県安曇野市穂高有明
最寄のIC:長野道安曇野IC
駐車可能台数:約30台
料金:無料
登山ポスト:あり
トイレ:なし
【電車・バスの場合】
穂高駅より「中房温泉行き」定期バス乗車~停留所名「有明荘 着」を下車(乗車時間約55分)
バスの時刻表を見る(南安タクシー)
バスの時刻表を見る(安曇野観光タクシー)
表参道コースの登山口
表参道コースの登山口は有明山神社より、長野県道327号沿い約2.5km先にあります。登山口付近の黒川橋のそばに数台駐車できるスペースはありますが、公共機関での移動を推奨します。
穂高駅より「中房温泉行き」定期バス乗車し「有明山神社」で下車(乗車時間約16分)。そこから長野県道327号を徒歩で約30分。
<有明山神社>
住所:長野県安曇野市穂高有明7271
電話番号:0263-83-3764
バスの時刻表を見る(南安タクシー)
バスの時刻表を見る(安曇野観光タクシー)
下山後に寄りたいおすすめスポット
登山計画の中に、下山後の楽しみを加えている方も多いはず。下山後に立ち寄りやすいおすすめのスポットを紹介します。
国民宿舎 有明荘
有明山登山で是非立ち寄りたい、日帰り入浴ができる宿泊施設。目の前には中房川と豊かな自然に囲まれ、季節を感じる料理も堪能できます。
登山者用に朝・昼用お弁当を提供してくれるので、前泊して登山に臨むのもおすすめです。
住所:長野県安曇野市穂高有明中房
電話番号:0263-84-6511(冬期の問合せ先:燕山荘事務所TEL.0263-32-1535)
営業時間:10:00~17:00
休業日:11月下旬~4月下旬 冬期休業
料金:日帰り入浴/大人620円・小人310円
蕎麦処 くるまや
有明山神社近くにある、芸能人も訪れる人気そば屋。「味を楽しむ人は一人前、蕎麦無しでは生きられない人は五人前の気狂いざる」とユニークなメニューが名物です。登山後のご褒美に、仲間とシェアして食べるのもいいかもしれませんね。
住所:長野県安曇野市穂高有明7023
電話番号:0263-83-2515
営業時間:11:00~19:00(LO.18:30)
休業日:月曜日(祝日の場合は翌日)
大自然のパワーを感じながら充実した登山を!
頂上を目指してひたすら上る登山道。心が折れそうになりながら、時折り覗く景色や足元の健気な花、そしてシャクナゲにフッと癒される有明山です。森林や滝のミストのエネルギーをたっぷり浴びに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山してください。足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんでください。