天空のお花畑が広がる山、朳差岳(えぶりさしだけ)
標高 | 山頂所在地 | 山系 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
---|---|---|---|---|
1636m | 新潟県関川村 | 飯豊山地 | 19.2℃ | 9.4℃ |
朳差岳は飯豊連峰の北部にある山で、日本二百名山の一つ。田植えの頃に農具の一種の「朳(えぶり)」を担いだ人の姿の雪形が山腹に現れることからこの名が付いたとされています。飯豊信仰とは縁がなかったために昔は登山道の整備もされていませんでしたが、山頂に避難小屋ができて以来登山者も増えてきました。
稜線歩きを堪能
飯豊連峰の北端にある朳差岳は、飯豊連峰らしいたおやかな稜線上にあります。とくに前朳差岳から朳差岳、鉾立峰にかけての草原は美しく、稜線に出たときには急登を越えてきてよかったと思わせてくれる絶景が。残雪が残る白と緑のコントラストの美しさも飯豊連峰の山ならではです。
お花畑を満喫
朳差岳は高山植物の宝庫です。とくに雪解けすぐに見られるハクサンイチゲのお花畑は見もの。他にもカタクリやニッコウキスゲ、マツムシソウなど色とりどりの高山植物を見ることができます。
朳差岳の天気
朳差岳に行く前に現地の天気をこちらでCHECK!
山と高原地図 飯豊山 朳差岳・二王子岳
①奥胎内からのコース
朳差岳へ登るルートで一番時間が短いルートです。登山シーズンには林道を走るバスが運行されているので登山客も比較的多いコース。山頂までの片道を紹介します。
①奥胎内~朳差岳山頂
最高点の標高: 1606 m
最低点の標高: 352 m
累積標高(上り): 2286 m
累積標高(下り): -1047 m
- 【体力レベル】-
- 日帰り(片道)
- コースタイム:7時間50分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
奥胎内ヒュッテ(70分)→足の松尾根取付(190分)→水場分岐(100分)→大石山(110分)→エブリ差岳
飯豊連峰の新潟県側、奥胎内ヒュッテからスタートして足ノ松尾根を登るコース。6~10月の夏季は、足の松尾根登山口まで乗り合いタクシーが数本運行していますが、期間外は奥胎内ヒュッテから登山口まで林道を1時間強歩きます。
足の松尾根登山口から登山道に入っていきます。登山口には登山ポストが設置されているので登山届を出して登りましょう。
すぐに急登となり、岩と木の根がミックスした登山道となります。靴やトレッキングポールが引っかかりやすいので注意して。
大きな岩を乗り越えて行く場所も。姫子の峰、英三ノ峰などいくつかの峰を越えて進んでいきます。
水場分岐に到着。近くの水場までは往復で15分ほど。急傾斜の斜面で足場はよくありませんが、よく冷えておいしい水です。
ブナの原生林の急登を登ります。次第に高い木が少なくなり、イチジ峰からは気持ちの良い稜線歩き。西ノ峰を越えると笹原となり大石に至ります。
大石山から鉾立峰へ。鉾立峰の向こうには目指す朳差岳の姿がとらえられます。
この辺りの登山道はハクサンイチゲのお花畑が素晴らしい場所。花の季節には、様々な高山植物が咲き誇ります。
鉾立峰からいったん下り、再び朳差岳へ向けて登り返します。
登山道には、朳差岳の登山道を開拓した藤島玄氏の碑が。山頂のすぐ手前に朳差小屋があります。
朳差岳山頂から望む飯豊連峰のたおやかな稜線は素晴らしく、近くには二王子岳や粟ヶ岳、佐渡の山々まで見渡すことができます。
②東俣からのコース
続いて東俣からのコースをご紹介。距離が最も長く、標高差も最もありますが、他のコースに比べて人が少ないので静かな山歩きを楽しめます。
②東俣彫刻公園~朳差岳
最高点の標高: 1606 m
最低点の標高: 200 m
累積標高(上り): 2817 m
累積標高(下り): -1411 m
- 【体力レベル】-
- 日帰り(片道)
- コースタイム:7時間50分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
ゲート(東俣彫刻公園)(60分)→林道終点(150分)→カモス峰(110分)→千本峰(90分)→前エブリ差岳(60分)→エブリ差岳
東俣彫刻公園からスタート。ゲート手前に登山届箱が設置されています。
東俣彫刻公園から沢沿いの林道を1時間ほど歩いて登山口へ。初夏は新緑が気持ちの良い林道です。
林道終点からすぐに鉄製の一号橋を渡って東俣川の右岸へ。
二号橋で東俣川の左岸に戻り、橋を渡るとブナの大木がそびえる森の中、カモス峰まで急登を進みます。カモス峰を越えると潅木帯となり視界が開け、展望が望めるでしょう。登山道の傾斜はいったんゆるくなり、再び前朳差岳へ向けて急登に。
前朳差岳に到着すればきつい登りは終わり。
近くには二王子岳や飯豊本山が見え、気持ちの良い稜線歩きとなります。
長者原にある池塘。雲海や残雪とのコントラストが美しく、池塘の周りにも高山植物が咲いています。
池塘からはほぼ平坦な道で朳差岳に到着。360度の眺望があり飯豊連峰の眺めは圧巻です。
③飯豊山荘からのコース
最後は山形側から丸森尾根を登るコースをご紹介。尾根道とは言えいきなりの急登ですが、美しい主稜線を長く歩けるコースです。
③飯豊山荘~朳差岳
最高点の標高: 1769 m
最低点の標高: 424 m
累積標高(上り): 2126 m
累積標高(下り): -944 m
- 【体力レベル】-
- 日帰り(片道)
- コースタイム:9時間40分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
飯豊温泉(170分)→夫婦清水(210分)→地神北峰(50分)→頼母木小屋(40分)→大石山(110分)→エブリ差岳
スタートとなるのは飯豊山荘の脇にある登山口。登山届が設置されています。
登山口からいきなりの急登で、一部には岩の痩せ尾根もあり。ザレた場所もあるので足元に注意して。夫婦清水は小さな沢が流れています。
さらに急登が続きますが、遠くには飯豊連峰のたおやかな稜線が見える場所も。登山道が崩れていてよじ登るような箇所もいくつかあります。丸森峰までくると森林限界。
急登を登りきると地神北峰で朳差岳の主稜線に乗り、分岐を右手の頼母木山方面へ。
頼母木山からは草付きの見晴らしが良い尾根道を下って頼母木小屋へ。
稜線上に頼母木山小屋がある牧歌的な風景が見えてきます。頼母木小屋から大石山までは多少のアップダウンがある登山道で大石山へ。
大石山を越えると分岐があり、ここからは①のコースと同じコースで山頂に向かいます。
コース上で利用できる宿泊施設・避難小屋
朳差岳登山で利用できる宿泊施設と避難小屋をご紹介します。冬季は閉鎖される小屋もありますので、営業期間は確認してから行きましょう。
奥胎内ヒュッテ
奥胎内コースの登山口にある宿泊施設で、日帰り入浴も利用できます。周囲はブナの原生林に囲まれ、野鳥のバードウオッチングにも最適。レストランのテラスは川沿いに面しており、山小屋風の食事をいただくことができます。
所在地:新潟県胎内市下荒沢字胎内山1202-49
電話番号:0254-48-0161
営業期間:通年
朳差小屋
山頂にある木造2階建ての避難小屋で平成4年に改築されました。水場は小屋の東側を10分ほど下ったところ。
営業期間:通年(無人)
収容人数:50名
飯豊山荘
山形側からのコースの登山口にある宿泊施設で日帰り入浴や足湯も利用できます。熊が傷を癒しているのを見つけたことから開湯されたと伝えられる湯治にも人気の温泉です。
所在地:山形県西置賜郡小国町小玉川663-3
電話番号:090-5234-5002
営業期間:冬期間は閉鎖
収容人数:69名
頼母木小屋
山形側からのコース上、頼母木山を過ぎたところにある小屋で、シーズン中は管理人が常駐しています。水場が豊富な小屋で10月中旬までバイオトイレの使用が可能。
営業期間:通年(管理人在中期間は7月1日~8月31日、9月1日~10月10日の土日祝)
収容人数:50名
登山口へのアクセス・駐車場情報
朳差岳の登山口までのアクセス方法や駐車場情報です。公共交通機関が少ないためマイカーかタクシーを利用するのがおすすめです。
①奥胎内登山口へのアクセス
【車の場合】
日本海東北自動車道 中条IC-奥胎内ヒュッテ(約1時間)
駐車場:あり
【電車・バスの場合】
JR中条駅よりタクシーにて登山口へ
②東俣彫刻公園へのアクセス
【車の場合】
日本海東北自動車道 荒川胎内IC-東俣彫刻公園(約25分)
駐車場:あり
【電車・バスの場合】
JR越後下関駅よりタクシーにて登山口へ
③飯豊山荘へのアクセス
【車の場合】
東北自動車道 福島飯坂IC-飯豊山荘(約2時間20分)
駐車場:あり
【電車・バスの場合】
JR小国駅-町営バス南武線に乗車-飯豊山荘へ
朳差岳の稜線美と咲き誇る高山植物
朳差岳はどこから登っても急登があってツライという感想も見かけますが、「ツラくても登ってよかった!」と思える景色が待っています。急登の先にある美しい稜線と高山植物に会いにぜひ登ってみてください。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。