パーティ登山での水分補給のタイミングについて
登山を始めたばかりの初心者です。水分(500mペットボトルタイプの物)や、行動食(チョコ、羊羹など)をザックのサイドポケットに入れて普段登っております。
補給方法で悩んでおり、サイドポケットに入れていると歩きながら取ることが出来ず、一度立ち止まっての補給になってしまい、仲間と行った際、補給のために立ち止まると迷惑かかってしまわないかと…補給タイミングを見失ったことが多々あります。ケースバイケースで変わってくると思いますが、改善方法を教えて頂けないでしょうか?
相談者 ムーミン さん
休憩は登山の中でも重要な要素です。体力や経験、メンバー構成、季節などで休憩を摂るタイミングはそれぞれ変わってきますが、休憩をよいタイミングで摂ることも登山の技術のひとつといえます。
できれば一緒に登る仲間と入山前に大まかな行動について話し合って、「これくらい歩いたら休憩しよう」とか「ここで休憩して水分と行動食を補給しよう」などの打ち合わせをしてみてはいかがでしょうか。よいタイミングで体を休めながら水分や行動食を摂ると次の行動への活力にもなります。
もしそのタイミングだけで水分が足りないと判断されるのであれば、ドリンクチューブタイプの水筒(ハイドレーションシステム)を活用することも方法のひとつです。このシステムであれば歩きながらの水分摂取も可能です。
歩きながら食べたり、飲んだりするよりは、なるべく「歩くときは歩くことに専念」し、「休憩は体を休ませて水分と行動食を摂る」とメリハリをつけたほうが安全だと思います。ぜひ入山前のミーティングなどで話し合ってみてください。
夏山と秋山の水分摂取方法の違いについて
夏はガブガブ飲んでしまう水分ですが、気温が低くなる秋山では、水分は意識的にこまめに摂った方が良いのでしょうか?
相談者 Mami Enomoto さん
夏と違い、それほど水を欲さない時期でも、登山中の発汗、呼吸によっても水分は失われています。喉の渇きを感じてから補給する方も多いと思いますが、その時点で体は脱水状態になっています。スタート前にも補給しておくことが大事です。
ただ、夏と違い冷たい水は身体を冷やし血液の循環を悪くしますので、常温や暖かい物で摂取する事をお勧めします。また、コーヒーやお茶などカフェインの入ったものは、利尿作用があるためすぐに体外へ排出されてしまいますので、脱水状態になっていた、ということもありますのでご注意ください。食事からの水分摂取もありますが、水分補給は季節を問わず意識してください。
山行時の飲み物の種類について
自分は人一倍汗っかきで その分水分も多く取ります。先日 神奈川県大山では上りだけでペットボトルのお茶2.5Lとスポーツドリンク0.5L飲みました。飲む物の種類のお勧めをお教えください。
相談者 かわさん さん
登山で大汗をかいてしまうのも無理ない事と思います。お勧めの飲み物ですが、やはり登山時にはスポーツドリンクです。
汗とともに体内から失われるナトリウム等を補ってくれます。一般的に糖分濃度が高めなものが多く、効率的に体内に吸収させるためには2倍程度に希釈して飲むと良いでしょう。
また真水はどうかと申しますと、運動で汗をかき続けている時に真水だけを摂っていると体内のナトリウムが減少し、足がつりやすくなったり、場合によっては低ナトリウム症などの重篤な症状を引き起こす場合もあります。
お茶については緑茶や紅茶に含まれるカフェインに利尿作用があり、脱水症状になりやすくなる恐れがあるので注意が必要です。
汗っかきとの事ですが、汗の拭き方にも注意点があります。そもそも汗は気化熱によって体温を下げる役割がありますが、汗をかくそばから全て拭いてしまっては気化熱による体温調整の効果が十分に得られません。
汗を拭く時は、固く絞った濡れタオルで皮膚をそっと押さえるように拭き、皮膚に湿り気を残すようにすると良いです。これからの季節、熱中症などのリスクは益々高まります。上手に水分補給を行って、夏山シーズンを満喫してください!
高所登山でビールを飲むときの注意点について
山小屋に必ずといっていいほどあるビール類(アルコール)。高所登山でアルコールを摂取することで注意しないといけない点などありますか? 登頂し山域内でビールを飲むことにモチベーション持ってる方もいると思い気になりました。
相談者 Mashio Yanase さん
高所でアルコールを摂取する際に気を付けたいのは体内の水分不足、脱水症状です。
・運動による発汗
・高所という乾燥した環境
・アルコール(特にビール)による利尿作用
上記の脱水症状になる条件が揃ってしまっているのが、山小屋でアルコールを摂取するという事です。脱水症状により血液循環が悪くなると、心疾患や脳疾患といった重大な病気のリスクも高まります。
余談ですが、いわゆる山岳保険の救助費用補償(ヘリ費用など)では、上に挙げたような内疾患が理由の場合は補償の対象外となるものも少なくありません。
脱水の予防には、何はさておき水分摂取です。渇いた喉に流し込むビールは格別ですが、その前にまず水を飲むことが大切です。お酒を飲んでいる合間にも、チェイサーのように水を飲みましょう。また水だけですと体内の電解質バランスが崩れますので、スポーツドリンクも併用すると良いでしょう。
脱水症状以外の注意点としては、騒ぎすぎて他の山小屋利用者とトラブルになる、足元が不確かになり階段から滑り落ちる、二日酔いで翌日の行動に影響が出るなど、様々なお酒にまつわるトラブルを私も目の当たりにしてきました。適量を守って楽しく、という意味では街で飲むときと一緒かも知れませんね。