遭難は「他人ごと」ではない。その理由は・・・


今回は講座の内容から安全登山に役立つ「最低限抑えておきたいポイント」について、編集部がピックアップして紹介します。
ヒヤリハットは遭難のサイン?


皆さんにも登山をしていて、ヒヤリとした経験はないでしょうか?その時は運良く無事でしたが、遭難や重大事故につながる可能性があったと思うととても怖いですよね。
(グラフのn数は一般社団法人日本山岳救助隊捜索事例資料[以下、資料]の事例数です)
遭難者には3つの傾向があった!
もちろん自然を相手にする登山なので想定できないアクシデントもありますが、過去に発生した遭難の原因を検証すると、行方不明になる人には以下の3つの特徴がありました。
①ソロ登山(1人での登山)
②登山計画書を出さずに登山をする
③山岳保険へ加入していない
①ソロ登山
資料によると遭難捜索を行ったうちソロ登山者が88%と高い割合に。ソロ登山は自分のペースで登山を楽しめるという魅力もありますが、遭難してもその異変に気づいてくれる人がいないという危険性があります。
②登山計画書を出さずに登山をする
登山中の行動計画を記した登山計画書。実は初心者の多くが登山計画書を出していないのが現状です。
なぜ、登山計画書を提出する必要があるのでしょうか? それは・・・
登山計画書の提出と家族への共有は、何か異変があった時にあなたをスムーズに探すために必要なので、必ず作成し提出しましょう。
▼登山計画書の作成方法が知りたい方はこちらをチェック
③山岳保険へ加入していない
さらに資料を見ていくと、遭難捜索を行った遭難者の58%が山岳保険や山岳遭難対策制度に入っていませんでした。遭難捜索には莫大な費用がかかることも。万が一に備えておくことは、あなたの家族の生活を守ることにもつながります。
▼山岳保険で万が一に備えましょう
遭難から身を守るためには、登山の危険性を把握し、「装備を揃え、無理のない登山計画を立てて提出し、山岳保険や山岳遭難対策制度に加入しておく」などの事前準備と心構えが重要といえます。
生死を分ける3つの基本行動
怪我をしてしまった時に正しく手当てをして安全な場所へ移動したり、適切なタイミングで救助を要請したりすることを”セルフレスキュー”といいます。もしもの時はこのセルフレスキューが生死を分けることも。ここでは難しい方法ではなく、誰でもできる基本的なセルフレスキューについて伝えします。
ステップ①体温の確保をしよう

また、体を温める時は、特に「心臓」「頭部」「首」を保温しましょう。特に頭部は50%~80%の放熱があるといわれているので、優先して温めるようにしてください。寒いと感じたら服を着込む、ウェアが濡れていたら着替えるなど、小さなことが生死に関わるのでしっかりと対処しましょう。
ステップ②不安な気持ちにならないように落ち着こう

また、怪我をした人を1人きりにせずに、その場に付き添ってあげることも大切です。1人になると想像以上に不安になり、気持ちが折れてしまうこともあります。
ステップ③冷静に救助を呼ぼう

①遭難してしまったら、まずは携帯電話で警察や消防に救助要請をしましょう。(道迷いなら警察、怪我や病気なら消防が良い)
②最初に「山岳遭難です」と伝えてください。
【電話がつながらない場合】
①周りに登山者がいる場合は、救助要請の伝言をお願いしよう。
②伝言を依頼する時は、お礼をするために相手の「名前」「連絡先」を聞いておきましょう。
※遭難時の単独行動は2次災害を招く可能性があるので、できるだけ避けてください。
【登山者必携】命を守る基本装備はコレ!
遭難すると、低体温症につながる「体温低下」、さらなる道迷い・滑落の可能性がある「暗所での行動」、そして「怪我の悪化」など、命に関わる危険にさらされます。そういった状況に対応するために、北島さんが教えてくれた「登山必携3点セット」と「パーティーで持っていたい装備」を紹介します。
①個人で持っておく必携装備

項目 | 理由 |
---|---|
レインウェア | ・体温を風雨から守るために必要。体が濡れるとあっという間に体温が下がるので注意。 ・少し厚手のモデルのほうが、ビバークでも暖かく体温低下を防げる。 |
ヘッドライト | ・夜間行動時に必要。また、明かりがあるだけでも安心できます。予備の電池も忘れずに。 ・動けなくなった時にもライトの光で自分の位置を知らせることも可能。 |
携帯電話 (スマートフォン) | ・緊急の連絡やGPS機能など便利な機能が搭載されている。 ・電波が通じる場所であれば、すぐに救助要請が可能。モバイルバッテリーも必携。 |
上記の表の3アイテムにプラスして持っておきたいものが「予備の水」です。これは500mlくらいのペットボトルを飲料水と別に持っておくことで、非常時の水分補給や傷の洗浄に使うことができます。
沢の水は大腸菌などの雑菌が含まれていることもあるので、できるだけ避けたほうが賢明です。
▼沢の水しかない時にも使える携帯洗浄器もチェック
②パーティーで持っておく装備

項目 | 理由 |
---|---|
ツェルト | ・ビバークには欠かせないアイテム。頭から被るだけでも体温管理が可能。 ・遭難時には体温を下げないことが生死を分けることもある。 |
三角巾 | ・傷口の止血や捻挫、骨折時の固定など様々な使い方ができる。 |
テーピング | ・怪我の手当てだけでなく、テントやツェルトの補修にも使用可能。 |

広げると大きなツェルトも携行時はこんなに小さくなるので、ザックに入れていても邪魔になりません。このツェルトはレインパンツと同じ位のサイズです。
上記以外にも、細引きと呼ばれる2mm~7mmくらいの太さのナイロンのロープがあると、ツェルトをテントのように張ることもできるので便利です。▼ツェルトに関して詳しく知りたい方はこちら
▼上記以外でもあると安心なアイテム
セルフレスキューはもはや”登山者のマナー”である

今回教えてくれた人:北島 英明さん
