【登山装備の軽量化計画】ウルトラライトギアをどう取り入れる? 達人に聞いてきた!

今や山岳雑誌で見ないことはないくらいの『ウルトラライト』という言葉。とにかく軽いギアを集めればいいと思っていませんか? もっと楽に、もっと快適に登山がしたい人の中には、ウルトラライトスタイルを取り入れたいと考えている人も多いよう。ただ、ウルトラライトについて説明してと言われると、認識は実にあいまいかも!? そこで、ウルトラライトの達人に『ウルトラライト』の考え方を聞いてきました!


アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

ウルトラライトを取り入れたい!でもどうすればいい?

ムーンライトギア服部さん
提供:服部さん
今や山歩きの新定番とも言えるウルトラライトスタイル。登山装備の軽量化を考える人が増えてきました。装備を軽くするとより快適に歩けるということは分かるけれど、ウルトラライトスタイルの認識は実にあいまいかも!? 「ウルトラライトの定義って?」「ギア選びのポイントは?」「おすすめのウルトラライトギアはどれ?」そんな疑問を持っている方もまだまだ多いのではないでしょうか。

そこで今回は、『ウルトラライトの達人に聞いてみよう!』と題し、とあるショップへ行ってきました。

アウトドアショップ“MoonlightGear”で聞いてきた!

ムーンライトギア外観
撮影:YAMA HACK編集部
ウルトラライトギアをはじめ、米国から直輸入した厳選ギアを販売しているショップ“MoonlightGear”。その店主でありウルトラライトの達人、登山・トレラン・バックカントリー・クライミング・沢登りとオールラウンダーの服部さんに、ウルトラライトスタイルを指南していただきました。達人ならではの知識や知恵に、ハッとするはず!

服部さん、ウルトラライトのこと教えて~!

ムーンライトギア服部さん
撮影:YAMA HACK編集部(MoonlightGear服部さん)
早速、笑顔が素敵な服部さんに、『ウルトラライト』の考え方について伺っていきたいと思います。

『ウルトラライト』は目的達成の手段であり方法論

ムーンライトギア服部さん
提供:服部さん
――ウルトラライトの定義って、何なのでしょうか?

ウルトラライトは、もともとロングハイクを楽しむハイカーが、少ない負担で長い距離を長時間歩き続けるための手段として装備を軽量化した、アメリカで生まれたハイキングのスタイルなんです。明確な定義はなくて、目的達成のための手段として何をとるかという“方法論“なんです。

デメリットをカバーするところまで考えるのが『ウルトラライト』

ムーンライトギア服部さん
提供:服部さん
――装備を軽くすることでデメリットはありますか?

テントを軽くすると、その分、気密性が下がったり、雨や風に弱くなる可能性はあります。そのデメリットをどういう風に補うかまで考えなければいけません。例えば、フロアレスシェルターだけだと風に弱いと言われるけれど、ビビイ(シュラフカバー)を合わせることで体に近い部分で気密性を保ち、熱を逃しにくくするなどの工夫が必要です。ウルトラライトスタイルは、ただ軽量なギアにすればいい訳ではないんです。人体実験じゃないですけど、装備は試してみてブラッシュアップですね!

『ウルトラライト』実現の秘訣は、自分の持っているギアを知ること

ムーンライトギア内観
撮影:YAMA HACK編集部
――ギア選びのポイントはどんなところにあるのでしょうか?

ウルトラライトには基準となる重量があって、それが「ベースウェイト」です。ベースウェイトは水や食料など消費や補給で変動するものを除いた重量で、ウルトラライトでは4~5kgが目安になっています。その中で、どこの山へ行くか、自分が山で何をしたいかによって重量を調整します。テントや寝袋をどういう装備にするかでウェイトが大きく変わってくるので、衣・食・住の3つに分けて、自分がどのくらいの重量を持っているのかを理解すると、軽くできる部分が見えてきますよ!

「衣」・・・ウエア(レインジャケット、インサレーション、ベイスレイヤーなど)
「食」・・・クッカー、火器類など
「住」・・・テント、シュラフ、マットなど

1度自分の持っているギアの重さを1つずつ量ってみましょう。衣・食・住の中でどこのベースが重いか、もしくは軽くできるか、ギアを見直してみてもよいかもしれません。

では、どんなギアがおすすめなのでしょうか?

達人おすすめ!愛用ギアベストナイン

実際に山でどんなギアを使っているのか気になるところ。服部さんの愛用ギアを、お気に入りポイントと共に教えていただきました。ぜひギア選びの参考にしてみては!

①シェル

<HYPERLITE MOUNTAIN GEAR>THE SHELL
撮影:YAMA HACK編集部
<HYPERLITE MOUNTAIN GEAR>THE SHELL

146gと超軽量。タフなキューべン・ファイバー(ダイニーマ®・コンポジット・ファブリック)と防水浸湿性の高いイーベントのハイブリッド素材を採用しています。10,000mmの耐水圧に対して、透湿性能32,000gm2/24hrと抜けが良いのが特徴です。耐久性にも優れているので、岩に擦れたりバックパックで擦れても安心して使えるのが魅力ですね。

透湿性に対して、風に対してのあたりが強いので、稜線上に出て風に吹かれても寒く感じにくいのもキューベン・ファイバーの特徴です。

※耐水圧10,000mm・・・生地上に1cm四方の柱を立てて中に水を入れ、10,000mm(10m)までの高さに入れた水の水圧に耐えられる(JIS規格)。一般的な目安では、10,000mmは大雨。

※透湿度32,000mg/m2/24h・・・1日(24h)で1平方メートルあたり、32,000g(32kg)の水蒸気の汗を透過する能力がある。

②ベスト

<OMM>ROSTER VEST
撮影:YAMA HACK編集部
<OMM>ROSTER VEST

保温力が高いプリマロフトゴールドという化繊綿のベストです。ダウンは雨や湿度、汗などに弱く、濡れてしまうとロフト(嵩の高さ)がへたってしまうのですが、プリマロフトなどの化繊であれば、汗や雨で濡れてもへたらないので、体幹の温度を保持することができて体回りが冷えないですよ。

<OMM>ROSTER VEST

撮影:YAMA HACK編集部

しかも、160gで軽量なので、保険として持っていくこともできるし、ポケッタブルでコンパクトに収納できるのも、ポイント高いです!

③バックパック

<HYPERLITE MOUNTAIN GEAR>SUMMIT PACK
撮影:YAMA HACK編集部
<HYPERLITE MOUNTAIN GEAR>SUMMIT PACK

360gで軽いのはもちろんなんですが、シンプルなので色んな目的を持って使えるところが気に入っています。

<HYPERLITE MOUNTAIN GEAR>SUMMIT PACK
撮影:YAMA HACK編集部

上部はロールトップして横で止める仕様なんですが、上で止めて正面にウエアやスノーシューなどを挟むこともできるんです。コードの止め方次第で、自分の好きなように使えるのが良いですね。

④クッカー

<Sanpo's Fun Lite Gear>3W Windscreen
撮影:YAMA HACK編集部
<Sanpo’s Fun Lite Gear>3W Windscreen

持って行くのはシンプルに風防とエスビット(固形燃料)だけです。

<Sanpo's Fun Lite Gear>3W Windscreen

撮影:YAMA HACK編集部

カーボンフェルトなどをひいてエスビット置いて、クッカーを置いて…

<Sanpo's Fun Lite Gear>3W Windscreen

撮影:YAMA HACK編集部

クッカーは、400ccのお湯が沸かせればOKです! それぐらいのお湯でも十分食事が取れるんです。お湯を入れて2分で食べられる携行食のビバークレーションとかも200ccちょっと、アルファ米も300ccのお湯があればできちゃうので。

⑤ボトル

<MAXI Titanium>Water bottle
撮影:YAMA HACK編集部
<MAXI Titanium>Water bottle

145gと軽量なチタンのボトルです。水筒としてだけじゃなく、直接火にかけられるのでクッカーとしても使えるのが便利で、これでお湯を沸かしたりしています。

⑥行動食

<ROND>URU BAR
撮影:YAMA HACK編集部
<ROND>URU BAR

ドライフルーツを使ったオーガニックのエナジーバーです。緩やかな血糖値の推移や波のない持続的なエネルギー代謝を行うために、白糖を使用せず、ビタミンやミネラル、運動時に大切なカリウムなども、もともとバランス良く持っているドライフルーツを使用しているので、体に負担なく補給することができます。

マイナス14~15℃まで固まらないので、雪山にもおすすめで、味もおいしいんです!


⑦マット

<OMM>DUO MAT
撮影:YAMA HACK編集部
<OMM>DUO MAT

夏はこれだけで僕は十分ですね! ウルトラライト系のバックパックって、背面パットがないものが多いんですが、バックパックの中に入れて背面パットとしても使えるんですよ。

撮影:YAMA HACK編集部

使っているバックパックにも背面パッドはないので、一石二鳥で重宝してます!

<KLYMIT>Insulated Static V(U.L120edition)

撮影:YAMA HACK編集部
<KLYMIT>Insulated Static V(U.L120edition)

冬はこれを使っていて、366gで軽いのと、中に断念材が入っているので暖かさも十分です。普通のマットは横幅がだいたい51~2cmぐらいのところ、これは横幅58cmで広めなのがポイント。寝返りも打ちやすいし、V字のデザインは寝てても体がズレにくいのと、腕がマットから落ちにくいのが特徴です。

⑧ビビィ

<Rab>ALPINE BIVI
撮影:YAMA HACK編集部
<Rab>ALPINE BIVI

ビビィってシュラフカバーのことで、言い方の違いなんですが、これに寝袋とマットを入れて使います。クライミングとか、岩場の多いところや崖っぷちで寝るとき使われたりするんですが、場所を問わずどこでも張れて、これだけで寝られるので愛用しています。

<Rab>ALPINE BIVI

提供:服部さん

ビビィにも色んな種類があるんですが、これはしっかりと全体を覆うことができる完全防水の形状です。雪山では雪洞を掘って使ったり、天気の良い日はそのまま使ったり、雨のときは岩の隅っこや、木の下で寝ています。タープを合わせることで、雨でも寝たままクッカーでお湯を沸かすことができたり、直接雨に当たらなかったりと、色んな合わせ方ができるのも特徴です。

ビビィは体に近いところで気密性が取れるので、結構あったかいですよ。結露も少ないです。

<Rab>ALPINE BIVI

撮影:YAMA HACK編集部

持ち運ぶときは、ビビィの中に寝袋も入れちゃうのがおすすめです。ビビィ自体が防水なので、防水のスタッフサックに入れなくても済むんです。スタッフサック自体も5gとかあるので、その分軽減できますよ。

⑨テント

<BIGSKY>INTERNATIONAL SOUL X2 TENT 
<BIGSKY>INTERNATIONAL SOUL X2 TENT 

このテントはフライが外せて蚊帳のようになるので、ビビィとは逆で、暑い日に涼しく快適に寝られます。じめじめして蒸し暑い日本の環境でも使いやすいと思います。2人用で1,100gなので、めちゃめちゃ軽い訳ではないんですが、夜空を眺めながら寝ることもできるのが良いですね。

ムーンライトギア服部さんの愛用ギア
撮影:YAMA HACK編集部
「デメリットを他のギアとの組み合わせで、どのように楽しむのか」、「自分の山行の目的に必要な機能は何なのか」、「このギアで最低限なにができればいいのか」、必要装備を考える上で非常に参考になりますね! 服部さん愛用のギアはMoonlightGearでお取り扱いがあるので、気になる方はショップに足を運んでみては。超絶丁寧に答えてくださるため、物欲爆発必至ですので要注意!?

MoonlightGear
住所:東京都千代田区岩本町2-8-10
電話番号:03-6884-8143

MoonlightGear

最後に、ウルトラライトスタイルの最大の魅力を教えて!

ムーンライトギア服部さん
撮影:YAMA HACK編集部
――すばり、ウルトラライトスタイルの最大の魅力は何でしょうか?

行く山や自分が山でどういうことをしたいかによって装備を変えていて、それを考えるのも楽しいんです。ウルトラライトって軽くてシンプルな装備で凌いでいる、わびしいイメージがあるかもしれませんが、その分、自然との距離が近いんです。ウルトラライトは、自然をより感じられるスタイルであることが最大の魅力です。

ムーンライトギア服部さん

提供:服部さん
ただただ軽量なギアを集めて装備を軽くすればいいと考えてしまいがちなウルトラライトスタイル。その根っこには、『自然を近くで感じる』という山へ行く本来の目的があるのを忘れてはいけませんね。その中で、本当に必要な装備を取捨選択。軽量にすることで疲れにくく快適に、より長く歩けるようになることで自然との関わりもさらに広がっていく。ウルトラライトスタイルには、自然回帰的な思想があることが分かりました。ウルトラライトスタイルのルーツを知ることで、取り入れ方が自ずと見えてくるのではないでしょうか。


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YAMA HACK編集部
YAMA HACK編集部

YAMA HACK運営&記事編集担当。登山をきっかけに自然の力に魅了される。山で飲むコーヒーが大好き。何かあれば必ず山に行き、心身共に整える。山について新しい視点を与えられるような記事作りを心がけて日々執筆活動を行う。

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