がんという山

「がんという山を登る」ある一人の女性を動かし続ける想い

週末の登山を楽しみに働き、山に行ったらまた登ろうと思う。そんな「当たり前」の毎日が、何かのきっかけでガラリと変わってしまうことがあります。一人の登山好きな女性に訪れてしまった病気と、病後はじめての山行を取材させてもらいました。

目次

アイキャッチ画像出典:ヤマレコ/angelina

「健康でいること」は当たり前ですか?

術後

提供:angelinaさん

あなたは今、「健康」ですか?普段の生活を送る上で一番の土台となる私たちの体。健康でなければ、働くことも、山に行くことも簡単なことではありません。でも忙しい毎日の中で、その大切さを日々実感している人は少ないのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは山のコミュニティサイト「ヤマレコ」ユーザーのひとり、angelinaさん。私たちと同様、登山が大好きな一人の女性です。

北八ヶ岳が大好き。山小屋の手ぬぐいのデザインを手がけたことも

元気なころのangelinaさん

出典:ヤマレコ / angelina(北八ヶ岳の双子山に登るangelinaさん)

お母様の影響で登山をするようになったというangelinaさん。自宅から材料を持っていき、山で調理して美味しい山ごはんを食べたり、オカリナを吹いて小鳥と戯れたりすることが一番の楽しみ。パートナーのmasatさんは山の花々や星空を写真に撮ることが好きで、月に2,3回ほど二人で一緒に山に登っていました。

北八ヶ岳が大好き。たくさんの思い出がある山です。
以前2人で登った時、うちの人がサプライズで、朝日と共に誕生日プレゼントを渡そうとしてくれたことがあったんです。でも、吹雪になっちゃって(笑)

秩父の雁坂小屋へも何度も訪れています。山の仲間と一緒にのんびりと贅沢な時間を過ごせる場所。職業がデザイナーなので、小屋の手ぬぐいのデザインをさせていただいたこともあります。

angelinaさんのデザインした雁坂小屋の手ぬぐい

提供:angelinaさん(angelinaさんがデザインを手がけた雁坂小屋の手ぬぐい)

そんなangelinaさんの生活が、ある日、一変してしまう出来事が起こります。

思いがけない宣告

胸の痛みを感じる女性

出典:PIXTA(写真はイメージです)

2016年の春ごろから、時折、胸に「細く長い針が貫通していくような痛み」を感じるようになりました。それが、1~2週間に一度ほどだったものが半年後には毎日痛むようになり、病院へ。

でも「痛みがあるならがんではないはず」と思っていたので、最初は内科へ行き心臓検査を行いました。特に異常は見つからず、「もしかして」ということで乳腺科へ。そのまま7時間という長い時間、様々な検査を行ったんです。

そして宣告されたのが「乳がん」でした。
その時点で、押すと「ツー」という痛みを感じる状態。良性のしこりの表面に悪性腫瘍が膜のように覆ってしまい、がんの大きさは8.5cmにもなっていました。

内科から乳腺科の検査にまわった段階で「もしかして?」と感じました。そして、エコー検査を受けた時、技師の人がモニター画像にマークを入れていくのを見て「あぁ、そうなんだ」と。

でもその時は、「最近の医療は優れているし、きっと治療すれば治るだろう」なんて甘く考えていたんです。

「温存や治療での縮小は出来ないのですか?」

医者と話す女性

出典:PIXTA(写真はイメージです)

乳がんと宣告された後、angelinaさんは先生にこう尋ねます。でも、返ってきたのは想像以上の言葉でした。

「現実との温度差があるようですね。もう、そういう段階はとっくに過ぎていて、がんはかなり大きくなってしまっています。胸もリンパも全摘出で、縮小や温存などの選択肢はありません。骨や臓器への転移も考えられます。」

病院を出た時に見た夕日が、ものすごく綺麗で。病院の前の川につがいのカモが泳いでいました。

うちの人になんて話したらよいのか、母にはなんて話したらよいのか、ただそれだけを考え、しばらくそこから動けませんでした。

「私、がんになっちゃったんだ。」

夕飯の買い物へ行った帰り道。angelinaさんはmasatさんに、乳がんになってしまったことを伝えます。

「え!?」

最初はやはり驚きました。たまに胸が痛いとは言っていたのですが、料理上手で食にも気を使っていたので、まさかがんだとは。

でも、すぐに、「なるべく安心して手術や治療を受けてほしい」と思いました。

「もう、山に一緒に行けなくなっちゃうかも…」

弱気なangelinaさんに、masatさんはこう伝えます。

「山より、今は体のことが大事でしょ。」

「死」を身近に感じ、胸をなくすことに深くショックを受けていたangelinaさんは、masatさんのその言葉を聞いてホッとしたそうです。

日本における乳がんの現状

乳がんのイメージ

出典:PIXTA(写真はイメージです)

わが国の2013年の乳がん死亡数は女性約13,000人で、女性ではがん死亡全体の約9%を占めます。2011年の女性乳がんの罹患(りかん)数(全国推計値)は、約72,500例上皮内がんを除く)で、女性のがん罹患全体の約20%を占めます。

年齢階級別罹患率でみた女性の乳がんは、30歳代から増加をはじめ、40歳代後半から50歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します。

乳がんが見つかるきっかけとしてはマンモグラフィなどによる乳がん検診を受けて疑いを指摘される場合や、あるいは自分で症状に気付く場合などが多いようです。
自分で気付く症状としては、以下のようなものがあります。

・乳房のしこり
・乳房のエクボなど皮膚の変化
・乳房周辺のリンパ節の腫れ

乳がんは早期発見により適切な治療が行われれば、良好な経過が期待できます。しこりなど自覚症状がある場合は速やかに受診することを勧めますが、無症状の場合でも、乳がん検診により乳がんが見つかることがあります。

14時間にも及ぶ、大がかりな手術

手術中

出典:PIXTA(写真はイメージです)

宣告を受けたのが年末、そして手術は2ヶ月後に決まります。angelinaさんの生活はガラリと変わりました。

おそらく、がんを告知された方は色々な情報を集めると思います。私もそうでした。これ以上がんを進行させないように、睡眠や冷え、食事に気を使いました。
酵素ジュース、温泉水、人参、にんにく、玄米など、がんに効くといわれている様々な食べ物を揃えました。

「腹部皮弁法」という大きくお腹も切り取る再建手術だったので、体重や脂肪を落とさないようにも気を使いました。

仕事や保険、入院の準備、退院後のことなど、その他色々なことにも時間がかかりました。

「全摘出」と「同時再建」を行う長時間の手術

angelinaさんが手術をした箇所

出典:ヤマレコ / angelina(angelinaさんが描いた、ご自身の手術箇所)

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