白馬岳(しろうまだけ)ってどんな山?
標高 | 所在地 | 山系 | 最高気温(6月‐8月) | 最低気温(6月‐8月) |
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2,932m | 長野県北安曇郡白馬村,富山県黒部市,下新川郡朝日町 | 飛騨山脈(後立山連峰) | 13.4℃ | 0.5℃ |
北アルプスの北部、後立山連峰にある日本百名山の一座で、日本最大の雪渓「白馬大雪渓」があることで知られています。大雪渓のある東側は急峻で、反対の西側や越中側は緩やかと、非対称山稜の姿が特徴です。
また白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳を併せて「白馬三山」と呼ばれており、縦走登山でも人気です。
代馬→白馬→「はくば」!?
写真のように、斜面の岩が春の雪解けにより露出することで「代掻き馬」の黒い雪形が見られるようになり、苗代を作る時期の目印としたことから、古くは「代馬(しろうま)岳」と呼ばれていました。
その後、明治時代に測量が行われた際、「しろ」の音に漢字の「白」が当てられたことで「白馬」となり、やがて「はくば」とも呼ばれるようになりました。
山名としては「しろうまだけ」と呼ばれていますが、地名としては「はくば」と読むことが多く、駅も白馬駅(はくばえき)です。
大雪渓もある、憧れの白馬岳登山。注意する点は?
日本百名山の一座ということもあり、登山者に人気の高い白馬岳。夏の雪渓歩きは涼やかな気分にさせてくれます。
しかし、比較的長いコースタイムや雪渓通過など、体力・技術ともに要する登山となります。注意すべきポイントを見ていきましょう。
白馬岳は日帰りできる?
白馬岳は猿倉を往復する最短ルートであっても10時間を超えるため、小屋で宿泊するなど1泊2日以上かけて登ることをおすすめします。累積標高差が1,700m以上もあるため、体力はもちろん、慣れない雪渓歩きの技術も必要なので、十分な余裕を持つことが大切です。
大雪渓の歩行にアイゼンは必要?
標高差約600m、距離約2km、抜け切るまでにおよそ2時間半かかる大雪渓を進むには軽アイゼンが必要です。あらかじめ準備していくことが基本ですが、もし忘れたりした場合は、白馬村内のアウトドアショップ(モンベル、好日山荘などあり)でも購入可能です。
もしくは大雪渓に入る前の猿倉荘や白馬尻小屋、栂池ヒュッテ、山頂の白馬山荘といった山小屋でも販売もしくはレンタルを行っているので、事前に確認しておきましょう。
白馬岳の登山適期は?
白馬岳登山の適期は7月中旬~9月ごろ。特に7月・8月は大雪渓に長蛇の列ができるほど賑わい、山小屋は混雑します。「花の白馬岳」と言われるほど高山植物の宝庫でもあり、梅雨が明けた7月頃に咲き乱れます。
気候面では、夏でも朝晩は冷え込み、大雪渓で吹き込む風も冷たいので防寒対策が必要です。
現地の天気予報と登山ルートを事前にチェック!
白馬岳は標高が3000m近くあり、開山直後のゴールデンウィークの時期でも最低気温は平均-5℃。過去には悪天候による遭難事故もありました。5月~6月は積雪や残雪があること、夏期でも雪渓歩きがあることを踏まえ、自分のレベルに合った山行計画を行い安全な登山をしましょう。
てんきとくらす|白馬岳
白馬岳ゴールデンルート|憧れの大雪渓を登る!
最高点の標高: 2909 m
最低点の標高: 1220 m
累積標高(上り): 3082 m
累積標高(下り): -2646 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:14時間35分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
【1日目】猿倉(60分)→白馬尻小屋(150分)→岩室跡(120分)→白馬岳頂上宿舎(20分)→白馬山荘
猿倉荘の脇からスタート!トイレを済ませ、装備をチェック。大雪渓を登る時に必要な軽アイゼンも販売されています。
沢沿いの林道や灌木帯のよく整備された木道、高径草原の中を貫く石畳の道を進みます。天気が良ければ正面にこれから登る白馬岳の雄姿も!
「お疲れさん!ようこそ大雪渓へ」と書かれた石碑がお出迎え!冬は撤収されるプレハブの白馬尻小屋からは、これから登る大雪渓の姿を確認できます。
2時間半かけて大雪渓を登ります。大雪渓付近は天気が変わりやすいため、午前中の通過がベターです!目印として撒かれている紅ガラに沿って、落石に注意しながら進みましょう。
振り返れば一列に雪渓を登る登山者の姿が!
大雪渓を抜けると、ガレ場や小雪渓のトラバースが待っています。登山道脇に咲く可憐な高山植物や美しくそびえ立つ天狗菱を見ながら高度を上げていきます。
山頂の手前にはテント場もある「白馬岳頂上宿舎」や日本最大規模の山小屋「白馬山荘」が建っています。白馬山荘のレストランから雲上の景色を眺めながら優雅なひとときを満喫するのはいかがでしょうか?
山頂からは登ってきた急峻な大雪渓が見下ろせ、鋭く切れ落ちる杓子岳や白馬鑓ヶ岳といった白馬三山の姿も。さらに立山連峰や槍・穂高など北アルプスの主峰がそびえ立つ大パノラマが堪能できます。
白馬岳山頂から白馬大池へ下り、栂池平へ下山します。白馬大池に至る小蓮華尾根は眺めの良い稜線歩き!コース最後まで飽きずに白馬岳をたっぷり満喫できるでしょう!
栂池往復ピストンルート|湿原の花畑も一緒に楽しめる!
最高点の標高: 2909 m
最低点の標高: 1841 m
累積標高(上り): 2435 m
累積標高(下り): -2435 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:13時間5分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
【1日目】栂池自然園駅(80分)→天狗原(120分)→白馬大池(120分)→小蓮華山(50分)→三国境(60分)→白馬岳(10分)→白馬山荘
ロープウェイの終着駅、栂池自然園駅を起点に白馬岳へ向かう往復ピストンルートです。時期によっては一部残雪があるものの、大雪渓を通過しないため、雪渓歩きが苦手な人はこちらがおすすめです。天狗原はイワショウブなどさまざまなお花が咲き誇る美しい湿原です。
ロープウェイの駅から少し歩くと栂池ビジターセンターがあります。このビジターセンター脇の登山道から登っていきます。
登山道をしばらく進むと、池塘(ちとう)が点在し木道が整備された天狗原に出ます。
まるで庭園のような湿原には、ワタスゲの白い果穂や秋にはナナカマドの赤い実を目にすることができます。
北アルプスの中で2番目に大きな白馬大池。標高2,300m以上の高所にあり、湖畔には白馬大池山荘が建っています。晴天時には大池越しに周囲の山々の姿も望めます。
白馬大池から小蓮華山や三国境に至るルートは稜線歩きとなり、これから向かう白馬岳や連なる杓子岳のとても美しい稜線が望めます。山歩きの醍醐味をたっぷり味わいながら後もう一息!
白馬山荘で1泊し、往路と同じルートで下山します。
蓮華温泉~猿倉ルート|秘湯と雪渓もいっしょに堪能!
最高点の標高: 2909 m
最低点の標高: 1219 m
累積標高(上り): 2994 m
累積標高(下り): -3249 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 1泊2日
- コースタイム:11時間5分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
【1日目】蓮華温泉(110分)→天狗ノ庭(100分)→白馬大池(120分)→小蓮華山(50分)→三国境(60分)→白馬岳(10分)→白馬山荘(泊)
標高1,475mにある雲上の秘湯・蓮華温泉から出発し、白馬大池などの見どころをしっかりと押さえたルート。帰りは雪渓ルートを通るため、白馬岳の魅力を存分に楽しめます。
泉質の違う温泉が複数湧き出る蓮華温泉からスタート!
ゴロゴロとした岩が集まる天狗の庭は、そこまで広くないので小休止する程度にしましょう。
雪倉岳や小蓮華山の姿を楽しみながら白馬大池まで歩きます。
白馬大池山荘で一息つき、高原の空気を楽しむのも良し!ここから先は眺めの良い稜線歩きが待っています。
白馬岳の名物・大雪渓を歩きながらゴールの猿倉へと歩いていきます。
白馬岳上級者向けコースはこちらをチェック!
番外編ルート|片道4時間の秘湯を楽しもう!
最高点の標高: 2019 m
最低点の標高: 1219 m
累積標高(上り): 2041 m
累積標高(下り): -2041 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 日帰り
- コースタイム:8時間10分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
猿倉から出発すると、途中で左に折れる分岐が出てきます。それが白馬鑓温泉への道!白馬岳ピークは踏みませんが、日帰りで秘湯を楽しむコースもおすすめですよ。
猿倉荘の登山口からスタートしてブナ林を越え林道に至ると、白馬鑓温泉小屋へ向かう登山道の分岐が見えてきます。ここからは、前半緩やか、小日向のコルに至る後半は急登といった道なりです。
小さな湿原が点在し、双子尾根と小日向山の鞍部にある小日向のコルからは、白馬岳や杓子岳、白馬鑓ヶ岳の壮観な眺めが楽しめます。
斜面のトラバースを繰り返しつつ、白馬鑓温泉小屋へ到着!日本で2番目に高いところにある温泉です。白馬鑓ヶ岳の中腹にあり、天然湧出量では標高日本一、開放感抜群の雲上温泉です。
内湯はなく開放的な混浴露天風呂と壁で囲まれた女性専用風呂、気軽に楽しめる足湯があります。温泉に浸かりながら望むご来光や美しい星空はきっと最高の思い出になるはず!
白馬岳の山小屋情報
ここでは紹介したコース上にある山小屋をします。山頂での宿泊はもちろんですが、前泊後泊などに利用することで余裕のある登山を行うことができますよ。
猿倉荘
大雪渓コースの玄関口となる猿倉荘は自然林に囲まれた山小屋。登山相談所が開設され、大雪渓を登るための軽アイゼンの販売も行われています。登山者の車を栂池や蓮華温泉などに運ぶ代行サービス窓口もあるので縦走時には便利です。
白馬尻小屋
大雪渓直下にあり、春に組み立て、シーズンが終わると解体される山小屋。喫茶スペースも充実し、大雪渓へ入る前に一息つける場所でもあります。軽アイゼンの販売もあり。ここで前夜泊する行程を組むと、朝イチで大雪渓に臨める余裕のあるコース取りができます。
※2022年度の営業はありません
白馬頂上宿舎
女性限定のプレミアムレディースルームやテント場もあり、宿泊のスタイルを選ぶことができます。また、山岳パトロールや遭難救助などを行う隊員や昭和大学医学部白馬診療所のスタッフたちがシーズン中は常駐して活動しています。
白馬山荘
頂上直下にある日本最大級の山小屋で、開業は明治時代と老舗。一面ガラス張りの展望レストランからは北アルプスの絶景を楽しみながらくつろげます。相部屋だけでなく、山小屋では珍しい2人用ベッドルームの個室などもあります。
白馬大池山荘
周囲が開けている白馬大池の畔に建つ静かな山小屋。食堂は談話室としても使用され、昼には喫茶営業も行っています。
白馬岳蓮華温泉ロッジ
泉質の違う4つの混浴野天風呂が点在しており、大自然を感じながら開放感に包まれて浸かることができます。内湯もあるので、女性も安心して入浴することができます。
栂池ヒュッテ
吹き抜けの2階ラウンジが特徴的で、広々としたレストランや雰囲気の良いテラスも魅力。ゆとりのある洗い場を備えたお風呂も◎。軽アイゼンのレンタルもあります。
各登山口までのアクセス
ここでは紹介したルートの登山口アクセスについてご紹介します。
猿倉登山口
白馬岳登山だけでなく、白馬三山縦走でよく使われる登山口です。
【クルマの場合】
・上信越自動車道「須坂長野東」IC−国道19号−県道31号−県道33号−県道322号−猿倉
・長野自動車道「安曇野」IC−県道310号−国道147号−国道148号−県道322号−猿倉
【公共交通の場合】
・JR大糸線「白馬」駅下車、路線バス「白馬八方 猿倉線」乗車―「猿倉」バス停下車
【高速バスの場合】
・毎日あるぺん号…都内から猿倉までの直通バス
栂池登山口
小谷村の栂池高原スキー場より、「栂池ゴンドラリフト」と「栂池ロープウェイ」を乗り継いで、登山口となる栂池自然園へ向かいます。
【クルマの場合】
・上信越自動車道「須坂長野東」IC−国道19号−県道31号−県道33号−国道148号−県道433号−栂池駐車場
・長野自動車道「安曇野」IC−県道310号−国道147号−国道148号−県道322号−栂池駐車場
【公共交通機関の場合】
・JR大糸線「白馬」駅下車、アルピコ交通バス「白馬駅-白馬八方-栂池高原線」乗車−「栂池高原」バス停下車
・JR「長野」駅下車、「特急バス長野-白馬線」乗車―「栂池高原」バス停下車
・JR「南小谷」駅下車、小谷村村営バス「栂池高原~南小谷駅~雨飾高原」線または「栂池高原~白馬大池~南小谷」線乗車―「栂池高原」バス停下車
【高速バスの場合】
・アルピコ交通バス…都内から栂池高原への直通バス。
蓮華温泉登山口
小谷村にある蓮華温泉からの登山口になります。
【クルマの場合】
・上信越自動車道「須坂長野東」IC−県道31号−県道33号−国道148号−県道433号−国道148号−県道505号−蓮華温泉
・北陸自動車道「糸魚川」IC−国道148号(千国街道)−県道505号−蓮華温泉
【公共交通の場合】
JR「糸魚川」駅またはJR「平岩」駅下車、「糸魚川バス」乗車ー蓮華温泉
※糸魚川バスは夏季運行のみです。
帰りに寄りたい温泉情報!
白馬岳に来たら外せない温泉!ここでは下山後に立ち寄れる日帰り温泉施設を紹介します。
白馬八方温泉 みみずくの湯
白馬三山の眺望が楽しめる温泉です。桜の時期には夜桜も楽しめます。温泉うどんが名物の茶屋が併設されています。
八方の湯
出典:PIXTA
白馬八方バスターミナル向かいにある、アクセスが便利な日帰り温泉施設です。外には足湯もあるので、時間がないときにはそこで温泉気分を味わうこともできますよ。
山の魅力が盛りだくさんの白馬岳へ!
大雪渓を登る楽しさや眺めの良い稜線歩き、大自然に囲まれた温泉、と楽しむポイントが盛り沢山の白馬岳。難易度は中級者以上向けですが、ぜひ1泊2日で白馬岳へ行ってみてはいかがでしょうか?きっと忘れられない体験ができることでしょう!