どんな写真が撮れる? マクロレンズとは
マクロレンズとは、被写体に近づいての撮影に特化し、「マクロ(macro)=大きい」の意味の通り、被写体にギリギリまでよって大きく写すことができるレンズのこと。
小さく緻密な被写体の撮影に
一般的な非マクロレンズは被写体に近づきすぎるとピントが合いませんが、マクロレンズは接写することができるので、料理や花などを大きく写したいときに向いています。
花びらについた雫など、幻想的な世界を収めることも可能。
ポートレートやスナップ撮影に
カメラのレンズは被写体に近づくほど背景がボケやすくなるという特性があります。マクロレンズは接写することができるため、人の肌や髪の質感を表現しながらしっかり背景をぼかすことができるので、ボケとピントのメリハリが効いた雰囲気のある写真を撮ることができます。
また、マクロレンズは絞り値がF2.8など明るくボケやすいものが多いのも特徴。絞りを開放しながら被写体によることで、一般的な単焦点レンズと同様に雰囲気のあるポートレートやスナップ写真を撮ることができます。
よりボケを大きくしたい、明るいレンズが欲しい!という人は、より絞り値の低い単焦点レンズがおすすめです。
マクロレンズの選び方|3つのチェックポイント
①最短撮影距離(被写体にどこまで近づけるか)
最短撮影距離とは、ピントを合わせられる被写体とカメラセンサーの最短の距離のこと。数値が小さいほど被写体に近づいて撮影することができるので、より撮影の幅が広がると考えて良いでしょう。
同じ画角ならより最短撮影距離が短いレンズを選んだ方がマクロレンズとしての機能性は高いといえますが、実際には開放絞り値など複数の要素を見て決めるのがおすすめです。
②最大撮影倍率(被写体をどのくらい大きく写せるか)
最大撮影倍率とは、最短撮影距離で被写体を撮ったときに、どのくらいの倍率で大きく写すことができるかを表した数値。カメラのイメージセンサーに投影される被写体の大きさと、実際の被写体の大きさの比率であり、倍率が高いほど大きく写すことができます。
例えば、10cmの被写体を撮影する場合、最大撮影倍率が「等倍(1倍)」では10cmで、「1/2倍」では5cmで、「1/4倍」では2.5cmで投影されます。
マクロレンズは「等倍」が一般的。通常のレンズよりも高い倍率で接写撮影ができるのです。
等倍以上で写すことができるということは、昆虫や植物の葉脈ひとつひとつなど繊細なものまで撮れるというメリットがあります。
③焦点距離
焦点距離とは、ピントを合わせたときのレンズからカメラセンサーまでの距離のこと。一般的なマクロレンズは、焦点距離が変化しない「単焦点レンズ」のうちのひとつです。
また、レンズの明るさとボケ感に大きく影響する「絞り(F値)」の数字が小さいものが多く、ボケを活かした撮影や暗い場所での撮影でも活躍します。
購入前に必ずチェック! レンズマウントに要注意

レンズ選びの前に、「マウント=レンズとボディの接続部分」をしっかりチェックするようにしましょう。レンズ装着部はメーカー各社によって構造が変わり、「Aマウント」や「Kマウント」などと呼ばれています。
アダプターをつければ違うマウントの装着も可能ですが、基本的には自分が持っているカメラのマウントに合ったレンズを選ぶようにしましょう。なお、ミラーレス一眼と一眼レフでもマウントが変わり、「ソニーのカメラなら全てのソニーのレンズが使える」というわけではないので要注意です。
また、サードパーティーと呼ばれるシグマやタムロンといったブランドでは、ニコンFやキヤノンEFなどさまざまなマウントに対応した高性能なレンズを手軽な価格で発売しています。純正レンズでは予算が……と悩まず、ぜひサードパーティーのレンズも検討してみましょう!
それでは、各社が製造しているマクロレンズについておすすめご紹介していきます。
ニコン|標準から中望遠までバランスよく揃う絶妙なラインナップ
ニコンの一眼レフ向けFマウント対応のマクロレンズを紹介します。ニコン製のマクロレンズは、マクロではなくマイクロ(Micro)という名称になっているのが特徴です。40〜105mmまで用途に合わせた焦点距離をバランスよくラインナップ。
【標準】AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
・コンパクトかつ軽量でリーズナブル
焦点距離 | 40mm |
最短撮影距離 | 0.163m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 約68.×64.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約235g |
フルサイズ対応 | × |
【標準】AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
・フルサイズ対応レンズ
焦点距離 | 60mm |
最短撮影距離 | 0.185m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 約73×89mm(バヨネットマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約425g |
フルサイズ対応 | ◯ |
【中望遠】AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
・フルサイズ対応レンズ
焦点距離 | 105mm |
最短撮影距離 | 0.314m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 約83×116mm(バヨネットマウント基準面からレンズ先端まで) |
質量 | 約750g |
フルサイズ対応 | ◯ |
キヤノン|撮影倍率5倍や望遠も!マクロ撮影が楽しくなるレンズ
キヤノンの一眼カメラに対応するマクロレンズをピックアップ。レンズマウントはフルサイズ対応のEFマウントのほか、APS-C対応のEF-S、ミラーレスのEOS M(EOS Kiss M)シリーズのEF-Mマウントの3種類を紹介します。
【標準】EF-M28mm F3.5 マクロ IS STM
・EOS M(EOS Kiss M)シリーズ唯一の純正マクロレンズ
焦点距離 | 28mm |
最短撮影距離 | 通常撮影モード時:0.097m スーパーマクロモード時:0.093m |
最大撮影倍率 | 通常撮影モード時:1.0倍 スーパーマクロモード時:1.2倍 |
絞り開放 | F3.5 |
寸法(最大径×長さ) | 60.9×45.5mm[収納時] |
質量 | 約130g |
フルサイズ対応 | × |
【標準】EF-S35mm F2.8 マクロ IS STM
・APS-Cの一眼レフ専用レンズ
焦点距離 | 35mm |
最短撮影距離 | 0.13m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 69.2×55.8mm |
質量 | 約190g |
フルサイズ対応 | × |
【標準】MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト
・フルサイズ対応
焦点距離 | 65mm |
最短撮影距離 | 0.24m |
最大撮影倍率 | 5.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 81×98mm |
質量 | 約710g(三脚座を除く) |
フルサイズ対応 | ◯ |
【中望遠】EF100mm F2.8Lマクロ IS USM
・フルサイズ対応
焦点距離 | 100mm |
最短撮影距離 | 0.3m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 77.7×123mm |
質量 | 約625g |
フルサイズ対応 | ◯ |
【望遠】EF180mm F3.5L マクロ USM
・フルサイズ対応
焦点距離 | 180mm |
最短撮影距離 | 0.48m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F3.5 |
寸法(最大径×長さ) | 82.5×186.6mm |
質量 | 約1,090g(三脚座を除く) |
フルサイズ対応 | ◯ |
ソニー|取り回しの良い標準レンズや高性能「Gレンズ」も
ソニーには一眼レフのαAマウントとミラーレス一眼カメラのαEマウントがあります。今回は人気のα7シリーズやα6000シリーズで使えるαEマウントのレンズを紹介します。
【標準】SEL30M35
・α6000番台のAPS-Cミラーレス用マクロレンズ
焦点距離 | 30mm |
最短撮影距離 | 0.095m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F3.5 |
寸法(最大径×長さ) | 62.0×55.5mm |
質量 | 約138g |
フルサイズ対応 | × |
【標準】SEL50M28
・小型軽量で取り回しの良い50mm
焦点距離 | 50mm |
最短撮影距離 | 0.16m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 70.8×71mm |
質量 | 約236g |
フルサイズ対応 | ◯ |
【中望遠】SEL90M28G
・高性能な「Gレンズ」モデルのフルサイズ対応マクロレンズ
焦点距離 | 90mm |
最短撮影距離 | 0.28m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 79×130.5mm |
質量 | 約602g |
フルサイズ対応 | ◯ |
オリンパス|200g以下のコンパクト×軽量マクロ
ミラーレス一眼の草分け的存在のオリンパス。マイクロフォーサーズシステムというレンズマウントで、パナソニックのミラーレス一眼に取り付けたり、逆にパナソニックのレンズをオリンパスで使用することもできます。今回はマイクロフォーサーズのマクロレンズの中でも特に人気アイテムを2つ紹介します。
【標準】M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
・パナソニックのミラーレス一眼と共用できるマイクロフォーサーズマウント
焦点距離 | 30mm(35mm判換算:60mm相当) |
最短撮影距離 | 0.095m |
最大撮影倍率 | 1.25倍(35mm判換算:2.5倍相当) |
絞り開放 | F3.5 |
寸法(最大径×長さ) | 57×60mm |
質量 | 約128g |
フルサイズ対応 | × |
【中望遠】M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
・パナソニックのミラーレス一眼と共用できるマイクロフォーサーズマウント
焦点距離 | 60mm(35mm判換算:120mm相当) |
最短撮影距離 | 0.19m |
最大撮影倍率 | 1.0倍(35mm判換算:2.0倍相当) |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 56×82mm |
質量 | 約185g |
フルサイズ対応 | × |
富士フイルム|ポートレートから近接までこなせる中望遠
富士フイルム専用のXマウントに対応したマクロレンズを紹介します。富士フイルム純正レンズは標準レンズと中望遠レンズの2種類です。
【中望遠】XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
・35mm判換算で焦点距離122mm相当の中望遠レンズ
焦点距離 | 80mm(35mm判換算:122mm相当) |
最短撮影距離 | 0.25m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 80×130mm |
質量 | 約750g |
フルサイズ対応 | × |
【中望遠】XF60mmF2.4 R Macro
・35mm判換算で焦点距離91mm相当の中望遠レンズ
焦点距離 | 60mm (35mm判換算:91mm相当) |
最短撮影距離 | 0.267m |
最大撮影倍率 | 0.5倍 |
絞り開放 | F2.4 |
寸法(最大径×長さ) | 64.1×63.6mm |
質量 | 約215g |
フルサイズ対応 | × |
ペンタックス|標準〜中望遠まで揃いコンパクト&コスパ抜群
最新モデルにミラーレス一眼はありませんが、一眼レフでAPS-C、フルサイズの両方のラインナップを誇る老舗ブランド。レンズのコンパクトさとコスパの良さにかけては他メーカーと一線を画します。APS-Cとフルサイズでそれぞれで使えるKマウント(※)のマクロレンズを紹介します。
※KマウントはAPS-C、フルサイズの両方に装着することができますが、フルサイズ対応で「×」になっているレンズは装着は可能なもののケラレ(画像の端に影ができたりすること)が発生する場合があります。
【標準】HD PENTAX-DA 35mmF2.8 Macro Limited
・APS-C専用レンズ
焦点距離 | 35mm(35mm判換算:53.5mm) |
最短撮影距離 | 0.139m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 63×46.5mm |
質量 | 214g |
フルサイズ対応 | × |
【標準】smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8
・フルサイズ/APS-C対応
焦点距離 | 50mm(35mm判換算:76.5mm) |
最短撮影距離 | 0.195m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 67.5×60mm |
質量 | 265g |
フルサイズ対応 | ◯ |
【中望遠】smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
・アルミ削り出しの高級感のあるフルサイズ対応レンズ
焦点距離 | 100mm(35mm判換算:153mm) |
最短撮影距離 | 0.303m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 65×80.5mm |
質量 | 340g |
フルサイズ対応 | ◯ |
シグマ|複数マウントで利用可能な高性能サードパーティーレンズ
サードパーティーのレンズとして人気のあるシグマは、シグマのカメラに使われているSAマウントの他に、ソニーのEマウント、またライカ・シグマ・パナソニックの一部カメラに採用されているLマウント対応のレンズも用意されています。シャープな写りと美しいフォルム・質感には定評があります。
【中望遠】70mm F2.8 DG MACRO
・画質に全振りしたフルサイズ対応のArtラインレンズ
焦点距離 | 70mm |
最短撮影距離 | 0.258m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | [シグマSAマウント]70.8×105.8mm [ソニー Eマウント]70.8×131.8mm [Lマウント]70.8×129.8mm |
質量 | [シグマSAマウント]約515g [ソニー Eマウント約570g [Lマウント]約605g |
フルサイズ対応 | ◯ |
【中望遠】105mm F2.8 DG DN MACRO
・画質重視のArtラインフルサイズ対応レンズ
焦点距離 | 105mm |
最短撮影距離 | 0.295m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | [Lマウント]74×133.6mm [ソニー Eマウント]74×135.6mm |
質量 | [Lマウント]715g [ソニー Eマウント]710g |
フルサイズ対応 | ◯ |
【中望遠】MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM
・シグマ SA/ニコン F/キヤノン EF マウント用ラインナップ
焦点距離 | 105mm |
最短撮影距離 | 0.312m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | F2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 78.3×126.4mm |
質量 | 約725g |
フルサイズ対応 | ◯ |
ニコン「D5300」との組み合わせにおいて、手ブレ補正OS機構やオートフォーカスが正常に作動しない事が判明致ています。メーカーページを確認ください。
タムロン|「タムキュー」で親しまれる90mmマクロは超人気!
多くのマウントに対応したサードパーティーレンズです。色のりがよく、特にタムロンのマクロ90mmはプロカメラマンの間でも「タムキュー」と呼ばれ長年愛される人気のレンズです。純正では手の届かなかったマクロレンズがタムロンなら画質に妥協せず安価で揃えられることも。
【標準】SP 35mm F/1.4 Di USD(F045)
・キヤノンEF/ニコンFマウントフルサイズ対応レンズ
焦点距離 | 35mm |
最短撮影距離 | 0.3m |
最大撮影倍率 | 0.2倍 |
絞り開放 | F1.4 |
寸法(最大径×長さ) | [キヤノンEFマウント用] 80.9mm×104.8mm(レンズ先端からマウント面まで) [ニコンFマウン用]102.3mm(レンズ先端からマウント面まで) |
質量 | [キヤノンEFマウント用]約 815g [ニコンFマウント用]約805g |
対応マウント | キヤノンEFマウント ニコンFマウント |
【中望遠】SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(F017)
・最も有名なタムロンの90mmマクロの最新モデル
焦点距離 | 90mm |
最短撮影距離 | 0.3m |
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
絞り開放 | 2.8 |
寸法(最大径×長さ) | 79mm×117.1mm (キヤノン用) 79mm×114.6mm (ニコン用) 79mm×116.6mm (ソニー用) |
質量 | 610g (キヤノン用) 600g (ニコン用) 585g (ソニー用) |
対応マウント | キヤノンEFマウント ニコンFマウント ソニーAマウント |
マクロレンズの作例
編集部が所持しているPENTAX「smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR」を使っての作例。
物撮りから肉眼ではなかなか捉えられないような小さなものまで撮影が可能です。ただし、被写体ギリギリまで寄って撮影するとピントが浅くなるため、場合によっては絞らないといけないシーンも。絞りつつ明るく撮影する場合は、フラッシュを使うことで明るさを担保するのがおすすめです。
マクロレンズで広がる世界!
目に見えないほど小さなミクロの世界から、美しいボケ感のあるポートレートや風景まで、被写体をダイナミックに撮影することのできるマクロレンズ。標準レンズ、中望遠レンズ、望遠レンズとそれぞれ特徴がありますので用途やレベルに合わせて選んでみてください。マクロレンズで、今まで見たことのない世界を覗いてみましょう!