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体はまだ万全ではなかったが、天気は待ってくれない。ひどい高山病にかかりながらベースキャンプまで戻った3日後、好天が2、3日続くとの情報が入ってきた。もう少し長ければ嬉しいのだが、このタイミングを逃す理由などなく、キャンプ2で頂上にアタックするか否かの最終的なジャッジを下す予定でアタックすることにした。
朝日が差し込む気持ちのいいベースキャンプ 撮影:上田優紀
ヒマラヤの山を登る前、必ず誰もがプジャという儀式を受けなくてはならない。ベースキャンプには簡易的な祭壇が作られ、チベット仏教の僧侶が近くの村からはるばるベースキャンプまでやってきて登山の安全祈願のためにお経を読んでくれた。登山用品を祭壇の前に並べ、僕も静かに祈りを山に捧げる。
「いい登山といい写真を。」
とても気持ちのいい朝だった。暖かい日差しがベースキャンプを包み込み、鳥たちも嬉しそうに歌っている。清く、澄み渡ったプジャの雰囲気に高山病に悩まされた心が少しだけ軽くなっていく。
僧侶がお経を唱え終わるとベースキャンプにいるシェルパ全員と一緒に小麦粉を空中に投げ、プジャは終了。そして、いよいよ山に入っていく。
何度も登った取り付きの丘 撮影:上田優紀
シェルパの青年がキャンプ1まで荷揚げをしていた 撮影:上田優紀
ベースキャンプをいつも通りシェルパとふたりで出発。見慣れた取り付きから丘を登り、ハイキャンプまで長くゆるい稜線を歩いていく。キャンプ2より上で使うサミットブーツなどいつもより荷物が多く、確かに重かったがそれにしてもひどく疲れるのが早い。今まではハイキャンプまでで息切れなどしなかったのに、道のりの半分ほどで足が止まってしまった。
ガレ場を超えた稜線上にキャンプ1が設置されている 撮影:上田優紀
やはり体調はあまり良くない。それでも進む。気持ちだけで体を支え、ゆるい傾斜を黙々と登り、ガレ場を超え、なんとかキャンプ1まで登ることが出来た。前に来た時より1時間以上も時間がかかってしまったが、そんなことを気にしている余裕などなかった。今は少しでも多くの水を飲み、体を休めることが大切だ。明日は前回さらに苦しんだ巨大な岩壁イエロータワーが待ち構えている。