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上田優紀

「”記録”ではなく”未知の風景”を…」──8,000m峰の頂から風景写真家が届けたいもの

世界最高峰の山々が集まるヒマラヤ山脈。2019年秋、標高8163m、世界第8位の高さを誇る『マナスル』に挑む人物がいる。写真家・上田優紀、“登山家”ではない彼が目指すものは一体何か。人間が生存できるギリギリの世界で何に挑むのか。今回の挑戦にかける想いを語っていただきました。

目次

アイキャッチ画像撮影:YAMA HACK編集部

「人間が生存できる限界」それが8,000mの世界

マナスル
出典:PIXTA(ヒマラヤ山脈にあるマナスル峰)

ヒマラヤは、パキスタン・インド・ネパール・ブータン・中国の5つの国にまたがる無数の山から構成される巨大な山脈。世界最高峰『エベレスト』を含む、8,000m級ピークが14ある“地球上で最も標高の高い地域”です。

8,000mという世界は「人類が生存できる限界」という意味で「デスゾーン」と呼ばれるほど過酷な環境。世界一高い山として知られる『エベレスト』を含め、高所では地上の常識が全く通用せず、命を落とすリスクもある非常に難しい登山の一つです。

8,000m峰『マナスル』に挑む写真家・上田優紀

上田優紀

提供:上田優紀

そんなヒマラヤ山脈の8,000m峰のひとつ『マナスル』に挑むため、クラウドファンディングを利用してプロジェクトを立ち上げた写真家がいます。
“人類の限界領域”に挑む上田さんにはいったいどんな「想い」があるのでしょうか?何故挑むのか、上田さんが届けたいものはなにか、詳しくお話を伺ってみました。

■プロフィール■

1988年生まれ。和歌山県出身。
京都外国語大学を卒業後、24歳の時に世界放浪の旅に出発し、1年以上かけて45か国以上を周る。帰国後、旅で出会った風景をもっと色んな人に見てもらいたいと考えて写真家を目指す。
株式会社アマナにてアシスタントを経て独立。現在は国内外の風景を中心に撮影活動を行っている。
受賞歴:2017年 CANON SHINES
写真集:2018年 「Ama Dablam」刊行
写真展:2019年 CANON GINZA、NAGOYA、OSAKA 「Ama Dablam」

“登山家”ではなく“写真家”としての挑戦

上田優紀

撮影:YAMA HACK編集部(笑顔が素敵でとっても気さくな方です)

編集部(以下、編):本日はよろしくお願いします。

上田さん:よろしくお願いします。

:早速ですが、8,000m峰に挑むのは相当大変なことですよね。上田さんは「登山家」や「山岳カメラマン」の方々とは違うのでしょうか?

上田さん:私はあくまでも登山のプロではなく、写真家として活動しています。中でも自然の撮影をメインとしており、今回の『マナスル』も、登山家や冒険家のように「未踏のルートに挑戦する」というのではなく、多くの人にとっての「見たこともない風景を届ける」ことを一番の目的としています。

:すこし意地悪な質問になってしまいますが、マナスルは「人類未踏峰」ではないですよね?既に様々な写真が世の中には存在しているのではないでしょうか?

上田さん:たしかに、既に大勢の方が登っている山ではあります。しかし、私が目指しているものはただの記録写真ではなく、山がもつ厳しくも美しい風景をそのまま見た人に届けることなんです。登頂を目的としている隊とは当然撮影機材も異なりますし、“技術を駆使して撮影を行っているかどうか”という側面から見ると、実は世界的に見ても実践している人はほどんどいないんです。

提供:上田優紀(アマ・ダブラム頂上から臨むエベレスト)

世界には見たこともない景色が沢山ある

提供:上田優紀

:世界中で様々な撮影をされてきていると思いますが、何故『マナスル』に挑戦しようと思ったのでしょうか?

上田さん:これまで、カメラ片手にあるときは南米のウユニ塩湖で1ヶ月以上テント生活を、またあるときはパタゴニアやヒマラヤを数ヶ月間旅しながら、そして昨年は『アマ・ダブラム』というヒマラヤで最も美しい難峰の登頂に成功し、厳しくも美しい世界を記録してきました。そして、「今まで以上に未知の世界に挑戦し、その風景を撮影したい」そう考えた時に僕が次に選んだのが、標高8,000mの世界でした。

気温−30℃、酸素は地上のわずか3分の1、想像を絶するほど厳しいこの世界にはどんな風景が広がっているか、宇宙が目の前にまで迫った夜空にはどれほどの星が輝いているのか、想像するだけでワクワクしてきませんか?

:正直、全く想像がつきません・・・でも、聞いているだけでもワクワクしてきました!

シャッターを切ることさえも困難な環境

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