2023年は沖縄で山の日全国大会が開催!
2016年から始まった山の日。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」という、山好きには大切な1日です。
そんな山の日を盛り上げるべく、毎年「山の日」全国大会が開催されているのはご存知でしょうか?
第1回は長野県松本市、第2回は栃木県那須町、第3回は鳥取県の大山町および米子市、第4回は山梨県甲府市、第5回は大分県九重町と竹田市、昨年行われた第6回は山形県山形市・上山市と山のイメージを持ったエリアで開催されてきました。
なんで沖縄?
2023年8月11日に開催される第7回大会は、沖縄県の国頭村、大宜味村、東村、竹富町で行われます。
正直なところ、沖縄のイメージはどちらかというと「海」。日本には、まだまだ山のイメージがある場所はあるのに、どうして今回は沖縄開催なんだろう?と編集部も疑問に思っていたところ、こんな動画を発見しました。
山岳界のレジェンド 雨宮節さんのインタビュー動画
この動画は、全国山の日協議会の梶さんが、ヒマラヤで数々のバリエーションルート登攀を実践してきた雨宮 節(たかし)さんへ取材を行ったものです。
2年前(2021年)まで沖縄県に住んでいた雨宮さんは、同県の山岳連盟会長を務めていました。
取材の中で語られる「沖縄の山の魅力」の中に、開催地として選ばれた理由があるように感じました。
山を辞めるために行った沖縄で出会った”山の原点”
今回は、特別に動画を記事化。
ふたりの会話の中に、沖縄の山が持つ「自然の楽しさ」が隠されています。
登る山もルートも自分で見つける楽しさ
ー早速ですが、沖縄の山と自然の魅力を教えていただけますか?
雨宮さん:実は、僕自身が山をやめるという決断をしたときに、山のない沖縄県を選びました。
ところが山のない沖縄県に行って一番感じたのは、山のない沖縄県に山の原点があったということです。それはどういうことかというと、登山人口の少ない、また、標高の低い山しかない沖縄県には、いわゆる山のガイドブックというものがありません。
日本の内地の山はご存知のとおり、道路標識とガイドブックがあります。僕らがよく冗談を言うんですけど、「タバコ屋の角を曲がって300メートル行けば八百屋があって、そこを曲がれば」っていうような、こと細かなガイドブックというのがありました。(それがあれば)誰でもいけるんですが、山のない沖縄県ではそれがありませんでした。
山を自分で見つけて、登るルートを見つける。これが僕らが目指したヒマラヤ登山の原点でした。
僕は山のない沖縄県に行って、山の原点がそこにあるという。とっても新しい、そして、自分が若い頃目指した登山に会うことができました。
山の日の原点が沖縄の自然にはある
雨宮さん:北アルプスは世界遺産ではないんですが、沖縄は世界遺産です。
これは山も村も森も含めて、本当に自然豊か。
逆に言うと本当の山の日、というか自然の日が沖縄には溢れています。でも自分が移住した何年間で、その自然の良さを知りましたが、沖縄県の方はいつもそれを見ていますので、それが豊かだということの認識があまりないんです。
この山の日を機会にこの豊かな自然の沖縄県を多くの人に知ってもらえたら、ものすごくいいなと思っているのが、今僕自身の心境です。
本土とは異なる沖縄独自の文化を感じる
ー沖縄の山には歴史や文化があるという話がありますが、本土の山とくらべて、歴史や文化が豊かというのはどういう話なんでしょうか?
雨宮さん:沖縄に住んでみないとわからないんですが、とっても狭いところなんですね。その中にいろんな種族の方がいて、勢力争いがあって、沖縄のいたるところにグスクと言うんですけど、沖縄中にお城があります。
いわゆる山城なんですが、そのグスクとの取り合いの歴史の文化みたいな。その内地の山と違うお城が、僕にとっては新しい発見っていうか。
焼けてしまって今なくなっているんですが、那覇にある首里城。ああいう華やかでなくて、本当に山の中にポツンと石垣だけが残っているお城ですね。
こういうところを歩くと、沖縄の人の生活様式を含めて、その時代の生き方がとってもわかります。
人々の生活に近い、沖縄の山
雨宮さん:沖縄に行って初めて知ったんですけど、作物を守るためのイノシシ、いわゆるイノシシを通さないための石垣が沖縄中のどこの集落でもありまして、この猪垣を探して、山の中を歩くのも、なかなかおもしろい一面があります。
向こうで知ったんですけど、その猪垣だけを訪ねている趣味の人もいまして、会報なんかも出しています。
沖縄を歩かれている方たちと沖縄の山を歩くようになりましたら、けっこうお会いして、自分が内地でやってきた山登りとはまた違う、生活に近いところの山登りを垣間見たんです。
そういうものが沖縄の登山。
歴史を感じる縦横無尽にひろがる道
雨宮さん:それと沖縄では古い道って、古道って言うんですけど、文化っていうか、隣の村を、山を越える道がたくさんありまして。
まあご存知のように高い山がないため、それこそ縦横無尽に、昔は歩かれていた。
その山歩きができない場合は、那覇から要するに海岸線を回る、船みたいので交易をしていて、それが大変なんで、山道を作って……。その廃道になった山道を歩くのもとっても楽しい。
沖縄独自の自然が人の近くにある
雨宮さん:(廃道になった山道)そこには昆虫とか花とか自然がいっぱいあって、ご存知のとおり、昔は沖縄県は台風の直撃がありましたので、大木があんまりないんですね。
その中でも樹齢何百年というびっくりするような、ドングリ椎ノ木があったりして。
それがまた面白くて、そういう周辺には人が住んだ跡もあったりして、内地の山とは違う自然を探る山登りができるのが、沖縄の山の良さだと思います。
少し前に亡くなった田部井さんが来た時に、沖縄の山の、その地域の最高峰を登りたいと言って、本島の与那覇岳を登っておりてきた時の感想が「山を降りて30分したら、ジャングルから都会に戻ったっていう実感っていうのは他にないね」って喜んでいたの思い出すと、自然と文化がすごく近い場所にあると改めて思います。
山の日が求めるべき自然がある沖縄へ
ーお話を伺って沖縄の山や自然には、山の日が本来求めるべき自然。
登山だけではないアクティビティとか歴史とか文化とか、そこに根付いていらっしゃる方々の生活とかがあるということがよくあの理解できました。ありがとうございます。
最後に沖縄で8月11日全国大会が行われるわけですけれども、これに向かいまして沖縄の昔の仲間たちの方々、あとは日本国内の方々、また広くは海外の方々にエールを送っていただいたらありがたいんですけど、よろしくお願いいたします。
雨宮さん:山の日が開催される沖縄県、逆に沖縄県にとっては広い意味で沖縄県の自然を知ってもらうための大きなチャンスだと思っております。
ここだけの話っていうとあれですが、実は沖縄県で一番山登りに適してないのがこの8月なんですね。なぜかというと標高が低くて、ものすごく暑いんです。
熱中症になりやすいんですが、逆にこの時の沖縄の山には、昆虫を含めて、自然がいっぱいあります。
この時を機会に楽しんでもらえば、特に開催されるヤンバル地域は「山の原」って書いてやんばるって言うんです。那覇の方は、ご存知のように戦争になったんですが、このヤンバルは標高350mぐらいの山並みがつながっておりまして、これをまた歩くのはとっても面白いです。
ジャングルの中は熱いですけど、日向を歩くより凌ぎやすくて、またとっても面白いいろんなことが見られると思います。
是非とも、これを機会に、大勢の人が沖縄の自然を知っていただけるとと嬉しいと思います。
ーどうもありがとうございました全国山の日協議会ではこれから8月の大会に向けてホームページなので沖縄大会を盛り上げていきます。
その第1弾として、山の日ホームページで雨宮さんの登山人生そして沖縄の山や自然のあの魅力を「縦横無尽雨宮隆沖縄と山を語る」という題で、10回にわたってホームページに掲載しています。
皆さん、ご期待ください。ありがとうございましたよろしくお願いします。