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ユニフレーム/コーヒーバネット

山を旅することに憧れた『ユニフレーム/コーヒーバネット』と『ポーレックス/コーヒーミル』|定番道具のモノ語り#12

質実剛健、丈夫さが必要な機能である山道具。だからこそ発売から10年以上も変わらない道具や、10年以上問題なく使い続けられる定番の山道具があります。そんな山道具の中から、ライター・ポンチョが愛用してきたモノを紹介。今回は第12回、山でドリップコーヒーを可能にした銘品『ユニフレーム/コーヒーバネット』を通して、旅人の道具について考えました。

目次

アイキャッチ画像:ポンチョ

「よい道具」とは、どんな道具だろう?

ユニフレーム/コーヒーバネット

撮影:ポンチョ

アウトドアの道具が好きです。

アウトドアをはじめた若い頃は、「有名なアウトドアブランドの機能性やデザイン性に長けた道具」が好きでした。

それが時を経て、「有名なアウトドアブランド」ということはあまり関係なくなり、「機能性やデザイン性に長けた、長く使いたいと思える道具」に変わりました。

さらにこの連載で取り上げてきたような「長く使ってきた道具」こそが、自分にとって「好きな、よい道具」になりました。

ユニフレーム コーヒーバネット

撮影:ポンチョ

そもそもアウトドア道具は、長く使える耐久性、質実剛健さを装備しているものです。そして多くはシンプル。だから飽きがこないものが多く、長く使いたいと思わせます。

そうして長く使ってきた道具を思い返してみると、その出合いが「憧れ」から始まっていることに、最近気が付きました。

アウトドア旅作家さんが使っていたコーヒー道具

ポンチョのコーヒー道具

撮影:ポンチョ ※上の写真はポンチョの現在の山コーヒーセットの一例

今回、紹介するユニフレームのコーヒーバネットも、「憧れ」を抱いて20年以上前に購入しました。

ワイヤー式ドリッパーと呼ばれる、アウトドアでコーヒーをドリップする道具の元祖です。発売されたのは、1993年前後だったと記憶します。

そして2003年頃、私はアウトドアコーヒーの企画を雑誌で担当することになり、取材させてもらったアウトドア旅作家さんが使っていたコーヒーバネットを見て、自分も山でコーヒーをドリップして飲んでみたいと思い、手に入れたのです。

コーヒーバネットとコーヒー豆

撮影:ポンチョ

この時の取材は、東北の山を作家さんと一緒に登り、実際にどのように山コーヒーを楽しんでいるのかを見させてもらうものでした。

途中で汲んた湧水をストーブで沸かし、コーヒーバネットを広げて、コーヒーをドリップ。

当日は紅葉の終わり。薄曇りの山は、気温10℃以下。作家さんは、ドリップしたコーヒーが冷めないように、保温ボトルの定番サーモスにコーヒーを落としました。

それまでに、寒い冬の低山でドリップバッグのコーヒーを淹れて、あっという間に冷めてしまったコーヒーにがっかりしたことのあった私は、「なるほど、そうすればよかったのか!」と、とても感心したことを覚えています。

旅人に憧れて

ユニフレーム コーヒーバネット

撮影:ポンチョ

なにより記憶に残っているのは、山でコーヒーをドリップすることの作家さんの気負いのない、自然な立ち居振る舞いです。

コーヒーを淹れてくれた場所は山頂ではなく、眼下にブナの森が広がる見晴らしのよい中腹。

森を抜け、景色が広がった場所にあったベンチを見ると、「ここででコーヒー飲んで、休憩しようか?」とコーヒー道具を取り出し、訪れた旅先の話をカメラマンさんと続けながら、手際よくコーヒーを淹れます。

コーヒーバネットでドリップ

撮影:ポンチョ

当時、まだ登山は山頂を目指すことだけが目的だった私にとって、山でコーヒーを飲むことは、頑張って山頂に立ったことへのご褒美の時間でした。

しかし作家さんの場合は、山旅の雰囲気。

スケジュールに追われることなく、山を登っている時間に、余裕やゆとりが感じられるのです。

きっと、もし風が強ければ風を避けられる森のなかでコーヒーを淹れたかもしれません。晴れていれば山頂でコーヒと一緒に景色を味わうためにその時間を取っておいたかもしれません。天候が悪くなりそうなら、登りはじめにあった沢沿いもポイントでした。その判断を、瞬時に行なっていることを見て、なるほど「旅慣れる」とはこういうことなのだと、勉強しました。

感化されやすい私は、「あぁ、こういう余裕のある旅人になりたい!」と思い、カタチから入ってコーヒーバネットを手に入れたのでした。

今ではコーヒー道具の定番ポーレックスのミルも、この時に

ポーレックス コーヒーミル

撮影:ポンチョ

さて、作家さんはもうひとつ見慣れないコーヒー道具を使っていました。今ではアウトドアコーヒー道具の定番として知られている、鹿児島のメーカー・ポーレックスのコーヒーミルです。

メイド・イン・鹿児島にこだわり、日本古来から使われている石臼の技術を応用したセラミックの刃が特長のハンドミルです。

本体上部のカップにコーヒー豆を入れ、フタをして付属のハンドルをセットして回転。カリカリという豆が挽かれる音を聞いていると、美味しいコーヒーへの期待が高まっていきます。

ポーレックスにコーヒー豆をすり切りいっぱい

撮影:ポンチョ

「このミルに豆をいっぱいに入れて挽いた量が、500mlのボトルにコーヒーをドリップするとちょうどいいんだよね」

そう、作家さんは教えてくれました。

後にこのポーレックスも購入。しかし調べてみると、ポーレックスに入るコーヒー豆の最大容量は約30g。コーヒーをドリップする場合、通常は10gのコーヒー豆に120mlの湯を注ぐので、30gだと360ml。

なので、500mlの湯でドリップすると、薄めのコーヒーになってしまいます。でもアウトドア旅作家さんの淹れてくれたコーヒーは、決して薄くはなく、香り豊かで、やさしい一杯でした。きっと、基本は500mlとしながらも、その時々で加減、調節をしていたんだと思います。

コーヒー豆

撮影:ポンチョ

コーヒーは、茶道のような部分があり、その淹れ方を厳格に守る、こだわりの人が多くいます。それをどこまで忠実に再現できるかに、奥深さがあるのでしょう。でも、私のコーヒーの淹れ方は、成り行き次第です。

というのも、例えばポーレックスでいつもと同じようにミル挽きしていても、深煎りだと豆が柔らかいので細挽きになったり、浅煎りだと逆に硬いので粗挽きになったりします。だから、少し挽いたら豆を確認して、調節する必要があります。

試行錯誤、または工夫すること

ユニフレーム コーヒーバネット

撮影:ポンチョ

ポーレックス同様に、コーヒーバネットも、いろいろと調節が必要な道具です。きっちり、していません。

時に少し斜めに傾いたり、コーヒー豆の量を少なめにすると、ペーパーによってはヨレてきてしまったり、山では風に吹かれて飛ばされそうになることもあります。また、コーヒーを落とすボトルやカップの口の径によっては不安定です。

私が使っているコーヒーバネットは、現行のコーヒーバネット「sierra」の原型のような形状で土台は二つ脚。安定感や大きさを求めるなら土台が三つ脚の「cute」や「grande」を選べば、それらは解消されているでしょう。

ユニフレーム コーヒーバネットでドリップ

撮影:ポンチョ

しかし、こうしたちょっと不満のある道具を、自分なりに使いこなせるようになってみると、使えなかったのは道具ではなく、自分だったことに気が付くこともあります。

だから、自分が思った通りにならないから使わなくなってしまう前に、考え方を変えて、その道具のよさをどうやったら引き出せるのかを、試行錯誤してみると、違った結果、面白さに気が付くかもしれません。

コーヒーバネットもポーレックスも、私にとっては、そういう道具でした。

山コーヒー

撮影:ポンチョ

そのために必要なのは、余裕やゆとり。心や身体だけでなく、考えや想像の余裕やゆとりです。

アウトドア旅作家さんに山コーヒーを淹れてもらってから、約20年。私も最近ようやく、山を旅するように登ることができるようになってきたのか、淹れたコーヒーも美味しくなってきたように思います。

それは自己満足かもしれませんが、ともかく、余裕とゆとりを大事にして、山とコーヒーを味わっています。

それでは皆さん、よい山旅を!

ユニフレーム/コーヒーバネットsierraの詳細はこちらポーレックス コーヒーミル・Ⅱの詳細はこちら

ユニフレーム コーヒーバネットsierra

サイズ使用時:約14.5×10×7(高さ)cm、収納時:約14.5×10×2(厚さ)cm、収納ケース:11.5×18cm
材質18-8ステンレス(SUS304 WPB熱処理済)、収納ケース:ポリエステル
重量約47g
セット内容収納ケース、2人用フィルター×10枚

ポーレックス コーヒーミル・Ⅱ

サイズ4.9×19.2cm
材質刃:セラミック、本体:ステンレス、ハンドル:鉄、調節ネジ:樹脂
重量304g
容量約30g