ハエと間違えやすい「クロスズメバチ」の生態及び対処法と応急処置について

2022/04/19 更新

スズメバチの中でも小さな種類のクロスズメバチ。その姿からハエに間違えられることも多いクロスズメバチは、地域によっては美味しい珍味として親しまれています。登山時に遭遇する可能性もあるハチなので、生態や対処法などを学んでおくことが大事でしょう。今回はこのクロスズメバチについて紹介します。

制作者

ライター

emi

21歳の時に初めて登った北岳に感動!その後地元山梨や長野などの山々を仲間と登り、すっかり山好きになりました。鳳凰三山や穂高岳の様な有名な高山も大好きですが、現在は、近場の低山をのんびりハイクがちょうどいい感じ。これからは、簡単で美味しい山ごはんにチャレンジしたいです!

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 アイキャッチ画像出典:PIXTA

クロスズメバチってどんなハチ?

クロスズメバチ
出典:PIXTA(クロスズメバチ)
クロスズメバチの体長は、働きバチだと10mm〜12mmくらいで、女王バチでは15mmほど。スズメバチの仲間では小型の部類で、体の色は光沢のない真っ黒な色に、白い縞模様がついているのが特徴的です。
大きさはミツバチほどで、その姿からハチではなくハエに間違われることも珍しくありません。

クロスズメバチの生態について

肉を食べるクロスズメバチ
出典:PIXTA(肉を食べるクロスズメバチ)
性格は比較的おだやかで、攻撃性や威嚇性は弱いためこちらから刺激を与えなければ、攻撃されることは少ないでしょう。ただ、その姿は黒くて小さいため、クロスズメバチだと気がつかないうちに刺激してしまい、事故に至るケースが多いのです。
エサとしては、花の蜜のほかにハエなどの昆虫、時には死んだ動物の生肉も利用しています。

どんな場所に生息しているの?

生息地と巣の様子について

クロスズメバチの巣
出典:PIXTA(クロスズメバチの地中の巣)
生息地は、北海道から奄美大島までの広い地域に生息しています。主に山地や里山に住んでいるので、人家付近で見かけることは少ないでしょう。
山ではクロスズメバチは、土中や木の洞などに巣を作ります。そのため、外から見ても巣があることに気が付きにくく、巣のすぐ上を歩いたり草刈りなどをして振動が刺激として伝わり、事故につながるという例が多く見受けられます。

活動時期と遭遇しやすい場所

クロスズメバチ
出典:PIXTA(クロスズメバチ)
クロスズメバチの主な活動時期は、4月旬下旬〜11月頃ですが、7月〜10月頃が最も活動量の多い時期となります。登山道の道中にある木の根元にぽっかり空いた空間や、地下水でできた地下空間、刈った草を積み重ねたところなど、都合の良い地面の空間があれば巣を作ることができます。登山道でそのような場所を見つけたら、巣がある可能性も十分あるので、気をつけて行動しましょう。

クロスズメバチは美味!食す地域も

クロスズメバチのから揚げ
出典:PIXTA(クロスズメバチのから揚げ)
長野県を中心とした山間部では、山で取れる貴重なタンパク源として、昔からクロスズメバチの幼虫やサナギを食す地域がありました。地域によって、ヘボ、ジバチ、スガレなどと呼ばれ、炒めたり甘露煮や炊き込みご飯などで親しまれています。料理法によっても異なりますが、気になるそのお味はウナギによく似た味わいで、大変美味しいとのこと。

クロスズメバチの毒性は?

クロスズメバチの毒の強さ

ハチ危険
出典:PIXTA(ハチに注意)
クロスズメバチは、体が小さく毒の量が少ないため、他のスズメバチと比較すれば毒による影響は弱め。
しかし、それでもやはり毒を持つハチの仲間。刺されれば痛みと腫れの症状が出るほか、ハチ毒に対してアレルギー体質を持つ場合は、全身症状につながる場合もあるので、十分に注意が必要です。

刺された患部の症状

ハチに刺されたイメージ
 出典:PIXTA(ハチに刺された患部のイメージ)
クロスズメバチに刺されると、刺された局所に痛みや腫れの症状が起こります。他のスズメバチ同様に、体質によって起こる全身症状や、「アナフィラキシーショック」には注意しなければなりません。
病院に行く緊急性があるかどうかの判断は、刺された部位以外の場所で症状が起こる「全身症状」がみられるかどうかがポイントになります。

刺されないための対策について


露出の多い服装は避ける

登山者イメージ
出典:PIXTA
登山の際は、ハチを刺激しないように様々な対策をとるほか、刺されたときにできるだけダメージを負わないよう、肌の露出が少ない服装を心がけましょう。帽子を被ったり首にタオルを巻いたりすることも、一つの対策になります。

匂いのキツイものに注意

山ご飯イメージ
出典:PIXTA(山ご飯イメージ)
ハチは匂いに敏感な生物なので、山に行く時は香水や化粧品、整髪料などの匂いの強いものは避けた方が賢明です。お弁当やジュースなどの匂いにも寄ってくる場合があるので、注意してください。

ウェアの色で防衛対策

黒い服イメージ
出典:PIXTA(濃い色のウェアイメージ)
ハチは攻撃モードになると黒色を狙うため、黒っぽい色のウェアや帽子は、できるだけ避けることをおすすめします。反対に、白や黄色などの薄い色のウェアは、ハチの注意を引きづらく、攻撃の時にも優先的に狙う色ではないため、登山時に取り入れるのも対策になるでしょう。
ただし、色が何色であっても、動きがあるものに反応するため、「黒を避ければ大丈夫!」とはならないことも頭に入れておきましょう。

絶対に刺激を与えない

NGイメージ
出典:PIXTA(NGイメージ)
木の洞や地面の穴から、黒い虫が出入りを繰り返しているようであれば、それはクロスズメバチの巣である可能性があります。そのように巣である可能性のある場所を見つけら、絶対に近づかず、地面に振動を与えないように静かにその場から離れましょう。
巣の周りをウロウロするのもご法度です。ハチが自分の周りを飛ぶように近づいてきた場合は、刺激せずそっとかがんで後退りして、その場から離れてください。
ハチは基本的に「動くもの>止まっているもの」、「黒>白」に対して攻撃を仕掛ける傾向があります。「黒くて動いているものは最も刺されやすく」、「白くて動かないものは最も刺されにくい」と言えるでしょう。

もしも遭遇してしまったら

姿を確認したらそっとその場を離れる

クロスズメバチ
出典:PIXTA(樹脂を舐めるクロスズメバチ)
遭遇した時は刺激を与えないように、姿勢を低くして後退りしながらその場を離れましょう。巣を見つけても絶対に刺激しないこと、驚いても急激な動きをしないでください。
ハチが人を襲う理由はただひとつ、巣を守るためです。巣にいる女王蜂や、たくさんの幼虫を守るため、巣に近づいたり攻撃をしてくる者には容赦なく襲ってきます。防衛策としてハチなりに必死で攻撃してくるので、むやみに刺激を与えるのは絶対にやめてください。

攻撃された時には

出典:(逃げるイメージ)
もしも間違って巣を刺激して、大量のハチに襲われそうになったら、とにかく全速力で逃げましょう。巣を刺激してハチが攻撃モードになったら、じっとしていても刺される可能性があります。ハチが追ってこなくなるまで走って逃げてください。
先にも述べましたが、クロスズメバチの場合、黒くて小さいためハエと勘違いして楽観視するケースも考えられます。そのためにも、ハエに似た小さなハチが存在することを知り、今後の予防に役立てましょう。

刺されたときの応急処置について

クロスズメバチに刺されてしまった際の応急処置についてお伝えします。まずは、刺された地点からできるだけ離れ、身の安全を確保してから応急処置を行ってください。

流水で患部を洗う

出典:PIXTA
流水でよく患部をつまみながらしぼり洗いして、毒を少しでも出すことが肝要です。ハチの毒は水に溶けやすいタンパク質でできているほか、水洗いは冷却によって痛みや腫れを抑える効果も期待できるため、時間をかけてしっかり洗ってあげることが大切。
「ポイズンリムーバー」の効果については諸説ありますが、いずれにしても刺された直後でないと効果が薄いので、使う場合は水場に移動するまでの間に使用しましょう。その後水場についたら、水洗いに切り替えます。

「リムーバーを使ったからもう大丈夫」とはならないことも肝に銘じておきましょう。

抗ヒスタミン薬を塗る

出典:PIXTA
抗ヒスタミン軟膏を利用することで、ハチに刺された箇所の腫れなどの症状を緩和することが期待できます。しかし、ハチ毒による影響は大きく、薬を塗ったからといって症状が大きく緩和することは期待が薄いため、冷却を行うことが肝心です。

患部を冷やす

出典:PIXTA
アイシング用品や保冷剤を使って、刺されたところを冷やしましょう。冷却することで、痛みや腫れの軽減が期待できます。氷がない場合は水を利用したり、自動販売機の冷たい缶ジュースを代用するのも良いでしょう。

経過観察・病院へ

出典:PIXTA
ハチ毒は、応急処置を行っても痛みが強く残ることがほとんどのため、症状がつらかったり心配な場合は、無理をせずに病院へ行くようにしましょう。
なお、刺傷後は、概ね40~60分ほど誰かと共に経過観察をするようにしてください。刺されたところ以外に腫れや蕁麻疹が起こったり、息苦しくなるなどの全身症状が出た場合は、速やかに病院を受診する必要があります。

クロスズメバチを知ることが大切

クロスズメバチ
出典:PIXTA(クロスズメバチ)
ハエに誤認されてしまうような、黒くて小さなクロスズメバチ。そんなクロスズメバチの存在を知ることで、不意に遭遇した時でも自分の身を守ることが可能です。 「知ることは最初の事故予防」。似たような虫を見かけた際には、十分注意して対応してください。
\教えてくれた専門家/
セルズ研究所 西海氏
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
 
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍にすごく危険な毒せいぶつ図鑑(世界文化社)。 著書に、身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本(明日香出版社)など。

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