登山再開時に気をつけるべきポイント

久々の登山、自分の身体は予想以上に衰えているかも!再開時に気をつけるべきポイントって?

久々に登山をすると「なんだか足が重い」「以前のような足取りで進めない」と自分の体力の衰えっぷりに愕然とすることありませんか?もしかしたらそれは、筋力不足によるものかもしれません。身体がつらいと感じるのはもちろん、途中で歩けなくなってしまったり、事故や遭難に繋がってしまったりと取り返しのつかない事態になってしまうことも。今回は、久々に山へ登る時の注意ポイントと山を登るために必要な力を衰えさせないトレーニング法を紹介していきます。

目次

久々の登山〜ルンルン♪
あれ、身体が、思うように動かないぞ……

自粛期間長かった後の登山
出典:いらすとや、編集:YAMA HACK編集部

以前は毎週のように登山へ出かけていたAさんでしたが、明日は1年ぶりに山へ行くようです。
ガッツリ登りたいと以前よく登っていた日帰りで10時間ほどの行程で臨みましたが……

疲れた

出典:いらすとや、編集:YAMA HACK編集部

だんだんと足を上げるのが辛くなり、休憩をいつも以上に多くとる羽目に。ついには「もう足が動かせない」と疲労により、登山道にへたり込んで動けなくなってしまいました。

前までは楽勝で歩けていた道だったのに!と自分の衰えっぷりに愕然としているAさん。

一体何があったのでしょうか。

Aさんの身体に何が起こったのかを専門家に聞いてみました!

山本正嘉教授

提供:山本正嘉教授

山本正嘉(やまもと・まさよし)
1957年生まれ。東京大学大学院修了。博士(教育学)。現在、鹿屋体育大学教授および同大学スポーツトレーニング教育研究センター長。さまざまな登山家やアスリートに対して科学的なトレーニングサポートを行ってきた。2001年に秩父宮記念山岳賞、2021年には日本山岳・スポーツクライミング協会から日本山岳グランプリを受賞。

2016年にこれらの成果をまとめた『登山の運動生理学とトレーニング学』(東京新聞出版局)、2021年2月に『アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学〜トレーニングに普遍的な正解はない〜』(市村出版)を出版。

自宅にこもって座りがちな生活が続くと、筋力は必然的に衰えます。登山はバスケの試合と同じくらいの運動負荷があるんです。登山が久しぶりだったAさんは、山に登るための筋肉が衰えたことにより、身体が運動負荷に耐えられなくなってしまったのでしょう。
山本正嘉教授
山本正嘉教授

衰えやすい筋肉

提供:山本正嘉教授(図1:Israel,1992をもとに石井氏作図)
こちらの図で示した5つの筋肉〈首の筋群、腹筋群、大腿四頭筋、背筋群、殿筋群〉は、重力に対抗して姿勢を保つためのもので抗重力筋と呼ばれるもの。これらはほかの筋肉よりも、使っていないと衰えやすい部分なんです。ただ山登りの時に重要なのもここ。

そのため、筋力が衰えた状態で山に登ると、身体に大きな負担がかかり以前登っていた時以上に疲労を感じてしまうのです。

山本正嘉教授
山本正嘉教授

「なんだか足が重い」「以前のような足取りで進めない」そんな悩みを抱えていたら、もしかしたら筋力不足によるものかもしれません。身体がつらいと感じるのはもちろん、途中で歩けなくなってしまったり、事故や遭難に繋がってしまったりと取り返しのつかない事態になってしまうことも。

そこで今回は、久々に登山へ登る時の注意ポイント山を登るために必要な力を衰えさせないトレーニング法を紹介していきます。

こんなに変わる!?中断後、再開する時に体が感じる負担

実際に毎週低山へ出かけていた人が、急に登山を辞めて、その後再開した時の身体が感じる負担の変化を表したグラフを見てみましょう。

体力度 表

提供:山本正嘉教授

こちらは40代の女性が、4月から12月まで毎週末近郊の約450mの標高差を登り下りし、その後2月〜4月まで中断し、5月から再開した時のデータです。

上段は、“登りでの1時間あたりで登った標高差”、下段には、その際の“きつさ感覚”を示しています。

これを見ると続けて登山をしている時は、回数を重ねるごとに登る速度が早くなり、また楽に感じるようになることとがわかります。ただ3ヶ月間中断後に再開すると速度が落ちているのときつさ感覚が以前よりも上昇傾向に。その後また継続することでもとの感覚に戻っていますが、戻りたての時の身体が感じる負担は大きいことがわかりますね。

でも何もせずに過ぎてしまった時間はもう取り戻せません!実際期間が空いた後、久々に登山を楽しむ時に注意すべきポイントはなんなのでしょうか。

山を再開する時!こんなポイントに注意しよう

久々に山へ登る時は、以下2つのポイントに気をつけましょう。

・登り下りとも累積標高が500m以下の山やコースを選ぶ
・ゴールを目指さずに、自分の体力を試すための登山をする

それぞれ詳しくみていきます。

登り下りとも累積標高が500m以下の山やコースを選ぶ

ハイキング

出典:PIXTA

累積標高とは、「山頂標高から登山口の標高を引いたもの」ではなく、下記の画像のように登山中に登ったすべての距離を足したもののことです。

標高差 イメージ
出典:いらすとや、編集:YAMA HACK編集部(※画像をクリックすると拡大します)

標高が同じ山でも、アップダウンが多いコースであればあるほど「登り返し」が発生するため、その分累積標高の数値は高くなります。コースごとに数値を確認するようにしましょう。

累積標高がわからない場合は、標準タイムで歩く場合の登山コース負担度の科学的な数値を表した「コース定数」を参考にするのがオススメです。この数値が高いほど負担が大きいため、久々の登山では「コース定数が10前後」の山をピックアップするのが目安に。

累積標高やコース定数は、山と溪谷社が出版している分県登山ガイドや各県が公表しているグレーディング表で確認できます。
試しにグレーディング表に書かれた「高尾山(東京都)」で、登り下りの累積標高とルート定数をチェック。

出典:長野県 ※クリックすると拡大します

久々の登山では、このように事前に数値を確認したうえで、コースや山を選ぶといいでしょう。

『分県登山ガイド』はこちら各県グレーディング表はこちら

完走をゴールとしない、自分の体力を試すための登山をする

登山での息切れ

出典:PIXTA

登山の運動負荷はバスケをしている時と同様といわれています。それを何時間も続けるため、その負荷は日常生活の倍どころではありません。

久々の登山では、山頂をゴールとするのではなく、自分のペースやきつさを探ることを目的とするのがオススメです。その登山での自分の体力から、今後のトレーニング方法や登る山やコースを選んでいくのがベスト。

登山力を衰えさせない!家でもできるトレーニング法とは

低山ハイク

出典:PIXTA
登山力を保つためには、毎週山に登ることがベストとされています。登り下りとも累積標高が500mほどの半日登山を行う、そして1ヶ月の合計距離が登り下りとも累積標高が2,000mほどになるようにするのが目安。

とはいえ、毎週山に登る時間が取れないという人も多いですよね。そこで山に登る以外で、同じ負荷をかけられるトレーニング法を山本教授に伺いました。

登山力を衰えさせないために、脚力はもちろん、主に3つの力を鍛えることが大切です。
山本正嘉教授
山本正嘉教授

①脚力を鍛える
②持久力を鍛える
③バランス力を鍛える

それでは、それぞれの鍛え方を詳しく見ていきましょう!

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