ヤバいのは、熊だけじゃなかった!山で出会う危険動物たちへの対策って?

2021/06/02 更新

登山へ行く時は熊対策を万全に!ただ、備えるのは本当に熊だけで大丈夫なのでしょうか。実は、もっと頻繁に出会う可能性がある動物がいるのです。今回はそんな、山で遭遇しうる危険な大型哺乳類の動物への対策法を専門家が伝授。ぜひ参考にしてみてくださいね。

アイキャッチ出典:PIXTA

熊対策はしているんだ……

提供:モンベル、出典:いらすとや
熊対策をしているA男さん。熊よけ鈴をつけて、いざという時用にスプレーも持っています。ルンルン、山頂まで行くぞ〜。

するとサルの赤ちゃんを発見。かわいい〜と近づいて写真を撮っていると……

出典:PIXTA
親猿が威嚇しながら襲いかかってきた!!!
たたたた、たすけて!!!

 

(ガバッ)

なんだ、夢だったのか……

熊対策はしていたけど、ほかの動物に襲われるなんて考えてもいなかったな。熊以外にも山には、危険な動物がたくさんいるのかもしれない。

悪夢のせいで、山へ行くのが不安になってしまったA男さん。山で出会う可能性がある動物に対して、どんな対策をしていったらいいのでしょうか。

専門家へ「登山中の危険動物への対策法」について聞きました!

提供:西海太介氏

一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏

神奈川県横浜市生まれ。『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講。
監修書籍に『すごく危険な毒せいぶつ図鑑』(世界文化社)。著書に、『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)など。

いざというときのために、どんな動物に気を付けたらいいのかを事前に知っておくのは大切なこと。たしかに山には、熊以外にもいろいろな動物たちが生息しています。付き合い方を間違えてしまうと、自分自身はもちろん、ほかの誰かの事故につながってしまう場合も……。

今回は、比較的山で出会う可能性がある大型哺乳類の動物(熊以外)と事故を起こさない工夫について、説明していきます!

これだけは抑えておきたい!野生動物にナメられない2つの対策

まず、いろいろな動物について知る前に共通の認識として持っておいてほしいことが2つ。


本来の形であれば「動物はヒトを怖がる」もの。ただ、我々の行動によってはその印象を崩し、動物たちに「ナメられてしまう」場合があるんです。

安易にエサを与えてしまったり、山で食べ散らかしたままにしておくと、大変……!「いつもエサを持っている」とか、「ヒトは襲えばエサが手に入る」と学習されて、どんどん行動がエスカレートしていってしまいます。

「野生動物にエサを与えてはならない」という言葉は、「生態系を守る」という意味で使われていることも多い。ただ実際には「事故を防ぐ」という意味合いも含まれるので、しっかりと意識しておくことが必要です。

今回は山で出会う可能性が高い、3種の動物をご紹介。

・ニホンザル
・イノシシ
・シカ

それぞれ出会わないようにするための対策法について、チェックしていきましょう!

ニホンザル|頭の良さがピカイチ!だからこそ学習させない

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サルは頭がいい。場所によっては餌付けされていたり、ヒトから食べ物を奪ったりと経験すればするほど学習していきます。
ヒトとの距離が近くなってしまったサルは、食べ物を盗んでやろうと向こうから近づいてくることすらあるんです。

盗られれば、その成功経験が増えるので、また盗りに行く……。そんな悪循環が生まれるので、ヒトは怖い生物だと学習させておかないと大変なんです。

対策方法|食べ物を《見せない・匂わせない》工夫が大切

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コンビニで買ったお弁当が入ったビニール袋を持っていたり、リュックに食べ物の袋をむすんで歩いていたら、突然奪われる!なんてことが発生しかねません。

登山中はもちろんですが、サルの生息域ではキャンプにも要注意。
食べ物を外に出したま、なんてことをしていたら、盗られる可能性は十分あります。

食べ物はしっかりとリュックの中にしまって、食べ物の気配を感じさせない工夫が大切。
「奪いに行けそう」と思われないように、しっかりと荷造りをしましょう。

イノシシ|タックルされたら大ケガ!?出会わないように対策を

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イノシシの体重は50kg~150kg!20kg程度の小さな子どもでも、向かってこられると、なかなかの迫力です。

イノシシとの事故で一番怖いのは、タックルでしょう。
打撲、骨折、裂傷する可能性に加えて、咬まれると感染症などの危険も考えられます。

向かってきたら目の前で傘を広げるといった対策もありますが、「突然至近距離で出会う」なんていう状況を作らないことが1番です。つまり、出会う前にイノシシに逃げてもらう、これに尽きます!

対策方法|出会わないように相手に認識してもらうこと


出典:PIXTA
そもそも、山で野生のイノシシに出逢ったときは、基本的には向こうから逃げていくことがほとんど。
ただ、「窮鼠猫を噛む(※1)」のことわざのように、追い詰められた状況と判断したときは抵抗のために攻撃してくることもあります。

そのために、こちらの存在を事前に伝えることが大切!
人間がそこにいるとわかれば、基本的に向こうは先に逃げていくはずです。熊よけ鈴はイノシシなどのほかの生物に対しても存在を伝えるという意味で、役に立つでしょう。
※1:絶体絶命の窮地に追い詰められたら、弱い者でも強い者に逆襲することがあるというたとえを表すことわざ。

シカ|襲われる可能性は低いけど……身近にいるヤツに要注意


関東周辺でも奥多摩や丹沢をはじめ、八ヶ岳や富士山など、シカの分布するエリアはたくさん。登山中に見かけた経験がある人も多いのではないでしょうか。

ただシカは、襲うことはないとは言い切れませんが、ほかの動物に比べると、攻撃されることは極めて稀です。

そのため、イノシシの対策と同じように、ヒトの存在を伝えられれば、ほとんどの場合事故に遭う可能性は低いと考えられます。

どちらかというと、シカの場合はその身近にいる要注意生物に対して、対策をしていった方がいいかもしれません。

対策方法|シカがいるエリアでは、虫除けスプレーを!?

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実は、シカが多いエリアでは、吸血ヒルであるヤマビルが生息している場合が多い。
そのためシカに突撃されるよりも、このヤマビルの被害に遭う方が圧倒的に可能性が高いので、注意が必要です!

標高が高い場所では冬を乗り切れなかったりもするので、「シカがいるエリアに必ずヤマビルがいる」というわけではないですが、分布するエリアはかなりシカに紐づいているといわれているので、参考になるはず。

一般的な虫よけスプレー(有効成分ディート10%やイカリジン15%)でも十分忌避効果があるので、こうしたスプレーを靴や足元にかけているだけで違うでしょう。
ヤマビル対策として、ぜひ役立ててみてくださいね。

▼ヤマビルについて詳しく知りたい人はこちらをチェック

もしも出会ってしまったら!そんな緊急時にはどうしたらいい?

出典:PIXTA
どんなに気を付けていても、出会うときは出会ってしまうかもしれません。そんな緊急時にはどう対応したらいいのでしょうか。
シーンに応じて、考えてみましょう。

▼自分だけ気付いて、動物は気がついていない状態
それ以上近くづくことはせず、向こうが去るか、こちらが迂回して別ルートを通るようにしましょう。

▼比較的近い距離で遭遇し、動物がこちらに気付いている場合
人慣れしていない地域の動物たちであれば、まず向こうから逃げていくことがほとんどです。
ただし、地域や個体によっては逃げていかない可能性も。その場合は、近づいたり、目を合わせたり、大きな声を出したりしないこと。そっと後退りするように距離を取っていきましょう。

共通する基本的なルールとしては、「相手を驚かせる可能性がある行為は避ける」ことです。
ここに注意をしながら対策をとるといいでしょう。

知ることは最初の事故予防!より安心安全の登山を

出典:PIXTA
野生動物には、野生動物の暮らしや事情があります。頭のいい彼らだけに、対応を誤ると怪我や事故の原因になる場合があることを、我々はしっかりと理解する必要があります。

山は彼らの住み家でもあるので、そこに入っていく以上、彼らとの付き合い方はしっかりとわきまえていかないといけません。

うまく付き合ってあげれば、お互いに安全に自然を楽しめるはずです。彼らの暮らしや事情を知って、安全な登山を楽しんでいきましょう。

▼熊の対策について知りたい人はこちらをチェック


▼危険生物はこちらをチェック

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西海太介

2009年から自然ガイドとして携わり、述べ30,000人以上に対し、自然解説を行ってきた。そんななか、過去に不注意により発生したハチ刺傷事故を受けて、ハチ・ヘビ対策を強化・研究。同時に、都市公園の所長・副所長を務める中、野外指導者側の自然生物に対する”誤解のない知識・理解”の必要性を痛感し、現在はフィールドワーカーや学校の先生のための「”ハチ””ヘビ”危険生物対策講座」のほか、児童向けの専門的な「生物学習教室」なども開講、指導。『知的な自然教育プロの養成専門所』として、当所を運営する。

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