【雪山の必須技術】雪を融かして水づくり。チタンとアルミ、早くお湯を沸かせるのはどっち?!

2021/03/13 更新

雪山では雪を融かして水を確保する。これは基本の技術です。一見大変そうですが、バーナーやクッカーなどの道具があれば、誰でも簡単に雪から水をつくることができます。そんな「雪から水づくり」の手順を紹介するとともに、クッカーの「チタン」や「アルミ」などの素材によって、沸騰するまでのスピードに違いが出るのかを検証してみました。そして、検証の末に辿りついた、効率よく水をつくる方法とは?水づくりにおすすめなクッカーも紹介します。

アイキャッチ画像撮影:筆者

雪山で水がなくなった……一体どうすればいいの?

撮影:筆者
「水」は登山になくてはならない必需品。気温の低い雪山であっても、人はしっかり汗をかいているので水分摂取は大切です。脱水になるとめまいや全身の倦怠感、低体温症の要因になることもあります。
雪山大好き
ライター
橋爪
雪山では喉の乾きを感じにくいので、水分摂取がおろそかになりがち。意識してこまめに水やお湯、塩分を取りましょう!

でも、もし雪山で水がなくなってしまったらどうやって水を確保すればいいのでしょうか?山小屋は営業していないところがほとんどですし、水場は雪で埋もれていたり凍っていたりで、夏山のように水は確保できませんよね。

雪山では雪を融かして水をつくります!

そんなときに活躍するのが「」。
撮影:筆者
雪山ではバーナーで雪を融かして水を確保するのが基本で、冬のテント泊や縦走などでは一般的な技術とされています。

ちなみに喉が渇いたからといって、雪をそのまま食べるのはNG!雪は真っ白できれいに見えても、不純物やチリがいっぱいなんです。バーナーで煮沸することにより殺菌をしましょう。
ライター
橋爪
筆者は残雪期に雪を食べながら歩いていたらお腹を下したことがあります(実話)

とっても簡単!雪から水をつくる方法をご紹介

そんな雪から水をつくる方法を、手順を追ってご紹介。
撮影:筆者
水づくりに必要な道具は以下のとおり。

[必ず必要な物]
・ガス&バーナー・・・ガスはなるべく満タンを用意
・クッカー・・・1ℓほどの容量が使いやすくて◎
・保温水筒やナルゲン・・・口が広いものが◎
・ビニール袋・・・単独ならスーパーのビニール袋でOK

[あると便利な物]
スコップ・・・ピッケルのブレードなどでも可
フィルター・・・不純物をろ過するためのもの。コーヒーフィルターや茶パックなど

特に難しい技術は必要ないので、誰でも簡単にできますよ!

①雪を集めてくる

撮影:筆者(スコップがあると早いですが、ピッケルのブレードなどで地道にかき集めることもできます)
まずはビニール袋に雪を集める作業から。雪はなるべくルートから離れた場所からきれいな雪を取ってきましょう。ビニール袋は単独であればスーパー袋でOK。2〜3人の場合は厚手の45ℓサイズがあると便利です。

ライター
橋爪
表層は汚れていることが多いので、中層の雪を取りましょう。特に残雪期は黄砂やチリなどいろんな不純物が混ざっているので注意です!

②バーナーで雪を融かす

撮影:筆者
雪を集めたら、バーナーとクッカーをセット。このとき、コッフィルに30〜50mlほどの水を入れておきましょう。呼び水があることで熱効率が上がり、雪を融かすスピードが上がります。

また、雪は一度にドサっと入れず、少しずつ足していきましょう。コップやシエラカップなどを使うと雪が入れやすいです。

撮影:筆者
必要な雪の量はそのときの雪質によって変わってきます。サラサラな雪ほど水分が少ないため、多くの雪が必要です。雪を足しながら、必要な水量になるように調整していきましょう。

③沸いたら水筒に移す

撮影:筆者
水が沸騰したら、保温水筒やナルゲンに移します。

撮影:筆者
必須ではありませんが、この際にコーヒーフィルターなどを使って不純物を「ろ過」するのがおすすめです。プラティパスなどの口が狭いタイプはこぼれやすいので注意しましょう。

効率よく雪から水をつくる方法は?

ところで、筆者はいままで道具などを特に意識せずに水づくりをしてきました。でもリスクの高い雪山だからこそ、なるべく効率よく、省エネで済ませたいですよね。というわけで水づくりに使用するクッカーの素材によって、どんな違いがあるのかを試してみました。

今回使用するのは、チタンアルミのクッカー。チタンは軽量な人気素材、アルミは安価で使いやすい、というのが2つの素材を選んだ理由です。
さっそく検証に入っていきましょう!

【チタンvsアルミ】雪からお湯をつくるのに早いのはどっちだ?!

撮影:筆者(今年の長野県もなんだかんだで雪は少ないです)
ということで、雪を求めて長野県にある霧ヶ峰まで行ってきました。

▼検証方法▼
チタンとアルミ、それぞれのクッカーで雪から400mlの水が沸騰するまでの時間を計測

▼使用アイテム▼
バーナー:<プリムス>153ウルトラバーナー
クッカー:<スノーピーク>チタントレック900/トレック900

まずはチタンから計測スタート!

撮影:筆者(霧ヶ峰は爆風で散々な目に。雪を持って麓に移動しました)
50mlの呼び水と雪を入れ、バーナーの点火と同時に計測スタート。さあ、どんな結果になるでしょうか。

撮影:筆者
約3分45秒のところで、雪がすべて融けて400mlの水に変化!このまま沸騰するまでの時間を計測していきます。

撮影:筆者
水になってから2分ほどでグツグツと沸き立ちました。これにてチタンの計測は終了!
結果は約5分48秒となりました。

ライター
橋爪
じんわりと雪が融けていく感覚でした。チタンは独特の風合いがいいですね。

定番のアルミクッカーはどうだ?!

続いてはアルミの出番です。果たしてチタンとの違いはあるのでしょうか?
撮影:筆者
チタンと同様に50mlの呼び水と雪を入れ、バーナーの点火と同時に計測スタートです。

撮影:筆者
約2分34秒で雪が水に変わりました!チタンよりも1分以上早いスピードです。ここから沸騰するまではどうでしょうか?

撮影:筆者
そこからおよそ1分半。水がグツグツと沸きだしたので、ここで計測終了です!
結果は約4分4秒になりました。
ライター
橋爪
チタンと比べて、初動から雪の融解が早い印象がありましたね。


それぞれの結果は以下のとおりです。
チタンアルミ
①雪が水になるまで約3分45秒約2分34秒
②水が沸騰するまで約2分03秒約1分30秒
合計約5分48秒約4分4秒
ということで、チタンvsアルミの「雪から水を作る対決」はアルミの勝利となりました!

なんでアルミの方が沸騰するのが早いの?

チタンとアルミで沸騰までのスピードに差が出たのは「熱伝導率」、つまり熱がどれくらい伝わりやすいかが大きく関係しています。

熱伝導率
作成:筆者(参考:料理日和
アルミは金属の中でも高い熱伝導率を誇ります。それに比べてチタンの熱伝導率はアルミの10分の1ほど。その分、チタンは熱が逃げにくく、長時間熱が持続する特徴があります。
ライター 橋爪
チタンは軽くて強度が高く、腐食しにくいメリットも!冷めにくいので、カップなどにおすすめです!

せっかくなので他にもいろいろ試してみた

これにて一件落着!
と言いたいところですが、山から持ち帰ってきた雪がまだ残っていたので、ちょっとした方法で沸くスピードが変化するのか実験してみました。

ここからはすべてアルミクッカーを使用。検証方法は今までと同様です。


【1】呼び水を入れずにスタートするとどうなるか

まず最初に試してみたのは「呼び水を入れないとどうなるか」という実験。筆者も水を入れておくのが当たり前だと思ってやっていましたが、その真相はどうなのでしょうか?
撮影:筆者(参考:呼び水を使ったときの計測は約4分4秒)
沸騰までにかかった時間は約5分7秒。呼び水があるときと比べて1分以上遅い結果となりました。やはり呼び水は熱効率を上げるためにも大切ということですね。

【2】クッカーにフタをするとどうなる?

続いては「クッカーにフタをするとどうなるか?」を試してみました。家で調理するときも、フタをすると早く沸騰しますよね。きっとこれは早く沸きそうな予感……!
撮影:筆者(参考:フタをしなかったときの計測は約4分4秒)
おぉ、わずかですが早くなりました!計測中は雪を足したり、状況を確認するためにちょこちょこフタをあけていたので、熱が逃げてしまっていたかもしれません。そのまま放っておけばもう少し早く沸いたかもしれませんね。

【おまけ】ジェットボイルだとどうなる?

最後に、高速湯沸かしバーナーでおなじみの「ジェットボイル」だとどうなるのかを試してみました。
撮影:筆者(絶版のジェットボイルSOLを使用。サーモレギュレーター搭載のアルミ素材です)
はやっ!!
2分ほどで雪は水に変わり、そこからあっという間に沸騰してしまいました。さすがジェットボイル、湯沸かしのスピードにおいて、やはり敵なしですね。

【結論】いろんな方法を組み合わせることで効率的に!

今回の検証結果から、雪からお湯をつくる際には以下の3つを取り入れるのがよいことがわかりました。

①アルミ素材
②呼び水を入れる
③フタをする

また、ジェットボイルやMSRのウインドバーナーなど、熱効率の高いバーナーを使用することで、より効率的な水づくりができそうです。

ガスはしっかり用意しておこう!

雪から水をつくる場合はガスも多く使用するため、雪山で水づくりをする場合は満タンのガスカートリッジを持っていくようにしましょう。思わぬガス欠はリスクを命に関わることも。しっかり満タンのカートリッジを持っていきましょう。
ライター
橋爪
今回の検証だけでも250サイズのガス缶がほぼ空になりました。テント泊などの場合はガス缶の量もしっかり吟味する必要があります。

雪でおいしい水をつくってみよう!

撮影:筆者(雪からつくったお湯で紅茶を飲みました。おいしかったです)
雪と道具さえあれば、誰でも簡単にできる水づくり。ぜひ、雪山へ行ったときにやってみてください!テント泊じゃなくても、雪からつくったお湯でお茶やごはんを楽しんでみるのも面白いですよ。

まずは手軽な雪山で実践してみるのもOK!コツをつかむことで、雪山登山のステップアップにもつながりますよ。

水づくりにおすすめなクッカー3選

ITEM
スノーピーク トレック900
今回検証に使用したクッカーです!アルミ製のベーシックな900ml容量のクッカーで、山での調理にも最適です。

●素材:アルミ
●重量:265g
●容量:900ml

ITEM
プリムス ライテックトレックケトル&パン
1ℓサイズのアルミ製クッカー。外側にはハードアノダイズドと呼ばれるコーティングがされていて、凹みにくく傷つきにくい特徴があります。内側にはノンスティック加工が施され、焦げつきを抑えます。

●素材:アルミ
●重量:約280g
●容量:1リットル

モンベル アルパインクッカー14
モンベルのアルミ製クッカー。広口タイプになっているので、雪を入れやすいのが特徴。取っ手には熱くなりにくいカバー付きで使いやすさも魅力です。
●素材:アルミ
●重量:184g
●容量:0.8ml
モンベル アルパインクッカー14

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スノーピーク トレック900
プリムス ライテックトレックケトル&パン
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橋爪 勇志

日本アルプスに囲まれた、長野県の伊那谷生まれ。登山好きな母親に連れられ、山を駆け巡って育つ。アルパインクライミングや沢登り、冬山縦走など、ちょこっとスパイスの効いた登山が大好き。

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