変化する植物!?登山者をも魅了する世にも奇妙な「コケ」の世界へようこそ

2020/11/13 更新

山の植物といったら「高山植物」ですが、密かに注目を集め続けているのが「コケ」。近年では、コケを見るために山へ登るという登山者やコケ観察がメインのトレッキングツアーなども増えてきました。ただ見て何がおもしろいのだろう?と疑問に思いますよね。そこで今回は愛好家である藤井久子さんに、その魅力や生態の不思議について聞いてきました!


アイキャッチ提供:藤井久子さん

密かに続くコケブームの秘密に迫る

コケ まとめ
提供:藤井久子さん
山の植物といったら「高山植物」と答える人が多い中、密かに注目を集め続けているのが「コケ」。

コケガールやコケトリップという言葉ができたり、テレビの特集や雑誌で紹介されたりと密かなブームが続いているのです。

近年では、コケを見るために山へ登るという登山者やコケ観察がメインのトレッキングツアーなども増えてきました。

コケを見て、何がおもしろいの?

ルーペごしのスナゴケ
提供:藤井久子さん
風景として楽しむのはわかるけど、近くで観察して何が見えるの?と疑問に思う人も多いでしょう。ただ、キラキラとした目でコケを見ている人たちはなんだか楽しそう。もしかしたら登山での新たな楽しみが増えるかもしれない…!

そこで今回はコケガールの火付け役者である、コケ愛好家の藤井久子さんに観察する魅力について話を聞いてきました。

形や色が変わる?変化するコケたちに目が離せないワケ

編集部 宮下
コケにハマった理由はズバリなんですか?
藤井さん
色や形が変化したり、種類によって形が違ったりと、いつ見ても新鮮な感動が得られるからですかね。
編集部 宮下
色や形が変化?なんだか想像がつきません。
藤井さん
例えば、雨が降る前と後で変化を感じたことはありませんか?写真を例に乾燥時と湿潤時の時の様子を比べてみましょう。

エゾスナゴケ水をかけるとエゾスナゴケ
提供:藤井久子さん
編集部 宮下
わあ!全く別物みたいですね。
藤井さん
そうなんです!これはエゾスナゴケというコケ。水をかけてあげると葉が開き緑が濃くなっているのがわかりますよね。
編集部 宮下
乾燥時にはわからなかった、新しい一面に出会えますね。
藤井さん
見た目以外にも、触り心地や香りが変わることもあるので、1つのコケからいろんな発見を楽しむことができます。

季節によって色や形が変わるコケたち



ヒメジャゴケ1 紅葉
提供:藤井久子さん(ヒメジャゴケが紅葉している様子)
藤井さん
これは10月下旬に長野県で撮影したヒメジャゴケ。植物と同じくコケも秋になると紅葉するんですよ。
編集部 宮下
紅葉するのは驚き。全ての種類が紅葉しますか?
藤井さん
全てではないですが、季節によって形を変えるコケは多くいます。


ジャゴケ 胞子体
(右)提供:藤井久子さん(左)出典:PIXTA、作成:YAMA HACK編集部
藤井さん


こちらはジャゴケ。3〜4月頃には雌器托(しきたく)といって、胞子を散布するための特別な器官が雌株からニョキニョキと伸びてきます。

このように春先に胞子を飛ばすコケは多く、季節によって形の変化を楽しめるのもポイント。

編集部 宮下
この季節しか見られない!となるとプレミア感がありますね。
藤井さん
そう、それこそコケをいつまでも楽しめる理由。いつ見ても新しいと発見と感動を与えてくれるので何度でも見たくなるんです。

触って、見て、嗅いで、五感で楽しむコケの観察ポイント

「コケ観察といっても見るだけではなく、五感でコケを楽しむことでその魅力を堪能できるんです」と語る藤井さん。

コケを五感で楽しむ3ステップ
《1》近くで見てみる
《2》優しく触ってみる
《3》香りを嗅いでみる

この3つを行うと、今まで知らなかった新しいコケの魅力を発見できるとのこと。

それぞれのステップで詳しく見ていきましょう。

《1》近くで見てみる

今までは風景として遠くから見て楽しんでいたコケたち。ルーペや虫メガネで拡大すると、今まで発見できていなかった新しいコケの姿を目にすることができます。

まるで別の植物!?見る距離によって変わるコケの景色

コケ遠くから観察
提供:藤井久子さん
登山中の足元に、こんな緑の塊に遭遇したことはありませんか?
いつもは通り過ぎてしまうところも拡大して見てみると…

タマゴケ
提供:藤井久子さん
丸い形が不思議で可愛らしいコケを発見しました!

名前:タマゴケ
特徴:3〜4月に球形の蒴(さく)をつける。赤くなっているのは蒴歯(さくし)と呼ばれ、胞子を散布する量とタイミングを調節する役割を持つ。

普段見過ごしていた景色の中にこんな可愛らしくて不思議な植物がいたのは驚き。大きな景色から小さな景色を切り取ることで見つかる美しいミクロの世界に、感動すること間違いなしです。

変わった形のコケにも出会えるかも

近くで見るとおもしろい生態のコケに出会えることも。
2つの例を見ていきましょう。

ケチョウチンゴケ
提供:藤井久子さん

名前:ケチョウチンゴケ
特徴:仮根が葉の上に出ていて、モジャモジャと毛が生えているよう。

通常は茎の下部に生えている褐色の仮根(かこん)が茎をつたって、葉の上に出てくるためこのような姿になっている特殊な生態を持つコケ。
葉の上の仮根の先端からはやがて無性芽(むせいが)が伸び、それが折れて飛んでいき、群落を広げていきます。

なお、春の若い植物体には毛が生えていません。コケも人間も毛深くなるのは大人になってからなど、人間に例えてみるのもおもしろいです。
ムクムクゴケ

提供:藤井久子さん

名前:ムクムクゴケ
特徴:全体が産毛のような葉で覆われ、枝先が丸く犬や猫の手足のような雰囲気がある。

遠くからだとよくわからないですが、近づくとこんなにかわいい姿が。さらに倍率の高いルーペで覗くと、細かい産毛のようなもの(じつは細かく長毛状に裂けた葉)が生えているのも見られます。

まるで動物の毛深い足先を思わせるフォルムが魅力的。

《2》優しく触ってみる

コケを触ってみる
提供:藤井久子さん
コケを乱暴に扱ったり、採集したりするのはNGですが、優しく触るのはOK!コケの種類によってモフモフと柔らかかったり、ツンツンと硬かったりと触り心地もそれぞれ。

また乾燥時と湿潤時で感触も異なるので、観察時には水を入れた霧吹きを持っていきビフォー・アフターを比べてみるのもおすすめです。

中でもモフモフとした柔らかい触り心地として代表的なのがこちら。
コウヤノマンネングサ
提供:藤井久子さん

名前:コウヤノマンネングサ
特徴:大型で優美なコケ

山地の半日陰の腐植土でよく見られるこちらのコケは、藤井さん曰くモフモフ感が格別とのこと。

ぜひコケを見つけたら優しく触れて、その感触を楽しんでみてください。

《3》香りを嗅いでみる

コケ観察
提供:藤井久子さん
新緑の爽やかなものやツーンとした刺激臭のものなど、香りも種類によってさまざま。
中でも珍しいのがこちら。

ジャゴケ
提供:藤井久子さん

名前:ジャゴケ
特徴:葉の表面が蛇のウロコ模様。松茸の香りがする。

実際に松茸と同じ香り成分があると研究で明らかになっているコケ。最近では、従来「ジャゴケ」としてくくられていたものに複数のタイプがあることがわかり、特に松茸臭が強いものは「マツタケジャゴケ」と名付けられました。

香りもコケの個性の1つ。ぜひ近づいて香りも楽しみましょう。

実際に山でコケを探してみよう

ルーペで苔観察
提供:藤井久子さん
観察っていったって、コケを知らないとできないでしょう?
いいえ!そんなことはありません。登山へ出かけた時、地面に注目してみてください。緑色のモフモフっとしたものを見つけたらまずは近づいて、よく観察してみましょう。

専門的なアイテムがなくても大丈夫!

コケ観察グッズ
提供:藤井久子さん
ルーペはネットで約2,000円ほどするため、最初は携帯電話のカメラ機能を使えばOK!コケを見つけたら携帯カメラをかざしてズームをすれば、葉や茎など生態の様子をよく見られます。

ほかにも100円ショップの虫メガネなども手軽に用意できるのでおすすめ。

また霧吹きを持っていって、乾燥時と湿潤時の違いを見てみるのも楽しいですよ。

ここを探してみて!コケが生えやすい場所

コケ
出典:PIXTA
沢沿いや日陰など全体的に湿った場所に多く生育しています。あとは岩壁や木の根元にも。たくさん種類を見たい!という人には、長野県の北八ヶ岳がおすすめ。ここには約400種類ものコケが発見されています。

▼北八ヶ岳の詳細情報はこちら

藤井さんが登山中に見つけたコケは、ブログでも紹介をしているのでぜひこちらもチェック。
かわいいコケブログ

観察時にはこんなところに注意を!

観察時の注意
出典:PIXTA

・他の登山者の通行の邪魔にならないようにする

・山は足元が不安定な場所も多いので、よく足場を確かめた上で観察する

・他のコケや他の植物、木の根っこ等を踏みつけないように注意


コケの採取は厳禁です。持ち帰ればその土地の環境破壊にもつながります。これからも私たちが末永くコケとお付き合いしていくためにも、マナーやモラルは必ず守りましょう。

登山へ出かけたら、コケの世界も覗いてみよう

出典:PIXTA
知れば知るほど奥が深いコケの世界。山に登ったら、ふと地面や木の根元、岩などに目を向けてコケを探してみてください。今まで気づかなかった小さな場所に潜むミクロの世界のおもしろさや美しさを堪能できますよ。

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YAMA HACK編集部 宮下
YAMA HACK編集部 宮下

YAMAHACK記事編集担当。大学時代に入部したワンダーフォーゲル部をキッカケに登山好きに。マイテントを担いでソロ登山を楽しんでいます。登山の魅力や新しい発見を届け、1人でも多くの人に登山っていいなって思ってもらえるような記事制作に励みます。

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