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密かに続くコケブームの秘密に迫る

コケガールやコケトリップという言葉ができたり、テレビの特集や雑誌で紹介されたりと密かなブームが続いているのです。
近年では、コケを見るために山へ登るという登山者やコケ観察がメインのトレッキングツアーなども増えてきました。
コケを見て、何がおもしろいの?

そこで今回はコケガールの火付け役者である、コケ愛好家の藤井久子さんに観察する魅力について話を聞いてきました。
形や色が変わる?変化するコケたちに目が離せないワケ



季節によって色や形が変わるコケたち


こちらはジャゴケ。3〜4月頃には雌器托(しきたく)といって、胞子を散布するための特別な器官が雌株からニョキニョキと伸びてきます。
このように春先に胞子を飛ばすコケは多く、季節によって形の変化を楽しめるのもポイント。
触って、見て、嗅いで、五感で楽しむコケの観察ポイント
「コケ観察といっても見るだけではなく、五感でコケを楽しむことでその魅力を堪能できるんです」と語る藤井さん。コケを五感で楽しむ3ステップ
《1》近くで見てみる
《2》優しく触ってみる
《3》香りを嗅いでみる
この3つを行うと、今まで知らなかった新しいコケの魅力を発見できるとのこと。
それぞれのステップで詳しく見ていきましょう。
《1》近くで見てみる
今までは風景として遠くから見て楽しんでいたコケたち。ルーペや虫メガネで拡大すると、今まで発見できていなかった新しいコケの姿を目にすることができます。まるで別の植物!?見る距離によって変わるコケの景色

いつもは通り過ぎてしまうところも拡大して見てみると…

名前:タマゴケ
特徴:3〜4月に球形の蒴(さく)をつける。赤くなっているのは蒴歯(さくし)と呼ばれ、胞子を散布する量とタイミングを調節する役割を持つ。
普段見過ごしていた景色の中にこんな可愛らしくて不思議な植物がいたのは驚き。大きな景色から小さな景色を切り取ることで見つかる美しいミクロの世界に、感動すること間違いなしです。
変わった形のコケにも出会えるかも
近くで見るとおもしろい生態のコケに出会えることも。2つの例を見ていきましょう。

名前:ケチョウチンゴケ
特徴:仮根が葉の上に出ていて、モジャモジャと毛が生えているよう。
通常は茎の下部に生えている褐色の仮根(かこん)が茎をつたって、葉の上に出てくるためこのような姿になっている特殊な生態を持つコケ。
葉の上の仮根の先端からはやがて無性芽(むせいが)が伸び、それが折れて飛んでいき、群落を広げていきます。
なお、春の若い植物体には毛が生えていません。コケも人間も毛深くなるのは大人になってからなど、人間に例えてみるのもおもしろいです。
名前:ムクムクゴケ
特徴:全体が産毛のような葉で覆われ、枝先が丸く犬や猫の手足のような雰囲気がある。
遠くからだとよくわからないですが、近づくとこんなにかわいい姿が。
まるで動物の毛深い足先を思わせるフォルムが魅力的。
《2》優しく触ってみる

また乾燥時と湿潤時で感触も異なるので、観察時には水を入れた霧吹きを持っていきビフォー・アフターを比べてみるのもおすすめです。
中でもモフモフとした柔らかい触り心地として代表的なのがこちら。

名前:コウヤノマンネングサ
特徴:大型で優美なコケ
山地の半日陰の腐植土でよく見られるこちらのコケは、藤井さん曰くモフモフ感が格別とのこと。
ぜひコケを見つけたら優しく触れて、その感触を楽しんでみてください。
《3》香りを嗅いでみる
新緑の爽やかなものやツーンとした刺激臭のものなど、香りも種類によってさまざま。中でも珍しいのがこちら。

名前:ジャゴケ
特徴:葉の表面が蛇のウロコ模様。松茸の香りがする。
実際に松茸と同じ香り成分があると研究で明らかになっているコケ。最近では、従来「ジャゴケ」としてくくられていたものに複数のタイプがあることがわかり、特に松茸臭が強いものは「マツタケジャゴケ」と名付けられました。
香りもコケの個性の1つ。ぜひ近づいて香りも楽しみましょう。
実際に山でコケを探してみよう

いいえ!そんなことはありません。登山へ出かけた時、地面に注目してみてください。緑色のモフモフっとしたものを見つけたらまずは近づいて、よく観察してみましょう。
専門的なアイテムがなくても大丈夫!

ほかにも100円ショップの虫メガネなども手軽に用意できるのでおすすめ。
また霧吹きを持っていって、乾燥時と湿潤時の違いを見てみるのも楽しいですよ。
ここを探してみて!コケが生えやすい場所

▼北八ヶ岳の詳細情報はこちら
藤井さんが登山中に見つけたコケは、ブログでも紹介をしているのでぜひこちらもチェック。
かわいいコケブログ
観察時にはこんなところに注意を!

コケの採取は厳禁です。持ち帰ればその土地の環境破壊にもつながります。これからも私たちが末永くコケとお付き合いしていくためにも、マナーやモラルは必ず守りましょう。
登山へ出かけたら、コケの世界も覗いてみよう
