どんな山でも遭難は起こりうる。’’道迷い’’対策を、経験から考える

ツツジが美しいことで有名な、丹沢の檜洞丸。実は過去には、登山経験の豊富だった女性が、下山中に道迷いで遭難し、残念ながら約2週間の捜索の上帰らぬ人となりました。すべての方に安全登山の重要性を伝えたい。
そこで今回はきっと皆様にも馴染み深い丹沢で起きた実録と共に、登山の総合コミュニティサイト「ヤマレコ」の安全登山機能アプリをシリーズ仕立てでご紹介します。今回は道迷い対策機能編です。
遭難原因の1位は「道迷い」。低山の’’落とし穴”とは

毎年、遭難者が発生している丹沢でも、「道迷い」が遭難原因のトップになっています。(参照:
神奈川県警)実は低山は高山よりも迷いやすい要素が多く、その要因は多岐に渡り、林業用の管理道やシカなどのけもの道、最近ではトレランなどのコーステープなどが挙げられます。
檜洞丸から石棚山稜へ。分岐を間違えたのが遭難のはじまりだった。
その女性は、実はYAMA HACK編集部のスタッフの祖母です。今回ご家族の協力のもと実録掲載することになりました。祖母を仮にAさんとしましょう。Aさんはつつじ新道を往復する予定でしたが、檜洞丸の山頂から下山中、分岐地点を誤って石棚山稜方面へ下山してしまいました。
似たような登山道から、Aさんがミスに気付いたのは相当下山してからだと思われます。大石キャンプ場方面へ登山道を進むも、板小屋沢ノ頭付近で登山道を外れてしまい、違う尾根に迷い込み、滑落してしまったと考えられます。
道に迷ったと家族にメール。でも地図とコンパスがなく「自分の居場所」が言えない

登山経験豊富だったにも関わらず道迷いを引き起こしたのは「以前来たことがあるから」という気の緩みからでした。通常、地図とコンパスの用意は鉄則ですがこの時ばかりは携帯しておらず、居場所が伝えられずに捜査は難航。登山計画書が出されていなかったことも拍車をかけてしまいました。
地図コンパスを携帯するのは基本だけど、今いる場所を大事な人に伝える方法は?

Aさんは、遭難してから家族へメールを送っています。山に入ると圏外なことが多いですが、時折電波が入るところもあります。地図とコンパスを携帯することは鉄則ですが、もし電波が入った時に「今」の自分の居場所が家族に伝えられたら?仮にそこから移動したとしても、捜査の足掛かりにはなるはずです。
安全登山のためのアプリ!2つの道迷い対策機能とは

安全登山のために生まれたヤマレコ。一向に減る気配のない道迷い遭難の実態を受け従来の、実にユーザー数60万人にのぼる山行記録の共有だけでなく、「ヤマレコアプリ」と「いまココ」を開発しました。
*ヤマレコアプリ:登山前の山行計画の作成、登山中のGPS機能・ログ登録、下山後の山行記録の作成まで一括して可能
*いまココアプリ:家族や知人など「待つ立場」の人に、ヤマレコユーザーの位置情報を共有することが可能
(注)「待つ立場」の人はいまココのみのインストールでOK。ただ登山する人は、いまココがきちんと作動しているかを確認するためにも両方のアプリのダウンロードがオススメです。
道迷い対策機能①ヤマレコアプリ

撮影:washio daisuke
ヤマレコアプリは無料でダウンロード可能(一部有料のプレミアム会員限定の機能あり)なGPSアプリ。登山中の現在地の把握はもちろん、道迷い防止にも役立つさまざまな機能があるんです。ここでは5つの特徴をご紹介します。
特徴1:オフラインで地図が使える!

アプリを起動し、「設定ボタン」から国土地理院の地形図をはじめ、Googleの衛星MAPなど全8種類の地図から選択可能。更に、ヤマレコの「みんなの足跡」も重ねて表示できるので、実際にみんながどの登山道を歩いたのかがわかります。

出典:
ヤマレコ(雪山を選ぶと足跡が紫色に表示されます)
「みんなの足跡」は4種類から選択可能。雪山登山、クライミング、スキーなど登山スタイルによって変わるヤマレコユーザーの軌跡を確認できるのです。
▼みんなの足跡の活用法はこちらをチェック特徴2:登山届の提出と下山連絡ができる!

提供:washio daisuke(Compassの画面)
ヤマレコで特徴的なのが、多くの自治体で採用されている登山・下山届の電子申請システム
「Compass〜山と自然ネットワーク〜」との連携。ヤマレコで作成した登山計画を登山届としてCompassに提出可能。登山終了時、ヤマレコのログを停止するのと同時に、Compassへの下山通知も可能です。
特徴3:GPSログや写真・メモが残せる。しかも携帯の電波が入ると自動で同期!

登山開始すると、GPSログや撮影した写真の位置情報・メモなどが残せます。高山植物のアップ写真など、どの場所で咲いていたのかを振り返る時にも便利ですよ。
特徴4:万が一に心強いルート逸脱警告

出典:
ヤマレコ(ルート逸脱警告をオンにしておきましょう)
万が一道を間違ってしまった場合もルート逸脱警告をオンにしておけば安心。「予定ルートから外れたようです」と音声アナウンスが流れるので、道間違いに素早く気づけるのです。
※突如携帯の電池が切れてしまった場合など、警告音がならない場合もあるので、これだけに頼るのはNG。
特徴5:現在地を、家族に共有できる!

GPSログを取ると、現在地を定期的にヤマレコに残します。家族のパソコンやスマホで「いまココ」にログインをすると、いつでも家族があなたの現在地を確認できます。
さらに…スマートウォッチを持っている人にはこんな活用法も!

撮影:washio daisuke(Apple Watchの画面がGPSに!)
iPhoneユーザーであれば、Apple Watchへヤマレコをインストールするのもオススメ!雨天や雪山などスマホを取り出しにくい状況でも、Apple Watchの画面上で現在地の把握が可能です。時計の文字盤にも次の目的地の到着予定時刻や、下山予定時刻が表示されますよ。
■コンプリケーション機能を活用! 
撮影:washio daisuke
さらにApple Watchに「
コンプリケーション機能」を追加することで、画像のようにさまざまな情報をApple Watchの文字盤上で確認できるようになりますよ。
道迷い対策機能②いまココアプリ

ヤマレコユーザーの現在地を登山しているヤマレコユーザー以外でも把握できるのが「いまココ」アプリ。家族や知人など登山に出かけたあなたを「待っている」人にインストールしておいてもらうと、無用な心配をかけずに済みますよ。
特徴1:現在地が定期的に記録される!

山に行った際にGPSログを取ると、アプリの設定に応じて2分から30分に一回、現在地の情報がヤマレコのサーバーに送られます。
特徴2:自分の位置情報を家族にも共有できるから、安心!

家族や知人のスマホに、設定した登山者が登山(GPSログ)を開始した時と終了した時に通知が届きます。また、登録周期に応じた最新の現在地が確認可能。
万が一登山者からの下山連絡がない場合でも、居場所の確認ができるのです。
▼いまココについて詳しく知りたい人はこちらをチェック道迷い対策のおさらい

①地図とコンパスを必ず持参
②登山計画書は必ず提出し、山岳保険も加入しよう
③事前に地図やヤマレコのヤマプラなどでルートを確認し、沢や尾根の場所、危険個所を確認
④「ヤマレコMAP」と「いまココ」アプリを使ってみよう
⑤迷ったと思ったら引き返す。沢や谷などに向かって下山せず、尾根に向かって登ろう
道迷いは防げる。地図の先読み準備と、ヤマレコの道迷い対策アプリをうまく使おう

登山が楽しくなる季節。でも、忘れてはいけないのが登山は一歩間違うと大きな事故につながるということ。事前準備をしっかりと行い、安全に楽しく登山を楽しみましょう。次号は、登山計画を特集します。
ヤマレコヤマプラいまココ 【道迷い対策にあたって】 今回ご紹介した対策内容は、ごく一部です。経験や体力にあったルートの作成、装備の準備など、道迷い対策のための準備はたくさんあります。是非お近くの山岳連盟や登山用品店が開催している地図読み講座や安全登山対策講座に参加してみましょう。
▼この記事を読んだ人はこちらもチェック