朝日岳ってどんな山?登山の難易度はどのくらい?
標高 | 山頂所在地 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
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1945m | 群馬県利根郡みなかみ町、新潟県南魚沼市 | 21℃ | 5.6℃ |
朝日岳は三国山脈に属し、群馬県利根郡みなかみ町と新潟県南魚沼市にまたがっています。他所の朝日岳と区別するため「上州朝日岳」と呼ばれることも。山頂周辺には湿原や池塘があり、高山植物だけではなく、湿原植生も豊富に生息しています。
山頂を含む山域西側は上信越高原国立公園の一部になっており、「日本三百名山」「ぐんま百名山」「関東100名山」にも選定されている、美しい山です。湯檜曽川をはさんで谷川岳と向かい合っているため、谷川岳とセットでの縦走も人気があります。
まるでアルプスにいるかのよう。たおやかな稜線歩きがたまらない朝日岳
谷川岳を含む山並は馬蹄形をしており、縦走コースとしても人気です。その中でも、朝日岳はどの登山口からも遠い場所にあるため、訪れる人が少なく、静かな山旅を楽しめます。稜線に出るまでには岩場や鎖場なども険しい道ですが、山頂付近に広がる朝日ヶ原湿原からの眺めは素晴らしく、谷川岳をはじめ、至仏山、燧ヶ岳などを見渡せる雄大な稜線歩きを楽しめます。
朝日岳の難易度はどのくらい?日帰りは可能?
山頂へ向かう主なルートは3つ。一番短時間で往復できる白毛門登山口からのコースでも、標準タイムで9時間以上かかります。
特に人気の谷川岳を含む馬蹄形縦走コースは、標準コースタイムで15時間以上必要な上級者コースです。稜線までの岩場だけでなく、細かくアップダウンを繰り返すため、技術と体力が必要。安全のためにも、一泊以上での山行がおすすめ。
朝日岳の天気と地図を調べる!
朝日岳に行く前に、現地の天気をチェックしてから出発しましょう。登るルートも地図であらかじめ確認して、時間に余裕がある計画を立ててください。
歩きごたえは抜群!長時間歩ける体力必須の上級者向けコース
山頂へは、最寄りの登山口からのコースの他、谷川岳を含む馬蹄形の縦走コースがあります。一番近い登山口は、朝日岳の南に位置する白毛門登山口ですが、近いと言っても往復するのに9時間以上必要。縦走コースは更に長丁場なため、1泊以上がおススメ。今回は人気の馬蹄形縦走コースと、白毛門登山口からの往復コースについてご紹介します。
①一番人気!1泊2日で行く谷川馬蹄形コース
最高点の標高: 1955 m
最低点の標高: 669 m
累積標高(上り): 4136 m
累積標高(下り): -3484 m
- 【体力レベル】★★★★★
- 1泊2日
- コースタイム:15時間50分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
朝日岳を含む馬蹄形をした山並みを縦走するコース。日本百名山にも選ばれる谷川岳など、いくつもの名峰が連なり、アップダウンや、厳しい岩場をたくさん超えて長時間歩き続けなければいけないため、中・上級者向きです。
登山口の最寄駅はJR土合駅。駅前から谷川岳ロープウェイ方面へ約600m行き、土合橋バス停のあるT字路を右へ入ると、駐車場の奥に白毛門登山口があります。駅からの所要時間は、徒歩で約10分ほどです。
マイカーの場合は、登山口手前にある駐車場(無料・50台駐車可能)を利用できます。登山口には登山ポストもありますので、事前に登山届を出していない方は、必ず出してから出発しましょう。お手洗いはありません。
登山口から少し進むと樹林帯の急登がはじまります。木に遮られ、景色はあまり楽しめません。また、夏場は虫も多く発生しますので、防虫ネットなどで対策を。ここは最初のふんばりどころ。木の根の躓きなどに気を付けて進みましょう。
松ノ木沢の頭までは展望が悪い樹林帯が続きますが、急登の途中で谷川岳が見える所も。ちょっと立ち止まり息を整えて、先へ進みましょう。
樹林帯を抜けると、今度は岩場の急登が。登りごたえのある岩場には、ロープや鎖が設置されているところもあります。慎重に上りましょう。
松ノ木沢の頭に到着。ここからは展望の良い稜線歩きです。すばらしい眺めを楽しみながら歩きましょう。ここから東側に見えるジジ岩、ババ岩が門のように見えることから、「白毛門」と呼ばれるようになったとか。
白毛門までの稜線は、展望は良いものの急登が続きます。ガレ場や、手を使わないと登れないような岩場も。気を引き締めて行きましょう。
白毛門山頂に到着。行く先に、次に向かう笠ヶ岳(左のピーク)と烏帽子(右のピーク)が。笠ヶ岳へは一旦下ってから上り返し。山頂手前にはガレ場の急登もあります。夏にはニッコウキスゲやドウダンツツジなどの花も咲いていますので、観察しながらゆっくり向かいましょう。
笠ヶ岳山頂に到着。白毛門から笠ヶ岳までの稜線からは、一ノ倉沢、幽ノ沢など谷川岳東面の岩壁群を見渡すことができます。午後になると逆光になるため、岩壁が朝日に照らされる姿を楽しむためにも、はるべく朝早くに上りはじめるのがおススメ。
デコボコと並んだ小烏帽子、大烏帽子の先に、朝日岳が見えます。ニッコウキスゲの花園の向こうに見えるかまぼこ型の小屋は笠ヶ岳避難小屋。朝日岳山頂までは細かいアップダウンの連続です。
朝日岳山頂に到着。広々とした山頂からは、武能岳、蓬峠、七ツ小屋山、大源太山、谷川岳など、ぐるりと360度の絶景を楽しめます。また、この辺りは環境省レッドリストに分類されるホソバヒナウスユキソウの群生地帯。夏のはじめにはエーデルワイスに似た可愛い花を見ることもできますよ。
行く手にはジャンクションピークが、その手前には朝日ヶ原湿原が広がっています。小さな池塘も点在し、この辺りでは湿原特有の植物を観察することもできます。
湿原の登山道は、気持ちの良い木道です。ジャンクションピークから北に続く稜線上には、大烏帽子山(笠ヶ岳)、檜倉山、柄沢山などの険しい峰々を眺めることができます。下りは急なザレ場が続きます。また、2018年の雨による被害で崩壊箇所があるようです。歩くのに支障はありませんが、十分に気を付けて通過してください。
ジャンクションピークを下ると清水峠にある送電線監視小屋と白崩避難小屋が見えて来ます。
清水峠には分岐があり、ここから清水街道方面に行くこともできます。
清水峠を通過して、冬頭ノ頭に到着。峠周辺は熊笹の群生地です。季節により、かき分けて進まないといけないほど、大きく茂っていることも。
冬路の頭から七ッ小屋山へは、気持ちのよい稜線が続きます。また、右手には上越のマッターホルンと呼ばれる大源太山を望むことができます。
七ツ小屋山、山頂に到着。1日目最後のピークです。ここからも360度の展望が楽しめ、翌日歩く武能岳、一ノ倉岳もよく見えます。
蓬峠に到着。武能岳へ続くゆったりとした笹原の中に蓬ヒュッテが、その向こうに池塘が見えます。
蓬ヒュッテに到着。1日目はここに泊まります。蓬峠からは朝日、夕日だけではなく、星空もキレイに見えます。また、この日歩いて来た朝日岳、明日登る谷川岳、そして越後湯沢の街並みも見渡すことができます。早めに到着してゆっくりと景色を楽しんでください。
蓬峠は4本の道が合流する地点。東側の道を下ると白樺避難小屋が。そこからは比較的平易なコースでスタートした白毛門登山口へ下山できるため、緊急時のエスケープルートにもなっています。ここから西へ進み、土樽へ下山することも。
武能岳への登山道は、このコースで一番ゆったりとした上りですが、笹と草に覆われ、少し足元が見えにくいところも。また、石も多いため注意して歩きましょう。
武能岳山頂に到着。次に向かう茂倉岳への、厳しい登り返しの稜線が見えます。少々心が折れそうになるかも? 気持ちを立て直して先へすすみましょう。
茂倉岳に続く登山道は厳しい登りです。疲れたら、ちょっと後ろを振り返ってみましょう。これまで歩いて来た美しい稜線が、疲れを癒してくれますよ。
茂倉岳山頂に到着。山頂より西へ少し下りると、茂倉岳避難小屋があります。トイレ、水場もありますので、緊急時や休憩などにも利用しましょう。
一ノ倉岳山頂には中芝新道へ入る分岐があります。この道は難所続きの熟達者向き。しっかりとした装備と経験がないと危険な道です。間違って入ってしまわないように、注意しましょう。ここから谷川岳へ続く道は、緩やかですが、滑りやすい蛇紋岩が多くなってきます。足元には気を付けて。
日本百名山のひとつ、谷川岳に到着です。谷川岳は双耳峰で、オキノ耳、トマの耳と言う二つの頂きを有します。浅間神社の鳥居をくぐって、まずはオキノ耳、別名谷川富士へ。
双耳峰のもう一歩、トマノ耳へ向けて吊尾根を歩きます。いよいよこれが最後の上りですよ。
トマノ耳に到着。別名、薬師岳。このコース最後のピークです。
トマノ耳のすぐ下、谷川岳肩ノ小屋に着きます。この小屋のある肩の広場から東へのびる西黒尾根をおりると、谷川岳ロープウェイ土合口駅へ下山できます。ただ、鎖場などもあるため、体力に余裕のある方以外はロープウェイで下山することをおススメします。
肩の広場から更に南下すると、谷川岳ロープウェイ天神平駅です。ここからはロープウェイで土合口駅へ下山します。
②もっと手軽に登りたい人向け!白毛門登山口から朝日岳へのピストンコース
最高点の標高: 1930 m
最低点の標高: 669 m
累積標高(上り): 2770 m
累積標高(下り): -2770 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 日帰り
- コースタイム:9時間55分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
縦走コースは楽しそうだけど、少しハードルが高いと言う方には、①でご紹介したコースの前半、白毛門から上り、朝日岳で折り返して下山するコースもおススメです。ただ、こちらのコースも10時間近くある長い行程のため、それなりの体力は必要。
※コース詳細説明は①と同じなため割愛
朝日岳周辺の山小屋情報
白毛門登山口より朝日岳までには避難小屋が1つ。朝日岳から天神平までの間には避難小屋や山小屋がいくつか点在しています。自分の歩くコース上にどのような小屋があるのかを確認し、十分に水と食料を持って入山しましょう。特に、白毛門登山口より朝日岳を往復する場合は無人の避難小屋が1つあるのみです。気をつけて計画してください。
笠ヶ岳避難小屋
笠ヶ岳から朝日岳方面へ少し下ったところにあり、中はあまり広くはありません。悪天候時や体調不良など、緊急の場合の休憩場所としての利用をおススメします。白毛門登山口より朝日岳までの間には、この避難小屋しかありません。トイレ、水場はなく、上信越高原国立公園特別保護地区内のため幕営は禁止されています。
白崩避難小屋
清水峠にあり、室内は2段式。収容人数が少ないため、入れなかった場合を考えてテントやツェルトを持参した方が良いでしょう。トイレ(小屋内)、水場、テント場あり。
蓬ヒュッテ
蓬峠にある山小屋です。営業期間内は管理人が常駐し、売店で飲料水、酒類、食品などを買う事ができます。宿泊するには事前予約が必要となっています。屋内にトイレあり(宿泊者以外は利用料100円)。テント場、水場、自炊場はありません。荷上げなどで、営業期間中でも管理人が不在になる場合があります。その場合は水や食料の購入はできませんのでお気をつけください。
一ノ倉岳避難小屋
一ノ倉岳山頂にある避難小屋。非常に小さいため、計画段階で宿泊地として設定することは避けた方が良いでしょう。悪天候時など、緊急の避難場所としての利用にとどめることをおススメします。
肩の小屋
谷川岳の肩、トマノ耳まで数分の位置にある、2003年7月にリニューアルオープンした小屋。営業期間内は管理人が常駐し、飲料や食料を購入することができます。宿泊するには事前予約が必要です。翌日のお弁当の注文もできます(800円)。営業期間外も休憩、避難は通年利用可能となっています。水洗トイレあり(協力金100円)。
朝日岳の登山口へのアクセス方法&駐車場情報
今回ご紹介したコースの出発点となる白毛門登山口へは、JR土合駅を利用する以外にも色々アクセス方法があります。また、徒歩圏内に駐車場もいくつかあります。土合駅前にも無料駐車場がありますが、こちらは駅の利用者専用の駐車場です。迷惑になりますので、登山目的での駐車は控えましょう。
白毛門登山口へのアクセス
【クルマの場合】
関越道「水上」ICー国道291号線ー白毛門登山口駐車場
【公共交通機関の場合】
・JR上越線「土合駅」下車ー白毛門登山口
・上越新幹線「上毛高原」駅、またはJR上越線「水上」駅下車、関越交通「谷川岳ロープウェイ」行乗車ー「土合橋」下車ー白毛門登山口
下山後の立ち寄り場所情報
土合山の家
土合駅の真裏にできた日帰り温泉ができるお宿です。登山前後の宿泊にもおすすめな好立地。日帰り温泉の営業時間は短いですが、谷川岳から引き出されたお湯を源泉かけ流しで堪能できます。
谷川岳ドライブイン
アクセスが良く、飲食店や売店が併設されているため、登山客以外からも好評のスポットです。赤城牛ステーキやわっぱ飯など、群馬のソウルフードが楽しめますよ。売店で売られているオリジナルのお菓子もおすすめ!
DOAI VILLAGE
土合駅から徒歩0分のグランピング施設。駅舎内にあるカフェからチェックインします。温泉はもちろん、サウナも体験可能。フリードリンク、冬期のアクティビティも充実しているため家族連れにも人気となっています。
苦しいだけじゃない! 朝日岳の魅力を体感しよう。
普段の山行で、日に10時間歩くことって、あまりありませんよね。安全上、1日の行動時間は長くなり過ぎないようにするのが基本ですが、長時間歩くロングコースに挑戦してみたいという人にはおすすめ。もちろん、いきなりそのようなところへ行くことは推奨できませんが、もう少し頑張ってみたい! と思う方は、素晴らしい景色を眺めながらの稜線歩きを満喫できる朝日岳にチャレンジしてみませんか。きっと今までにはない達成感を得られますよ。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。