高山植物の宝庫、焼石岳ってどんな山?
標高 | 山頂所在地 | 山系 | 最高気温(6月-8月) | 最低気温(6月-8月) |
---|---|---|---|---|
1547m | 岩手県奥州市 | 奥羽山脈 | 17.3℃ | 9.6℃ |
焼石岳は岩手県の奥州市と西和賀町の境に位置する標高1548mの火山です。焼石連峰の主峰で日本二百名山にも選定されています。頂上からの眺めは抜群で、鳥海山、月山、岩手山など東北の名峰が一望できます。
感動の美しさ!高山植物と紅葉
焼石岳の山腹には小沼などが点在する湿地帯が広がり、湿性植物をはじめ色とりどりの高山植物が咲き乱れます。特に6月に咲くハクサンイチゲのお花畑は見事で、登山者にも大変人気です。数々の高山植物を観察できることから東北屈指の花の山としても有名。また、紅葉の季節も美しい景色を望むことができます。
山開きはいつ?
例年6月の第1日曜日が焼石岳の山開きとなっており、高山植物が花咲く頃には多くの登山客でにぎわいます。
焼石岳の天気と地図をチェック!
焼石岳に行く前に現地の天気と登山地図を確認しましょう。特に地図は電波が繋がりにくいため、紙のものを持参することをおすすめします。
焼石岳で見られる高山の花々
数多くの花々が楽しめる焼石岳ですが、よく見かける代表的な花を紹介します。
可憐なハクサンイチゲ
白くて可憐なハクサンイチゲは、緑の山肌にとても映えます。白色の花びらのように見える部分は実はガクで、枚数は5枚〜7枚。6月中旬から下旬にかけて満開になり、焼石岳の山頂付近ではハクサンイチゲの大群生が見られます。
癒しのミヤマキンポウゲ
ミヤマキンポウゲは湿り気のある場所に生息し、背丈は10〜50cmほど。花期は6月下旬から7月にかけて見頃を迎え、直径2cmくらいの黄色い花をつけます。焼石岳の大群生は辺り一面を黄金色にし、登山道脇にも咲き乱れます。
優雅なヒオウギアヤメ
ヒオウギアヤメは葉が薄板で作った扇に似ていることが名前の由来。高さが70cmほどになり、花期は6月下旬から7月にかけて見頃を迎えます。コース中の湿地帯に群生しており、紫色が優雅に夏の焼石岳を彩ります。
現地情報も要チェック!
まだまだ紹介しきれないほど、多くの種類の花が見られる焼石岳。焼石観光開発連絡協議会の公式サイトに、焼石岳で見られる花が月ごとに紹介されています。また、いわて自然公園特派員だよりでは、直近の山の様子が写真付きで見られます。焼石岳に登る前にぜひチェックしてみては。
中沼登山口コース|いちばん人気の絶景コース
最高点の標高: 1525 m
最低点の標高: 723 m
累積標高(上り): 1342 m
累積標高(下り): -1342 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 日帰り
- コースタイム:6時間45分(往復)
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
中沼登山口の駐車場にはトイレが設置されているので、立ち寄ってからスタートしましょう。登りはじめはブナの樹林帯で、整備され歩きやすい登山道。「中沼」の手前でやや急な登りになります。
天気が良ければ、鏡のような中沼に焼石岳と青空が映し出される絶景を見ることができるでしょう。初夏は残雪の美しさも映えます。
中沼から少し歩くと上沼に到着。ここまでの間にも登山道沿いで多くの高山植物に出会えます。川沿いの登山道ではいくつかの渡渉ポイントが。つぶ沼ルートとの分岐から緩やかな登りを経て「銀名水」へ向かいます。
銀名水に到着するとこのルートで唯一飲用できる水場があり、冷たくて美味しい湧水を補給することができます。
銀名水を過ぎると次第に展望が開け、細い木道の登山道や時に残雪の斜面をトラバースしながら進みます。低木帯に入ると正面に焼石岳の山頂が出現。姥石平分岐を左方向に進みながら目の前の山頂を目指しましょう。
「姥石平」は、山頂直下にある広大な湿原地帯で貴重な高山植物の宝庫。夏には一面の花で埋め尽くされ満開のお花畑の中を歩くことができます。
「泉水沼」のある姥石平から20分ほどで焼石岳の頂上に到着。
山頂からの眺めは素晴らしく、眼下には湿原や池が望め、遠方には東北の名峰である鳥海山などの山々も一望できます。
焼石岳山頂から東焼石岳までは湿地帯があるため、稜線伝いに迂回して向かいます。登山道から眺める広大な湿原やなだらかな稜線に咲くお花畑を満喫しましょう。ハクサンイチゲが咲き乱れたお花畑はまさに楽園!
焼石岳の山頂から約40分ほどの道のりで、東焼石岳に到着します。
東焼石岳の頂上からは、お花畑越しに先ほど登った焼石岳も望むことができます。
東焼石岳からの下山は木道を進み、10分ほどで姥石平に到着。姥石平分岐からは登ってきたコースを戻り、中沼登山口にてゴールです。
片道を別ルートにして、より魅力を楽しもう!
山頂までのコースは紹介した中沼コース以外にも、つぶ沼コースや三合目コースなどがあります。いずれも山頂までの片道コースのルート紹介になるので、往復ピストンや復路を他のコースと組み合わせるなど、自分に合ったコースで楽しい登山をしてください。
つぶ沼登山口コース|ブナの森を歩く森林浴を楽しむ
最高点の標高: 1525 m
最低点の標高: 445 m
累積標高(上り): 1444 m
累積標高(下り): -397 m
- 【体力レベル】★★★☆☆
- 日帰り
- コースタイム:4時間20分(片道)
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
登山口からは緩やかなブナ林の中を進んでいきます。湿気の多い登山道でぬかるみも点在しているため、足元に気をつけましょう。いくつかの渡渉を越え金山沢を渡って石沼を目指します。
つぶ沼コースでは、ひっそりと佇む美しい石沼を望むことができます。
樹林帯の登山道脇では数多くの貴重な高山植物が目を楽しませてくれます。つぶ沼・中沼コースの分岐からは、中沼コースと同ルートで焼石岳の山頂へと向かいましょう。
東成瀬三合目登山口コース|渡渉多めでアドベンチャー満点
最高点の標高: 1524 m
最低点の標高: 939 m
累積標高(上り): 843 m
累積標高(下り): -289 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:3時間45分(片道)
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
緑豊かな登山道は整備され歩きやすく、道中には木道もあります。途中に巻き道と「釈迦ザンゲ道」の分岐がありますが、登っていくと合流しますので好きな方を選んでOKです。
五合目からは少し下り、その後渓流に沿って水平道が続きます。渡渉がかなり多い登山道なので、増水時は通行できない場所もあります。足元に十分注意しながら進みましょう。
八合目にはおいしい水が飲める「長命水」という水場がありますので一服しましょう。八合目からすぐそばの「焼石沼」では、鏡面のような湖に映る美しい焼石岳も望めます。
なだらかな傾斜の登山道を進み、焼石岳神社を経由して山頂直下は傾斜のある岩場の登山道に。高山植物の宝庫な山なだけあって、登山道に咲く花を存分に楽しみながら山頂を目指せます。
焼石岳登山で気をつけたい3つのこと
焼石岳に限ったことではありませんが、特に気をつけておきたい3つのポイントになります。特に登山者が少ない時期には、クマとの遭遇や道迷いなどリスクも高くなるので、十分に注意しましょう。
植生を守ろう
国定公園に指定されている焼石岳は、高山植物はもちろん石なども持ち帰ることを禁止されています。また登山道を歩く際は、道を外れて高山植物を踏み潰してしまわないよう注意しましょう。テントに関しては指定地以外での宿泊は禁止されています。貴重な植生を守りながら焼石岳の大自然を満喫してください。
クマ対策を忘れずに
焼石岳は東北の中でも熊の目撃情報が多く、注意が必要な山です。できるだけ単独での山行を避け、複数人で登頂することをおすすめします。また、山行の際は熊鈴やラジオなどで熊対策を万全にして出かけましょう。
雪渓の踏み抜きに注意
東北の山は雪深いため、焼石岳でも山開き直後の6月上旬は雪渓がかなり残っています。雪渓の上を歩く登山道では、踏み抜かないように足元に注意して歩みをすすめましょう。
携帯電話は繋がりません
焼石地区は携帯電話の電波が繋がりにくくなっています。万が一に備え、家族や友人には前もって焼石岳に登ることを知らせ、登山の際には必ず登山届を出してから登りましょう。紙の地図やアプリの地図を事前にダウンロードしておきましょう。
登山口へのアクセス・駐車場情報
最寄り駅やインターから、各登山口までの交通機関でのアクセスおよび駐車場の情報です。登山時に参考にしてください。
中沼登山口へのアクセス
【クルマの場合】
東北自動車道「水沢」ICー国道4号ー国道397号ー尿前林道ー中沼登山口
※尿前林道は未舗装の悪路です。
【公共交通の場合】
JR東北本線「水沢」駅ー岩手県交通バス「馬留線:ひめかゆスキー場行き」乗車ー「ひめかゆスキー場」バス停下車ータクシーにて登山口
JR東北本線「水沢」駅ータクシーにて登山口
※ひめかゆスキー場からのタクシーは要配車予約
つぶ沼登山口へのアクセス
【車の場合】
東北自動車道「水沢」ICー国道4号ー国道397号ーつぶ沼登山口
【公共交通の場合】
JR東北本線「水沢」駅ー岩手県交通バス「馬留線:ひめかゆスキー場行き」乗車ー「ひめかゆスキー場」バス停下車ータクシーにて登山口
JR東北本線「水沢」駅ータクシーにて登山口
※ひめかゆスキー場からのタクシーは要配車予約
東成瀬三合目登山口へのアクセス
【クルマの場合】
東北自動車道「十文字」ICー東成瀬三合目登山口
【公共交通の場合】
JR奥羽本線「十文字」駅ータクシーにて登山口へ
焼石岳登山後は温泉へ!
中沼登山口とつぶ沼登山口のほど近くに、天然温泉の「焼石岳温泉」があります。ゆっくり日帰り入浴を楽しむことも可能で、宿泊施設もあり、前泊などにも立地が良いです。
焼石岳温泉 焼石クアパーク ひめかゆ
2つの源泉を持つ温泉施設で、お風呂は大浴場のほかに露天風呂もあります。ぬるりとした泉質は肌に優しく、入った後はお肌がすべすべになると評判の温泉です。下山後の疲労回復にぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
焼石岳の自慢!絶景のお花畑を愛でに行こう
なだらかな山容に満開の様々な高山植物が咲き乱れる焼石岳。東北きっての花の楽園は登山者に多くの癒しを与えてくれる山です。残雪期には山肌の緑色と雪渓の白色のコントラストが美しく、豊富な水をたたえる山中では湿原や沼とともに花たちが生き生きと輝いています。大自然溢れる美しい花の山焼石岳で、自分好みのお花を探してみませんか。
【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。