アクティブインサレーションに新星現る

撮影:著者
冬山の快適さを左右するのが、ミドルレイヤーといっても言い過ぎではありません。冬山レイヤリングの中で、保温性と通気性を両立しながら汗に対応して、ウェア内環境をコントロールする役割をもっているためです。
そんなキーとなるウェアで近年ホットなのが、アクティブインサレーション。保温素材が封入されたものから、フリースのような高通気タイプのものまで、各ブランドからたくさんのアイテムが出ています。
そんなアクティブインサレーションに、ひときわ目を引く新星が登場!
北欧ブランド「ホグロフス」の意欲作

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それが、ホグロフスの「リム ZT シンク 2 ミッド ジャケット」。軽さと機能の両立を追求したL.I.M(リム)シリーズのアイテムです。
高い通気性とほどよい保温性を備えたアクティブインサレーションで、2,000m級の雪山から秋冬の低山ハイクまで活躍します。

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リム ZT シンク 2 ミッド ジャケットをおすすめの登山者
・行動スピードが速い
・汗かき、暑がり
・冬は日帰り低山ハイクがメイン
・雪山は日帰りか小屋泊がメイン
・山行や状況に合わせてレイヤリングを工夫できる
デザインの赤いラインも目を引きますが、注目したいのは素材使い。
ポーラテック素材を3種類もマッピング

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ホグロフスは、1914年にスウェーデンで創業。北欧の厳しい自然環境に対応する高機能なウエアやバックパックを作り続けているアウトドアブランドです。
そのなかでも、ファストハイクやトレイルランニングなどの運動強度が高いアクティビティ向けに開発されたアイテムがL.I.Mシリーズ。
「Less Is More(より少ないことは、より多いこと)」の信念に基づいて、「あると便利かもしれないもの」はすべて取り除き、フィールドで真に必要な最低限のディテールと機能を追求しています。
はたして日本の冬山でも必要最低限で事足りるのだろうか?そこで、フィールドでのパフォーマンスを試してきました。
L.I.Mで十分。低山でも雪山でも快適に行動し続けられました

撮影:著者
「リム ZT シンク 2 ミッド ジャケット」を試してきたのは、12月中旬の丹沢山系と12月末の八ヶ岳連峰。行動スピードはやや速めで、コースタイムの8割ほど。
どの山行でも、ジャケットの軽さからは想像できないほど温かく行動できました。
試した山域 | 標高 | 状況 | 天気 | 気温 | 風 |
---|---|---|---|---|---|
丹沢(檜洞丸) | 1,601m | 雪なし | 晴れ | 0℃ | 0~5m/s |
八ヶ岳(天狗岳) | 2,646m | 積雪 | 曇り・雪 | -12℃ | 15~20m/s |
八ヶ岳(白駒池周辺) | 2,115m | 積雪 | 晴れ | -10℃ | 0~5m/s |
運動強度が高くなる急登でも汗が吹き出ることはなく、蒸れ感もないほどのちょうどいいウェア内環境をキープしてくれます。樹林帯や風があまりない稜線では、単体着用でも快適でした。
なにより感動したのは、レイヤリングしたときのスマートさや、グローブを装着した時の一体感。「Less Is More」を実感したところでもあります。
透けるのに温かい!?でも、行動中はほどよくて快適

撮影:著者
本当に雪山のミドルレイヤーに使えるのかと疑うほど薄手の「リム ZT シンク 2 ミッド ジャケット」。
光にかざすと向こうが透けて見えるくらいです。

撮影:著者
重量を実測してみると214g(メンズ Sサイズ)。なんと、ジップネックタイプの厚手ベースレイヤー並み。冬山で使えるミドルレイヤーの中でもトップクラスの軽量性です。
しかし、羽織ってみると温かさをたしかに感じられます。アウターシェルをレイヤリングするとぬくぬくとし、ポーラテックアルファの起毛によるデッドエアが効いているようです。
環境変化にはレイヤリングで対応

撮影:著者
気温マイナス12℃、風速15~20m/sの過酷な雪山の稜線でも、レイヤリングを工夫して対応できました。
ライター大堀
手にしたときにイメージしていたよりも温かく、雪が横から殴りつけてくるような中でも凍えることなく落ち着いて行動できたのは、とても助かりました。
過酷な雪山でのレイヤリング例
・ドライ系アンダー
・厚手の化繊ベースレイヤー
・リム ZT シンク 2 ミッド ジャケット
・ソフトシェル
・ハードシェル

撮影:著者
晴れていて穏やかな環境であれば、通気性も高いのでアウターとしても使用できます。
これは、残雪期登山にも活躍しそうな予感。気温は高いけど風が冷たいから何か一枚羽織りたいなぁという微妙なシーンに出番が多くなりそうです。
ライター大堀
1枚で秋から冬だけではなく残雪期まで使えるのは、うれしいですね。登山用に準備するウェアを少なくできるのも、「Less Is More」でしょうか。
ミニマルで、レイヤリングしやすい仕様

撮影:著者
これまで雪山登山のレイヤリングで気になるのが、着膨れ。ゴワゴワするし、フロントファスナーが何重にもなった硬さを感じるのが知らず知らずにストレスでした。
しかし、「リム ZT シンク 2 ミッド ジャケット」を着るとシュッとします。北欧ブランドならではのデザイン性と「Less Is More」の信念が融合したことで、レイヤリングがスマートになりました。
ややタイトめのシルエット

撮影:著者、身長175cm/体重61kg/チェスト86cmでSサイズを着用
シルエットはややタイトめですが、軽くてストレッチがしっかり効いているため、体にしっくりくるストレスフリーの着心地です。
アウターシェルをレイヤリングしても、ゴワつくことはありませんでした。
ライター大堀
裾も伸縮性があってぴったりフィット。アンダーやベースレイヤーをいい具合にまとめて押さえられたので、まとまりが生まれて裾周りがスッキリしました。
しなやかな着心地を生むフロント仕様

撮影:著者
秀逸なのは、フロントの開閉仕様に軽量なスナップボタンを採用しているところ。硬質なファスナーと違ってレイヤリングしても嵩張らず、ウェアにしなやかさが生まれます。
厚手のグローブを装着していると操作しづらいのが気になりましたが、登山中に脱ぎ着することはなかったため、余計な心配でした。
お腹も手首も冷やさない

撮影:著者
腰まですっぽり覆える長めの裾丈は、スムーズにパンツインできます。見た目に抵抗がある方もいるかもしれませんが、腹巻きのようでお腹がとっても温かいんです。
パンツインしても高いストレッチ性のおかげで、生地が突っ張ってストレスになることはありません。

撮影:著者
袖口のサムループを装着してからグローブをすると、手首を隙間なくカバーして保温できます。袖口はしなやかでフィット感が高いため、ゴワつかずグローブの操作性にも影響はありません。
ライター大堀
ジャケットとグローブの一体感に、人知れず感動しました。これまで悩みだった手首の寒さも解決されて、指先までしっかりあたたかったです。手首が温かいと、こうまで違うものなんですね。
さすがの動きやすさ

撮影:著者
ストレッチ性が高いため、ストックワークをしても滑らかに腕が動きます。
ウェアの突っ張りなどでストレスが掛かると、ボディブローのように疲労が蓄積するので、意外と大事なポイントです。
収納もLess Is More

撮影:著者
ポケットは必要最低限を体現していて、フロントにフラップ付きポケットが1つのみ。地図や行動食などの収納にちょうどいい位置にあります。
ただし、あまり重いものを入れると、やわらかいウェアが下に引っ張られることもあるため、収納するものは軽いものにしましょう。
冬の低山から雪山まで活躍する使い勝手の良さ

撮影:著者
ちょっと見ただけでは、ただ目を引くデザインのジャケット。しかしその実は、折り紙付きの機能を備えた実用的なミドルレイヤー、というのが「リム ZT シンク 2 ミッド ジャケット」です。
軽やかな着心地で、スマートにレイヤリングできて、ちょうどいい保温性と通気性で快適に行動できます。

撮影:著者
冬の低山、日帰りや小屋泊まりの雪山、残雪期と幅広いシーンに活躍する対応力は重宝すること間違いなし。使い勝手がいいミドルレイヤーが一着あると、登山ウェアの準備も迷わなくなります。
秋も冬も春もアクティブに登るあなたにおすすめの一着です。