2022年最新「カップ付きサーモボトル」を徹底レビュー
暑い夏は冷たく、春、秋、冬の寒い山ではあたたかい湯や飲み物をハイカーに提供してくれるサーモボトル。登山での使い勝手がよいモデルはどれなのか、実力を検証してみました。
おすすめ「カップ付きサーモボトル」ランキング!
【軽量性】登山で使うものだから、軽い方がやっぱりうれしい!
まずは軽い順に、特徴を紹介していきましょう。
【1位】 265g|モンベル/アルパイン サーモボトル 0.5L
登山用サーモボトルの定番。カップの上部とボトル底部に、滑り止め兼、落下等の衝撃からボトルを守る“シリコーンガード”を装備していながら、265gという軽さはさすがアウトドアブランド!
本体のステンレス綱を極限まで薄くし、真空二層構造と熱の移動を抑える反射加工によって、「軽さ」と「保温・保冷効果」という相反する機能を備えています。
容量500mlモデルとして平均的な大きさ。カラー展開も写真のステンレス以外にレッド、グリーン、ダークグレーの4色が用意され、好みで選べるのもありがたいものです。
【2位】 280g|サーモス/ステンレスボトル FFX-501
通称「山専用ボトル」で知られる人気商品。カップにもなるフタ上部には、開閉の際に指を掛けて回しやすい凹みと滑りにくい材質を装備。またボトル中央と底部に、シリコーン製のグリップ&ガードが採用されています。それらは着脱でき、外すと重量は260gになるので、1gでも軽くしたい時に有効です。
本体はステンレス製の真空二層構造。古いハイカーからは、サーモスが設立されたドイツ語読みで「テルモス」と呼ばれ、サーモボトル自体を「テルモス」と呼んでいたこともあるくらい、その保温力は折り紙付きです。
【3位】 290g|シグ/ジェムストーン 0.5L
90年代、豊富なカラーと高いデザイン性のアルミボトルで“マイボトル”のブームをつくったスイスのブランド。その伝統は、このサーモボトルにも継承され、シックでスタイリッシュな見た目が好印象です。
ステンレス製の真空二層構造。内側には、保温力を高める銅コーティングが施されています。さらに、内側のステンレス層を超薄型にすることで、同ブランドの従来ボトルよりも30%の軽量化を実現したそうです。
【4位】 374g|エスビット/マジョリス バキュームフラスク 500ml
固形燃焼を使ったポケットストーブで知られるエスビット。軽量なクッカーやカトラリー、フードコンテナのファンも多く、このサーモボトルもアウトドア道具らしい無骨さが評判です。
ステンレス製の真空二層構造。フタもステンレス製の真空二層構造のサーモカップになっているため、注いだ湯が冷めにくいだけでなく、ボトルの口から逃げる熱を閉じこめる役割を担っています。
【5位】 380g|ニトリ/真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
「お、ねだん以上。」のニトリからは、モンベルとサーモスのよいところを合わせたようなサーモボトルが出ています。重さは380g、他メーカーのボトルよりひとまわり大きく750mlボトルに近い大きさですが、登山に持って行くボトルとしては許容範囲です。
ステンレス製の真空二層構造。内びんは銅メッキ+銅ホイルで、しっかりとした保温力を装備。それでいて、お値段は3,000円以下と、他の製品の半分くらい。コスパ重視なら1位はコレです。
【持ちやすさ】疲れた時にうっかり落とさずに済むボトルはどれ?
片手で持った時の印象をレビュー。素手と薄手のフリースグローブをした状態で試してみました。
【1位】 サーモス/ステンレスボトル FFX-501
ボトルの直径7cmで、太さは平均的。
しかし、ボトル本体上部のシリコーン製のグリップが指に掛かり、落下の心配はほとんど感じられません。素手でもフリースグローブをしていても同様です。
【2位】 エスビット/ジョリス バキュームフラスク 500ml
直径7.3cmでやや太めなので、手の小さな人は持ちにくいと感じるかもしれません。
しかし、ボトル本体中央の3本の凹みが指に自然と掛かり、ステンレスの滑りやすさを抑制します。特にフリースグローブを装着して持つと、その効果がわかります。
【3位】 モンベル/アルパイン サーモボトル 0.5L
直径7cmで、素手で持つ分には問題ないのですが、フリースグローブだとツルっと滑りやすいです。カップの樹脂部分で多少グリップしてくれるので、最悪の落下は防ぐことができそうです。
【4位】 シグ/ジェムストーン 0.5L
直径6.8cmの細身な本体は、素手ならかなり持ちやすく、縦に入った凹みも指に掛かります。しかしフリースグローブだと、凹みは感じても、やや不安定……。
凹みはエンボス加工と呼ばれる技術を使っているようですが、それよりも表面がザラっとしたパウダーコーティング等の加工の方が、山では有効だと感じます。
【5位】 ニトリ/真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
直径7.8cmと太く、380gと重さもあり、やや不安定なグリップ感。カップの樹脂部分に指が掛かりますが、フリースグローブだと心許ないです。
カップ上部、ボトル底部に装着したシリコーン製のグリップ&ガードを、ボトル中央にも装備してくれると、かなり安心なのですが……。
【フタの開けやすさ】フタがサクッと開くと、ストレスもありません!
フタの回転数が少なく、スマートに開けられたのは……?
【1位】 1/2回転|エスビット/マジョリス バキュームフラスク 500ml
頑健な見た目に反して、ステンレス製カップのフタは1/2回転と軽やか。太めの直径はチカラも入れやすく、クルッと回して、スゥっと開きます。かなり調子がいいです。
【2位】 3/4回転|サーモス/ステンレスボトル FFX-501
フタ上部の凹みとグリップのよい材質が機能して、少ないチカラで回転させやすいのが特長です。しかも、2捻り=3/4回転で開くので動きはスムーズ。うん、よくできています!
【3位】 1回転|モンベル/アルパイン サーモボトル 0.5L
フタ上部のシリコーン製グリップが効いて、回転させやすいのは間違いありません。フタを2捻りちょい、1回転で開きます。その「ちょい」がやや引っ掛かり、上位2ボトルと比較すると少しモタつく印象。とはいえ、十分にサクッと開くボトルです。
【4位】 1と1/4回転|ニトリ/真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
フタ上部のシリコーン製のグリップは、指に掛かるのですが、開けようとすると、そのグリップも動いてしまうのが難点。かつ、開ける動きが3捻りにまでなると、筆者の感覚では、「随分回すなぁ……」と思ってしまいます。
【5位】1と1/2回転|シグ/ジェムストーン 0.5L
細身なのでチカラを入れやすいのですが、開ける動作が3捻りちょい=1と1/2回転は、やや多いと感じます。
ボトルが細い分、しっかりと接続させるために溝を長くしないといけないのかもしれません。そう考えてみれば、1位のエスビットは今回もっとも太いモデルなので、納得できます。
【注ぎやすさ】湯を注ぎやすいと山コーヒーを淹れるときにも便利
中栓の回転数と、注ぎ口の形状をチェック。スマートかつキレイに湯を注げた順に紹介します。
【1位】 1/2回転|シグ/ジェムストーン 0.5L
中栓を1/2回転させるだけで湯がでます。しかも注ぎ口から出る湯は、キレイにカップに弧を描きます。
「なんでだろう?」と思い、すべてのボトルの中栓を外して見比べてみると、その理由がわかりました。
中栓に刻まれた注ぎ口の溝がある程度広く、上部の傘のような部分が短いと、やさしく注げ、サッと切れるようです。
【2位】 1/2回転と少し|エスビット/マジョリス バキュームフラスク 500ml
エスビットも中栓の溝が広めで、傘は短めのボトルです。だから美しく注げ、サッと湯が切れます。
湯が出るまでの中栓の回転数が少し多いのと、中栓の頭に刻印される注ぎ口を示す矢印が少しわかりづらいので、2位としました。
【3位】 1/2回転|モンベル/アルパイン サーモボトル 0.5L
注ぎ口の溝は広めながら、傘は傾斜があるのでやや長め。そのため、思ったよりも遠くに湯が出てしまうのと、注ぎを止める際に、ほんのわずかだけ感覚よりも切れるのが遅い印象です。
湯が出るまでの中栓の回転数は、エスビットよりも短いのですが、美しさに欠けるので3位に。普通に使う分にはなんの問題もありません。
【4位】 3/4回転|ニトリ/真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
中栓の注ぎ口の溝が狭く、傘は斜めで長め。すると注ぐ湯が、注ぎ口の片側にヨレれてしまうんです。
勢いよく注いでいる時は問題ないものの、湯を切ろうとするときに中央から方向が変わるため、ちょっとドキッとしてしまいます。
【5位】 3/4回転|サーモス/ステンレスボトル FFX-501
中栓の注ぎ口の溝が細く、傘は斜めで長め、かつ開口部が広口仕様。おそらく、中栓ボトルの「少しずつしか湯を注げない!」という難点をクリアするために広口が採用されたと想像しますが、その広さゆえに注ぐ湯がヨレるのです……。
少ない湯を注いでいる時だけでなく、ボトル内の湯量が少なくなってきたときも同様です。
右が2位のエスビット、左が5位のサーモの中栓です。エスビットから注がれる湯が美しく、私は好みですが、ちょっとくらい湯がヨレても気にならないという方も当然いると思います。
ですが、ストレスのない方、美しい方が、道具としてオススメしたいです。
【保温力】保温性能はどのボトルが優秀なのか?
秋冬の気温を想定した庫内温度4度の冷蔵庫に、500mlの湯を入れたボトルを収納。約6時間経過後の温度を計測しました。
ボトルに入れた湯の温度は約91℃。さて、どれがもっとも高い温度をキープできたでしょう!?
【1位】 78.2℃|モンベル/アルパイン サーモボトル 0.5L
以前、同様の企画で保温テストをした際はサーモスに次ぐ2位でしたが、今回は1位です。
真空二層構造だけでなく、内ビンに施された反射加工、中栓に入った断熱材、開口部の直径も4.3cmと細く絞られているのが、高い保温性能を誇る理由です。
【2位】 77.5℃|サーモス/ステンレスボトル FFX-501
1位と0.7℃の差は誤差の範疇ですが、2位はサーモス。モンベルとともに登山用サーモボトルの2大巨頭がワン・ツーフィニッシュです。
中栓は2層構造になっていて、保温力と洗浄のしやすさを両立させたもの。開口部の直径は4.3cm(実測値)で、熱を極力逃がさないようにすぼめてあります。
【3位】 76.9℃|ニトリ/真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
大きい・重いということは、断熱する真空層を大きくでき、それをつくる内ビンと外ビンを厚くすることができるということ。その分、保温&保冷力が高まります。このボトルはさらに熱が逃げないコーティングも施されています。だから76.9℃の3位も納得です。
同レベルの保温力でも、ニトリのような値段の安さを取るか、それともビンの厚さをできる限り薄くした軽量コンパクトさを優先するかで、選択するべきボトルが変わるでしょう。開口部の直径は3.8cm。今回、一番細口のボトルがニトリです。
【4位】 76.2℃|シグ/ジェムストーン 0.5L
従来モデルより軽くなり、しかも中栓を装備したカップ付きボトルになったことで保温力もアップしたシグ。細身なかがら、開口部の直径は4.3cmとモンベルやサーモス同様です。
保冷時の氷の入れやすさ、洗浄のしやすさとともに保温力を維持する口の直径は、この4.3cmがバランスがよいのでしょう。
【5位】 72.9℃|エスビット/マジョリス バキュームフラスク 500ml
今回は中栓を装備したボトルだけを集めたので、5位で72.9℃とレベルが高いです。ちなみに中栓を装備していない直飲みボトルで、同様の保温テストをしたところ、1位はこのエスビットとほぼ同じ温度でした。
また72.9℃の湯なら、カップ麺を十分に美味しく頂ける温度です。なので再下位とはいえ、山で十分に活躍する保温力といえます。
【サイドポケットとの相性】収納性も意外と重要
サイドポケットへのボトルの収まりのよさと、バックパックを背負った状態での収納&取り出しのしやすさをチェックしました。
【1位】 シグ/ジェムストーン 0.5L
滑り止め・衝撃吸収のガード等が装備されておらず、本体が細身。しかし細すぎず、収まりのよさ、取り出しやすさはシグが一番でした!
【2位】 サーモス/ステンレスボトル FFX-501
底部のガードにより、収納する際に引っ掛かりを感じますが、その引っ掛かりが脱落防止に効果を発揮してくれます。また本体中部のシリコーン製のグリップも、取り出す際に機能します。
【3位】 モンベル/アルパイン サーモボトル 0.5L
底部のガードが収納時に引っ掛かりを感じるも、それが脱落防止になるのはサーモス同様。しかし、ボトル本体が滑りやすく、取り出しにくさをやや感じたので3位に。
【3位】 エスビット/マジョリス バキュームフラスク 500ml
本体がわずかに太いため、収納・取り出しがやや大変です。とはいえ、他のボトルと比較したらという程度。サイドポケットの形状によっては、本体長の短さが活きることもありそうです。
【5位】 ニトリ/真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
比べるとわずかな大きさの違いなのですが、サイドポケットに収納すると、やはりニトリはデカいなぁと実感。装備に余裕のあるデイハイク等で使用するのが、現実的なのだと思います。
迷ったらコレ!総合ランキング
総合 | 軽量性 | 持ちやすさ | フタの開けやすさ | 注ぎやすさ | 保温力 | サイドポケットとの相性 | |
モンベル | 1位(22点) | 1位(5点) | 3位(3点) | 3位(3点) | 3位(3点) | 1位(5点) | 3位(3点) |
サーモス | 1位(22点) | 2位(4点) | 1位(5点) | 2位(4点) | 5位(1点) | 2位(4点) | 2位(4点) |
シグ | 3位(18点) | 3位(3点) | 4位(2点) | 5位(1点) | 1位(5点) | 4位(2点) | 1位(5点) |
エスビット | 3位(18点) | 4位(2点) | 2位(4点) | 1位(5点) | 2位(4点) | 5位(1点) | 4位(2点) |
ニトリ | 5位(10点) | 5位(1点) | 5位(1点) | 4位(2点) | 4位(2点) | 3位(3点) | 5位(1点) |
サーモス ステンレスボトル FFX-501
《保温テスト結果》6時間後の温度
91℃→77.5℃(-13.5℃)
重量 | 280g |
---|---|
サイズ | 直径7×高さ23.5cm |
シグ ジェムストーン 0.5L
《保温テスト結果》6時間後の温度
91℃→ 76.2℃(-14.8℃)
重量 | 290g |
---|---|
サイズ | 直径6.8×23.8cm |
エスビット マジョリス バキュームフラスク 500ml
《保温テスト結果》6時間後の温度
91℃→ 72.9℃(-18.1℃)
重量 | 374g |
---|---|
サイズ | Φ7.3×21.7㎝ |
ニトリ 真空断熱 超保温・保冷ボトル(N-HEATEX 500mL)
《保温テスト結果》6時間後の温度
91℃→ 76.9℃(-14.1℃)
重量 | 380g |
---|---|
サイズ | Φ7.8×24.5㎝ |
保温力から、デザインで選ぶ時代へ
今回セレクトした5つのボトルは、保温力はほぼ同等といってよいレベル。サーモスとモンベルはシリコーン製のグリップ&ガードを装備。より登山向けに思えますが、ニトリも同様のグリップ&ガードを装備していますし、シグとエスビットは、本体に施された溝によって強度を高めていて、しかもデザイン性の高さをウリにしているボトルです。
これまではサーモスとモンベルが頭抜けた保温性で選ばれてきましたが、これからは、見た目のよさで、普段も使いたくなるシグやエスビットを選ぶ人、コスパでニトリという人が増えてきそうです!
それでは皆さん、よい山旅を!!